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SideB テンプレ嫌いの組織ども09

「もうっ! 本当にあの二人は!」


 俺の横でプンプンという擬音が見えそうなほどに頬を膨らませ怒る幼女。あ、訂正、聖女様。まあいきなり家を追い出されたらそりゃ怒るのも無理はない。


「いい加減機嫌を直せよ。ほら、缶コーヒーぐらいなら恵んでやるから」

「だからあの苦い飲み物は嫌いなんですってば。あ、牛乳! 牛乳がいいです私」

「はいはい、そいじゃあ好きなの選んで来い」


 機嫌を直したアリスがチルド棚に向かうのを見て思わずため息が漏れる。


「あれ? 先輩?」

「ん? ああ山崎か。珍しいな朝の時間帯にいるのは」


 商品の陳列にいそしんでいた店員が手を止めてこちらを見ていたが、山崎だったか。こいつがこの時間までいるのは珍しいな。いつも準夜勤か夜勤のシフトにしかいないはずだが。


「ははっ、夜勤からそのまま連勤っすよ。まあ、自分ももう大学四年で暇っすから。い、色々なことに挑戦したいっすから、朝勤の仕事も覚えようかな~と? それより、先輩は何でここに? 今日シフト入ってましたっけ?」

「いや、ただ朝飯を買いにきただけだ。まあせっかくだし自分のところの店で売り上げ貢献しようとでも思ってな」

「そうなんすか? あ、じゃあ自分に飲み物奢ってくれると売り上げもっと増やせるっすよ?」

「おまえなぁ……」


 相変わらずゆるいつらのわりにちゃっかりしている。へらへらと頭をかいてるが、まあなんか憎めないんだよなこいつは。シフトも結構一緒に入ってるし、なんだかんだこのバイト先の店で一番絡んでるか。


「あ、十字さん。私これいいですか? って、あれ? お知り合いの方ですか?」


 意気揚々とパックの牛乳を手に戻ってきた有栖。あれ、そういえばこいつこの店が俺のバイト先だって知らなかったな。


「ああ、こいつは山崎。俺のバイトの後輩だ。適当な奴だし適当に相手しとけばいいぞ」

「ひどくないっすかその紹介? ま、まあ、山崎、山崎敬やまざきけいっす。んでそちらの……お嬢さんは?」

「あー、こちらのお嬢さんは真樹有栖まきありす。一応俺と同い年らしいぞ?」

「なんで紹介者が疑問形なんですか。私はちゃんとあなたと同じ24歳です」

「え!? 先輩と同じって……ええ!?」

「……なにか?」

「え、あ、な、なんもないっす!」


 わかるぞ山崎……誰しもが通る道だ。んで毎度俺の考えがリアルタイムでわかるご様子の有栖さん? 睨むなら俺じゃなくてあっちだろあっち。


「まあ、そんなわけであんま仕事の邪魔したら悪いしさっさといくわ。あんまさぼって他のシフトの子に怒られるなよ」

「ういっす! 真面目さが売りっすからね自分!」


 どの口が……と言いたいがここは口をへの字にするだけで勘弁してやろう。あんま長居して有栖との関係をつっこまれたらめんどそうだしな!


「さて、朝飯は何にするかな」

「……私は菓子パンにします」

「いいのか? カレーパンとかちょい辛のホットドッグとかもあるぞ?」

「もうっ! しばらく辛いのはこりごりです」


 有栖は昨晩の悲劇を思い出したのかぶるっと体を震わせ、目の前にあった菓子パンを物色する。俺はどうするかな……まあコスパ重視のいつもの4個入りミニアンパンでいいか。


「むぅ……アンパンも捨てがたいですね。でもこの世界のピーナッツバターっていうのも前食べたらおいしかったですし……ああでもアンパンも……」

「迷いすぎだろお前。迷ったら両方買えばいいんじゃないのか?」

「あ、朝からそんなに食べられませんよ」

「ったく、だったらピーナッツバターのほうを買っとけ。アンパン少し分けてやるよ」

「え? いいんですか? やったー!」


 かごに入ったアンパンとピーナッツバターのミニパン、んで缶コーヒーに牛乳。まあしょうがないしこんぐらいまとめて俺が出してやるとするか。


 レジにかごを置き、財布を取り出す。レジの向かいに立つ女性は……ああ、七辻ななつじか。朝の時間帯でよく見かける子だが、彼女も俺に気づいていたのか、小さく会釈し営業的ではない方のスマイルを浮かべている。


