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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
第三部 九章 魯粛〜陸遜
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百八十七 陸遜 ~陸運の王者 不遜なる頭脳~ 足技

 世界のほぼ全ての国を熱狂させるスポーツは、未だその世界大会の戴冠国が南米と欧州に限られる。

 世界各地にクラブチームを有するそのスポーツは、巨額が動いて欧州五カ国にスター選手が集まる。

 世界各地のクラブチームは、いかにその国々に高額で選手を送り出すかが、一つの経営指標となる。


 そして今年も、ある東洋の島国で、多くのサポーターを熱狂させるシーズンが、すでに佳境を迎えている。



――――

 とある巨大スタジアム 実況席


「今日も満員のスタジアム、カップ戦といえどこの熱気。流石にこの伝統のダービーマッチ、両サポーターも見逃せません。そして本日の実況席には、なんとこの方がゲストに来ていただいています。昨シーズンまでこのスタジアムをホームとしてプレイし、今年ついに欧州トップリーグに移籍、早速8ゴールを決めるなど、世界にも注目をされ始めたこの方です!」


「どうも、みなさんお久しぶりです。清平です。カップ戦で満員っていうのは嬉しいですね! リーグなら結構あったんですけど、やっぱあれですか? この二人が絡んでいるんですかね?」


「あれ、というのは、あれ、ですね。そう。本日は、ゲスト解説に、アウェイチームのスポンサーの一人にして、サッカービジネスの超大物。そして、ホームチームのスポンサーにして、ビジネス界の超大物。このお二人が来ています」


『G.P.スプーンです。同時通訳は孔明だよ。一応こっちが本業だったこともあるから、ちゃんとお話はできそうだから、よろしくね』


「小橋鈴瞳です。わたしは専門じゃないんですけどね。でも今日に限っては、違うからこそ、一般人だから言えることがある。そんな気がしているんです」


「なんか、このブースのの時間単価がとんでもないことになっていますが、もたもたしていると試合が始まってしまうので、しっかり進めていきましょう。清平さん、やはり今日のことは情報入っていましたか?」


「そうですね。代表戦の時とかにも、ここでトレーニングさせてもらっているんですよ。やっぱり小橋陛下の力でガッツリ揃えていただいている施設とか、 AIによる戦術学習、トレーニングシステムとかは、世界でもトップなんで」


「陛下言うなし。あなたのせいで、この業界だとそっちになっちゃっているんだよ。まあいいか。そこに今年からLIXONも試験導入しているんです。ハードウェアはそこそこの更新ですが、とくに育成、調整のアルゴリズムとか、データ分析、戦術検証がらみのことは去年とは段違いなものを提供できているはずです。だよね?」


「そうなんですよ。なんなら僕も、五月まではなかなか厳しかったじゃないですか」


「逆にここ数ヶ月の無双っぷりが、海外でも話題ですよね。代表ハットトリックからの、帰って次の試合のラスト5分で2ゴール。そこから毎試合ゴールかアシストを決めて、ついに先発に定着、ですよね」


「それ、もうメディアでも言われてますけど、完全にLIXONのおかげなんすよ。一回代表でこっちに寄った時に、自分のプレーと、チームの期待とギャップ、そしてこれからあたる相手チームにどう当たるべきか。そんなのを超絶コンパクトにまとめてくれて、必要なVRトレまで。至れり尽くせりの結果、もう一回エンジン掛け直そう、ってやったらこうなりました」


「そりゃそうさ。こっちから大々的に送り込んだ子が、いまいちパッとしないっていうのは、あまり気持ちのいいことじゃないからね。LIXONにはしっかりやってもらったよ。あなたはこの街のヒーローなんだから、世界のヒーローになって当然なのさ」


「陛下が陛下だ……あざっす」



「なんか、時代が変わっていく予感、ですね。あ、すいませんスプーンさん。流石にアウェイなので若干尺は減ってしまいますが……」


『大丈夫だよ! むしろアウェイなのに呼んでもらっている時点でありがたいさ。キヨヒラも、頭使い始めたら伸びるって思ってたんだよね』


「まじか……」


『ああ、日本の有望選手は、みんなものすごくチェックしているからね。代表だけじゃなくてクラブもそうさ。あんまり過小評価しない方がいいんだよ』


「早速日本サッカーについてのコメント、ありがとうございます。それで今日は、どちらかと言うと、チームというよりも、スポンサーの一人としての役割の方が強そうでしょうか?」


『うん、そうだね。試合が始まるまではね。始まったら流石にそっちに集中だよ。それがフットボーラーのあるべき姿さ。うちの会社が半年前に、スペインでやったこと覚えてるよね? といっても厳密には彼らはまだ入ってなかった時だけどね』


「あの伝説の一戦、伝説の孔明VAR、伝説の一ミリ、ですか。故障したVARの代わりを観客のスマホが連動してバックアップし、バックアップどころかものすごくリアルな視点を視聴者や会場全体で共有。最終的にはゲームの質まで上げてしまったと言う」


『そだね。一部の国ではもう引き合いがあって、ちょっとずつ試験を始めているんだけど、もうちょいかかりそうだね。それをね、先に日本でやっちゃおうよ! って、そこのスズメちゃんに相談してみたのさ』


