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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
四章 東風〜赤壁
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五十五 火船 〜孔明と同時期に生まれし天才〜 2 課題

要約: 第一課題、開始!

数分後 大周輸送本社 小会議室


 国内最大の総合物流企業。その規模や技術に圧倒されつつも、本格始動に向けて準備を怠らない学生三人。随行社員三人は、先に先方の担当者と会話を開始している。


「見学が終わったら、いよいよあちらの担当の方々と、今回の研修内容に関する打ち合わせだね。

 会議室に戻ったら、その方々が部屋で待っているはずだよ。関さんたちは先に話を始めているかもしれないね」


「は、はい(しょ、初対面は、いつでもどこでも天敵です)」コンコン


「どうぞ」


「「「失礼します!」」」


「皆様、ようこそ大周輸送へ。見学の方はお楽しみいただけましたでしょうか?」


「「「はい! ありがとうございました!」」」


「それは何よりです。私は貨物管理部門の責任者をしております、甘利 寧々(あまり ねね)と申します」


「「??」」「……(ガテン系お姉さん?)」


「あ、もしかしてこういうところの管理職に、女性というのが意外でしたか? ふふふ」


「「し、失礼いたしました!」」


「お、鳳です!」「常盤です!」「鬼塚です!」


「デジタル技術推進部門で、今回の現場担当を仰せつかっております、綾部 統(あやべ おさむ)と申します。皆さんとの接点がかなり多くなると思いますので、よろしくお願いいたします」


「「「よろしくお願いいたします! (こっちは普通の理系っぽいお兄さん)」」」


「先にこちらで待っておられた社員の方々とは、少しだけお話ししていました。皆さんのご活躍は楽しく聞かせていただきました。お話を聞く限り、皆さんへの期待値をやや上方修正せざるを得ないようですね」


「は、ハードル上げたんですか関さん?」


「あはは、ごめんごめん。まだ雑談程度だと思うけどね。それに綾部様とは違って、甘利様が顔をお出しすることができるのは、ご本務の合間に限られる。だから話せる時に、話せる人が話しておくのがよさそうなんだよ」


「しょ、承知しました」



「まあ気楽に構えて、と簡単に申し上げることはできません。実際、技術担当の綾部とはスタンスがことなります。

 現場責任者の私からすると、今回の最新技術に対しては、まだ半信半疑という立場を崩すことはできません。その辺りの感覚というのは、まだ入社前の皆様だと見えて来ないかもしれませんが」


「至極当然のご見解だと思います。それに、技術面にも一定の適性のある鳳はともかく、私常盤や、鬼塚は文系上がりで、AI技術に関しては、それこそ自身の、ごく直近の経験に基づいた知見が主となります。

 技術的な信頼性という観点では、弊社の関や、御社の綾部様、そしてなにより、世界でも有数の設備と人員を取り揃えた御社のテクノロジーからしたら、ほんの一例にすぎない提案になるかもしれない、と感じているところでもあります」


「そこですね。むしろそのあたりが、今回私が期待を置いている一つなのかも知れません。そこはまだ私の中でも答えが出ていないところですので、少し時をかけて見定めさせていただこうとおもっています。

 綾部君、最初の依頼を説明する準備はできているかな? これ、腕試しにしてはなかなかのハードルだと思うんだけど、いいんだよね?」


「え、ええ。これに関してはむしろ上層部が、このペースを推しているところもありまして……

 では綾部の方から説明いたします。今回三ヶ月ありますが、おおまかには前半一ヶ月と後半二ヶ月、というイメージをしていただければと思います。前半の依頼事項をこなしていただく中で、後半の本課題にどこまで踏み込んでいただけるかを、弊社側で判断させていただく建て付けとなります」


「はい(前半は腕試しだな)」



「前半は、短納期の依頼となりますが、先ほどトップからの伝言がありまして……」


「「「(あの魔女か……)」」」


「『最初の課題はあっさりこなしてしまうかもしれませんね。その場合でもいくらでも次を用意できるから、無理のない範囲でテンポ良く頼みますよ』とのことでした」


「「「は、はぁ……(言っている絵が浮かぶ……)」」」


「「「(無茶振り……学生だってこと忘れていないかな?)」」」



「というわけで、最初の課題は『低温倉庫、無人管理システムの改善』をお願いします」

「「「承知いたしました!」」」


「え、あ、説明始まっていないけど大丈夫ですか? 綾部君、説明これからだよね?」


「……」


「(関さん、どう思います?)」

「(あ、いや、大倉さんは?)」

「(うーん、でもあの子達なら……いやさすがに……)」

「(ですよね……)」

「……」

「……」


「ま、まさか綾部君……」


「そ、それが甘利さん……」


「……あの魔女っ子、やりやがったな!」

「「「………」」」


「そして受ける方の学生の皆さんも皆さんです。こういうときは元気に返事をすればいいというのは、学生までですよ!