「三階さん、どうしたんですか今日は?」

「ああ、朝飯を買いにな。そっちこそ今日は相方は山崎か。あいつすぐさぼるから気をつけろよ」

「えっ、そうなんですか? 朝勤でご一緒するようになったのは最近ですけど、山崎さんはまじめな方ですよ。すごく優しいですし」

「ほほう……」


 俺はちらりと後ろで商品陳列中の山崎を見る。なるほど、俺の前では見せない実に有能な仕事ぶり……そういうことか。


「まあ、あいつのほうが歳は上だけど朝勤だと七辻のほうが先輩だし、しっかり指導してやってくれ。というか俺が許す、こき使っとけ」

「あはは、なんですそれ? それじゃあ山崎さんがかわいそうですよ」

「気にするな気にするな。はいこれ、会計の千円な」

「あ、はい。お釣りはっと……」

「ああ、その金でバイト明けに飲み物でも買ってくれ。七辻の分とあそこのお調子者君の分な」

「え、そ、そんな悪いですよ。いつもお世話になってますし」


 七辻は慌てて遠慮する素振りを見せたが、まあ山崎に幸あれってことでついでに受け取っといてほしい。にかっと微笑んだのち、俺は商品を手にそそくさと店を出る。レジ袋もいらないし二人いればこんぐらい手で持って……ん?


 横にいる有栖は俺から商品を受け取るが、そのまま手にした商品へと視線を落とす。なんだか不機嫌……そう?


「十字さんのバイト先ってあのコンビニってお店だったんですね」

「ああ、これでも結構こう真面目なんだぞ? 仕事ぶりは」

「後輩の方たちとすごく仲が良さそうでしたね」

「おう、後輩が育ってくれれば俺が楽できるし。まあ仲悪いよりはいいだろ?」

「そう……ですね。あ、パンのお金、待って下さいねいま……」

「ああ、いいっていいって。あいつらにも飲み物おごったんだ。そんぐらい出す金には困ってないぞ」


 有栖は開いた鞄の中に手を入れていたが、しばらく迷ったのち俺からの好意を受け取ったようだ。なんか少し表情が暗いが、また何かやらかしただろうか俺?


「十字さんは元の世界でもいろんな方々から好感を持たれてたんですよ」

「お、そうなのか? さすが俺」

「本当に……門番重兵ガドナーの皆さんだけじゃなく他の組織の方、いえ、市民の皆さんからもすごい人気でした。共会荘の……いえ、他国の境界を分かつものアナザーディメンションの皆さんだって十字さんのこと信頼してましたし」

「ふ、モテる男はつらいって奴だな」

「……本当にそうですね」


 あれ? いっそう有栖のテンションが下降中? うーん、わからん。調子に乗ってあれだがこの世界での俺は少なくともモテてはないぞ。人間関係はあのバイト先の連中ぐらいしかまともにないが、まあそれでも良好な気はするがな。


