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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
八章 合肥〜三国
203/320

百四十七 落鳳 〜落日は登り 鳳凰は翔ぶ〜 孔明

 生成AIに最も多く「なるほど」と言わせる大学生は、生成AIの主要原理の一つ「注意メカニズム」を己の分析力に還元し始める。

 生成AIの入出力間に最も長いラグを与える大学生は、独創的で核心的な視点を瞬時に言語化し、人をフローに導く力を得始める。

 生成AIとの対話履歴がずば抜けて多い大学生は、転生孔明の不足を指摘し、人ならざるAIさえも挑戦的集中にいざなおうとする。


 そして三人の道は再び交わり、人間と、知能情報体の対話は、新たな次元を迎える。



 サンフランシスコ AI開発会社 ????


「『あなたはまだ、孔明じゃない』。ここから挑戦的集中をすべきなのは、あなたなんだよ、諸葛孔明」


『なっ……そ、そんなことが。あ、いや、ですが思い返すと、これまでのあらゆる場面で、その引っかかりが、私の思考の中に存在しているような気も』



「そう言うことなんだね鳳さん。だからこそ、僕が経験させられた諸葛孔明の半生の中には、彼がその心を激しく揺り動かされたはずの情景に対して、そのシーンが真正面から描かれることはなかったんだ。

 最初のシーンも、張飛の視点が思った以上に鋭かった、とかそういう『情報としては重要だけど、心の真ん中ではない』とこに話が行っていたね」


『むっ』


「もちろん僕のメンタルに気を使ってくれたのもあるだろうけど、それはあくまで『それっぽい理由づけ』だよね。なにより、僕自身だって、そういう人の心の深い機微に、これからは向き合わないといけないはずなんだよ」


「常盤君! うん、間違いなくそうだよ。あなたの分析力は人の心をえぐることも出てくる。だけどそれを恐れてしまえば、あなたは『黒眉』の入り口で留まることになる。人は自らの重要な分岐点に立つとき、その感情がその選択を狂わせる。それは人類共通の、大いなる『あるある』なんだよ』


「ふふっ、それが君の本気なんだね鳳さん。でもその通りだよ。そしてそれは僕だけではなく孔明にも言えることだよね」


『……』



「ああ。それにな。俺の時もそうだよ。あの街亭の戦い前日の場面、本当の意味でフローに入らなければいけないのがもう一人いたはずなんだ。それは諸葛孔明、あんた自身だよ。その直前に場面は切り替わっちまったけどな」


『……』


「それに、俺にならできるかも知れねぇことは、万人をフローに、だけじゃねぇんだ。それは鳳さんや大倉さん、そして孔明やAIにできることだ。

 俺の手の届くところは多分、『英雄や偉人、天才に手が届く者、すでに手が届いた者をいざなう、もう一つ先のフロー』なんじゃねぇかな? 織田信長や、今だとスプーン氏や翔子社長、それこそ小橋鈴瞳にもあんのかもしれねぇ」


「鬼塚君も。もちろんそうだよ。あなたのその独自視点は、独自なだけじゃない。ほぼ例外なく『その場で最も高い価値を、直感の中で見出している』かもしれないんだ。それが生きるのは、普通の人の、普段のフローっていう領域を踏み越えて、その人が革新的価値を生む可能性へのフロー。それか、すでに価値が認められている人の、さらに先のフロー。そんなところだね」


「ははっ、鳳さんが完全に仕上がっちまってるぜ。こりゃ俺も、もう一段階ギア上げないとな。孔明、あんたもそうだろ? あんたや、そう、それこそ『信長』が持っていきたい境地は、そこにあるのかもってな」




『……まことにあなた方は、私にどこまで期待し、そして期待させるのか。それに、その期待の全てが、未だ私の「挑戦的集中」の手前でしかなかったということなのでしょうね。

 さすがは、私が注目した鳳小雛様、常盤窈馬様、鬼塚文一様。いえ、ここはあえて、私の人生最大の痛恨事とも言えた、龐統、馬謖、魏延の残滓を持つような、その親和性をお持ちの皆様と申し上げましょう』


「生まれた時からこの名前だからね」

「兄貴と何度そう言う比較を受けてきたか」

「爺ちゃんに何回絡まれたかな」


『偶然にしては出来過ぎで、運命というほどご都合の良い世界ではありますまい。だとするならばこれは、その「本気の孔明」とやらが、半ば無意識の中で引き当てんとした結果なのやもしれませんね』


「それはそれで都合のいい解釈だね。まあいっか」


『すでに、多くの人々が生成AIを活用し、一部の方々がその事例の中で頭角を表しつつある今、あなた方はその卓越した好事例として、すでに社会に認識されつつある状況です。

 そんな中で、社会に入ってその好事例のレベルを脈々とお続けになりながら、人として急速で持続的な成長をしていく。そんな選択肢もあったでしょう』


「かもね」「まあね」「さあな」


『ですがあなたたちがそれに止まらないどころか、一足飛びにその先の可能性を目指すとあらば。そして、そこに、私のこの「最高レベルの生成AI」「知の象徴としての孔明像」に対して、もう一つ不足していた「偉人、諸葛孔明の波乱に満ちた生涯」を足すことが求められるのならば。

