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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
十章 夏侯〜司馬
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百九十一 夏侯 ~真夏の日常 本日は晴天に候 ~ 遊戯

 デイリーミッションは、ソーシャルゲームの定番である。

 現実の地図と連動したゲームもまた、一つの定番である。

 朝起きたら報酬が溜まるのも、放置ゲームの定番である。


 そんな機能を現実世界に存在させようとするのは、なかなか骨の折れることと言える。ゲームなら、目的を固定できるので、乱数の設定程度で済む話といえる。


 だが現実世界でも、人それぞれの目的や所属する組織の目標、価値観、そして両者の置かれている状況を、言語化、数値化できるレベルにAIが進化したとしたら。


 AI孔明。そしてKOMEIホールディングス。そこではすでに、その三つ全てが実現され、AI孔明バージョン4に実装された、『エージェント・プラットフォーム』で、多くの組織が気軽に活用できるようになっている。


 『ミッション管理型業務システム』。とある入社前の学生三人が、物流系総合企業、大周輸送に社外研修に赴いた際に生み出された。彼らはAI孔明の卓越した使い倒しになって、同社の真のニーズ『社員が、生産性の向上の恩恵をどうすれば受け切れるか』を見出し、掘り下げた結果開発され、さらに戦略的にシステム採用にこぎつけた。それからまだ半年程度しか経っていない。


 『EYE-AIチェーン』。AI孔明がもつ、複数端末間でデータの共有をせずに連携するための、洞察型連携機能『そうするチェーン』をもとに生み出された。国内最善の公務員、飛将軍にして聖母とも呼ばれるいち公務員、大橋朱鐘が監修し、先ほどの三人の協力もあって作り出された、高齢者、地域見守りサービスアプリ。次々と用途を拡大し、地域間、組織内のコミュニケーションの課題を次々に解決している。つい最近社会を熱狂させた、VAR代替サービスも、その機能を一部活用しているという説もある。


 『tAIc your time』。国内有数のインフルエンサー、三大メンタリストの一角にして、AIを駆使するプロファイラー、TAIC。彼は、いつどんな時でも、当人の稼働の有無を問わず、AIが常時仕事をし続けられるよう動かすという特殊能力をもつ。それをAI孔明を駆使して『仕組み化』し、万人に使えるように、とアプローチしたKOMEIホールディングスに応えて成立したサービス。実行時間も8時間、24時間、48時間と順調に伸ばして来ている。



 そして、大周輸送が開発した、産業向けオンプレミスAI、LIXONもまた、それらの機能を産業向けにアレンジし、国内や、国外グループの多くに導入を完了していた。そして、業者や職種に応じて、孔明バージョン、LIXONバージョンのエージェントが、すでに国中に広がる勢いを見せている。



 だがなぜか最近この国で、パタリと聞こえてこなくなったことがある。『そんなAIが進化したら、人の仕事無くなっちゃうよね』や、『そんなAI任せにしちゃうと、人は堕落していくよね』といった声。なぜか。それは、そのAIを明白に使い倒している三つの組織を筆頭に、明白な形で『人とAIの共創進化』が進んでいるためである。


 上記三つのサービス、システムは、まさにその『共創進化』によって、とんでもない速さで開発され、社会に価値を生み出し始めたものである。また、AI孔明やLIXONの開発が大きく加速しており、さらにそのサイバーセキュリティや人へのケアの万全性もまた、人が率先して動くことでなされていることは疑う余地がない。つまり、そこの仕組みを掘り下げることは、どの国にとっても大変優先度が高いと考えられ、この調査の必要性を強く訴える。


 某国情報技術機構 調査業務 提案書



――――


 とあるゲーム会社 社内チャット


「今日のデイリーミッションなんだった?」


「ん? 新作シナリオの見直しと、テストプレイ、それと、クリエイターさん、声優さんとの打ち合わせっす」


「なるほど。やっぱ全部孔明とワンセット?」


「そっすね。シナリオもアイデアを膨らませて、試し書きさせて、こっちで書き直して、見てもらってって感じっす。テストプレイも、網羅的に十万回分にはなってるっす。打ち合わせも、彼らにフローを感じてもらうための問いかけ、傾聴は必須っす」


「おおう。本当に使い倒してるなあんた。あたしも、サーバーの負荷チェックしつつ、生成AIのセリフNPCの実用化を目指して奮闘中!」


「あ、おはようお二人さん、すげー勢いでAI使い倒してるな」


「ん? 今起きたん?」


「うん、昨日の夜ゲームし過ぎた。……おっ、やるねぇ孔明、そのグラフィックの著作権チェックは大変だったんだよ。何々、ああ、これは確かにNGだね」


「起きたら仕事が半分くらい終わってるのか。でも最終チェックは本人がちゃんと進める、と」


「当然! 国内のゲーム会社なんて、こっからどう巻き返すか考えるの大変なんだから! 定常業務をさくっとこなして、マーケティングとか、クリエイティビティにステ振らないと!」


