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第13話 フレア vs ルウリィ

「でも、だからこそ、今はユニコーンは町に連れて帰ろう」


「え……?」


「勘違いするなよ。善行を勧めてるとか罪を償えとか言ってるわけじゃない。今なら、大会を開くことで、全部叶えられるから言ってるんだ」


「……どういうことですか?」


 ルウリィが眉間みけんしわを寄せる。


「簡単なことだ」


 俺は人差し指を立てた。


「ユニコーンを連れ戻って予定通り大会を開催する。フレアが優勝する。それでユニコーンとルウリィにはアティックに戻るまでの旅に同行してもらう。そうすれば、入試のタイミングにルウリィはユニコーンと一緒にアティックに来られるだろ?」


「たしかにそうですが……」


 疑うような目線でこちらを見てくるルウリィに俺は続ける。


「今日をやりすごすだけじゃダメなんだ。この大会の賞品は、ルウリィをアティックに行かせないためにユニコーンになったんだろ? ルウリィの親父さんのあの言い方だと、もし今日をやりすごしたところで、また別の策が取られるだろう。その度にユニコーンを逃がしたりルウリィが逃げたとして、それが入試まで続くだけだ」


「でもさ、ユニコーンと一緒にアティックに逃げちゃうっていうのは? 駆け落ちよ、駆け落ち!」


 フレアが無邪気に提案してくる。


「それこそすぐにバレる。行き先がアティックだってことは明らかなんだ。ユニコーンは別にあしが速いわけじゃない。普通の馬で追いかけられて試験を受ける前に捕まるだけだ」


「たしかに。じゃあ、やっぱりノイクの言う通り、大会を開くのがいいわね。ユニコーンの持ち出しも、ルウリィがアティックに行くのも、優勝者であるあたしたちの指示なんだから。ルウリィのお父さんだって、主催者なんだから、あたしたちが勝った後に『やっぱナシ!』とは言えないでしょ」


「はい、それも、そうなんですけど……」


「もう、ずっと煮え切らないわね。勇気がでないの?」


「いえ、そうではなくて……あの、単純に疑問なんですけど」


 ルウリィが胸元で挙手しながら首をかしげる。





「どうしてお二人ともフレアさんが優勝する前提でお話をしてるんですか?」


「「えっ?」」


「えっ」





 俺とフレアの声が重なり、ルウリィがそれに続く。


「あー……」


 たしかに言われてみればその通りだ。


 ルウリィからすれば、フレアが勝てる確証なんてない。


 しかし……。


「安心しろ。フレアは勝つよ。必ず」


 重ね重ね、自分が優勝するとは言えないのがなんとも情けないが。


「ええ、ノイク以外にはね!」


「ふふ……そうですか」


 あまりの自信が面白かったらしく、ルウリィの頬がほころぶ。


「じゃあ戻りましょうか、ユニコーンさん」


 ルウリィがそう言うと、ユニコーンはうなずくように首を曲げた。


「それじゃあ、フレアさん、よろしくお願いしますね」


「ええ! もちろん! でも、どうしてルウリィは大会にでないの?」


「え?」


 俺は「あのな」と口を挟む。


「話聞いてたか……? 大会に出て勝てないとルウリィの親父さんがまた無理だって言ってくるだろ……?」


「でも、大会に出ないと、『本気で挑んでもない』って思われるんじゃない? だって、今回優勝して賞品をルウリィが受け取ってもいいわけでしょ? むしろそれならお父さんも文句ないんじゃない?」


「うっ……」


 こいつはたまに正論を言うよな……。


「だとすると、フレアは出ない方がいいんじゃないか……?」


「いやよ、あたしは出るんだから」


「あのな……」


 聞き分けの悪いフレアに呆れていると、


「……そうですね。わたしも大会に出ます」


 とルウリィに遮られる。


「フレアさんのおっしゃる通りです。父にも町の人たちにも、意志を示さないと」


 フレアが「ほらね!」と俺の背中を叩く。痛いが。


「それに、ノイクさんを見て分かりました」


「俺を?」


「特例受験なんてものは、挑み抜いて戦い抜いて頑張り抜いて……それでも届かない人にだけ許されるべきだと思うんです」


「別にそんなことは——」


「——そう、わたしが思うんです。ここで戦わないと、わたしが、わたしを許せない」


「……そっか」


 一見弱気に見える彼女の、それでも目に灯る強い炎を見たら、俺に頷く以外の選択肢はなかった。




 ユニコーンを連れて戻ると、商工会の人々に大変感謝された。


 当然、ルウリィが故意に逃したなんてことは言わず、ユニコーンの習性上洞穴(ほらあな)が好きだから洞穴ほらあなをしらみつぶしに探したとかテキトーなことを言って誤魔化した。





 ——そして1時間後。


 予定外に予定通り、魔法演武大会は始まる。


 演武場に上がった武器屋の店主が、拡声魔法で対戦カードを発表した。


『第一回戦! 宿屋の看板娘・ルウリィ vs アティックで二番目に強い?魔術師フレア・アークライト!』


「一回戦で当たるとはな……」


 トーナメント表はエントリー順に埋まっていったため、最後にエントリーした2名が戦うことになったのだ。あ、フレアの肩書きは自分で申請していたものです。


 ちなみに、俺はもちろん不参加だ。


 理由は簡単で、フレアと決勝より前に当たってしまった場合、俺は無駄にフレアに勝ってしまい、その次にあたった別の参加者に敗けてしまうからだ。ユニコーンを連れ帰った意味がなくなってしまう。


「よろしくね、ルウリィ!」


「よ、よろしくお願いします、フレアさん……!」


 胸を張るフレアと、お辞儀をするルウリィ。その手には、大杖(ロッド)が握られている。


『それでは、いざ、開始!』


 開戦のゴングが鳴ると同時、


「早速だけどごめんね。あたし、手加減は出来ないの!」


 フレアはいつも通り、全力で魔法の砲弾を撃つ!


「なんだありゃ……!?」「あんなの見たことないぞ!?」「あんなに魔力使って二回戦以降どうするつもりなんだ!?」


 町民たちが口々に驚嘆きょうたんの声をあげる。


「勝負あったな……」


 ——が、しかし。


「え……?」


 砂埃すなぼこりが去った後。



「なんでだ……!?」





 そこには、無傷で立つルウリィの姿があった。


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