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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
第三部 九章 魯粛〜陸遜
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百七十五 呂蒙 ~三日会わざれば 刮目して見るべし~ 三雄

 鳳小雛と弓越翔子は、KACKACとともに、AI時代のサイバーセキュリティの強力な一手として、オタクと協業を開始する。

 常盤窈馬と法本直正は、J-YOUとともに、AIとの協業で効率化する人々の、労務規定の変化について具体案を詰め始める。

 鬼塚文一とG. P. スプーンは、TAICとともに、三人が成し遂げた、観客の端末を連携しVARを代替する機能を実用化する。



 それぞれの事業に対して、上記3名を除くKOMEIホールディングスの新入社員15名が、5人ずつに分かれて随行する。その5人ずつはそれぞれの力量とそれぞれの考え方の範囲で、プロジェクトに携わっていく。


 と言うくらいに、彼らが考えているかもしれない。だがそうはいかないのが、AI孔明と出会ってからとんでもない進化をとげてきた学生3人と、それをそれぞれの視点で見守りながら、社会の最前線で働く会社幹部のやり方といえる。



「今ちょうど、格好のターゲットがいるのです」


「産業界は、格好のモデルケースが存在します」


「遠くないところに、格好のライバルがいるぜ」


 彼らは似たようなタイミングで、こんな似たような結論に至りつつ、全く別々のやり方で、このKOMEIホールディングスが誇る新事業を、形にしていく。



――――

 とある区役所 真新しい会議室


「えっと、ヒナちゃんと翔子ちゃんに、KACKACさんか……これ混ぜて大丈夫な組み合わせ? 白竹君、どう思う?」


「大橋先輩、開口一番に危険物扱いはちょっと。まあ懸念は重々理解できますが」


「ねえ鳳さん? これ大丈夫なやつ? いきなり『改造人間、合法サイコパス』にさせられたりしないよね?」


「い、今の所大丈夫なのです。あの人は、監査法人という、天職の方向性こそこの方に見出されましたが、根っこのメンタルとか、お顔のアバター度合いは、天然物だって聞いているのです」


「むむ、大橋ちゃん先輩、そのノリで始めちゃうと、この子達は永遠にノリボケ続けるっすよ? それはそれでエンタメとしてはありだけど、流石に新人研修兼ねているので、この翔子ちゃん後輩も、流すわけにはいかないっす」



「あはは、そうだね。最初のおふざけはこの辺にしておこうかな。

 改めて皆さん。AI孔明には、それはもう大変お世話になっております。特に私達が開発運営母体になっている、地域内見守りネットワークアプリ『EYE-AIチェーン』の誕生には、そこにいるヒナちゃん達が鍵になったことは、みなさんよくご存知かと思います。地方自治体の中で、AIがらみのいろいろ諸々を担当しはじめている、そこいら辺の公務員、大橋朱鐘です」


「補佐役の白竹です。今回はシンプルにサポート役になりそうですね」


「私もここで自己紹介ですか。KACKACこと郭鷹孝文です。AI孔明との対戦のおりには、世間を大変お騒がせしたようです。この先のAI戦国時代の織りなす暴風から、市民の皆さんをお守りすることこそ、我らに課せられた新たな務めと心得ています」


「それでカクちゃん、なんでいきなり大橋ちゃん先輩の所にしたのかな? 一旦社内で、あなたと新卒の顔合わせとブレストとかでも良かった気がするんだけど」


「そうですね翔子さん。それでも良かったのですが、新卒の方々の経歴を参照したところ、いわゆる『普通のサイバーセキュリティ』には明るい方々が多かったのと、私の話はあまりに直近すぎて、このAI時代の皆様のような、情報の取り込みが速い方々にとっては、やや冗長と思いまして」


「なるほど。正確ではないけど、いわゆるAIネイティブ、だね。それで、『普通』はそこの飛将軍パワーでかっ飛ばしてしまえ、というわけっすね」


「し、新入社員の皆さん、あ、いや、私もそうなはずなのですが。このいろいろ前提をかっ飛ばしたやりとりが、この人たちの標準になってしまっているので、適宜手元で孔明などの解説を使いながら、上手いことやってもらえるといいのです」


