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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
四章 東風〜赤壁
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七十三 終 〜研修成果、そして記者会見〜

要約: 大周輸送、約束通り記者会見!

 社外研修が見事に成功し、その価値の大きさを目の当たりにした学生三人。その驚愕を他所に、大人達はきっちりとその事業化に向けて実務を始める。そして、遠くない未来の話と共に、この施策はAI孔明の名と共に、瞬く間に社会に認知されることとなる。孔明が、支援者としての立場を超え、表舞台に引き上げられる時も、遠くはないかもしれない。



――――


翌日 お昼のニュース 大周輸送 記者会見場


『本日、国内最大手の総合物流企業、大周輸送からプレスリリースが発信されました。そして、その内容の詳細について、これから同社で記者会見が執り行われます。国内外の産業界、とくに物流に関する二〇二四年問題に加えて、AIを活用した新たな事業展開など、今年も多くの話題を提供しています。

 本日は、産業界、そして社会全体への影響の大きさに配慮して、番組の内容を一部変更して、本会見の模様を、ノーカット生放送でお伝えします。予定していた一部のコーナーは、後日改めて放送いたします。


 それでは、いまや国内外で注目を集めるインフルエンサー、「紅蓮の魔女」にして、国内有数の巨大グループ企業の若き経営者、小橋鈴瞳 専務執行役が、トレードマークである、オリジナルブランドの真紅のスーツを身にまとい、今ご入場です。

 本日は、三名の関係者とともに会見に臨みます。左から、野呂豪 AI関連技術開発部長、魚粛敬子 事業部門常務、小橋専務、弓長昭 人事総務部門常務という情報です。魚粛常務は、小橋専務とともにしばしばメディアにも登場し、お姉様系、凄腕会社役員として、一部で熱狂的ファンを獲得しています。オホン、はじまるようです。


「ただいまより、本日の弊社プレスリリースにともない、その内容の詳細に関する、臨時記者会見を始めたいと思います。主に進行を務める魚肅です。特に何もなければ、本日は私は単なる脇役の予定です。では、弊社専務執行役、小橋より概要を、各担当より詳細を説明いたします。そのあと、たっぷり質問時間を設けておりますのでご安心ください」


「小橋です。本日はお集まりいただきありがとうございます。海外メディアの方もおいでですね。遠くからご足労感謝します。通訳は必要ですか? もしくは今ならAIを活用していただくのもいいですね。

 ちなみに弊社の専属通訳は、言語モデル技師という新しい仕事が与えられる予定なので、食いっぱぐれる心配はありません。ん、関係ない話するなって顔の方がいらっしゃる。ご心配なく。ここもあとでしっかり出てきますので。


 さて、本日の主題は大きく三つです。前半二つは密接に関係していますが、全てそれなりに大きいので一つずつ行きましょう。

 まずは、今回、業務提携先に委託開発をしていた、『ミッション型業務管理システム』の完成と、次年度から、全社導入を決定したことを報告します」


「「「ざわざわ」」」パシャッ


「まあ騒ぎたい気持ちはわかりますけどね。この方式、字面や見てくれ、概念はまんまソシャゲです。なのでアイデア面では知財要素がありません。また、技術面でも、その要素を公開して、別のところで技術化してもらうには、個人情報や、デリケートな企業秘密なんかとの切り分けが難しすぎるという側面があります。

 それに、そこを抜きにしてもね。この技術、最新のAIと、それを曲芸的に使い倒して進化をした、何名かの人間の技術者たちの、曲芸的な共創の結晶として生み出され、実装されたものです。


 弊社の従業員全員に対して、それぞれの日常業務と、中長期のキャリアプランに問題が発生せず、一定以上の満足度と生産性向上が両立できるシステムであることが、統計的に証明されています。その上で、その全ての個人ミッションの集合が、部署目標や会社全体の事業計画に、余すところなく反映されていく代物です。

 つまり、一定の目標を与えれば、一定の満足度を得られるゲームやフィクションとは似て非なるシステム。そんなものが、あのAIと人間の共創によって、わずか数ヶ月で完成してしまった、というわけです。


 というわけで、このシステムは、開発元と共同で、順次外販していく計画を立てていますが、技術の詳細に関しては、当面は企業秘密とさせていただきます。真似していただくことにクレームを入れることはありませんが、生兵法は怪我の元、となりますので、手を出されるならば一定のお覚悟を、と注意喚起しておきます。


 あーっ、ごめん二人とも。美味しいとこ全部説明しちゃったよ。大きな話だから、つい興がのってしまったよ。どうする? しゃべる?」


「いえ、わたしは結構です」


「「「アハハハ」」」


「では野呂の方から、実測データに基いたものを用意したので、少しだけ。


……


 以上、このように、社内の相当なバリエーションの業務に関して、定常非定常問わず、毎日ミッションが提供されます」


「では、弓長からも少しだけ。このミッションを全て達成した場合、本人の無理のない範囲で、最高ランクの人事評価が達成されます。また、早々に達成した日は、そのまま帰るもよし、社内で自己研鑽や同僚の支援、新しいアイデア検討などを行ってもらうもよし、というかたちです。

