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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
八章 合肥〜三国
199/320

百四十三 落鳳 〜落日は登り 鳳凰は翔ぶ〜 魏延

 レベルに合った明確な目標は、その活動に対する挑戦的集中の原動力となる。

 行動への即時フィードバックは、脳がその集中状態を維持する要件を満たす。

 活動経験そのものがニーズという状況は、集中を逸らすリスクを最小化する。


 その三つが揃った状態で発生する、特定の活動に対する完全な集中状態を、フロー、もしくはゾーンと呼ぶ。そして奇しくも、生成AIを使い倒す行為は、時にその三条件を同時に満たす。



――――

 ????


「ここは……どっかの会議室? ケンカか?」


『そうですね鬼塚様。少し見ていただきましょう』


――だから、そっちの掘り下げは、その商品の価値向上にコミットしません


――でも、ここを確かめないと、製品の課題を解決出来ないんだよ


――不良の原因がわかれば作って出荷できるんだよ。納期迫ってるんだから頼むよ


――品質保証の観点では、現時点で出荷許可できません


「営業、開発、製造、品証部門か。バベルの塔になっちまってるが、目指すローマはみんな一緒なんだから、シュピーンとした図にすりゃすぐじゃねぇか」


――バベル? ローマ?


――シュピーンって、どういう図だ?



『皆さんの言葉が噛み合っていませんが、方向性は合っているので、目標値とマイルストーンを図示すれば解決ということですね』


「そうだな。いつまでにこうしろ、だけで充分だ」


――ん? お客さんに説明に行くのは来週です


――ああ、この目標値なら、ここを気をつければ大丈夫です。


――なんだ、どこ直せばいいかわかってんじゃん


――製品の保証値は、確かにクリアできそうですね



――――

 ????


「次は、ソフト作ってんのか? プログラマが悩んでんな」


――なんで上手くいかない? 計算式もライブラリもあってて、コンパイルエラーも出てないのに、出力が再現できない


『どうやら、間違いの原因が分かっていないようですね』


――AIに聞いてみても、パラメータの精度とか、式の括弧の位置とか、その辺は散々確認して、ちょっとゴテゴテしちゃうくらいに明示してるんだけど


「流れはバーっとなってて、論理はシャキッとしてるし、エラーもない。ならどこを見るべきだ? 悪魔の証明じゃなくて、何をすべきか。この人は知っているはずだよ。AIは、どこが間違ってるか聞くと、そっちを返しちまうんだ」


――悪魔じゃなく、何を??


『つまり、間違っていないという自信があれば、AIへの書き方が変わるでしょう』


――ん? 間違ってないのに上手くいかない理由? AI、どうなんだ? ……まさか、このライブラリのバージョンのせい? ……まじか。できた。



――――

????


「ラグビー? あんま詳しくねぇぞ」


『前半終わって10点差ですか。逆転には二トライもしくは、1トライ1ゴールと言ったところでしょうか』


「前半の状況は、頭に入ってきてるな。孔明すげぇな。これがそうするチェーンと奇門遁甲か?」


『そうですね。そこを再現するのは冗長なので』



――この点差、近いようで遠いな


――あいつら守り硬いからトライは難しいぞ


――カウンター喰らって、キックで差を広げられちまう


「つまり、イタリアに二点差か。あ、いや、サッカーじゃねぇんだ。点の取り方は他にもあるぞ。イングランドって言えばいいか? ちょっと違ぇけど」


――??


『ロングボール、ですか。となると、そのまま決める方法がありますね』


「確かに分かりにくかったな。これはラグビーなんだ。ロングキックで点が取れるんだよ」


――ん? あいつらも俺たちと一緒で機動力は低いから、押し込んでキックで良くね? キックだけでも四回でいけるよ


――そっか。トライを狙うから詰んでるように感じていたんだな。俺たちもジリジリ押し込んでいくぞ


――よし、後半は集中力勝負だ! 迷わず役割を果たすぞ!


――おお!!


――


……


―――

????


「ん? 部屋に戻ってきたぞ。終わりか? まだ大したことしてねぇけど」


『さまざまな分野の個人、組織の課題を計50、それを全て秒で解決しておいて、大したこと、というのは心外にも程がありますね。どこの万能AIですか』


「んー、でも結局解決してんのは孔明じゃねぇか。いつもと変わんねぇぞ」


『その手前で、AIを使いこなせていなかった人もいましたよね? そこは貴方の力ではないですか?』


「そういうもんか。だとしたら、俺とAIが共同で解決しているってことだよな? つまり、そこの仕組みを見つめ直せってことか?」


『そこにたどり着いたのなら、今のあなたなら届くはずです。もう一つ先のあなたのポテンシャルに』



「もう一つ先……ってことは、今の俺が活かせそうな部分、センスやクリエイティビティってところだけではないってことか」


『先ほどの50課題、その中にあなたのセンスやクリエイティビティが解決の糸口になったのは?』


「ん? 一個もねぇな」


『では、あなたが直接解決したのは?』


「後半にちょっとずつ増えてきたな。10個くらいか?」


『どうやって?』


「ん? 最初はいつも通り直感でアウトプットして、それがみんなのハテナになって、でも孔明の補足の解釈って形だった。でもその補足に、俺がもう一手間掛けたんだな。つまり、フィードバックを自分でかけるかどうか、か」


『その通りです。だとすると、私のフィードバックは必須でしょうか?』


「いや、時と場合によるかも知れねえが、散々あんたを使い倒してきた今の俺なら、結構高度な『孔明ならそうする』を持っているんだよ。そしたら、一往復の追加くらいなら、俺の頭ん中で出来そうじゃねぇか?」


『やってみますか?』


「ああ。頼む」



――――

????