「まあ、この世界じゃあ俺の記憶は曖昧だし、あの店の連中ぐらいしかまともにつきあいはない。共会荘の連中との付き合いのほうがまあ長いんだろうよ。それに……」


 俺は横を歩く有栖を見て思わず笑みがこぼれる。それを見てアリスは不思議そうに首をかしげる。


「元の世界での俺は知らんが、こっちに来てからはなんだかんだお前との付き合いが一番長そうだしな」

「え?」

「だってお前、俺がこの世界に来たって日から何回俺んちに来たよ? 絶対お前が一番だろ」

「そ、それは……ふふっ、そういえばそうでしたね」

「まあ、俺んちへの不法侵入ランキングでもダントツ一位だけどな」

「もうっ! そこはいい雰囲気で終わってくださいよ」

「ふはは、お前も付き合い長いからわかるだろう、俺という人間が」

「……そうですね。もう少し女性の扱い方を学ばれたほうがよろしいかと」

「おい待て意外とダメージでかいからやめろその返しは」


 有栖はどこか俺の反応に嘲笑じみた表情を浮かべている。女性の扱い方とやらの前に幼女のご機嫌の取り方を絶賛募集中だが……あ、やばい。せっかく買ってやったパンを握りつぶしそうだぞこいつ。


 朝っぱらからまあほんと本日も賑やかで忙しない始まりだと思う。だがなんでだろうな、こうして並んで歩くのも悪い気分ではない。案外元の世界、元の俺も有栖とこうして冗談を言い合える仲だったのかもしれないな。


* * * * * *


 共会荘の食堂で買ってきたパンをつまみつつ目の前のリス……のようにパンを口に運ぶ聖女様を観察。いや、甘いものが好きなんだろうけど、食べ方が小動物っぽすぎてなんだか和む。


「やっぱりこのピーナッツバターっての、美味しいですね」

「俺が作ったわけじゃないが、まあ気に入ってくれたなら何よりだ。ほら、アンパンも一個やるぞ」

「あ、よかったら私のも一個どうぞ。交換ですよ交換」


 有栖がパンの入ったトレーを向けてくるのでせっかくだし一つもらう。有栖は俺からもらったアンパンもまた小さな口で食べ始める。うん、どう見てもリスっぽいなやっぱ。


「なあ、そういえばトライドについてはいつものお前が言う攻略本には何が書いてあるんだ?」

「はむぅ? ほふへふへぇ」

「あ、すまん、食べ終わってからで結構です」

「ふぁ~い」


 しばし待機。ダメ絶対、口にものを含みながらのおしゃべり。有栖に言うとなんか子供のしつけみたいな気分になるから言わんけども。


「ふう、やっぱり甘いものは人族ヒューマンレイスの至高の宝ですね」

「大げさだななんか」

「そうです? でもセブンスフォードだと甘いものの完成度はセントガルド王国のがやっぱり最高でしたよ?」

「そうなのか?」

「そうですよっ! 私も各地を巡礼した際はその街の美味しいお店はチェックしてましたからねっ! ふっふっふー、甘いもののお店なら一日語れますよ?」

「その1440分の1ぐらいの長さでトライドについて語って下さい。てか俺この後夜1時からそのまま朝6時までバイトだからな? 夕方には仮眠とるからな?」


 ダメ絶対、本筋からの脱線。ましてやその末路が一日甘いもの講座とか地獄だろ。


「まあ、そういう事情なら甘いものの話はまた今度ですね。ええっと、手記はっと……」


 有栖は鞄からいつもの初期を取り出しパラパラとページをめくる。相変わらず白紙にしか見えないが、まあ頼りにさせてもらおう。


「今回の希源種オリジンワン、"大地に刺さる三剣"の異名を持つトライドについての情報ですが、すでにご存じの通り奴は三種の姿と武器を切り替える能力を持っています」

「ああ、あれにはビビったな。武器を地面にさすたびになんか姿が変わってたな」

「はい、あれが奴の変身時の決まった所作です。そして三つ足の姿になるとすぐに足を上げ、その上げた足によって異なる姿へと変化するようです」

「まあ、そこまでは嫌というほどに見てきたな。あと、あいつもしかして不死身か何かなのか? 俺の"ハウリング"を至近距離でくらってもピンピンしてたし、印野さんや響が剣で刺してもダメージがあるようには見えなかったし」


 俺の推察に何だか有栖の表情が曇る。もしかして俺の予感……当たってるとか?


