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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
第三部 九章 魯粛〜陸遜
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百六十七 魯粛 〜巨大企業の大魚 新事業は粛々と〜 温泉

 大周輸送は、2030年までに、運輸部門を除く全事業で、温室効果ガスの排出実質ゼロを宣言している。

 大周輸送は、2026年までに、独自AI、LIXONの開発完了と、産業向けのサービス開始を宣言している。

 大周輸送は、2035年まで、グループ全事業の持続成長に向けたロードマップと投資計画を公開している。


 そして、大周輸送は嘘をつかない。


 つまり、先ほどの三つは全て同時に達成することは、社会にとっては決定事項とされている。しかし今回ばかりは、「排出ゼロ」と、「スパコン、データセンター増設」を同時に達成するのは困難という見方が主流にならざるを得ない。


 だが、それも含めて「決定事項」なのが、魚粛敬子の魚粛敬子たる所以である。



――広告――


 都心から新幹線で一時間半、車でもアクセス良好、最新VRをフル活用した、総合アミューズメント施設!


 揚水発電施設が直結した、革新的データセンターの見学コースは、子供や家族、未来を担う全人類必見!


 排熱をフル活用した「AI給湯システム」で、この理想的立地のリゾートに不足していた「温泉」が誕生!


 ウィンタースポーツの聖地が、老若男女全ての憩いの場、そしてワーケーションの聖地に生まれ変わる!


 大周グループ監修、電力完全自給型、学びと遊びの総合リゾート『Ground Village〜陸村〜』2025年末プレオープン、8月、予約開始!


―― アイちゃんねる 幼女vsおタカお姉ちゃん 後半――


「なんか、広告が完全にちゃんねるに連動していたんだよ! 揚水発電直結? AI温泉? 質問と興味が渋滞しているんだよ!?」


「アイちゃん様、大丈夫です。一個ずつちゃんと解説していきますからね」


@とりあえず今の広告が、「答え」ってことだよな?


@「問い」は、前半最後にお姉様が仰せだったよね?


@だが、「解法」が、まだ一つも分からないんだよ?



「まず、電力問題に関して、お嬢様から、ラフ案のご提示がありました」


「ラフ案。つまりあれだね! 魔女の無茶振り、だね! パパとか孔明がよく食らっているんだよ!」


「そうとも言います。中身は、『持て余し気味になっている、国内の揚水発電施設を、スパコンつきデータセンターの電力供給兼、冷却インフラに使えたりしない?』でした」


「えっと、揚水発電は、学校では、高学年の人たちが社会科見学しているみたいだよ! だから先にちょっと孔明に聞いたことがあるんだ!」


「それはそれは、効果的な予習ですね!」


@その社会科見学、来年からその『陸村』になるの確定だな


@データセンターつき揚水発電なんて、世の中にまだないよね?


@コメント走るな! 散らかる! 順番に聞くんだ!



「普通の水力発電が、ダムから水が流れる勢いで発電しているんだよね? それでたしか揚水発電は、電気が余っている時に、その発電機を逆回しして、電気を使って水を組み上げる、おっきな蓄電池、っていうイメージだったよね?」


「その通りです。特に将来、太陽電池が大きく普及した時のために、蓄電能力の拡大が必要とされています」


「そうだね! 太陽電池は、お昼しか発電できないもんね!」


「はい。ですが、一部の揚水発電所では、まだ周りに太陽光発電が増えきっておらず、少しその能力を持て余し気味の施設も存在します」


「なるほど。あれかな? にわとりさんと卵さんってやつかな? どっちが先になってもちょっと困っちゃうやつ?」


「そうですね。その通りです。ですから、少し活躍の場を増やしてあげる必要があるかもしれない。そんな状況を、お嬢様は意識していました」


@エネルギー問題、本来は事業の外なはずだけどね


@世の中の問題に、わたし達に無関係なものはない。これ魔女の十八十八番の一つだったよね


@実際、排出量関係の話は、あらゆる企業に直撃しているよね今?



「うんうん、ママならそう言うおっきな社会問題は、全部頭に入ってるんだね! それで、言われたおタカお姉ちゃんは、なんて答えたの?」


「とりあえず、一年目の予算を申請しました」


「ん? それだけ?」


「はい」


「ん、まずいんだよ! これだと説明になってないんだよ! ママの無茶振りをどう処理したのかが大事なんだよ!」


「ふふっ、冗談です。あ、いや、事実は事実ですが」


@事実が冗談になる女、魚粛敬子爆誕


@国内最強レベルの無茶振りに、秒で予算計画で返すやりとりが事実だとしたら、それ以上の冗談は存在しないんだよ!


@事実は冗談よりも奇なりってやつだな



「実際、予算計画に関しては、大きな変更がないという程度の意味でしかなかったのです。すでに野呂君から、LIXONの設計思想と事業計画に照らし合わせた、詳細な技術要件は聞いていたので、一番お金がかかるデータセンター周りは、すでに数字が出ていました」


「つまり、いくらくらい必要、っていうことだけで言えば、ママの無茶振りが大した影響なかったってことなのかな?」


「そうですね。ママの無茶振りをしっかり見直すと、コストが増える方向の提案ではなく、むしろ元からあるリソースを有効に活用しましょう、っていう提案なんです。持て余している揚水発電所。そのデータはすでに見ていたので、何パターンかを考えても、大体予算は同じくらいのところに落ち着きそうでした」


「うーん、つまり、お姉ちゃんの言いたそうなことを逆に考えると、予算以外のところには、即答できないところが結構あったってことなのかな? だから、とりあえず即答できるところだけ即答して、ママを安心させた、ってことになるんじゃないかな?」