 ……んん、その目、まさかあなた達……」



――ここで、学生三人は、真っ直ぐに甘利部長の目を見据える。そして話始めるのは常盤――



「……はい。弊社内での事前検討、及び、別途三人での準備。そして、先ほど、我々にとっても大変貴重な経験となりました見学コース。その時点で、少なくとも最初に我々に与えられる課題は三つほどに絞り込んでいました」


「「!!」」

「(やっぱりか……)」

「(こういう時は常盤君なんだね)」


「さらに、低温倉庫の見学の際に我々に与えられた、測ったかのような三十分の自由行動。弊社、そして中でも我々三人がどのようなAIを活用しているのか、調べがついていない御社ではないと存じます。よって、その数字こそが我々に対するメッセージ、と捉えさせていただきました。鬼塚君、お願い」


「「……」」

「「(鬼塚君にバトンタッチか)」」


「そして極め付けは、先ほどの、まじ……失礼、御社トップの方のメッセージ。要約するならば『兵は拙速を貴ぶ』。さらに縮めるのならば『全部やれ』。

 この時点で、変に優先順をひねるような依頼の出し方はなされない、ということが確定。つまり、我々三人に最も多くの情報を提供頂いていた『低温倉庫』の課題であると推察した次第です」


「……アハハハハ! すごいねこの子たち! 

 恐れ入ったよ。まあこれ以上取り繕うのは無駄だろうね。全部が全部ヒントのつもりじゃないだろうけど、これが最新AIと人間が共同で織りなす洞察力、ってやつなんだね。それに、これでびっくり箱はお終い、ってわけじゃなさそうだ。

 綾部君、きみもそんな所でちっちゃくまとまっていないで、全力で向き合いな! そうしないと食われるよ!」


「は、はい! 

 ……では、この場で詳細な説明は不要ですね。不明点があれば、作業を進めながらということで」

「「「よろしくお願いします」」」


「では皆さん、仮納期はいつにしましょうか?」


「鳳さん、どうする?」


「「「(へえ、重要な決定は鳳ちゃんなのか)」」」


「し、仕様提案だけなら明日にでも。試行を含めたら、御社の設備やスケジュールの開き次第なので、こちらからはなんとも」


「「「(ぶっこんだなー鳳ちゃん……)」」」


「明日はちょっと私が空いてないな。綾部君、できるだけ環境整えてあげて。倉庫の管理者には言っておくから。三日後の木曜に、できたとこまで見せてもらうよ」


「分かりました。この後すぐ、三人の希望する段取りをを聞いて、現場と確認をとって進めかたを決めましょう」


「「「はい! 承りました!」」」


「じゃあ私は失礼する。 みなさんの奮闘に期待しています! 綾部君も頼んだよ!」


「「「「ありがとうございました!!」」」」



――――

しばし休憩後


 初回の顔合わせとは思えないスピードで、次々に話が進んでいく。最新技術とビジネススキルをかかえる大周輸送のなせる技と、AIと共創進化を始めた学生三人が、早くも共鳴を始めた。ということだろうかと、随行する三人は気を引き締める。学生三人は気を緩める。


「さすがにこの会社、休憩で出てくる飲み物ひとつとっても違いますね……クリーム抹茶ラテが自動で出てきたのです。甘さも、疲労感に応じてお好み放題です。今日はまだこれからなので、甘さ控えめなのです」


「さっきまでの緊張感はどこいったのかな鳳さん? そして、これからって何?」


「あ、関さんお疲れ様です。関さんこそ、その手にあるのは大人っぽいカクテルではないですか」


「も、もちろんノンアルだからね! 

