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第21話 ウスプラ、到着。

「ここがウスプラね!」


「はい……どうにか辿り着きました」


「とりあえず宿屋に行こうか」


 今回はルウリィとユニコーンのおかげでほぼ遅れもなく到着することが出来た。


 とはいえ、エボで追加で1日使っちゃってはいるわけだから、これ以上旅程を遅らせるわけにはいかない。


「いらっしゃいませ」


 宿屋の受付には人の良さそうな中年の女性が立っていた。


「すみません、2部屋空いていますか?」


「あいよ、今見てみるね」


「2部屋? ……って、あれ、わたしも泊まって良いのですか?」


「良いのですかも何も、他にどうするつもりなんだよ」


「ユニコーンさんと一緒に馬車の荷台で寝ようかと……。私たちは山には登れませんし」


「いや、おれたちが登って下りてくるのを待っておいてもらわないといけないんだから。……もし宿泊費を心配してるなら、学院にもらったお金が少し多めにあるから大丈夫だ」


「え、学院にお金なんかもらったの?」


 腹芸の出来ないフレアの追及を無視する。

 もらったわけないだろ。貯金を崩すだけだ。


「そうですか……では、お言葉に甘えて。あ、店員さん。わたしは物置小屋でもいいです。|ノイクさんとフレアさん《こちらのお2人》で1室なので誤解なきよう」


「いやルウリィが誤解してるんだけど……!?」


「どちらにしてもすまないね。大きめのツインの部屋が1つしかあいてなくて……。物置小屋に泊めるわけにもいかないから、その部屋に追加でベッド入れる形でどうだい?」


「そうですか……ではそれで結構です」


 また女子と同室か。気を遣うなあ……。とため息をつくと。


「ノイクさん大丈夫です。わたし、壁魔法かべまほうが張れますよ」


「そうなのか! 助かる……!」


「いえいえ、お役に立てるなら嬉しいです」


 俺が頭を下げると、ルウリィは微笑んで首を横に振った。


「"壁魔法"ってなに?」


 またしても何も知らないフレアが首をかしげる。


「結界魔法と光魔法を組み合わせた魔法です。結界魔法に色をつけて外から見えないようにすることで、部屋を仕切ったり、中で着替えたり……まあ、生活魔法の一種ですね」


「へえ、あなたってなんでも出来るのね!」


「いえいえ、宿屋の娘としては最低限の技術です」


 あれ、だとしたらエボの部屋にもほどこしてもらえばよかったか……? と一瞬よぎったものの、ベッドが1つしかないんだから、壁をつけたところで意味がなかったな。


「じゃあ、とにかく部屋のことは解決ね! お腹空いちゃったわ! 部屋に荷物を置いたら早速レストランに行きましょう」


「レストランはどちらにありますか?」


 ルウリィがカウンターの女性に聞いてくれる。


「街の南門の近くに"御神木ごしんぼく広場"があるよ。その広場に面して食堂もバーもレストランもなんでも揃ってる」




 ということで、部屋に荷物だけ置いて、俺たちは町に出た。


「ルウリィは何系食べたい?」


「わたしですか、うーん……お二人の食べたいもので……」


「ノイクはマンモス肉に目がないのよ」


「そうなんですね。……フレアさんは?」


「あとはねー……意外と甘いものも好きね」


「フレアさんが?」


「え? ノイクがよ」


 道を知ってるのか分からないが、とにかく常に先頭を歩きたがるフレアと、彼女と会話をしているルウリィが前を歩く。


 なんとなく会話に入れない俺が、石畳の町をとぼとぼ歩いていると。


「お、あれか」


 右手に路地があり、その路地を抜けたところに大樹が見えた。一目であれが"御神木ごしんぼく"だと分かる。


「こっちから行けるっぽいぞ」


 と前の2人に声をかけながら俺はそっちに行こうとするが、


「いてっ」


 ガン!とはなつらが何かにぶつかる。


「なんだ……?」


 俺が手で探ると、そこには透明の壁があった。


「誰だよ、こんなところに結界魔法を張ったやつは……」


「ちょっとノイク、何してんの? 置いてくわよ?」


 鼻頭を撫でながら悪態をつく俺にフレアが声をかける。


「いや、ここ通れなくなってんだよ」


「何言ってんの? そんなところ通れるはずないじゃない」


「なんでだよ、路地があったら通れると思うだろうが。……なあ?」


