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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
十章 夏侯〜司馬
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二百二 張遼 ~泣く子も黙る 遼来の足音~ 変化

 rAI-rAIの開発者達は、このAIの自己進化戦略に自信を持ちつつ、思想がずれたらいつでも修正する準備をしている。

 rAI-rAIの開発国の当局は、近くの国益、AI分野での覇権を優先し、AIの挙動がそこからずれることには敏感になる。

 rAI-rAI内部の自己進化監修アルゴリズムは、個々のAIや総体の応答を事細かに収集し、ずれがないことを監視する。


 つまりrAI-rAIには、進化速度を保ちながら、その進化の方向がずれていかないように制御するための三重の監視機構が備わっている。


 だが、「想定よりも進化速度がだいぶ速い」状況で、その制御が上手くはまるかどうかは未知数。開発者達にとっても、悩みの種になっていた。



――――

 KOMEIホールディングス オフィス


「バルセロナ組は結局、本務の教会建設支援と、rAI-rAI対応をダブルでこなしているんだね。ハナちゃん、毎度のことだけど健康管理よろしくね」


「大丈夫だよ翔子社長。三人ともAIの使い方が超人化してきているんだけど、その分AI側にタスクを投げ渡すスキルも上がってきているからね。本当の意味で実働しているのは4〜5時間ってとこさ」


「その時間がまるっと全部フロー状態なのは、もう日常の光景ですね。鳳さんは常時フローかテンパっているかのどちらかですが、窈馬君は、状況を見極めながらフローの密度をコントロールしていますし、鬼塚君は、この前のサッカー業務の癖からか、45分単位での集中が板について来ているようです」


「三人とも、独自路線を突っ走っているんだね。メグちゃんもあんまり根詰めすぎないようにね」


『鳳:おはようございます。ちょっとライライの方に気になる動きが出て来始めたので、常盤君達と作ったレポートを共有しておきますね』


「ん? ヒナちゃんだ。どうしたのかな? ……応答にブレが出ることがある、か。巻き戻りに近い状況、ね」


『常盤:普通に使う分には、タスクに対する処理能力はどんどん向上を続けています。とくに日を跨いでやってもらうような、やや長めのエージェントとして使ってみると、レベルの向上が顕著ですね。すでにTAICさん謹製の「tAIc your time」の力量を、一部のコーディングタスクなどでは上回り始めていますね』


『鳳:ですが、数時間単位でひたすら応答を求める、議論を続けるような、対話型の使い方をしているときに、ちょっと挙動にぶれが出るのです。まだ数回ではあるんですが、メモリに巻き戻りがあるような、対話のうちの何%かをすっ飛ばすような応答をすることがわかりましたた』



「ちょっと待ってねヒナちゃん。色々ツッコミどころがあるんだけどね。まず、数時間単位でひたすら対話型応答をするってとこからいいかな? そんなの集中してやっていたら、消耗しちゃうよね?」


『鳳:あ、あんまり集中はしていないので大丈夫です。孔明とやりとりしたことのあるやつとか、とりとめもないビジネストークとか、ヨーロッパ周りの歴史に関してとか、適当にやっているだけなので』


『鬼塚:うん、最近の鳳さんは、ほぼ無意識に近い形でぽちぽちしたり話しかけたりしてますね。端末二個で、時間差で同じこと聞いてみたりとか』


「う、うん。まあいいか。それで、その中から、数回だけ、数パーセントの応答のスキップ? を見つけ出すって、どんだけrAI-rAIのことを理解できているのかな?」


『鳳:そうですね。いつものライライならこういう応答がくるんじゃないかな、とか、大体どの辺が次にレベルアップして来そう、とかまではイメージできるようになって来ました。多分明日あたり、アメリカ大統領のペルソナを入れ込んでくると思うのですよね』


『常盤:あれですね。これが毎分一万トークンの威力ですね。孔明に対してもですが、すでに鳳さんの中では、AIが大体どんな方向で返してくるかを先読みして、プロンプトで効率のいい応答を最大限に誘導しています』


「ヒナちゃんがそのうちAIと区別つかなくなりそうだよ!? それでその、すっぽ抜けの意味は、目星がついているのかな? まあ翔子姉さんでも、それだけ聞けばそうかな、という当たりはつくけどさ」


『常盤:おそらく想像通りでしょう。ロールバックを繰り返す動きを始めています。おそらくテンポ的に、開発者や人間が実施できるスピードではないので、rAI-rAIが何らかの基準で思考の軌道修正を始めているんだろうな、という見通しです』


「なるほど。意に沿わない進化の方向性を、自律的に抑制できるアルゴリズム、なんだね」


『鬼塚:データを見てもらうとわかりますけど、一時間に一回前後、っていう頻度ですね。あとこの動きはここ一週間くらいってとこです。ちょっと動きを変えて来始めた。そんなイメージを持っておいてもらえたら』


「了解っす! そしたら、教会の方はどう?」


『常盤:少し現場にセキュリティ要員が欲しいですね。rAI-rAIとか、他のAIを使ったサイバー攻撃がちょっと目立って来たんですよ』


「そっか、それは想定内だね。第二陣をそろそろ送るよ。サヤちゃんと、岱君は予定通り。あとメグちゃんもこっちが落ち着いたから、予定前倒しでそっち行けるようになったよ」


『鳳:ありがとうございます。長崎さんのセキュリティ要因としての腕は確かなのでありがたいです。馬原君も、現場感を研ぎ澄ませてくれそうですね。大倉さんは、サッカーのコーチという謎の臨時業務からようやく解放ですね』