「軽いわっ! まあ実際そんな乗りであなたたちが話を持ってきたのも事実だけどさ。そこにこのライバルチーム同士の挑発までご丁寧にのっけてきちゃうんだから」


「KOMEIホールディングスは、今年から一部に再浮上したこのチームのスポンサーとして、シーズン開始からしばらく後に名乗りをあげていますね」


『そうだね。開幕にはギリギリ間に合わなかったんだよね。会社自体の再編と、開幕が丸かぶりしちゃったからね』


「そうでしたね。あの頃サッカー界はたしか、孔明対三大メンタリストが盛り上がりすぎて、開幕の話題を持って行かれたって嘆いていました」


『アハハ、ボクは関係ないけど、一応フットボーラーとしてごめんなさいって言っておくよ』



「これはご丁寧に。そして、その影響があるのかないのか、いや、間違いなくあると思いますが、その後リーグでもぐいぐいと順位を上げています。戦術の変更もそうですが、明らかに選手たちの調子が上がっていますね。特に四月以降の勢いが凄まじいです」


「あれっ? 四月って、あの映像があった時っすよね? 控え組とはいえ、ホールディングスの社員五人に負けたって言う」


「ああ、あれですか。あれは大きな話題になりましたね。サッカー経験のない女性社員と、AI孔明の連携機能『そうするチェーン』を使い倒した超連動と、全員フローのパフォーマンス。

 そして、あの敗北自体がこのチームの快進撃の始まりになった、というおまけ付きで、都市伝説化しています」


「AIで商売しているわたし達の視点で言わせていただくと、あのチームの変化は、間違いなく孔明の効果です。あそこまで飛躍的に思考力や連携力が向上して、トレーニングの効率化も明らかにあがっている。なにより、計画的にフロー状態をつくってそれを戦術に入れ込むなんてこと、今の所はおそらくAI孔明なしでは相当厳しいんじゃないでしょうか。そこのドヤ顔のおっさんが直接指揮でもしない限りは」


『げっ、スズメちゃん、鋭いね。同じこと考えてたけど、やらないからね。ボクはこのスポーツそのものをもう一段階、二段階上げていくことに熱中しているんだ。コーチするとしたら、そこがある程度目処が立ってから、かな』


「スプーン氏の、将来のコーチ宣言ととってもいいのでしょうか? いつのことかわかりませんが」


『げっ、この実況さんも鋭いぞ?』



「失礼しました。話が大きくそれましたが、本日のカップ戦、事前にご発表がありましたとおり、その観客連動がたVARが、ついに本格始動、と言うことです。観客の皆さんは、スマホを構える必要なく、ゲームの方に集中していただくため、専用のメガネ型端末が試供されていますね」


「そうそう、みんなメガネかけているんですよね今日。あれ相当いろんな機能あるって」


「ズームや視点切り替えも、スマホのAIアプリ連動でできるそうです。アプリを入れて、中でLIXONが動いているんだとか」


「今日はLIXONなんすね。スペインの時は孔明でしたよね?」


『みんなにアプリをいれて、っていうスタイルなら、孔明でもLIXONでもできるんだよね。このスタジアムはサポーターに配ってそれができるからね。うちのホームはお金ないから、孔明じゃないとできないんだよ』


「お金だけで解決したみたいに言うな。結構技術的にも大変なんだからね。現行だと孔明とLIXON。海外でも本家の最新モデルがそれなりに事前準備してやっとできるレベルだと思います」


『そうだね。急速に技術が発展しているからこそ、そのインフラを整える側は、そこをしっかりと世の中に返さないといけないんだよね。それを必ず優先し続けているスズメちゃんたちは、やっぱりすごいんだよ』


「僕らがサッカーできているのも、日本人が海外で活躍できるようになってきているのも、サポーターやスポンサーさんたちの理解があるからなんですよね」



「そういうことですね。あっ! 選手が入場してきました。綺麗な赤と白のコントラスト。この地域に縁の深い、さながら源平合戦のような様相。互いに二部への降格という苦い経験はありつつも、すでにこのダービーマッチは、伝統として根付き始めています」


「あ、僕たちのメガネもあるんですね! 早速。おお、切り替えると、最前列の人たちから取った情報で、選手たちの表情も見えるんですね。なんか、ピッチに立って見ているみたいです」


「そうです。このメガネは、ピッチビュー、サポータービュー、バードビューと、視点を自由に切り替えることができます」


『しかも、試合の状況や、観客自身の反応から判断して、一番いい感じに見れるところに視点を移動する、おまかせビューなんてのもあるんだよね?』


「なんだこれ。選手以上の視点が、観客全員のものになっているってことっすよね?」


「そうですね。最新のAI技術。それを真っ先にこの、世界最高のスポーツエンターテイメントに全力で適用した。大周輸送とKOMEIホールディングスは、それが最善と判断したんです」


「私たちがいるのは、一つのカップ戦、そして一つのダービーマッチではあります。ですがそれ以上に、一つの時代の分水嶺、その頂上に立たされている。そう言う理解をするのが良いのかもしれません」


「もしかしたら将来、ヨーロッパのリーグで固定されている状況も、いかに最善の環境を提供できるか、と言う勝負に変わってくるかもしれないですね。僕自身はどんな時も、とにかくいい試合、いいプレーに全力を尽くしたいところですけどね」



「時代が変わっても、その主役はつねに、ピッチに立つ二十二人の選手たち。それは変わりません。その選手たちを五万の観客が見つめ、そして何人が画面の向こうで見つめているのでしょうか。まもなくキックオフです」

 お読みいただきありがとうございます。

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