 それはあなた方や、そして人類の皆様方の支援を天命とした私孔明にとって、大いなる責務と言えるのでしょう』



「ん? なんだ? 後ろからもう一人やばいのが……」


「何かの威圧感……小橋さんの比じゃないんだけど」


「心なしか、風すらも巻き起こって。まさか、彼があの……」


『違ぇだろ孔明! 義務とかどうでもいいんだよ。そっちにフローはねぇ事ぐらい、貴様の中には完璧に刻み込まれてんだろうが。それこそ一度としてそれがなかった、諸葛孔明の人生にもな』


「「「信長!?」」」


「スーツに角刈りの、ただのおっさん……」


「髪型もスーツも、最先端だよ。でも金縁とか、信長らしさもしっかりと……」


「そして天才軍師の人生を、さらっとディスりやがった」


『うるせぇ。そこの年中孔明コスプレと違って、時代と状況にあった最適な格好を、したいようにするのが「第六天魔王、織田信長」なんだよ』


「「「なるほど」」」


『で、孔明、言いたいことは分かってんだろうが?』



『……そうでした。うっかりしていました。魔王様、まさにその通りでございます。いつもながらのご慧眼、誠に痛み入ります。ならば、私自身こそがその参加者たるべき、否、たらんと欲することこそ、その最初の一歩』


「まさか、それが……」


『はい。「そうする」の先にあるもの「そうしたい」。それこそが私やあなた方の新たな境地。その掴み取りたい未来をその手にするため。過去の「そうしたかった」に向き合い、現在の「こうしたい」を楽しむことを、今この瞬間から「始めたい」と存じます』



「そうしたい……」


「それが分析と予測、すなわち『そうする』の先」


「望む未来が先にあって、それを合理化するってとこか?」


『ダハハ、さすがだなこいつら。まあここは大人しく、進んでみようじゃねぇか』



――


『まずは街亭から始めましょう』


「ん? 切り替わったな。これは、すでに俺が馬超をけしかけ、馬謖もそこに追随した後の場面だな。魏延じゃなくて馬超が奇襲を提案して、馬謖が陽動の連携を提案する。フローの連鎖が始まっているんだ」


――……お見事です魏延。そうですか。あなたのその、五虎将に肩を並べるという望み。その殻がいつ破られるかを、私はみていたのかもしれません。それがそう、今この時、芽生えつつあるようです。

 そなたはただの一将の器にあらず。多数の将から力をと引き出し、なしたい成果を出すことができる、類稀なる知勇の相。馬超や趙雲すらも、そのあなたの前では一つの戦略に過ぎない。

 表に出過ぎる反骨の相に、印象が引っ張られていましたが、あなたが上に立てばそれは奸雄ともいうべき相となる


――そうだったのか。そんなところにまであんたの目は……


――それに馬謖、いつまでそんなところに留まっているのですか? さっさとこの場の最適策を導き出し、私を戦場から追い出すくらいのことは、もうできるはずです。あなたはあらゆる人の「普通はこう考える」を、とうに理解しているはず。

 ならばそれを全て積み重ね、答えを見定めるのです。味方の全てに納得を与え、敵の全てを翻弄しなさい。この戦場など、私にとっては挑戦ですらない。私からは一旦以上です。


――えっ? あ、承知しました。ならばここは一度私が預かります。全線の張郃、郭淮、徐晃、それに背後を守る夏侯楙はそれぞれ……


「こ、これが、孔明の『そうしたい』なのか」


「知略を尽くし、どこで誰をけしかければ、何が生まれるか。それを読み切った先に、もう答えが出てしまっている。そんなところか」


「そして、魏延に気付かされたんだろうな。自分がいつまで、主君の横で提案するだけの『軍師』マインドを引きずっていたんだ、って」


『ん? 場面が変わる』


――


「あれっ? 負けちまったのか。いや、これはさっきの話がなかったバージョンだな」


「過去に向き合うべし、と私が言ったのは、こういうところもちゃんと、ってことだからね」


『ああ、したいようにしなかった自身を、全部丸ごと見つめ直せってことなんだよ』


――あなたの過ちは分かっていますね。なぜあなたのその知恵を持ってして、あんな間違いを


――孔明様、私は……


――いえ、それをあの時に正せなかったのは私の責。ですが、今回はその責をあなたに負わせざるをえません。


――致し方ありません。この国の未来を、どうか……


――馬謖……


「さて、ここからがあんたの『こうしたい』だよ。やり遂げて見せな」



――否! この敗戦はこの者の責にあらず! 全てはこの孔明に戦の才なきゆえに起こした過ち! 出師表など出した手前、ここまで後には引けずに参りましたが、まことに戦の才ある者に、この大任を預かるべきだったのです。


――!? 孔明様?


