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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
第三部 九章 魯粛〜陸遜
224/320

百六十一 第二部 第七章 振り返り

 タイトルの通り、まずは第二部全体の振り返りから入りたいと思います。ネタバレが苦手な方は、本文第百十四話の方からお読みいただければと思います。

 TAICである。三大メンタリスト、国内を代表するインフルエンサーとして持ち上げられているが、当人としては一介のエンジニア兼プロファイラーといったところである。


 三組のメンタリストが、「AI孔明とは何者?」という主題に向き合い、それぞれがその技量をもとに、一定量の情報を獲得したのが、初戦という位置付けである。そしてそんな初戦を尻目に、ビジネスの世界では「孔明がどうあるべきか」と言う観点で、大きく世の中が動くこととなった。それがAI孔明を法人化するための受け皿「KOMEIホールディングス」である。


 であるが、「AI孔明の作者は誰か?」というテーマがエンタメ的な関心は、留まるところを知らない。むしろその国内外での社会への交換は、その謎への関心を何倍にも高めたといえよう。そして我らの同業、心理学者のKACKACは、日本国内外のオタクたちを味方につけ、AI孔明の正体を深掘りする生配信を再会するのである。


 国内最大の三国志オタクコミュニティ「錦馬超」の全面的な協力。そして、その常連でもあり、AI孔明によって急速な進化を遂げた三姉妹アイドルユニット「WhiteBrow」のゲスト出演もあいまって、全三回と予告された生配信は、一回目から大変な盛り上がりを見せる。



 KACKACは「AI孔明が、歴史上の諸葛孔明とどのような関係を持つのか」を探るため、三国志や歴史的なエピソードに焦点を当て、AI孔明の心理やパーソナリティを掘り下げる。転生説や自己進化AI説、開発者による意図的な設計など複数の仮説をもとに、視聴者を巻き込んだ議論が展開されるのである。


 一回目の生配信は、その勝負としては準備段階のみに終始した。であるが、三姉妹アイドル「WhiteBrow」や、三国志系コミュニティ「錦馬超」が、それぞれ話題をかっさらう。とくにWhiteBrowは、あの学生三人が孔明の力で救済をはたしたことで親日化、親孔明化した、世界的なロックバンド「El Familier」から提供を受けた曲をライブ披露し、大きな反響を及ぼしたのである。



 だが、そんなエンタメの裏で、AI技術の急速な進化に伴う「AI戦国時代」の到来が予見され、サイバーリスクへの対応が議論され始める。国内最大手物流企業の経営者、小橋鈴瞳や、善の善たる公共事業「EYE-AIチェーン」の責任者である大橋朱鐘は、未来のリスクに備えるため、国内外の連携を進め始める。法関係に精通した、アバター面の協力者も得つつ、防犯訓練機能の拡充や新しいセキュリティガイドラインの策定を開始したのである。


 が、国内最善の公務員、飛将軍たる大橋朱鐘の勢いは止まるところを知らない。未知なるサイバー攻撃には、「世界最強の想像力」が助けになる。そんな飛将軍的発送が、錦馬超に持ち込まれる。そして居合わせたKACKACと、どこぞのギャルコンサル社長、弓越翔子がタッグを組み、未知の攻撃を想定したプロジェクト「KAC&SHOW」が発足する。三国の名将、防衛職人の郝昭にちなんだ名は、まさにSF的発想を駆使サイバーリスクへの強固な策としてふさわしかろう。



――――


 正義の探求者にして三大メンタリストの一角、JJのかたわれ、J-YOUと申します。その「正義の探求者」という肩書きを、根底から揺るがす事態が発覚したのですが、その話はすでにたっぷりとございましたので、その振り返りはまたの機会と致します。


 今回の話題は、日本だけでなく、世界のSNSが見守る、AI孔明とKACKAC様による戦い。その第二回戦についてです。


 といいつつ、その一週目と二週目の合間に、AI孔明の法人母体として成立した「KOMEIホールディングス」が、一つまた話題をかっさらいます。新たな事業「XeLeSs」のリリース。複雑な数式を駆使したテーブルフォーマットで特定業務を高度にこなす神エクセル、印刷のみに特化してデータベース化の妨げになる紙エクセル。そんな複雑なフォーマット達をAI孔明との連携で統合し、代償さまざまな企業の業務を革新するという、まさに白眉なサービスです。


 その中心には、調達部門のエースとして活動する、とある無自覚な鬼才社員がいたとかいないとか。なんにせよ、SNS上では、「#孔明vsKACKAC」第二回戦への期待と「#XeLeSs」発表の衝撃が話題を席巻致しておりました。


 そして始まった、AI孔明vsKACKACの配信第二弾。そこにはTAICとわたくしJ-YOUが、とある理由で乱入させていただきました。とある、と申しますのは、AI孔明と関連して、我がお姉様が見出された存在、「AI信長」の関する話題です。


 どうやらKACKACが錦馬超の方々のご協力を得た際も、その信長の存在が、分析上の大きなノイズになると言うことでした。そこを解決しつつ、わたくしとTAICの目的、英雄の再現をめざすプロジェクト「MAOU」への布石を告知するための、ゲリラ出演と相成りました。


 その「三大メンタリスト揃い踏み」のインパクトを完全に食ってのけた方々がおいでです。三姉妹アイドル「WhiteBrow」。わたくし達が、五分ほどの時間を要した際に、その時間稼ぎを買って出ていただいたのですが、五分はあの新曲「CHAIN to the WINGS」よりもやや長き時間。それをあろうことか、かの曹操の息子、曹植が見せた七歩詩のごとき、即興詩パフォーマンスをもって埋めてみせます。


