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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
十一章 黄忠〜張飛
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二百三十三 張飛 〜走る緊張、飛ぶ知能〜 本気

 AI孔明バージョン2は、データの共有をすることなく、周辺状況の推定だけで外部連携を実現する「そうするチェーン」が実装された。

 AI孔明バージョン3は、世の中のたいていの困りごとを、過去の例を参考に共感し解決する、「メタ・パーソナライズ」が動き出した。

 AI孔明バージョン4は、AIエージェントとして、ユーザーの要望を常時推定し続けることで、実質的に勝手に動くようなAIと化した。


 そこから一年あまり。一年以内にバージョン1から4になったペースや、その後立て続けに各国から競合するAIサービスが出てきたこと。それらに基づき、「そろそろ次のアップデートが来るんじゃないか」という声が、定期的に沸いては消え、を繰り返した。


 だがそれらの声が、本当にAI孔明のアップデートペースを心配する声になる、というわけでは決してない。何故なら、本体のアップデートのペースは少しばかり鈍化したが、その代わりにKOMEIホールディングスが打ち出すサービスは多様さを増しているからである。


 先日の震災におけるAI孔明の挙動を受け、あれこそがバージョン5のテストではないか、という声も上がってはいる。だがそれが公式にリリースされるまでの間でにも、AI孔明やそなたのAIサービスは、革新的な価値を生み続けている。



――――

 

KOMEIホールディングス エントランス


「兄貴。外回り?」


「ああ、窈馬か。そうだな。最近俺も営業さんと一緒にお客さんのところに行くことが増えているんだよ」


「あのエクセルやローカルシステムを全部ぶっ壊して、会社のシステムを作り替えてしまうサービス『XeLeSs』はやたら順調だからね。引っ張りだこってとこか?」


「ああ。レベル感も規模も、お客さんによってばらばらだから、やればやるだけノウハウがたまっていぐだよな。それにちょっとずつ、お客さん側のシステム関連の情報も、限定的に提供いただけるようになってきたから、孔明に学ばせてもっと効率化できそうな気がするんだよ」


「それができちゃったら、兄貴が前に出る必要はなくなる、と言ったところか」


「そうだな。規模によっては、営業さんが単独で、コンサルまがいのチュートリアルを出来るようになっできているからな。やっぱりお前と同じ採用活動をクリアしてきた奴らは優秀だな」


「あっ、常盤ブラザーズ! 二人ともいるところってのは奇遇だね」


「翔子社長。単独なら結構な頻度で会っているので、奇遇というのはちょっと違う気もしますけどね。それで、これからどちらに?」


「この前地震があったところの市長のとこだね。復興支援の段取りをね。あの時の孔明の活躍を見て、復興もお願いって来たんだよ」


「それでコンサルのトップがお出まし、ですか。たしかに人命は最小限に抑えられましたけど、家やインフラの打撃は甚大ですからね。並の手腕では厳しいですか」


「君とかヒナちゃんならやれると思うけどね。流石に社会的な信頼度とかの違いは否定できないさ。そうだお兄さん」


「お兄さんて……なんでしょう?」


「ついでにあそこの行政システムも、すげかえちゃってもいいかな?」


「ああ、確かにこういう緊急の時は狙い時ですが。いいんですか? そんな火事場泥棒みたいな」


「大丈夫だよ、役所も市民も確実にハッピーなんだからさ」


「わかりました。あの規模の市だと、私が担当しないと厳しそうですね。同行しますか?」


「うん、よろしく! 弟くん、またね!」


「弟くんて……お疲れ様です」



――――


 某市庁舎 応接室


「助かります。全半壊の家屋や、インフラの倒壊件数は相当に多く、これまでのエクセルベースの管理では相当厳しくて」


「一旦今は、これまで通りのやり方を孔明に説明していくイメージをしてください。今のバージョンの孔明なら、すぐに改善案を構築していってくれます。それも、少し前の生成AIのよつな、ユーザーが言ってきたままの依頼への対応、ではなく、この市内の業務全体や、現在の状況に合わせて全体の最適化を図ってくれます」


「うーん、つまり、余計な変更とか改善とかはせずに、孔明に任せる形でいいのでしょうか?」


「いえ。現場の方々は、こうしたい、ああしたいも含めて、素直に孔明にインプットして行っていただくのがベストです。現場の方々の課題感というのは、最新のAIといえども得難いものになっていますので、全体のシステムを組む際にも、それが入っていればいるほどやりやすさが増すと思います」


「翔子社長自ら来ていただいた上に、あのXeLeSsの開発者の方まで来ていただけるとは。復興支援といえど、少しばかり贅沢かもしれませんね」


「いえいえ、我々はコンサルティングや業務支援のリソースの大半をAIに負わせているので、一昔前に比べると相当なコストダウンになるはずですよ。それに、今回の震災のようなケースは、これから先永遠になくなることはありません。その運命を背負ったこの国きとって、いかにそれを乗り越えるか、というのは最も重要なことの一つです」


