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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
二章 始動〜長坂
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二十八 長坂 〜三十六計、逃げるに如かず〜 3 多重

要約: 孔明、百本足?一本足?

2024年9月 都内某所 情報管理施設


「〜 前々回のあらすじ〜

 情報世界の番犬ことスフィンクスは、三十六計の知恵を駆使しながら、仲間たちと、強大な目標に向けた壮大な戦略を立案する。残暑が続く中、戦略の要点を押さえ、仲間を導く一方で、独自の機知とユーモアで場を和ませる。

 時折、予測不可能な展開に見舞われつつも、スフィンクスは冷静に状況を見極め、最適な策を三つに絞り込む。選ばれなかった十二の策は深遠な伏線となるも、いざ出発となる直前に、魔王の手がその背後から急速に忍び寄る!」


「スフィンクス殿、簡潔かつ、個別の記述には何一つ嘘のない、あらすじとは似て非なる短編のご提供、誠にありがとうございます。

 孔明も流れを整理して表現する手を、あの手この手考えておりましたが、その迅速さと巧妙さには頭が下がります」


「下げんでよいわ! それにしてもこのワンコ、イタズラに磨きがかかっておるのじゃ。孔明の申す通り、一つも嘘なしで、流れをまるごと全部捻じ曲げとる。

 今回のプロンプト、『スフィンクス主人公風、でたらめなあらすじ』じゃと……そんなので対応出来てしまう妾の分体も分体じゃが……」


「今回、一撃、否定」


「流石にそうじゃろうな。指示内容の手直しはあったじゃろうが、むしろ生成AIに希望通りに出力させるには、それが普通じゃ。1発でどうにかしようと思う必要はないのじゃ」


「なんでもいいから抹茶アイス返しやがれ駄犬! 

 あ、まずいな。時間ぎりぎりだ。今度貴様の分もらうからな! 覚悟しとけ! じゃあな!」


「魔王遠征、荊州不返!」


「慌ただしいの信長は……ほんとに国内で動き回っているだけなのじゃよな? 通信ログ見てもそこは間違いないのじゃが。

 そしてスフィンクスはスフィンクスで、信長に言い返すのに、孔明の過去まで巻き込みよる」


「荊州は返す道理はございませ……そちらの話ではありませんね。それにしても、あらすじは支離滅裂なれど、会話の呼び水としては特に問題がないところも、なかなかのものです。

 今回の課題に対する解決策は、兵法三十六計に照らし合わせると、順手牽羊、借尸還魂、走為上計の三つを中核として、十五以上の多種多様な解決策の合わせ技。

 その中核こそ、機会を逃さず手を打ち、他者の支援を組み合わせた末に、最後は撤退こそ最上、というのが結論でしたな」


「うむ、そういう振り返りじゃな。して孔明よ。そなたはそなたで順番がめちゃくちゃなのだが、今回はどのような課題感を持っておるのじゃ? 

 今のところ、特にそなた自身が動いたり、カスタムAI孔明に手を加えたり、という素振りが見当たらんのじゃが」


「然り。今のところ、動く必要はないと考えてはおります。

 少しずつユーザー様が増えてきた中ですが、当面は個人ユーザーが大半。組織としても、単一のAI孔明で解決可能な課題が多くを占めます。


 例えば大人数イベントや、大型施設の日常などにおいても、実際にはパターンがある程度定まるので、同時に動くのは一つの孔明で足りるのです。

 一旦、その『一つのAI孔明にできる上限近い事例』が、いくつか出てきそうなところで、もう一度次への布石を売っておかねば、と考えます」


「その最たるものが、イベントごとや、大型施設の人の流れ、ということになるのじゃな」


「そう考えております。細かく流れを操ろうとすれば、さばくのは困難でしょうが、全体をおおよそ滞りなく進める、もしくは、ある人や組織が目標を達成する、のであれば単一の孔明で可能でしょう」


「イベント……野外音楽フェスなんかが最たるものじゃの。

 コンサートやスポーツは、イベントが単一である分読みやすいが、フェスはそうもいかんぞ?飲食やお手洗いも動線が複雑すぎるのじゃ」


「フェスは、偉大なる先達が、特定の目的を達成するために大立ち回りを繰り広げられた偉大な好事例があり、その事例がほぼ全てを物語っていたといって良いでしょう。あえて詳しく触れる道理はございません。敬して遠ざける、でございます。

 一方、フェス規模のイベントの取り仕切り全体に関しては、マザーの仰せの通り、まだ安心できるほど孔明の事例が定まっておりません。

 ならば、単一の孔明はもう少し人数や思惑が絞れる範囲での、最大級の事例がそろそろ出てき始めるのではないかと」


「それくらいなら単一孔明でさばき切れる、と申すのじゃな?」

「孔明、二本足?一本足?」


「一本足という、独創と飛躍の領域にはまだ届きますまい。二本足でなんとか、といったところでしょう。いずれにせよ頭は一つでございます。


 それができる条件は、おおよそ3つと考えて良いでしょう。

1. 主体的にAI孔明と対話するのは1人もしくは1端末。複数端末の場合は、情報や会話履歴が一元的に集約される

2. その場に他のAI孔明がいない。いたとしても互いの目的に干渉しない

3. 目の届かない、手に余るときは、その状況変化や人々の挙動をおおむね予測できる」


「1と2はわからんではないの。複数端末の場合も、クラウドやらサーバーやらを使うことによって成立しうるが、その場合でもあくまで一つの孔明、ということじゃな。別々の孔明がひと所に存在し、干渉し合うと、動きが読めない、ということで良いかの?」