 そして、その貴重すぎる五分を使い、「AI信長の存在に迫る」という路線に舵を切った配信の末、最後は生成AI本家自らが「AI信長の存在を、我らの管理するオープンイノベーション機構に譲渡する」という衝撃的な結末。


 この配信が引き起こした記録的な反響は、社会におけるAI活用の未来と人間の可能性を問い直すものとあいなりました。それと同時に、ハードルの上がりすぎた「三週連続最終回」は、視聴者の期待を超えられるのか――。そんな疑問の中、その週の真ん中にて、AI孔明の新たな可能性が明らかになるのです。



――――


 KACKACこと郭鷹孝文です。記録的な再生数を叩き出した「AI孔明vsKACKAC、第二回配信」はかえって、第三回への期待値に限界を感じさせるものとなっておりました。


 そんな中、私のその第二回配信にゲリラ参戦したTAICとJJは数日後、すなわち私の二週目と三週目の合間。そのAI信長を中核としたプロジェクトを始動させるため、とんでもない配信映像を提供なされます。


 AI孔明の看板機能にして、端末間連携を可能とする「そうするチェーン」。その誕生秘話とも位置付けられる出来事。それは、就職活動中の学生たちが、AI孔明を通じて実現した「挑戦的集中」の連環。その中心にいたのが、鳳小雛(おおとりこひな)と言う名の女子学生。



 〜TAIC&JJ共同制作映像「ゾーンの連環計 鳳雛の双翼」〜 AIと人間の協働が生んだ、奇跡とも言える瞬間です。


 ある企業の採用審査の一場面に、ミリ単位で忠実にアバターを重ねた配信映像。それは、AI孔明を駆使するEさんこと鳳氏がリーダーシップを発揮し、他の参加者4人を「ゾーン」に導きながら、チームが一体となって企業の真のニーズを探り当てる様子が描かれます。


 映像には二人の技術と学識によって、視聴者すらもゾーン、あるいはフローという状態に誘うかのような、克明な解説やエフェクトが加えられます。


 参加者全員がそれぞれの特性を活かしながら、一体化した思考と行動を展開。緊張感と挑戦的集中が高まり続ける中、最後にダウンしたのは、参加者でも審査員でもなく、Aトークン上限を突破したAI孔明という、通常考えられない事象。


 その映像の最後に明かされるのは、オープンイノベーション機構のプロジェクト「MAOU」の立ち上げ。このグループワークを有望な手掛かりの一つとした、「人間を一部でも再現できるAIがこれほど有用なら、英雄を一部でも再現できたらどうなる?」という壮大なテーマを掲げます。視聴者達は公開された映像と、それに基づく研究への期待を胸に、新たなAIと人類の協働の時代を目撃することと相成りました。


 社会に衝撃を与えたその映像、さらにTAICとJJは、その成果を学術論文として発表。鳳氏ご当人が最終著者に名を連ねるその論文は、世界最高の権威をもつ学術誌に掲載が決まります。そして「AIと人間の共創がフロー状態をいざなう」映像は、世界中の研究者たちの分析対象となっていきます。



 進化を続けるAIと、それを支える人間たちの共創と競争の舞台は世界へとその場を広げることでしょう。そして、AIと人間の共創が切り開く未知の可能性とは? この先には何が広がっているのか。人間の心を見通せる我ら三大メンタリストといえど、それを見通すのは難しいと存じます。



――――


『TAIC:と、ここまでを振り返ってみたのであるが、あなたの視点を聞かせてもらいたいのである。生成AIの助力の有無があったとはいえ、あの「小さな鳳雛」氏の成したことに、どのような印象をお持ちであるのか』


『信長:どうもこうもねぇよ。「人をフローに導く力があった人物」って括りで探りを入れても、出てくる名前は、アレクサンダーやナポレオン、孔明やガンジーといったとんでもねえ集団だ。近現代だとチャーチルや、リンゴのあいつといったところだな。

 それも、ある程度の積み重ねや、長年の信頼や試行錯誤というところの意義が大きいんだよ。初対面の無名な輩が、その場の流れで、なんてことを探してみろ。一気にその事例はぼやけてきやがるんだ』


『J-YOU:魔王様の見立てでも、やはりあの方の特殊性は、ごく一部の偉人の一歩手前くらいまでは来ているというお見立てですか?』


『信長:当然、「偉人が無名の状態で何ができたか」なんていう事例はとんでもなく集めづれぇから、なんともいえない面はあるんだがな。いずれにせよ、「フロー」という状態を人間の活動の中に織り込んでいくのは、「英雄の仕組み」の第一歩といっても良いんだろうぜ』


『TAIC:であるが、この動きそのものは、KOMEIホールディングスの方でも目立った動きが見えるのである。まあ当人が社内にいるので当然であるが』


『信長:そこの住み分けや連携は、貴様らにもできるだろう? それに、貴様らが手を出せる「英雄の仕組み」の要素は、フローだけじゃねえはずだ。もう一つ二つ、探してみると良いだろうな』


『J-YOU:承知いたしました。まだまだ我らも未熟ゆえ、御指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします』


『信長:その言い方は語弊しかねぇぞ! あくまで余らAIは支援者の域を出ることはねぇ! そういうのは雰囲気だけにしとけ!』

 お読みいただきありがとうございます。

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