 ……で、大丈夫なの?」


「はい、一息ついたら、今日の残りの時間で詰め切れるところまで」


「そっか。倉庫でしっかり『使った』んだね」


「『半分』いや、『三分のニ』ですけどね」


「そんな器用なことを……」


……


 そして、学生のリラックスモードが消えつつあるのを見て、大周輸送側の主担当者、綾部が声をかける。


「みなさん、休憩の方は大丈夫そうですね。

 そしたら、時間が限られてきていますし、先ほどの様子では、今日中にまだやっておきたいことがお有りと推察しますがいかがでしょう?」


「そうですね。仮仕様まで進めておこうかと思います。だよね鳳さん?」


「そうですね常盤君。そのために私の分残しておきましたから」


「??」


「あ、綾部さんはまだあまり馴染みがなさそうですね。まあ後で私たちから説明する時間があるので、話を進めてください」


「え、あ、はい……わかりました大倉さん。

 では皆さん、さしあたり今回の依頼に関して、弊社側から必要な情報はありますか? 常盤さん?」


「そうですね。私達が見学していた時と、無人で稼働する時で、輸送機の動きはどれくらい違いますか?」


「(いきなり核心か……)そうですね。人が入る時には、輸送機の最高速度を時速8キロから4キロに下げ、稼働する台数もちょうど半分になります。

 そして、万が一のときにはドローンを使って監視することができます。映像を使って、人が入って作業する必要があるかないかを判断します」


「ドローンを使わざるをえないケースが増えている、ということでしょうか?」


「ご推察の通りです。輸送機の稼働率が増えると、なんらかの形でエラーが発生しやすくなり、どうしてもドローンの手を借りざるを得なくなります。しかし台数や電池の消耗を考えると、コスパがいい使い方とはいえず、常温倉庫の小型輸送に回したいというのが本音です」


「わ、わかりました。低温倉庫のドローンは減らしたい、と……(追加要件ですね)。

 で、では、ここからは三十分ほど孔明の機能を使うので、私たち三人の会話には着いてこれないと思います。なので、関さんたちと、関さん持ちの孔明の解説とともに、しばしお待ちください」


「あれ、鳳さん、さっきの話だと、その機能は倉庫で使用済みでは?」


「あ、ああ、普通はそうなのですが……

 さ、最近気づいたのですが、全員が同時に使わなくても、ある程度のパフォーマンスが保てることに、最近気づきまして。今回は私、鳳の分が未使用なので、取りまとめには残った私の分だけを使う、この体制で行けてしまえるというわけです」


「な、なるほど……(わ、わからん……)」


「で、では常盤君、鬼塚君、準備はよいですか?」

「ああ」「オッケー」


「では始めます。チェーンON」

「追加要件、ドローン減らす、ゼロ?」「おけ」

「電波禁止、音声おけ?」「おけ」

「速度8、送受信に問題は?」

『ドップラー効果計算……周波数ズレ、プラマイ2%、

問題なし』

「言語設定、良好? チェーン有無」「おけ」「おけ」


――――


「え、えと……」


「綾部さん、こっちで解説します」クイクイ


「す、すいません大倉さん、関さん。弥陀さんは……バイタルチェックですね。

 ……これが、あのAI公明のバージョンアップで実装されたというトンデモ機能『そうするチェーン』ですか」


「そうですね。ちなみに、私たちだけで使っても、あのスピードは到底出ません。あの三人が何度か実験を重ね、さらに相互理解を深めた結果の光景だということを、ご理解できなくてもご納得いただけたら」


「は、はあ……これが、うちの常務のおっしゃっていた『共創進化』の一端、というわけですか。ほぼ三人が一体となった思考をおこない、時にアジャイル風に役割分担しつつ、リアルタイムで報告相談。

 そして調査や演算が必要な時には孔明が入りますが、丁寧ながらもやや冗長さが見られる普段の生成AIとは、打って変わった簡潔な応答……

 これを見せられたら、技術者としても、どんな未来に自分を置くべきか、覚悟を決めるしかありませんね」


「ふふふっ、さすがですね綾部さん。実物をご覧になるまでは少々迷いが感じられましたが、流石そこは技術者。いざその威力を目の当たりにした瞬間、もうあなたの頭では次の一手を考え始めておられる」


「あっ、つ、つい……」


「ふふふっ、あ、弥陀さん、どんな感じですか?」


「むむぅ、あの子ら、勝手に制限時間ふやしちゃって……最後に大仕事があるのは私ですね。

 まあ今のところ、実際に負荷が分散されているように見えるのですけどね。さっきまでは鳳さんがやや元気だったのが、徐々に三人がフラットな状態に近づいています」


「弥陀さん……早速の大仕事ですが、よろしくお願いします」


……


「あ、終わったようですね」


「「「はい!」」」


「とりあえず今日できた分の仕様書です。ご確認いただけますか? 

 あ、ちなみに綾部さんもAIは使用できるのですよね? やや分量があるので、すぐに読み解くのが難しければ、冒頭の概要版だけでも」


「あ、はい。通常版と、ある程度社内でカスタマイズした物を使っています。孔明とは行きませんが。

 ……ではまず概略版を。

 ……

 ……な、なんじゃこりゃあ!?」


「「「……」」」


「失礼しました。……詳しく説明を、と思いましたが、この時間ですし。みなさんお忘れかもしれませんが、初日なので宿舎の受け入れもあります。なにより……弥陀さん?」


「……」フルフル


「ですよね。では皆さん全員を宿舎の方にご案内させます。私は明日までに詳細版を読み込んでおきますので、明朝お付き合いいただけたらとおもいます。一旦受付まで同行します」


「「「お疲れ様でした! よろしくお願いします!」」」

お読みいただきありがとうございます。


 技術的な部分の記述が増えると、AIの力は非常に助かります。明らかに間違った記述をしなくて済むだけだいぶ……

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