「元の世界でも同じことをあなたに言われました」

「え?」

「私も実はトライドとは元の世界で一度会っています。あの時もあなたには迷惑をおかけしてしまい……」

「あー、心配するな。そっちは悪いが覚えていないんだ。それよりも、もしかして俺も元の世界ではあいつと一戦交えてるのか?」

「ええ、一戦交えたどころかトライドの討伐隊に抜擢されてましたね」

「まじか。くそう、そん時の記憶があれば奴の攻略法が……」

「いいえ、当時のあなたも奴は不死身のようだと言っていました。斬っても殴っても焼いてもダメージが入っていなかったって」

「え、何その序盤に出たらいけないタイプの能力。てか、じゃあ倒す方法はないっていうのか?」


 俺の絶望した声に有栖は難しい表情だ。え? 本当に不死身なのあいつ?


「結論だけ言うと奴は死にました。ただその倒し方が今でもわかっていません」

「はい? だったら誰が倒したっていうんだよ」

「それが……"シーアさんのはず"なんですが当時彼女は自分じゃないと言って報告もなく」


 うーん、なんかややこしいことになってるな。まあ、とりあえず気になる点は確認だけはしとくか。


「"シーアさんのはず"っていうのはどういうことだ? あいつが何か知っているのか?」

「え、あれ? あ、そうか"クロス"さんには内緒で……やっぱ今の会話なしで」

「はい?」


 明らかに何かを隠してるご様子の聖女様。というか半分答え出てたぞ。俺に内緒でなんかあの女と企んでたのだろうか?


「あ、有栖~、ちょっと志亜と買い物行ってくるね~」


 食堂の外を並んで歩く二人の女性。そのうち陽気が衣を着て歩くかのような満面の笑みの女性、エメル、こと、絵芽が手を振ってくる。まあ、その着てる衣が相変わらずサイズが合ってないようで目にポーション……じゃなくて毒だわ、うん。


「あ、絵芽さん……それに志亜さん!」

「おはよう有栖。ちょっと絵芽の服を買いに行ってくるわ。今日もご飯の準備はできないからよろしくね」


 すげぇなあの女、聖女様を路頭に迷わせた翌朝だってのに何事もなかったかのようなスマイル。鋼のメンタルじゃなかろうか。


「い、いってらっしゃい……の前に! いうことがあるでしょう!」

「ん? ああ、昨晩はお楽しみでしたね? 引き続き今晩もよろしくね」

「ち、違います! そうじゃなくって……」


 俺は気づいたら有栖の肩をポンとたたいていた。振り向く真っ赤な顔の有栖に俺は首を横に振る。


「あきらめろ。たぶん何言っても無駄だぞ。というかあいつたぶん自分がした事の善悪わかってないぞ」

「そ、そんなこと……ありますね」


 有栖のげんなりとした様子に俺は無言で残っていたアンパン入りのトレーを有栖の前に差し出す。たくましく生きるんだぞ……今晩も。


「あはは、ごめんね有栖。たぶん明日の朝にはまた"戻ってる"と思うから……それまで志亜といさせてくれるかな」


 絵芽の笑顔がどこかもの悲しいものに変わったが、それ以上にその横に立つ志亜さんの表情のほうが悲壮感に満ちている。あー……あんな顔を見せられたら……。


「うぅ、そんな表情でそんなこと言われたら首を横に振れる人なんていませんよ。まあ、仲がいいのはいいんですけどせめて事前に相談ぐらいはしてくださいね」

「……ごめんなさい、有栖」

「あ、頭を上げてください志亜さん。もう怒ってませんから」


 なんだろう、ぺこりと頭を下げた志亜さんがやけに子供っぽく見えた。そういえば言葉遣いも素の時と"管理人さんモード"のときとでだいぶ違うし、案外有栖が言ってた三人の中でも一番年下ってのもなんかわかる気がする。