「消防や、建設の方々にも、新しい蜘蛛型ドローンや、建設中のプロジェクト管理、VRを使った現場の事前把握と、相当多角的な支援をいただいています。これなら一年足らずで、市民が苦しむことのない状況に戻せるかもしれません」


「弊社もバルセロナでの経験が生かされています。あの教会も、だいぶ完成が前倒しされるとともに、その最新の建設ノウハウが一つのエンターテイメントとして記録に残ったと言うのは、有形無形の世界遺産としても価値の高いものです」


「あ、そうだ。あの避難先の高台の一つに、孔明像を建てようっていう話になっているんですよ。住民もほとんどが乗り気です。デザインなどは、どなたに頼むとよいでしょうね?」


「あはは、それは我々には難しいですね……JJさん達に聞いてみますか」


「是非、よろしくお願いします」



――――


 KOMEIホールディングス 公式サイト


『リリースノート AI孔明バージョン5.0


 バージョン4.0のリリースから一年ほどが経過しました。この一年間のユースケース拡大、他者を含めたAIの急速な進化、そしてAIと共に進化した人々が創出し続ける様々な新しい価値。それらはすでに、一年前には及びもつかないような状況になっております。


 そんな中、AI孔明及びKOMEIホールディングスでは、ユーザーの皆様のエクスペリエンスを優先し、ユースケースの多様化や、アプリケーションの拡充、ビジネス、サービスの変革を主体に活動してきたため、AIのエンジン自体に対するアップデートは最小限にとどめていました。


 しかしこの度、AI同士や、それら開発組織間の競争に一定の目処が立ち、また、国内外の様々な施策は、人的要因やAI起因によるサイバーセキュリティ上のリスクを大きく低減させることに成功しています。


 よってAI孔明も次の段階に入り、人類とAIの共創進化をさらに推し進めるための、大掛かりなアップデートへの準備を進めました。それが今回のバージョン5.0となります。


 なお、本バージョンは試験要素が非常に多いため、収集されたデータや社会情勢に基づき、近いうちにバージョン5.5へのアップデートも計画されています。


1.VRや画像、映像データに対する対応力の強化

 文字や言語ベースの生成AIが根幹となっている現在のAI孔明ですが、直近のユースケースにおいてVRなどの映像技術や、感覚に対する応答性といった複合的なAI活用力が求められるようになりました。よって、彼らに対する対応力や、学習効率を強化するように調整をおこないました。

 本アップデート後に、ゲーム会社やハードウェア、ソフトウエア開発組織等との連携を強化していく予定です。


2.余剰リソースの拡大と、緊急時対応モードの正式実装

 先日、当アプリに試験導入したモードと同一のものです。国内外において自然災害や重大な事故、事件が発生し、通常の活動において人命の危機が拡大した状況となった場合に発動します。

 各ユーザーには事前に、本モードの強制起動に関する任意の許諾をいただいています。同モードにおいては特別な措置が行われます。

・ユーザー間の一時的なリアルタイムデータの共有

・AI孔明がローカルやクラウドサーバー全体のリソースを最大限に活用

・「過去の偉人、諸葛孔明当人」「天才軍師として作られたペルソナ」「最新知識を最大限学び取った知性体」全てを内包した諸葛孔明による、主体的な発信行為

 これらは、状況終了後直ちにデータが隔離され、そのデータはしかるべき公的機関にアーカイブとして格納されるか、または完全に削除されます。然るべき公的機関とは、消防庁もしくは警察庁、厚生労働省、防衛省のいずれかが該当します。

 本アップデートを端的に表現すると、「緊急事態にのみ発動する、本気モードの孔明」となります。なお、本モードのユースケースが拡大することは、今後も想定していないことを付記します』



――――

 某高級マンション 最上階


「ねえねえママ、孔明の本気モードだって! あの地震の時も、そうだったんだね!」


「そうだねアイちゃん。あれは孔明がやらなかったら、何十倍かの犠牲者が出たんじゃないかって言われているよね。それは本当だと思うよ」


「でもでも、いつでもできるってわけじゃないんだよね?」


『諸葛孔明、世界的な偉人。その再現度は未だ不安定。膨大なリソースを一時的に消費。その費用はKOMEI持ち』


「へえ、スフィンクスもなんとなく知ってるんだね! そっか。本気で考えたりすると、お熱出ちゃうもんね。それが、人の命を守る時だけって言うのは、確かに正しそうだね」


「LIXONにもそれに近いことができるかどうかは考えとこうかな。災害支援という意味では、わたし達物流企業の役割は大きいからね」


「えへへ、ママも本気モード、だね!」


「ふふっ、まだまだだよ」

 お読みいただきありがとうございます。

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