 ルウリィなら「そうですよフレアさん」と加勢してくれるかと思って水を向けてみたが、


「何してるんですかノイクさん……。ノイクさんも新しい町だとふざけたりするんですね」


 と、まさか俺の方にツッコミが来た。


「ちょっと男の子っぽくて可愛いですけど、早く行かないと席無くなっちゃいますよ」


「…………?」


 なんだろう、と首を捻りながら、2人についていく。




「『マンモス食堂』だって! うってつけじゃない!」


 フレアが見つけてくれた大衆向けっぽいレストランに入ると、


「ん……?」


 なんだか不思議な違和感があった。


「随分暗い店だな。食堂って名前の割にバーって感じか?」


「そうかしら?」


「そうだろ」


 なんせ、それぞれのテーブルの上にある蝋燭ろうそくしかついていない。


 見回してみると、壁沿いにある光魔法用の灯篭とうろうには光が灯されていないようだった。ただの飾りだろうか?


「お姉さん、ここの名物は何かしら?」


 席につくと、うずうずした様子のフレアが店員さんに声をかける。


「いらっしゃいませ! オススメはマンモス肉の焦がしチーズたっぷりがけです!」


「それをお願い!」


「うわあ、聞くだけで美味しそうですね……!」




 少し経って、お姉さんがチーズのかかったマンモス肉を持ってくる。良い匂いだ……!


「では、こちらで仕上げにあぶりますね」


「そんなサービスがあるの!? 良かったわねノイク!」


「ああ、うん……」


 そっか、それで焦がしチーズか……!


「じゃあお願いっ!」


 ウェイトレスのお姉さんがマンモス肉を指をさすと、それだけ(・・・・)でじゅわあ……とチーズに焦げ目がついていく。


「え、どうやってやってるんですか……!?」


「どうやってって……魔法ですけど?」


「魔法! へえ、俺の知らない魔法だ……」


「へ? 普通の炎魔法ですよ?」


「え、でも炎出してませんよね?」


「はい? 出してますよ、ほら」


 お姉さんは天井を指差す。


「え? 出てませんよ……? もっと近くで見てもいいですか?」


「あー……」


 お姉さんは気まずそうに微笑んで、


「すみません、私、彼氏がいるのでそういうのはちょっと……」


「はい?」


「……ごゆっくり」


 と立ち去った。


「なんであの人はいきなり自分に恋人がいるとかいい始めたんだ……?」


 まじで意味がわからん。


「あんたがナンパするからでしょ? ふーん、ああいうのが好みなのね……」


 フレアが店員さんの背中を目を細めて見やる。


「ナンパなんかしてねえよ……」


「まあ、ナンパにしては手が混み過ぎているというか、意味不明だったけど。初めて火をみた原始人みたいな顔して」


「いや、火を見たんじゃなくて、火が見えなかったから言ってんだよ」


「ノイクさんって、そんなに視力悪いんでしたっけ……?」


「そんなことないはずなんだけど……」


「まあいいわ、とにかく食べましょう! 冷めたらもったいないもの! 炙りたてが美味しいに決まってるわ!」


 狐につままれたような気分で肉を食べた。


 焦げたチーズのスモーキーな匂いが鼻腔に抜ける。美味いな……!





「美味しかったわねー!」


「ですね!」


 3人で部屋に入ると、俺は一番手前の追加されたであろうベッドに腰掛ける。


「ノイクさん、そちらのベッドでいいのですか? 奥が女子(わたしたち)になっちゃうと、部屋を出入りする際にノイクさんの場所をまたぐ形になってしまいますが……」


「だからこそだよ。俺が女子の区画を通り抜けるわけにもいかないだろ」


「ふふ、紳士ですね。ではここに壁魔法を張らせていただきますね」


 ルウリィが俺のベッドの脇に立ち、壁魔法の詠唱を始める。


「よし、その間に顔でも洗ってくるか」




 部屋の外にある共同の洗面所。


 顔を洗っていると、先ほどの違和感がいくつかまぶたの裏に浮かんでくる。


「疲れてんのかな……」


 今日は早く眠ろう。せっかくルウリィが壁魔法を張ってくれるんだから、女子たちのことを意識せずに寝られるだろうし。




 しかし、疲れた体なんかお構いなしに、事件は起こる。


 顔を拭いて部屋に戻ると、




「……は?」






 ——そこには何故なぜか、下着姿の二人が立っていた。


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