「あはは、まあこの埋め合わせは必ずするからさ。今は志亜とお買い物デートを楽しんでくるよ。じゃないと、志亜の服じゃ私が戻った時にちょうどいい服がなくってさぁ」

「え、絵芽が大きすぎるのよっ!」

「ふっふっふ、そこは志亜と有栖のお姉さんだから。譲れない戦いと箇所がそこにある!」


 いや、どや顔with決めポーズで言われてもなぁ。ほら、妹役二名が呆れてるぞ。


「いってらっしゃい、志亜さん。なんだか絵芽さんが過去一番のはしゃぎようだから問題を起こさないよう気をつけてあげて下さいね」

「うん、過去一番はしゃいで絶対問題を起こしそうだからしっかり監視しとく」

「あれ? 私以外の二人の心がなんか一つに? 私も仲間に? 入れて?」


 志亜さんががっしりと絵芽の腕に自身の腕を絡ませ、拘束する。うん、あれ以前に有栖にくらったやつだが絶対相手を逃さないという奴。まあ……それでもその絡ませた先の手が互いに握り合ってるのを見るとやはりそっちの意味もあるのかな。


「ああそうそう、十字さん?」

「ん? あ、俺? な、なんだ」


 蚊帳の外にされてたのと唐突な"管理人さんモード"での呼びかけに戸惑ってしまう。


「盾の紋章はもうあなたに差し上げますし、返さなくても結構ですが……時計のほうは終わったら返して下さいね? 無傷で」

「盾? 時計? なんのことです? 十字さん」

「ああ、今朝この二人のところにクレームに行ったら絵芽がなんかくれた」


 俺はもらってそのままポケットにしまっていた時計と紋章を取り出し有栖に見せる。


「ああっ! これクロスさんが失くしたっていってた門番重兵ガドナーの紋章じゃ!?」

「失くしものが見つかってよかったね、有栖」

「いやいやいやいや、これシーアさん……じゃなかった、志亜さんが持ってたんですか!? もうっ! どうしてすぐに返してあげなかったんですか。失くしたと思ってクロスさんも困ってたじゃないですか」

「ごめんなさい……返そうとは思ったんだけど、あの困っている表情を見たらどうしても面白そうだからと渡す気にならなくって。そのまま返すの忘れちゃって」

「お前やっぱ一度俺に、いや、俺の前の俺に謝れよ……」

「あ、ごめん、無理」


 俺と有栖のそれはそれはなが~いため息が漏れたのは互いに容易に想像できた。あと、素と管理人さんモードを細かく切り替えるのもやめて欲しい。どう扱っていいかわかりづらい。


「紋章は元から俺のだったしとりあえずもらっとくとして、時計のほうはそんな大切なものなら返しとくぞ?」

「あれ? この後"トゥーレ"を倒しに行くんでしょう? だったらこの世界じゃそれとあなたの紋章、あとは有栖の十字架がないと無理なんじゃない?」

「はい?」

「あとはあいつの"本体"探しだけど。どこか山の中にでもあるんじゃないかな。あいつの好みそうな場所は」

「す、ストップです! 志亜さん!」

「ん? なに?」

「えーっと、たしかあのときトライドの倒し方はわからないっていってましたよね?」

「え、あれ? あ、そうか巡回騎兵クルーラー門番重兵ガドナーには内緒で……やっぱ今の会話なしで」


 わかるか有栖。あれが何かを隠そうとしてすでに半分失敗した奴のしぐさと表情だ。そしてさっきお前が俺にしたやつだぞ? だがお前と違うのはその後絵芽を抱きかかえ、全力ダッシュで駆け出したことだがな。


「あはは~、じゃあいってくるね~有栖~、十字く~ん」


 遠ざかっていく二人の背を眺め、俺と有栖はあっけにとられ椅子に座ったまましばらく固まっていた。なるほど、あれが元の世界で化け物と戦ってた者のこちらでの日常というやつなのか……。ほんともう少し殺る気じゃなくてやる気を出してほしい。

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