第三話
編入して数日が経った。
学院での一般授業はそう変わりない。上流階級の通う学校であるものの、職業訓練校のような側面を持つため、授業スピードまで上げる余裕がなければ、ここにいる人間のほとんどの進路は決定しているからだろう。
剣蔵や宮本は従士科、伶花や刀臣は奉神科と別れているが、(表向きは)生徒を平等に扱うという理念の元、同じ教室で学んでいる。
従士科は近接戦闘訓練のほか、将来仕える巫女主人のために、給仕も学ぶのだ。……学ぶのだ。
一通りの身の回りの世話と、巫女の仕事に集中できるような雑事をこなすことになる。従士は巫女の顔の一つとも言えるので、学院生活を共にする中で、巫女は誰を従士とするべくか決めるのだ。
剣蔵ならば、卒業後の内定は伶花に仕えるのでは?
――否である。そもそも卒業後なんて考えていない。メンタルが侍ではなく、人切エンジョイ勢である剣蔵は、仕えるべき主君などどうでもよく、ただ己の欲望のままに剣を振るいたい――その一心で今日まで生きてきた。
また、他にも事情はあるのだが、これは剣蔵自身の答えだ。
俺は鏡の前でパクパクと口を動かした。
「進路がどうでもいいなら、伶花の嬢ちゃんの元で働いてもいいだろうが」
(NO! NO! NO! NO! NO!)
「そんなに嫌か。でもよぉ、もし生き残ったときに、就職難は困るぜ。それは勝つ気がないと言ってるのと同じ。そうだろ?」
(NO! NO! NO! NO! NO!)
「分かった、折衷案だ。伶花の嬢ちゃん以外の元で内定を貰うのはどうだよ」
(YES! YES! YES! YES! YES!)
「へっ、しょうがねえ相棒だぜ……」
「えぇ……どういうこと……恐い……」
宮本にも前世はあるんだが、剣蔵と違って喋らないタイプだもんな。
自己認識が一致しているのは、別の時代の前世だと割り切れるからか? 現代人の前世って情報過多の時代にはウザそうだしな。
剣蔵は決して口が達者なほうではない。というより、手を動かすことに意識を集中する節があるからか、戦闘スピードが上がるほどに宗右衛門の言語意識が浮かび上がってくるからか、気付けばスタンドのような関係になってしまった。
「常より自分を見つめなおすことを心掛けているんだ」
「それ、何かの役に立つのか?」
「ああ、意識を分割できるのであれば、異なる剣術理論を受け入れられる土台にもなる」
「お前ほどの実力者が言うのなら……そうなんだろうが……」
首を傾げる宮本とはすっかり行動を共にするようになった。
剣蔵としては是非もない。実力は折り紙付きのライバルであり、授業の中で簡単に打ち合えば、もはや疑う余地もない。
油断すれば竹刀であろうともその命を刈り取らんと、狙いが急所に向かいそうになるほどだ。そしてそれを察知してくれる存在と剣で語り合う時間は、望んでも得難い経験だった。
ゲーム的に言えば、誰でも到達できる能力値であろうとも、ゲームのプレイヤーのように効率よく育成することがそもそも難しいのだろう。
宮本は流石主人公というべきか、その辺りのセンスが備わっている。もっとメタ的に才能を評価するなら、スキルが揃ってない序盤で特殊能力を持っているのがズルいのだが。
ステータスを育成し始めだからこそ、無駄なく育てられてるかが反映しているのだろう。
まずは訓練兵課程を習熟して、習熟度ボーナスを得られるところから始めるのが定石なのだ。
(……しかし宮本よ、テキストの行間だと解釈してたけど、こんなに俺とお前って仲良かったっけ?)