「ふふふっ、さすが親子、さすがアイちゃん様です。全てその通りです。お嬢様のアイデアを最大限に活用するには、その後具体的なプロジェクトとして、本人や野呂君をメインに、時折外部の専門家を交えて、繰り返し二週間ほど議論を重ねました」


「その結果生まれたのが、AI温泉?」


「はい。最新のスパコンやデータセンターの大きな課題が、電力をたくさん消費することと、しっかりと冷却しないといけないことなんです。特に冷却は、最近は空気で冷やすのではとても足りず、水やそなたの冷媒を流して冷やすのが、今は主流になってきています」


「水を流して冷やす……あっ! すぐ近くにお水があるんだよ!」


「その通りです。揚水発電所、と言ったお嬢様の論理は、そこも含めて全て繋がっていました。データセンターの課題である電気と水。それを同時に解決してしまうのが、揚水つきの水力発電所だったのです」


「お水がすぐ近くにあるから、しっかりと冷やせる。発電所の近くなら、土地も十分ありそうだね!」


@アイちゃんがすごいテンポで言い当てる件


@純粋にその場で考えて答えているテンションだよな。事前に聞いたわけでもなさそうだよ


@論理という意味で、本当にママの面影を感じるね



「はい。都市部やその近くに建てようとすると、どうしてもスペースを考えた設計になります。それは必ずしも冷却効率は最適化されていません」


「よくあるデータセンターの写真の、コンピュータがぎゅーってなってるやつだね!」


「そう、その感覚です。一方、今回のやり方なら、冷却水の水路と、スパコンの回路周りを同時に設計ができます。しかも土地も結構足りているので、どうやって冷やすか、どうやって電気を供給するか、に集中できます」


「広いと、なんかあった時に修理もできそうだね!」


「はい。修理だけじゃなくて、もっといいものができた時に、新しく入れ替えるのにも便利です」


「それで、いっぱいお水使ってコンピュータ冷やすと、たくさんお湯ができるのかな?」


「そうですね。お湯というのは、わざわざ作らないといけないものです。なので、排熱を利用する、というのはとっても環境に優しく、お財布にも優しいんです」


「温泉がそうだもんね! 他にもいろんな使い方ができるのかな?」


「はい。長期的には、半導体工場との連携もあり得ますね。この場合、工場も熱を出す側と使う側の両方があるので、もっと複雑になります。でもうまくいくと、私達が欲しい半導体が、すごく環境にやさしい形で手に入ります」


「半導体。コンピュータに絶対必要なやつだね!」


「はい。特に洗うという作業で、お湯を大量に使うので、この施設の考え方はすごく重要です。また、農業や養殖などへの利用も考えられますね。現地で取れる美味しいものの種類が増やせるかもしれません」


「すごいね! それができたら、もっとお客さんがいっぱいくるね!」


「はい。お客さんが来てくれること自体も嬉しいですが、それに加えて、そのお客さんたちが、最新の環境技術や、AI技術に身近に触れてくれるというのも、すごく大事だと考えているんです」


@技術をアピールして、より安心して使ってくれるようにするんだね


@確かにいろんな説明聞いたとしても、LIXONの設計思想なんてそう簡単には理解できそうにないからな


@あの観光地に温泉があって、別の目玉ができて、しかも美味しいものが増える? なんかとんでもない村ができそうだぞ



「ねえねえ、でもそんな難しいことの設計って、野呂お兄ちゃんだけでできるの?」


「いえ。彼はどちらかというと、ソフトウェア。つまり、AIなどの脳みそや、考え方の部分が専門です。なので、少し厳しいですね。でも今回、私たちには強い味方が加わることになります」


「味方……あっ! おひげのおじさんのところだ!」


「そうです。おひげのおじさん自体は元の会社に残りますが、あの『桃園製造』は、ハードウェア設計、そして装置の製造が専門です。なかなかできない複合的な設計や、水冷システムまでしっかり視野に入っているので、その力を最大限に活かせそうなんです」


@ここであの買収前倒しが、思いっきり効いてくるのか


@赤壁ばりの連環計だぞ! 策が何重にも繋がってるぞ!


@確かに彼らなら、オンプレミスの機器設計まで視野に入るな。無駄がない



「彼らを預かる以上、最大限にその価値を高くする。それができない企業買収を、私達の会社ではM&Aとは定義していません」


「言葉の定義? まで、ママとかその先代さんとかの考えが入っているんだね!」


「はい。もちろんです。そしてこの電力完全自給式のスパコンとデータセンターを設計、構築する過程で、私たちの経験値も大きく伸びます。そこで出てきた課題感や、新たな気づきをも、LIXONと大周輸送は学びと変えていきます。そして皆様にとっての最良の未来、これこそが私達、国内最大物流企業が、皆様に対して『お届け』したいものなのです」


「お届け物……すごいのが届いたよ!」


@僕らの最高の未来。そんなものがお届け、なんだね、


@未来を届ける。それが魔女様やおタカお姉様、あの組織の皆様のやりたいこと、ですか


@これは、そう簡単に「立ち向かう」こともできそうにないね



「ふふっ、問題ありませんよ。私たちは、皆様からのお届け物を丁寧にお預かりし、しかるべき時、所、相手にお届けする。それがケンカや挑戦状であっても、私達の対応に差は生じません」


「えへへ、最後すごいまとめ方になったね! それじゃあ、今日のアイちゃんねる、週刊自由研究はここまでにしたいと思います! 次回は多分、おひげのおじさんです! それじゃあバイバイ!」


「失礼いたします」

 お読みいただきありがとうございます。

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