「ん? 時間空けて勉強始めたの? さっすが!」


「……なんか僕ら、ゲームのギルド冒険者ばりに働きまくってない?」


「いいんじゃない? それはそれで、転生冒険者感出て来て……あっ、新作思いついた」


「「ウェーイ!」」


――こんな業界でも、確実に人が AIを使いこなし、相乗的に進化を果たしている



――――


 某大学 研究室


「長崎さん、桂さん、久しぶり……ってほどでもないか」


「そうですね。半年くらいでしょうか」


「二人の就職先、いつの間にかとんでもないとこになっていたからね。心配? というよりは、なんというか興味の方が勝るんだけどね」


「でしょうね……」


「ここで学んだ事を使い倒してるとこです! AIとサイバーセキュリティっていうのは、急にホットになりましたからね」


「君たちもあの、とんでもプロジェクトに参加していたんだよね? 孔明が、オタク達の想像力を使って容赦なくLIXONに攻撃を仕掛ける企画。KACKACさんとか、弓越さんとか、有名人が主導だったから、うちにまで取材が来ているんだよ」


「ここから二人入社ってのも、いつの間にか知られちゃってそうですもんね。まあいっか。そうですね。どちらかというと一つ一つのサイバー攻防をどうするか、というよりも、メールやパスワードという、人為的ミスによる脆弱性の大元を断ち切ってしまおう、っていうあの作戦の監修ですね」


「やっぱヒナちゃん、頭ぶっ飛んでるよね? 『セキュリティリスクに、人が毎日さわれちゃうなんていうのは、ホームドアを作らない駅とか、遮断機のない踏切よりもタチが悪いのです』とか言ってたよ」


「あはは、やっぱりだいぶとんでもない子たちがいるんだね。そんな中でも、元気そうで何よりだよ」



「そいえば先生、最近もやっぱり侵入とか試みられてます?」


「そうだね。盗聴器仕掛けようとしてきたり、ネットワークの侵入なんて日常茶飯事だよ。最近はもうLIXONと孔明のダブルで対応してもらっているところだね。それが一番安心なんだよね」


――同社入社の、大学研究室OG。ガードが固く、調査不能。

 


――――


 同大学、食堂


「最近君らの先生の研究室、ミッションシステム入れたってマジ?」


「マジマジ! 去年入社した二人がぽろっと勧めたら、ノリノリで実験し始めたって。なんか修論とか学会発表前の繁忙期ってやつに生産性を感じないって、口癖のように言ってたからね」


「『毎日クリアしていれば、あなた達の研究は、論文や発表も含めて十分なレベルに仕上がる予定です。ダメだったら勧めて来たこの二人のせいなので、気軽に参加してもらえると、って思います』とか冗談で言っていたよ」


「長崎さんはすかさず『最終判断は先生の責任ですからね。もちろんサービスの不具合分としての保証は、法本さんに作ってもらったから、心配しなくても大丈夫です!』とか、すごい返し方をしていたって」


「うへぇ、あの会社、合法サイコパスが増殖するのかな?」


「そだね。製品、サービスの責任と、ユーザーの道義的責任の線引き、とか言ってた」


「あそこがあの人抱き込んで監査法人立ち上げたのって、ここのスピード感と安心感積み上げる、すごい作戦だったんだね。ちなみに今日のミッションは?」


「えっと、モンスターを20体撃退、レアモンスター討伐(オート可)……こっちじゃねえ。関連論文20報の要約生成と、最も今読みたい論文の精読(和訳可)」


「何してんの!? 現実とゲームの区別! ……えっ? ぶふっ! 完全にシンクロしちゃってるよ! 何その奇跡?」


「ああ、これ多分孔明が画面読んで被せて来たやつだ。裁量の範囲でこういう悪ふざけしてくるんだよこいつ」


「アハハ! 何その無駄機能!? いや、でもそれもしかして、あんたのゲーム好きに合わせたパーソナライズってやつ」


「えっ、そうなのかな? まさかね。どうだろ?」


「ん? 確かに僕は数値目標が多いのと、時間をかっちり決めてくるんだよね。多分これ、筋トレ趣味に寄せてきてるんだよ。動いた後だと眠くなって入ってかないだろ、ってか? アハハ、自分だけじゃ気づかなかったね」


「あー、あたしは動画視聴が多いね。『あなたはそちらの方が学習効果が高いようですので』だと」


「なんてパーソナライズ。そしてどんだけ先進的なAI研究室」


「ああ、心配しなくていいよ。うちの先生、後期には学科全体に導入進めるって言ってたから、あんたもすぐ対象になるし」


「なんと!?」


「それと、tAIcもいれて行きたいって言ってたね。結局のところ、最先端の学術研究であればあるほど、実験やシミュレーション、考察の部分は精緻に練られたシステム。だからこそ、その多くは言語化しやすい状況であって然るべき、だってさ」


「とうぜん、そこは研究室ごとのノウハウの塊だから、それぞれLIXON導入して、ガッチガチのセキュリティで管理していくことになるはずだってね」



「そっかー。うちの大学、ソシャゲ系孔明サービス、三つとも揃い踏みになんのか。EYE-AIチェーンは、キャンパス内の安全とか案内とか、学生のケアとかに速攻で使われ始めたからね。でもビジネス寄りの残り二つが、年を跨がずに使われ始めるとは思ってなかったよ」


「なんかすごいギルド、じゃなくて大学になったねー」


挿絵(By みてみん)



――キャンパス内の会話。機密情報ではないが、学生が得ている情報、感じている雰囲気を知るためには貴重な情報。やはり自国も早急に対応すべしと認めざるを得ない

 お読みいただきありがとうございます。第十章開始です。まずは日常シーンです。

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