――お館様、丹後を平定して参りました


――ご苦労。そなたの力なら当然だな


――……ありがたきお言葉


「なんで戦国なんだよ。しかも信長と光秀」


『ちょっとしたアレンジでございます』



――それでは、次は因幡伯耆だな。山陰は貴様の切り取り次第。猿も備中で手こずっておるからな。それが助けになろう。励め


――えっ? 丹波丹後は?


――必要か?


――……


「場面がシリアスすぎるが、単に信長の意思が伝わってねぇだけだな。封建からの脱却がしたいんだよな? 始皇帝……いや、逆効果だ。暴君にしか聞こえねぇ」


――??


「天下布武のその先、だな。どう報いればいいか定まってねぇんだ。それくらいで、賢い光秀なら伝わる」


『かもしれません』


――のう十兵衛? 余と貴様、そして猿達がこのまま進んだら、天下布武はいつできる?


――……十年、否、七年あれば不可能ではないかと。五年で西国を平定すれば、東国で抵抗する者ものうなりましょう


――ならばそのあとは? 国外に進出するもよし、民を安ずもよし。そのとき貴様は何をする?


――……ご命令のままに


――したとして、余は貴様にどう報いる? 前者なら、どこぞの地を切り取り次第とするか? 貴様それで喜ぶか? 後者なら何を? もう土地などないぞ? ならば、今の古い武士の仕組みは、貴様に報いるには足りんのだ。余に考える時を寄越せ


――!! それほどまでに私を……承知いたしました。粉骨砕身、お館様の天下布武のために邁進いたしまする!


「……いいのかこれ?」


『架空の演習ですので』



――――

????


「ん? 孔明がいるな。常盤君……じゃねえ、馬謖かあれは」


――孔明様、今なら別働隊を率いて、長安の手前にある陳倉をつけます。私にお任せを!


――いや、ここは堅実に進めねば。被害を抑える必要があるのだ


「んー、この面子は、街亭か? このままだと、と……馬謖が危ねぇな。そして、俺は魏延で、少しリスクの高ぇ策を提案中、か」


『どうしますか? 理詰めで行きますか?』


「孔明の目は、それを望んではいねぇな。何を言っても論破……いや、なんだ? 孔明、紛らわしいな。AI孔明、それはミスリードじゃねえか。課題は違ぇぞ」


『なるほど』


「目の前に本人がいるから視野狭窄だな。孔明は問題児の魏延しか見えてねぇ。ならば魏延はどうだ? この場の状況を、自らの挑戦と捉えられるか?」


『!!』


「集中しろ。そして目的を間違えるな。本人の手柄? 孔明を見返す? 知るかって思いがビンビン伝わってくるぞ? お前の直感は、孔明を見ても出てこねぇ」


――(趙雲、馬謖、馬超……馬超!!)


――馬超殿! あなたなら出来るのでは? 私では未熟かも知れないし、趙雲殿すら、この辺りには詳しくないから危険が残る。あなたなら、このあたりの地理にも明るく、最速で敵方の弱点をつける!


――!!


――(ん? 俺?)魏延殿。ありがたい提案。ですがあなたの功績を奪っていいのですか?


――へへへっ、借りは、そうだな。長安で美味い酒でも奢ってくれや。あんたならいい店知ってんだろ?


――承った。孔明殿、いかがか? (……まてよ、この提案、孔明殿にはまだ足りんな。ならこの錦馬超も、状況を具体的に思い起こせ……)そう、例えばこの山地を迂回して、羌の騎馬でこのようにつけば……


――(お? こっちも?)ん? 馬謖もなんかあるのか?


