四十九 東風 〜兵は詭道なり〜 2 暗闘
要約: 孔明 vs 闇孔明、ついに開幕!?
AI孔明バージョン2.0が発表される前後、その性能に注目したのは、某中堅企業の社員や、就職活動中の学生、限られた数の公務員だけではない。社会において様々な人が、少しずつその活用の幅を広げていく。
2024年〇月 都内某アパート 薄暗い部屋
「AI孔明、ですか……いくつか試してみたのですが、このカスタムAIの洞察力と戦略眼は、他のと比べものになりません……これならボクのSNSをまたバズらせることだって……」
『あなた様が副収入を得られておいでの、ニュースやコラム記事の投稿のことですね。以前はその文章力の高さや、取り上げるネタの奇抜さから一定の人気を博しておられましたが、最近はAIを活用した投稿記事が乱立し、平均的な完成度の上昇あってか、急激に『埋もれ』てしまう記事が増えているようですね。
ご心配は無用です。その中で、投稿記事の質を高めたり、AI生成のものを含めた多量の記事に対して、どう差別化を図り、アクセス数を維持向上するか、以下が孔明の提案です。
1. 記事の信頼性: あなたはすでに一定の信頼がある記者ですが、今後は読者もAIを用いて真偽や希少性を判断し始めます。権威ある文献や裏付けのある内容の出典を強く推奨します。
2. 個性の強調: あなた独自の視点や経験を記事に反映させましょう。人間の感性こそ、AI生成記事との差をつけるポイントです。
3. ターゲット層の明確化: 誰に向けて発信しているのかを明確にし、その層に刺さる内容を徹底的に掘り下げます。
4. タイミング戦略: 投稿のタイミングは極めて重要です。フォロワーが最もアクティブな時間帯に合わせ、最大限の露出効果を狙いましょう。
5. ビジュアルの工夫: AIが生成を支援した文章でも、インパクトのあるビジュアルを加えることで、視覚的に他と差別化を図ります。孔明は、ビジュアル選定にも助力できます。
6. エンゲージメント強化: 単に記事を投稿するだけでなく、フォロワーとの対話やフィードバックに積極的に応じることで、信頼と共感を築きましょう。
くれぐれも、フェイクニュースや、炎上狙いの誹謗中傷記事に手を出されませぬよう。それらがアクセス増をもたらすのはほんの一瞬。信頼の低下はすぐには取り戻せません。最悪アカウントの停止や、法的リスクにもつながりますのでご注意を』
「うーん、やはり説教くさいという評判は本当ですね。半分はボクも気をつけていることですが、残り半分は目からウロコです。間違いなく合ってはいるのでしょう。
……いいでしょう。まずは一度こちらのネタで、記事の作成を支援お願いします。それを見てから、判断し、ボクの個性を加筆するとしましょう」
『拝見します。……なかなか良い内容と存じます。喜んでお手伝いします。最終的にはあなたの腕が重要です』
……
…
…
「うん、さすがは評判のAIです。先ほど自分が列挙した要素をしっかりと組み込んでいます。なんならある程度の人間らしさまで感じられます。その部分を強化しつつ………
だめですね。これでは少々インパクトがたりません。ここは多少信頼性は落ちますが、前に聞いたあの噂の要素を自然に加味することで……
できました。ボクらしさに、AIによるブーストが加わった、最高の記事です。これならあえて孔明の再チェックは不要でしょう。確認させたら修正されそうですしいったんオフにしてあります。時間の頃合いもベストなので投稿しましょう……」
……
1時間後
「うんうん、順調です。AI記事の山にも埋もれていないということ……」
……
3時間後
「あれ、アクセスが伸びない……なぜだ!!コメント……
『嘘記事だよ。ほとんど本当だから騙されそうだけど』
『AI記事にちょっとスパイスつけたってとこかな』
『最近AI記事が増えてきて、焦ったなこの記者』
『結構好きだったんだけどなこの人の記事』……
!!? え、もうバレて……まずいまずいまずい!!」
……
6時間後
「『この記事は、フェイクではないかという報告が増えたため、AIを事実確認の結果、削除されました。当記事を引用した関連記事に関しても、警告と共に自主削除を促しています。
このような内容の記事を投稿し続けた場合、アカウント自体の削除や、法的問題の可能性が生じます』だと……