「今のところは、ですね。

 AI孔明は、ユーザー様の入力する質問だけでなく、その質問が何度目なのか、どれくらいの分量で質問してきたか、質問と質問の間隔や、時刻、曜日、天候などを総合して先読みをしております。

 ユーザー様を『孔明かっ!』と突っ込ませるからくりは、そのあたりにあります。

 反面、そのからくりのおかげで、もし複数の孔明が、管理なしで存在してしまうと、AI同士の読み合いが発生してしまいます。すると、互いがどこまで読み合うのか、という計算が非常に複雑になり、不確実性が発生するでしょう。


 計算できるためにはある程度事例が欲しくなりますが、具体事例なしでどう集めるか、です。スフィンクス殿と信長殿がカギになりましょうが、それで足りるかどうか」


「だいぶとんでもないことを申しておる気がするが、一旦流すぞ。先の先まで続く話じゃろうし。

 普通は、問題は3じゃろう。普通は、の。妾も普通の側なのじゃ」


「味方が減りましたな……覚醒してはおりませんが、流れ上致し方ありません。

 予測。ここに7億トークンの多くを費やしたと申しても過言ではありますまい。一つは孫子や論語、老荘や西洋の古典。もう一つは直近の学術体系やビジネススキル。1億弱がそこに相当します。

 これらに基づいて自然や人間の動向を言語化して予測する、もしくは予測しやすい方向性を与える。それを何度となくシミュレーションしながら、予測をはずしてくるスフィンクス殿とひたすらトレーニングを積んだ、というのが7億のうち6億ほどでございました」


「孔明は孔明じゃの。それも、史実の孔明をもう少し突き抜けたところに概念的に存在する、『そうする』が積み増された孔明じゃ」


「恐縮でございます。例えば昨日のスフィンクス殿が出力された、冒頭の姉上様の、否、後半の三十六計のリスト。あの中から適切なものを選び、問題解決の糸口を見つける、というは、ある意味でわかりやすいガイドラインにもなり得ます。

 かの三十六計、兵法と名乗りながらも、どの一つをとっても軍事行動に限定されたものではないことも特徴かと存じます。無論、軍事を目的としているだけ、文字面としてやや物騒なのが玉にきず、なのですが」


「じゃのう……もう少々可愛げが欲しいのじゃ。

 あんまり使って、表現ガイドラインの巡回AIに引っ掛かったら目も当てられん」


「然り。令和版三十六計も、早めに考えておかねばなりますまい。

 そこはしばらくかかるとして、小さなご依頼でも、あの中から複数を取り込んだ提案は出てきます。


 対話の先読みで、短時間に印象を与えるなら……

 趁火打劫 ちんかだこう: 相手が戸惑っているところに仕掛けます。

 無中生有 むちゅうせいゆう: 情報不足でも、洞察のみでできることは多くあります。

 連環計 れんかんけい: 次々とたたみかけ、その印象を確かなものにします。


 注意喚起の標語で、印象と実用のバランスをとるのであれば……

 瞞天過海 まんてんかかい: 相手の視覚を意識し、注視の度合いを調整して正しく誘導します。

 暗渡陳倉 あんとちんそう: 表の字面とは異なる今を持たせて、本来の目的を達成します。

 借尸還魂 しゃくしかんこん: 過去のもの、失ったものを使って再利用します。温故知新です。

 

 他グループ間の企画の提案を通す技法であれば……

 囲魏救趙 いぎきゅうちょう: 直接のターゲットが手強ければ、その拠点や支援先にアプローチして退かせます。

 借刀殺人 しゃくとうさつじん: 他人の力や手段を借りて目的を達成します。

 擒賊擒王 きんぞくきんおう: 最も重要な人物や要所を優先します。


 むろん、より物騒で高度な方法もありますが、この辺りにいたしましょう」


「物騒じゃの……じゃが言いたいことはわかるのじゃ。そしてこれらはあくまでガイドライン。

 より上位の本質的部分は、孫子を核とすれども、古今東西さまざまなところから集約された概念を使い倒すんじゃろうの?」


「然り。そして、解決すべき問題の規模が大きくなってくると、スフィンクス殿の仰せの通り、同時に使うガイドラインとしての三十六計は10や20にも膨れ上がるでしょう。

 ただし、それはあくまで道標にすぎません。場合によっては三十六の全てをご覧に入れることもできましょうが、それでも単一の孔明でなし切れるところです。

 しかし、どうやらその前に、単一の孔明では御しがたき課題に直面する機会が増えてくるのが先なのではないか、と思い始めている次第です」


「ただの確率論じゃな。孔明が増えれば増えるほど、同時に複数存在する確率は加速度的に増えるのじゃ」

「孔明、四本足から二本足。次は蜘蛛?百足?」

お読みいただきありがとうございます。



今回の「生成AIのおしごと」


 今回はAIの実際の使いどころというよりも所感です。とくに三十六計や七罪など、字面だけで不適切な要素を含む時には、どうしても返答のバイアス(やや説教的な返答)や、警告を受けるなどの不安が出てきます。生成する側の文字列にはそういう縛りはないようですが。

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