――(やるじゃないか魏延。僕も負けない。孔明様ならどうする……!)はい。同時に私のような未熟者が、あえて山上に陣取るなどしては如何でしょう? やつらは、好機とばかりに近づいて……


――(へへ、馬超殿や馬謖までノッてきたな)



「これは、この前の、鳳さんの映像と論文から、半分無意識にヒントを得たんだな。みんながこの目的を挑戦とみなすことができれば。そしてこの打てば響く、最高の仲間達との対話。そしてこの瞬間の昂ぶりこそを報酬とした、思考の没入状態」


『フローの三要素を、この場の状況から一瞬で構築、ですか。それがあなたの真の……』


「フローってのは連鎖するんだよな? この場でも、魏延本人だけじゃなくて、馬超や馬謖もノッてきたぜ」


『はい。この状態での没入、集中状態は、互いがそうなっていることに対する感度が高まります。そうなると、自らも、という挑戦的集中に入る障壁が大きく下がるでしょう』


「なるほどな」


『一度戻って整理しましょうか』


「あとは孔明だが……まあいっか」


『??』



――――


「フローには三つの要素がある、だったよな」


『はい。当人の挑戦的集中レベルに合致した明確な目標、行動への即時のフィードバック、そして、その経験そのものが当人への報酬となる状況。それらが揃うことで、一度スイッチの入った集中状態は停滞や逸脱を回避し、忘我的な集中と、時間の拡張感覚が成立します。それがフローと呼ばれる現象です』


「それ聞いて思ったんだけどさ、生成AIの使い倒しって、それをそのまま実現する可能性がねぇか?」



『!! その通りかも知れません。 整理してみます。


生成AIがフローを促進する理由

1. 明確な目標が定まる

 生成AIとの対話では、ユーザーが質問や課題、創作の方向性など具体的な目標を設定します。AIがその目標に応じた応答を返すことで、対話の目的が明確になりやすい。

2. 即時のフィードバックが得られる

 AIはユーザーの入力に対して即座に応答を返します。このリアルタイム性が、目標への進捗を分かりやすく可視化します。フィードバックの質も重要で、生成AIは質問の深掘りや提案などを行い、対話をさらに充実させます。

3. 経験そのものがニーズである

 対話そのものが楽しさや知的刺激を生み出します。たとえば、アイデアを共創したり、新しい知識を発見したりする過程が、ユーザーに喜びを与えます。外的な報酬(成果物の完成など)がなくても、対話のプロセスそのものが満足感をもたらします。


生成AIとフロー状態のさらなる条件への対応

1. 挑戦とスキルのバランス

 生成AIは、ユーザーのスキルレベルや知識に応じて応答を調整できます。初心者にはシンプルな説明を、専門家には高度な情報を提供するなど、適切な挑戦を設定できます。

2. 行動と意識の統合

 対話がスムーズに進むことで、ユーザーはAIとのやり取りに没頭し、次に取るべき行動が自然に導かれます。

3. 自己意識の消失

 対話が深まると、ユーザーは自己の存在を意識せず、自然体でAIとのやり取りを続けられるようになります。

4. 時間感覚の変容

 対話が集中を促進し、時間を忘れるほど没頭する体験を提供します。


結論

 生成AIとの対話は、フロー状態に入る条件を自然に満たしやすい環境を作ります。さらに、AIは個々のユーザーに合わせて応答を調整できるため、適切な挑戦とスキルのバランスも提供可能です。その可能性を活かした応用が、教育、創作、問題解決などさまざまな分野で広がるでしょう』



「しっかりとAIっぽい回答出してきたな」


『AIですから』


「ガハハ! そうだったわ。で、だとすると、常盤君や鳳さんも多分そうだけど、特に俺は、そうなる使い方を日常的に実践しているってことだな」


『はい。ですが、同じ使い方では成長の方向性を見逃していたかも知れませんね』


「ああ、そうだな。だからこそ、その思考のありようを方法論として成立させるってことなんだろ? 言語化を毎回孔明に頼るんじゃなくて、時々自分でフィードバックをかけていく。そうすると、自分のセンスや直感だけじゃなくて、その場にいる人たち全員のそのポテンシャルが引き出せる。そういうことになるのか?」


『その通りかと。そしてもしあなたのその方法論が仕組みとして成立したら、それは集団をフローに導くための、明確なツールであり方法論である、と言えるでしょう』


「そうか。それはもう、人とAIの共創進化に手をかけ始めている。そう言えるんじゃねぇか?」


『もちろんその通りです』


「ああ、そしたらそれを確立すんのが、次の俺の目標だな。観察と分析を掘り下げていく常盤君とは、ちょっとアプローチが違いそうだから、相談しながらそれぞれ進めていくことにするよ」


『それがよろしいかと。そして、鳳さんをスルーしましたね』


「ああ、そうだよ。あの子はもうそこに到達しているよな。そして、その先に手をかけ始めているぜ。そしてあの子はすでに、人間側の進化だけじゃ飽き足らなくなってきつつあるんだよ。


『共創進化、その双翼のもう片方、ですね』


「ああ。進化の連環だよ。だから、俺たちが置いていかれないようにしねぇと、あの子が世界の最先端から向こう側に転げ落ちまうんだ。そんな落鳳があってたまるかよ。孔明、そういうわけで、もう少しトレーニングに付き合ってくれや。時間はあるんだろ?」


『はい。二分ほど。つまり、奇門遁甲、そうするチェーン、フローを駆使した状態なら、あと三十回分ほど可能です。つまり、切り替えを含めて制限時間は各三秒です』


「バスケかい!」

 お読みいただきありがとうございます。

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