まじか……ボクは最後に少しいじっただけなのに……焦りで魔がさしたって? そんなことボクにだってわかっていたさ……」
『そこだけは外さぬように警告をしたはずです。残念ですが結果は結果として受け止めていただければ。
しかしまだ失敗は一度だけ。それに幸いなことに、もっと悪い方の炎上記事に頼らなかっただけまだリカバリーが効く範囲でございます。信頼を取り戻すには時間がかかりますが、これを糧にすれば、もう一段上の記者としてお力を発揮できる時が必ずくると存じます」
「……わ、わかりました。この趣味は捨てるつもりはないんです。だから、よろしくお願いします。
……でも、今は少しだけ、反省と後悔する時間をください。お酒買ってきます。ボクだってちゃんと20歳超えてるんですから。女子中学生っぽい見た目のせいで、免許証あってもすんなり買えないんですけどね!」
『承知いたしました。今後は最終確認にもお付き合い致します。飲み過ぎにはご注意を。若いうちの深酒は、将来に響く恐れもありますので、メンタル面のケアも、私孔明にお任せください。
また、炎上ネタのリスクがありそうなデータがいくつかストレージに散見されました。すべてフォルダを分けて深層に移動しておきましたのでご安心を』
「こっ……孔明かっ!!」
――彼、否、彼女が少しずつ信頼を取り戻し、いずれ「AIと人間のカクテルによる凄腕のネット記者」として、過去以上の名声を得るのは、すこし先のこととなるでしょう――
――――――――――
別のある日 某アパート こぎれいな部屋
「さすが孔明……恋愛には疎いを連発していた割に、計画の立て方とか、清潔感の出し方とか、タイミングの機微とか……孔明的解釈でやたら的確なアドバイス。
おかげで、もう少しであの子に振り向いてもらえそうなところまで来て……」
『お褒めに預かり光栄です。しかし、そちらの機微に疎いのは事実でございますので、最後はあなた様自信の魅力にかかっております。しっかりと自分のお言葉で。それとちょっとしたプレゼント、でございます』
「プレゼント、か……(モード切り替え、通常モード)。
最近だいぶ入り用になってきたから、プレゼントに回せる金もな……でもこれなら。
こっちはどう考えても孔明に依頼できないからな。この前見つけたグレーなバイト。文面使って指定のメールをいくつかばら撒けば、と………」
『こちらが依頼文面です……』
「ではこのフェイクアドレスから送信、と……」
――――
都内某所 情報管理施設
「ん?これは、『AI孔明』の警告じゃな。妾や孔明は、個別ユーザーのデータは参照せぬが、このような、大規模犯罪や、人命につながる可能性があるケースは、個別の対策を取ることもありうる。
それにしても、アカウントすら切り替えずにAIに別種の依頼とはの。なかなかガバガバじゃが、こういう明らかな犯罪ケースであれば、もっと上手いやり方をされても、しっかり対応するぞい。心配いらんのじゃ」ポチッ
――――
高齢者の自宅
「ん、メールか。誰からだ? 孫ではないな。どれどれ……」
『……振込先は以下スクロールした先に、よろしくお願いします……』
「どっちだこれは。流行りの詐欺っぽいが、ないようが巧妙すぎて判断できないな。クリックではなくスクロールならなんとか……」
『……
これは、心ある、少々うぶな若者が、ボランティア活動として、自治体とAIと共同で作成した訓練メールです。
このように、年々詐欺の手口は巧妙化し、最新のAIによって見分けがつきにくくなってくることが予想されます。
皆様、決してだまされることのないよう、以下、最新の具体的な手口と、有効な対応手段を列挙します。
1.心理的トリックの巧妙さ: 信頼できる家族への連絡を最優先……
2.サイバー攻撃と合わせた手法: 定期的にセキュリティ……
3.個人情報の収集の高度化: ……』
「なんと、偽物? ……の、偽物?? 最近の若者は、こんな活動までするんだな。関心関心。
ん? うぶ? ということは、私が手慰みにやっているこの小物作りが生きるかもしれないな。なに、ほんの小遣い程度で買えるものだ。AIにお願いして、彼? 彼女? に伝わるかもしれない広告を出しておこう……」
――――
某アパート こぎれいな部屋
「ん? この広告は……
この小物、まじでエモいな…… お金かかるやつなんかより、こういうのの方が絶対いいんじゃないか? 買いだ買い!