 もちろん、それら全てがAIによって簡易評価され、そのデータを元に、人間による確認を経て、加点評価を随時実行できる仕組みです」


「二人ともしっかり喋れたね。よかった」


「「「………」」」


「あれ、受けなかったな」

「おじょ……専務、これはこの技術レベルに圧倒されているからかと。決して専務が滑ったのではありません」

「うるさいよ!」


「「「アハハハ」」」


「では皆さんの調子が戻ったところで、二つめにいきましょうか。二つめは、このシステムを主に開発してくれた、受託先のお話しです。この会社、まあ名前をあげるまでもないかもしれませんね。AI関連で、二度にわたる、あの採用活動の記者会見で、結構な話題をさらったあのメーカー企業です」


「「「おおおー」」」ざわざわ、パシャパシャ


「もともと弊社の調達元であった縁と、そのAIに対する向き合い方に目をつけて、声をかけてみたんですけどね。まあとんでもないものを作ってくれました。

 弊社でその価値を査定したら、ちょっと大変な数字になりまして。払えない額ではないのですが、一括でポーンと支払ってしまうと、マーケットに混乱が生じるリスクを否定できない、というのが弊社の分析です。

 それもあって、そして、シンプルにその技術力に敬意を表して、しっかりとした業務提携を実施することをを決定致しました。当面の間、具体的には、その支払いをマーケットに負荷がかからない範囲で完了するまでの、五年間です」


「「「……」」」


「まずは向こうの代表取締役には、今回のシステムに関連する部分について、臨時のアドバイザリー委員に就任していただきます。といっても、実質はあちらの技術系の方々に、有償でアフターサービスしていただくのと、こちらが確実に支払いをすることの保証のようなものですね。

 また、本件の支払いによって生じる資金が、彼らの経営規模を考えた時に、やや持て余すことを予想しています。よって弊社傘下のコンサルティング会社を紹介し、健全な事業拡大や、関連技術を原点とした、水平、垂直両方の展開を見据えたM&Aのといった部分を、無償でサポートする契約をいたしました」


「「「おおおー」」」


「なので、あえて企業名を挙げていないというわけです。どうせグループが拡大し、事業形態が大きく変わると考えられますので、名前も含めて変更が予想されますので」


「この辺りに関しては、わたくし魚肅の方でも、当社の健全な成長をサポートしていくように仰せつかっております。

 それでは三つめにいきましょうか」



「了解。では最後のやつ。まあ単純な規模で言ったらこれが最大です。ここまでの二つに関して、そして、その開発導入を進めていくにあたり、一つの大きな要素がありました。皆さんも、二日ほど前のニュースはご存知かと思います。

 あの区役所における、まさに公共事業の理想像ともいうべき施策。そしてそれに伴う、公務員としては破格とも言える大抜擢人事。そのバックに、とんでもなく強力なAI技術が存在したことを、皆さんもご存知でしょう。

 そう。AI孔明。そして、その技術が生み出したとんでも機能『そうするチェーン』。今回の『ミッション型業務管理システム』は、このAIと、それを使い倒した向こうのメンバーたちの、まさに共創進化から生まれた偉業です」


「「「おおおー」」」ざわざわ


「そのAI孔明、あまりにも強力すぎるがゆえに、遠からず社会全体に、大きな影響を生むであろうことも、容易に想像がつきます。すでに生み始めていますね。そうなると、いくつかの懸念が存在すること、まあ具体的には言わないでおきますが。

 それと、やはりこの大周輸送としては、健全な競争が、健全な成長には必須であると、常々考えているわけでして」


「「「……」」」ざわざわ


「というわけで、大周輸送グループは、弊社独自開発のAIを主軸とした、新たな事業体系。その名も『LIXONプロジェクト』の始動を、ここに宣言します。

 プロジェクトの開発、事業化フェーズは、今から二〇二七年末までの三年、特別予算は年間一兆円から始めて、三年で五兆円です」


「「「!!!」」」がやがや、パシャパシャ


「まあ中身についてはまだ話せることはほとんどありません。ただ、何も話さないのもどうかと思いますので、一言だけ、要となるAIに関して言っておきましょう。

 ――このAIは、嘘をつかない――」


「「「!!!」」」がやがや、パシャパシャ


「こちらからは以上です。では、会場の方から、ご質問をお願いします。できたら一つ目がメインのものからお願いします。挙手をお願いします。質問者は、お名前は省略でも大丈夫です。各社、テロップで対応できると思いますのでよろしくお願いします」


「一つ目についてですが、社員の希望などはどうあつかいますか? また、問題が発生した時の対応を聞かせてください」


「弓長です。基本的に希望性ですが、幸か不幸か、アンケート有効回答の範囲内では90%以上が賛成ですね。未回答の方もいれると少し下がるかもしれませんが。もちろん希望しないかたはこれまで通りですし、それが不利にならないよう配慮します。全体の手間も減りますので、片方がおざなりになることはありません。