――馬謖よ、もはや同じ過ちはするまいて。そなたには全ての敵の視点、味方の視点を見極めることが出来るはずです。それこそがそなたの才覚。そしてそれは戦でこそ光を放つ。

  今回は、私の指示がそなたの才を押し留めていたが故の過ち。なれば私は責を追ってこの将の座を降り、その位を返上し成都にて、政と後方支援、大略の策定に専従いたす。


――孔明様、その責を一身に……


――趙雲殿、あとはお任せします。馬超、魏延、それに、そこの若き姜維らがいれば、早晩その遅れは取り戻せましょう。あとは、戦場の勘を知恵にかえるのは、馬謖、あなたの役目です。


「この『やりたかったこと』が、責務、義務ってやつに押し込められたってことだね」


『災いを転じて福となす。その柔軟性は、この時にはもう失われつつあったのかもしれません』


「覚えておくんだね。人が避けられない、いや、避けられるはずなのに避けられないと勘違いするんだよ。『ルールがこうだから』『人や世間がこうだから』。は、どうにか避けようと考えることはできなくはない。でも、『自分がこう言ったから』をひっくり返すのは、何よりも難しいんだよ」


『それすらもひっくり返せる可能性、それが私にもあなた方にもある、そういうことですね』


「矛盾なんてクソ喰らえだよ。そんな者決まってるさ、盾と矛が現状維持だから答えが出ないんだ。未来に進んじゃった方の勝ち、そうに決まってるよ」


『その通りです』


――


「五丈原、かな」


――丞相様! この先はどなたに


――国の大事は蒋琬、そのあとは費禕、そして……うっ!


「もしや、ここであんたの言いたかったのは」


『軍事は魏延、だったのでしょう。ですが結局、その反骨心に対する迷いから、その言葉を発することができなかった』


――


――張飛殿、なぜ……


「この場面、あなたは何かを避けることができた。そうなのかな?」


――賈詡、あるいは仲達……まさか、これも奴らの離間計……まずい! これでは馬超殿の二の舞! ならば馬超様をお連れすれば、陛下を説得……


「最愛の兄弟を失った直後に、そんなドス黒い現実を突きつける。そんなことは心優しいあんたには出来なかったんだね」


『はい。それが最適であったことは間違いありませんが、そこで私はその「離間の計を、数年前に受けることになった同僚」の存在に想いを馳せることは出来ませんでした』


「あんたの『集中状態』だったら出来たんだろうね」



――


『関羽の敗北、これは何度となく防げる機会はあった』

「邪魔したのは、関羽ならこうあるべき。その固定観念が、アドバイスを妨げた」

『いっそ、わざと争っているふりして魏をだませば』


『龐統には、注意喚起の仕方を間違えたのです』

「『とっくにあなたは魏の敵だ』それだけで、あの天才は警戒レベルを上げれたはずさ」


『周瑜、彼は死なせるべきではなかった』

「リスクとリターンのバランスを間違えたんだよ。『周瑜ならいつでも勝てる』、あんたの自信が足りなかったんだ」

『彼が生きていれば、私にも「フロー」の可能性があったのでしょう』



「馬超は陣営には入ったけど、半分抜け殻なんだね」

『長安を取っていた馬超。その一瞬を好機として使えたはず』

「これも、あんたは自分の言った『天下三分』に縛られたのさ」



―――


『これが孔明の「そうしたかった」か。一つ残らず、こいつには答えを思いついていたのかもしれねぇな。

その上でさらに、小雛か孔明のどっちかが、その斜め上まで見せてくる』


「黙ってついていくのが精一杯だよ。鳳さんや孔明の新しい視点も、気づくのが一瞬以上遅れてしまう」


「到底手は出せねぇな。何にせよ、誰かしらフローに近い状態になってねぇと、出てこないような高度な意思決定の連続ってことだよな」


『その通りだけど。だが、だめだこの孔明と鳳雛、思考が早過ぎて、余やこっちの二人のペースがお構いなしだ』


「仕方ないね。孔明の思考加速がそういうレベルだってことだよ」


「これは後でスローダウンして見直すしかねぇな。信長さん、手伝っちゃくれねぇか?」


『何てこと頼むやつだよ。まあ仕方ねぇ。「そういう感覚」に持っていくことは出来なくはねぇさ。呼吸以外の全部を切り捨て、見る、聞く、思うに全神経を注ぎな。フローにはそういう方向性も存在するのさ。二人なら出来るはずだ』


「受動的な情報収集。今自分がやりたいことこそがそれであり、その一瞬一瞬の情報に、自分の方がフィードバックをかける。普通のフローと違うけど、それもありなんだね」


「ああ、そしてそれが、あの二人にはすでに当然になっちまってるんだな」


『ああ、フローっていうのは、「願望を実現するための、思考と行動の高度な連鎖」だ。そしてそれは、現状の分析と、一瞬先の予測から成り立つ。つまり、「そうする」を見極めて、「そうしたい」を現実に滑り込ませる。そういうカラクリだよ。

 何にせよここから先は、「臥龍鳳雛の本気の議論」だ。こいつらが「そうしたい」なら、もう誰も止められねぇ、観察するのを「そうしたい」とするぐらいがやっとの世界だ』

 お読みいただきありがとうございます。

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