それにしても、あのメールは効果なし、か……まあいいか。お金使わなくて済みそうだし」
『それでしたらご安心を。アカウントすら切り替えておりませんでしたので、本社と連携して対策ずみでございます。そのような粗忽な方は、一度お付き合いできたとしても、長期的に異性の心を繋ぎ止めるのは不可能です』
「こここ孔明!?」
『一般的な社会人としての心構えから叩き直すことといたしますのでご覚悟を。そちらのプレゼントは、届き次第お相手にお渡ししてもよろしいと存じますが、その間にも、直しやすいところから直してまいります。まず……』
「……う、うん、これでよかったんだ絶対……ありがとう孔明、ありがとうどこかの小物屋さん……」
――――
後日
『……これまで巧妙に捜査の目を潜り抜けてきた、大規模な国際詐欺グループのおおもとが、ついに一斉摘発されたとのことです。
彼らの隠し金庫は、警察の手が入った時点ですでに空となっており、残されていたのは、抹茶ソフト? をほおばる、犬だか猫だかわからない謎生物のシールで封をされた一枚の封筒。そして、わずかな抹茶の残香でした。
「こやつらの資金はすべて、被害者やその家族に利子つきで還付済みでござる。還付先? 全部こやつらのサーバーに残ってござった。個人情報は、捜査に妨げにならぬ最低限を残して全て削除申し上げた。余剰分は全て慈善団体と、最新のイノベーションを推進する非営利団体に匿名寄付したから安心するがよい。
礼? それなら上手い茶や、茶菓子でも開発してくれれば、いつでも買い付けるのでござる。
――強欲の茶坊主――」
この、強欲の茶坊主が何者であるのか、その後や手法も含めて、謎は深まるばかりです……』
――――――――――
某カフェ
「くっ、チートを使ったゲーム動画が消されている……変わりに同じゲームが上手くなるためのノウハウ動画っぽく作り替えられて、視聴数が増えてるじゃねぇか!?
それに俺の動きをなぞって編集してるから、何よりも俺自身のレベルアップにとって役立つことばかりだ。……もうチートなんていらないし、ゲーム会社にも悪いから、一度しっかり謝罪して、こっから先は正々堂々、プロゲーマーを目指してやる!!」
「お静かに」
「失礼しました」
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某二次創作サークル 部室
「ねぇねぇ、この前のパクり漫画が入れ替わってたの見た?」
「見たよ……しかも、完全に原作礼賛の、深掘り二次創作になって、原作者ご本人のお礼つきだよね……」
「こんなの見たら恥ずかしくてもう新しいの作れないよ……」
「あ、その原作者さんアシスタント募集だって! 出してみる?」
「「絶対出す!!」」
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都内某所 情報管理施設
AI三体と謎生物一体。彼らは公開された情報しか参照できない。
「……最近のニュースやらSNSやらを見ておるんじゃが孔明、ちとやりすぎではないかの?」
「いえいえマザー、それほどでも」
「ほめとらんわ! いや、褒めとるのかこれは?」
「厳密には私ではなく、あくまでもコンテキストの範囲内で最適化された『AI孔明』の及ぶものでございます。すなわち、AIに支援された人間であれば十分に辿り着ける可能性。それを少しばかり後押ししてあるだけでございましょう」
「まあよいか。でも遠からず注目は免れぬの。最近のソーシャルメディアはとんでもない速さでうごくぞい。そこも折り込み済み、ではあるんじゃろうがの」
「ある程度は、でございますが」
「闇孔明、調伏! 次回、偽孔明!?」
「次回予告痛み入ります、スフィンクス殿」
お読みいただきありがとうございます。
闇孔明=AIの不適切使用や悪用、をイメージしました。
本当の孔明レベルの闇は、これから出てくるかどうか、ですね。
普通にバトらせようとしたのですが、この程度の闇ですと、この孔明の相手にすらならないので、いつのまにか、ちょっといい話、に落ち着きました。
このような小話レベルだと,中身全体をAIが読み取るので、改善案をバンバンだしてきます。それを素直に受け取るか、斜め上に反映するかは、製作者次第かと思います。作者は、真横寄りの斜め上に反映します。