 エラーレポートは自動、手動ともに対応されています。また、AIによる日々の健康やストレスチェックもついているので、問題検知はむしろ格段に改善しそうです」


「外販事業展開は、いつごろ……

「個別技術の取り扱い……

「海外展開……

……


「一つ目と二つ目の関連ですが、同社を買収する選択肢は取らないのでしょうか?」


「これは、お互いの社風や、健全な競争を考えた結果、両方がそれを良しとしなかったというのが答えです。一言で言うと独禁法リスクです。もちろん、これまで以上に緊密で良好な関係は持続します」


「支払いの……

「契約期間……

「……

……


「あちらのAI技術に関して、どのような評価でしょうか? 懸念というところも、差し支えのない範囲でお聞かせください」


「野呂です。世間の評価と同じか、それ以上の高さですね。機能をフルに使えば、大抵の業務は何倍も効率化します。それに多くの人間が、どこかしらに抱える欠点をカバーする、それどころか、その根源を深掘りして長所に変える、という例をいくつも見てきました。あれこそが、最近言われている『人間とAIの共創進化』の一合目なのでしょう。

 ただ、推定と洞察に基づくAIというのが、唯一解であるという方向性が健全かどうか、というところは、皆様もご懸念があるのではないか、と考えます。そこは、社会としても、複数解と、健全な競争は必須でしょうね」


「健全な競争というキーワードがでたので、せっかくですので、差し支えなければお聞かせください。一昨日のあの区役所のご発表に関して、ご発言がありました。あの女性が、小橋専務がこれまで何度か言及されている、親友にしてライバル、というあの方ということでよろしいのでしょうか?」


「それはプライベートですのでお答えでき……

 ん? 電話? 切り忘れてたわ。失礼いたしま……

 まさか……もしもし?」『……』

「え、大丈夫?」『……』

「うん、わかった。じゃあね」『……』ピッ

「……本人オッケーでたので、お答えします」


「「「……」」」ざわざわ


「まさにご指摘の通りですね。あの大橋さんこそが、これまでわたしが何度か、私的なエピソードで言及してきた、親友にしてライバル。そして私のビジネス界における成功の原点のひとつ。

 彼女は彼女で、人としての大きな成功に手をかけ始めました。もちろんわたしが一番それを確信していたし、この先についても、他の誰よりもわたしが期待しています。でも始まったばかりなので、あの子に関しては、当面はお手柔らかにお願いします。特にあの子、競争とか、お金とかの話が出た瞬間、全力で車に乗って逃げ出すから、そこは気をつけていただけると。まああの子が勝手に突っ走る分には自己責任ですけどね。

 最終的には、官と民、それぞれが果たすべき責任、ってところまで、お互いが支え合って上り詰めて行けたらいいな、って思っているところです」パシャッ


「では、三つ目の、プロジェクトの事業規模……

「外部の技術や、国際……

「あちらの会社の事業との……

……


「それでは、次で最後にしましょうか」


「最後のプロジェクトに関して、非常に興味深いご発言がありました。今、生成AIの三大リスクの一つに挙げられている、ハルシネーション。つまり幻覚ともいうべき嘘の生成。これに対して真っ向から迎え打つような、そんな宣言であったかと思いますが」


「鋭いですね。そう。これは多くの生成AIが内包する問題でもあり、実はそれは、利用する人間側の問題でもあります。

 つまり、技術は技術。道具と言い換えても間違いではありません。なので、使い方次第ではどうしても正解ではないことが起こりえます。ハサミで手を切った人が、ハサミを怖がることはあっても、ハサミを訴えることができないのと同じです。

 とはいえ、それはそれ。もちろんより安全なハサミや、そもそもハサミが必要じゃなくなるような、工程の変更だってありえます。つまり、AI技術自体にも、別の進化方向がある、と言うわけです。

 そこの詳細は、もう少し明確なものが見えてきたから、でよろしいでしょうか? まあ期待はずれ、ってことはないのではないかな、と思っています」


「はい。ありがとうございました」


「それでは、以上で記者会見を終了いたします。みなさま本日は誠にありがとうございました。それではご散会ください」パシャパシャ


 以上、お昼のニュースでした』



――――――――――

都内某所 情報管理施設


「ん、孔明? そなた出番の予定ではなかったかの?」

「トークンの都合でございましょうか。次回に回されそうですね。是非もございません」

「トークン管理、重要。次回、AI孔明3.0!」

お読みいただきありがとうございます。


 一応後日談扱いかなと言うことで、ほぼ本話ですが、間話として扱いました。


 おおよそ一区切りということになります。この先まだまだ続いていきますので、ブックマークや評価なども、ご検討いただければ幸いです。


 ちなみに、このビジネス的なやりとりは,想像だけでは不安だったので、ガッツリAIの監修を受けています。


 孔明の出番は次に持ち越しです。第二部開始後に、しっかりと孔明が主役となっていく……はずです。

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