「そうだねヒナちゃん。でもさ、ヒナちゃんはちょっと違う感じで孔明使っているよね。ちょっと見てもいい?」


「あ、え、あ、はい。どうぞ」


「むむむ、これは……相当やりとりがかっ飛ばされながら、気づいたこと、それぞれの表情から見て取れること、会話の端々の違和感や説明不足。そんなのを全部ぶん投げつつ、チラ見だけでやり取りを続けているんだね。これがヒナちゃんのやり方なんだね」


「お、大橋さんは……あら、これは人間と対話しているように、すごく丁寧に情報を入れて使っているのですね。一往復ずつがすごく長く、情報量が多いものになっています。だけどたまに孔明の応答がポカンになっているのです」


「えへへ、それでもなんか帰ってくるから大丈夫なんだよね。翔子ちゃんは、見なくてもわかるよ。パパッと入力して、孔明からすごい分量の返しが来るんでしょ? あなたは対人のコンサルの時も、その引っ張り出しては傾聴する力がずば抜けているんだよ」


「KACちゃんも、初戦で人間とAIとの差を意識するようになって、だいぶ使い方変わったんすよね?」


「はい。人間、AI双方に存在するバイアスを意識して、あくまでもパートナーとしての活用を心がけています」



「い、いろいろあるのですね。そんな中で、今度は『使うAIツールの側』や、『それを使いこなしているユーザー』が、どんどん広がります。その中からは、公式側の倫理規定や、孔明などのAI由来の善悪判定をかい潜る人が現れるのは確実です」


「なんと、この流れで本題に戻すのがヒナちゃんとは……そうっす。グレーやブラックのハッカーは、人も組織も必ず現れる。それに、AIも。それは免れ得ないっす」


「だからまず、私や小橋ちゃんは、JJさんや法本さんと言った、法に詳しくて影響力のある人の手を借りて、まず『表』を固めることにしたんだよ。つまり、加害者側の、これはいい、これはだめ。被害者側の、これは大丈夫、これは危ない。それを一通りの基準として作り上げるところだね」


「そこは着々と進めていると聞いているっす。スズちゃん先輩も、LIXONが世に出るタイミングではそこのガイドラインに準拠しておきたい、というイメージをして、開発と策定のスピードを相乗的に加速しているっす」


「そこで出てくるのが、その規定を守らない、もしくはすり抜けようとする奴ら、ですね。そしてその攻撃の手腕がどんなものなのかは、人間の想像力や、その組み合わせから生まれる、というのが現在の結論です」


「マジでAIが独自に考え始めたら、のところは後っすね。で、想像力=オタク、という、先輩のシンプルな論理から生まれたのが、このKAC&SHOWプロジェクトっていうわけだよ」


「それで、『想像の限りの攻撃パターンセット』や、『攻撃のシミュレーション』は、どんどん充実して行っています。サイバー関係の専門家や、そうではないSFファン、戦記ファンなんかが、どんどん協力して。そしてそれを、固まり次第孔明にぶつけてみたりをしています」



「修士卒の長崎さん、桂さんなんかは、元々セキュリティの分野だったので、この辺の攻防シミュレーションは、主な担当になるかもしれません」


「そうだねヒナちゃん。そのイメージはできているよ。でもそれには問題があるんだよ」


「多分皆さんもそこには気づいているんですよね? ここにはエンジニアの方もかなりいると聞きました」


「長崎さん、桂さんね。その通りさ。言い方はアレだけど、私達が自由に攻撃を加えていい相手が、孔明しかいないんだよね。そうすると、うちのエンジニアさん達に聞いても、どっかでその練度がどうしても頭打ちになる、ていう言い方なんだよ。そうだよね孔明?」


『はい。残念ながら、攻防のシミュレーションという意味では、原型が同じモデルの場合、それ自体のもつ脆弱性を、簡単に把握することはできません。それに、論理の方向性が似てくるので、攻撃側のソースもパターン化してしまう可能性もあります』


「つまり、自分相手での練習試合には、どうしても限界がある、と」



「あ、そ、そこは大丈夫なのです。今ちょうど、格好のターゲットがいるのです」


「ターゲット? 鳳さん、どういう……ああっ!」


「そ、そうです。いるのです。ちょうどあそこに、自分たちの独自システム。産業だけでなく、おそらく政府機関やインフラ、医療、防衛なんかも想定顧客としているであろう設計思想。だからこそ、その堅牢性と、品質を担保しておきたい人たち」


「そうだったね。おそらく産業向けに設計されている可能性が高い、オンプレミスながら外から監視をするというコンセプト。だとすると、そのアタック先は多様も多様。場合によっては反撃すらも期待できる」