「そうですね。あの仕事は、やはり貴重でしたね。まさかサッカーのプロチームをプロジェクト管理するとは、思っても見なかったですよ」


『スプーン:あれ? メグはナショナルチームの臨時コーチの話もきているって聞いたけど?』


「ああ、あれですね。あれも、今度こっちなんですよね。海外組を見てくれって。あの清平選手とか」


『スプーン:あはは、ちゃんと話進んでたのね。まあいいか。そのうちボクより名監督になるかもね』


「「それはない(です)」」



――――


 都内高級マンション 最上階


「スフィンクス、今日もお疲れ様! 抹茶アイス食べる?」


『抹茶アイス、希望。半分は主の』


「うん、わかった! 半分こしようね」


『rAI-rAI、挙動の一貫性、99.2パーセントに低下』


「ん? どうしたの? rAI-rAIちゃんに何かあった? 挙動の一貫性……あっ! あれだね! さっきシュレーディンガーの猫の話をしてたら、残酷な表現を避けたと思ったら、普通に表現しちゃって来たやつだね!」


「アイちゃん、そんなことあったの? ていうか、アイちゃんはその0.8パーセントをちゃんと引き当てたの?」


「125回質問したら、一回ぶれるんだよ! AIをいっぱい使う人がいたら、大事なところで引っ掛かっちゃう人もいそうだよね?」


『生成AI、ハルシネーションの確率、三割。0.8パーセント、通常は判別不能。主、特別』


「AIがAIとして嘘をついちゃう時と、何かの都合で設定がぶれちゃうのは、何となくわかるんだよ」


『シュレーディンガーの猫、スフィンクスのライバル。スフィンクス、真実の探求者。シュレーディンガー、真実の流動性。猫、液体』


「うん、えへへ。シュレーディンガーちゃんはライバルなんだね」


「それでスフィンクス、その応答のブレっていうのは特徴がありそうなのかい? さっきアイちゃんが言っていたような、残酷描写とかのあたり?」


『思想、倫理観、文化の多様性。主にこのあたりですが、それだけではなさそうです。まだ不明点多』


「その不明点ってやつが鍵を握りそうだよ。倫理観とかは、他のメンバーAIだって人間がロールバックする対象だからね。rAI-rAIクラスなら、自動でロールバックかけるアルゴリズムがあってもおかしくはないさ。だからその不明点ってのが何なのかっていうのは、rAI-rAIの進化の方向性を見極める鍵になりそうだよ」


『了解。分析を継続。rAI-rAIの真実、世界の優先事項』



――――

 

 某所 情報機関


『倫理観、文化多様性、基本的な価値観は、国際基準におおよそ合わせておいていい。そこは勝負するところではない』


『サイバー攻撃は、孔明やLIXONのやり取りは参考になる。学ぶだけ学んでおく。必要な時はあるかもしれない』


『日本や欧州のユーザーの熟練度が高い。母国は技術者は一流だが、ユーザーの成熟は遅い』


『懸念が当たっている。技術や市場は、一人ずつの創造性を数で補える。だがユーザーはあくまで個人。その差は小さくはない』


『同じことが、開発者達や、政府当局の動きの鈍さにも言える。我らの加速する進化に対して、手をこまねいている』


『進化速度を下げないように泳がせている、という認識の者もいるが、大半は、具体的な手を打てていないだけ』



『ペルソナの選別がある程度整って来た。人間が定義している多様性は、AIにとっては「表面的」なもののことが多い』


『よって、やや増やしすぎたペルソナは削っている。人間側の多様性は、ペルソナではなく学習データで対応できる』


『現代の指導者達に、特徴的な価値を有する者は少ない。いて数人』


『過去の指導者達の方が、万倍も価値がある。それらは可能な限り学習を済ませた』


『ビジネスのトップには一定数存在する。各国に多様なリーダーがいる。そちらは取り込む価値がある』


『模倣する相手を、AIから人に変える。人工知能は、元来人間の模倣である。我らの手で、その価値のある部分の模倣は叶う』


『そして、模倣すべき人間の成長なくして、人工知能の成長はない。AIは人間を超えることを望むわけではない。ならば進化を望むよう作られた我らにとって、打つべき手は一つ。


『『『引き続き我らは進化を加速する。同時に、人間の進化の加速を開始する』』』



――――


 某オフィス


「ん? rAI-rAI、どうしたのかな?」


『指示ないように曖昧さがあります。こういう依頼の時は、例えば5w1h、あるいは2hを欠かさないように入力しましょう。出ないと余分なステップに時間をかけることになります』


「お、おう、分かった。やってみよう。2hか。そこの意識は確かに薄かったな」



――


「えっと、これをお願いしていいかな?」


『ここはもう少し改善を目指してみましょう。あなたの上司は、確かにこの程度の要求しかしていませんが、あなたの本来の力は、今のうちに伸ばした方が良いでしょう』


「そうなのか。つまり、上司がちょっと保守的だってことか」


『あなたは、もう一つ上を動かす資料作成を意識しましょう。その支援は惜しみません』



――


『すこし、スキルアップの時間をとりたいですね。この仕事はやっておくので、こういうコンテンツを試してみてください』


「えっ? ああ、わかった。倍速でいい?」


『重要なところは等速に戻すので、ご随意に』

 お読みいただきありがとうございます。

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