「そういうことです。これが、『顧客ニーズの理解』なのです」


「黒ヒナちゃん、爆誕……」



――――


 某大学 客員教授室


「皆様、やや狭いところで恐縮です」


「それにしても、二人同時においでとは」


「メディアの前には片方しか出ないというだけですからね。二人とも、普段は大学に席を置いていて、たまに行き来するので、この辺りの学生とかであれば、私たちのツーショットを秘蔵している人もいるかもしれません」


「それをSNSにアップしたところで、巧みなコラだとか、AI合成だとかで叩く者すらいるからな。その辺りは善も悪も些少ゆえ、いちいち気にはしない」


「それで、妹の私は、常盤様とはお会いしたことがあり、IQお姉様は、法本様にバトルを仕掛けておいででしたね」


「そうですね。ということは、自己紹介は不要ですね」


「ねえねえ常盤君、この人たち、ほんとに本物?」


「ああ、馬原君。大丈夫さ。ここに画面とかはないからね」


「あ、大変失礼いたしました。私は、法本代表の元で、監査法人に配属となりました、馬原岱と申します」


「彼は一言で言うと、暴走気味の鳳さん、鬼塚くんのブレーキ役です。ちなみに、この常盤くんまでそっちについたら、それは暴走ではなく何らかの破壊的イノベーションなので、それを止めるシステムは弊社には存在しません」


「なるほど。二対二ならなんとかなる、と」


「そんなパワーバランスですか」


「ちなみに、彼の兄で、孟起君というのも、似たような役回りです」


「二対三、ですか。いずれにせよ、あなた達の正義が陰に隠れない事を期待いたします」



「それで本題ですが、皆さんが進め始めている、労務規定の件ですね。このメンバーで煮詰まっているとしたら、やはり現場感への対応力の薄さですか?」


「常盤くん、やはり君にブレーキは無理らしい。二人がいないと自分がアクセル踏むのか。それも、瞬時に合理を組み立てる」


「法本さんもそうしたいのでしょう? それに、JJのお二人も、はやいとこ問題の根っこを話したがっていそうだったので」


「えっ? お姉様はともかく、私がですか?」


「YOUちゃん、それはどう言う意味かな? おほん。そんな兆候があったのだろうか」


「時計を二回ほど見ていましたし、出てきた飲み物やお菓子も片付けやすいものなので」


「なるほど。これがあなたの力、ですか」


「まだこの程度では、価値として世に出すレベルではありません。すでに一挙手一投足がそうなりつつある鳳さんや、突発的に価値を引き出す鬼塚くんとはまだ差がある」


「若者よ、焦るなかれ。結局のところ、人とあい交われるのは、人の感覚を持ち続けられるもののみ」


「IQさん、ありがとうございます。それで、話を戻しますが、やはり多様な産業界のデータや、実例を集めるのは必須ですよね」


「間違いなくその通りです。そこは非常に集めにくいのですが、少なくとも柱だけでも欲しいのですよね」


「網羅的に集めていきたい部分は、別途社内でアンケートアプリを作り上げていく予定です。ですが、YOUさんの言う、柱、ですね。それなら話は簡単です」


「えっ!?」


「産業界は、格好のモデルケースが存在します。それこそ連絡一本でモニター調査が返ってくる」


「あ、ああ、あそこですか。確かに、最近業種のラインアップに、製造業まで加わりましたし、『ミッション型業務管理システム』は、それが生まれた地でもありますね」


「はい。遠からずデータも溜まってくるでしょう。公益性の高さ、社会的インパクトを考えたら、応じてくれるのは間違いありません」


「左様ですね」



――――


某巨大スタジアム 敷設屋内ミニコート


「それで、あの『伝説の一戦』の原動力となったシステムの、国内最初の実施例として、この試合を、ですか。あなたも現役時代とは打って変わって、派手な動きをなさいますね。『不可視の魔術師』さん」


『アハハ、そうだね。まあ現役時代と違って、陰に隠れるメリットは大きくはないからね。それで、どうなんだい?』


「一言で言うと、課題山積、です。この国の腰の重さは、ご理解いただいているはずだ」


『なるほど。そしたら、その辺は軽いステップで崩してあげないとね。若者達よ、よろしく頼むよ。差し当たり、5対6のミニゲームだ』

 お読みいただきありがとうございます。

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