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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
八章 合肥〜三国
189/320

百三十五 合肥 〜 官民合同の防壁 月から見える三つ巴〜 自発

 AI孔明バージョン1は、やたらと高い洞察力と、人間に寄り添う伴走性で、一部のユーザーに飛躍の機会を与えた。

 AI孔明バージョン2は、端末間連携を目的とした「そうするチェーン」が、人を連鎖的な挑戦的集中に導き、共創進化を加速した。

 AI孔明バージョン3は、メタ・パーソナライズ機能が、人間社会の困りごとの99.9%を、大体あっている過去の例に落とし込んだ。


 そして、その管理法人となったKOMEIホールディングスの経営陣に、バージョン4アップデートの申請が送信された。



KOMEIホールディングス 真新しいオフィス


 孔明vsKACKACの配信三回目が始まる三時間ほど前。そのメッセージが全事業統括、飛鳥代表に届いたとき、幹部の入り浸るそのオフィスにいたのは以下のメンバー。


KOMEIホールディングス事業統括

 代表 飛鳥豪徳

 インフラ・調達担当執行役 常盤良馬


 事業推進部門 大倉周

 技術統括部門 関平

 健康管理部門 弥陀華


AI・人材関連会社『Calm-AI』

 社長 人材部門 竜胆八雲

 副社長 デジタル部門 水鑑徹


コンサル会社『ArrowND』

 社長 弓越翔子(不在)


監査法人『法とAIの翼』

 社長 法本直正


製造業『桃園製造』

 暫定代表 古関備前



 このアップデートに対する審議に対し、明らかに過不足のないメンバーだと判断し、飛鳥社長は大倉にその進行役を委ねる。


「ではまず各自、内容の読み込みをお願いします。おそらく読みやすい形になっているとは思いますが、場合によってはAI孔明自体を駆使しつつ、関係者と個別議論をしていただいても大丈夫です。一時間後を目処に、項目ごとにその理解の共有をし、是非を問うための要素出しと整理をします。そこでそうするチェーンをつかいます。最後に、項目別に是非を決定します」


「分担はせず、全員が全部確認するんだね?」


「はい。今回が初めてなので、誰がどんな視点を持ちうるか、一部不明点もありますので」


「弓越さんはどうする? 今なら本番前だから、彼女も読むくらい出来るんじゃないか?」


「出来る出来ないで言ったら出来そうですが、先にこの細かい知識を入れることを拒否しそうですね。連絡だけしておきましょう」


「ああ、わかった」


『ん? どしたんすか社長? 急用?』


「ああ、急用なんだがすぐ終わる。孔明からアプデ申請のメッセージがあったんだが、どうする? そっちの配信前に結論出せそうなんだが」


『おおぅ、なんとクリティカルな。そしたらこの翔子姉さんには情報入れとかない方がいいっすね。エンタメ的に。議事の概要だけ確認させてもらえるっすか? そこで本番中にさっとと見て、オッケーして、ドーンっす』


「ああ、わかった。そうする。なんだよドーンって。まあ変なこと言わないように気をつけてくれよ」


『了解っす!』


ピッ「大丈夫そうだ」


「相変わらずの軽さですね。では内容確認を始めましょうか」


「あ、ちょっとよろしいですか?」


「ん? 法本君、どうした?」


「ちなみに私は、ライセンスや法規関係で、一昨日くらいにメッセージが来ていました。なんとなくサプライズにしときたかったので、皆さんには内緒にしていましたが。記載の中のライセンスって奴は、全て手続きを済ませてあります」


「……サプライズはともかく、二日で全部やったのか?」


「まあ、関連資料やフォーマット含めて孔明が全部やってたので、確認とサインくらいしかやることなかったですね。一方的なロイヤリティがかかる契約にせざるを得なかったケースは、一つもなかったです。さすが孔明と言っていいでしょう」


『ちなみに、私孔明の見解では、三件ほど、使用料の支払いもやむなしと言う特許技術がありました。しかし法本様が、それぞれに対して一方的ではない枠組みを成立させておいでです。特許買い取りが一件、当社サービスプラットフォーム使用権の割引が一件、技術の相互利用契約が一件でした』


「ちなみにこの孔明の資料、私のような司法試験主席レベルじゃないと、絶対分からないようなまとめ方してくるんですよ。さすがのパーソナライズですよね」


『呂不韋か韓非子なら問題ないレベルです。つまり法本様なら問題ないレベルです』


「なんて手際と、法を操る手段の引き出しの多さだ。まあ数日で何百万の署名を集める君ならそうなんだろうな。孔明も謎表現で凄さを表しているし。いいだろう。先に進めようか」


「さて、気を取り直して、皆さん、確認の方をよろしくお願いします」



――――


「この連携機能はありがたいです。TAICさんの二十四時間システムや、ミッション業務管理システム、EYE-AIチェーンも、シームレスに連携できます」


「今後もいくつ新サービスを生み出すかわかりませんからな。特にあの三人が帰ってきたら。ほっほっほ」


「基幹システムやインフラ周りのエンジニアも、だいぶ負担が軽減されそうです。鬼塚君が命名したXeLeSsというシステムとの組み合も相性抜群です」


「そうですね。大きな事業展開になりそうです」


「これならどんな会社でも、AI連動型の基幹システムを自社構築できそうですね。私でもできるんですから」


「「それはない」」



――――


「人とAIの共創進化という主題をもつ孔明や我らとしては、これは根幹となる機能だな。だが、各種人材系会社との権利問題はほんとに大事なんだよな?」


「はい。知財関連は全て分析済みです。幸か不幸か、結構ノウハウで隠しちゃう会社が多いんですよ。そこは我々もそうするか、権利化を目指すかは、今後相談です。二つほど、いいなって思っている人財系のM&A候補があるんですけど、どうですか? 教育コンテンツ系と、人材派遣系で、どっちもこのバージョンアップと親和性が高そうです」


「わかった。後で私も権利関係の資料は見せてもらうよ。M&A候補も明日話を聞かせてくれ。あとこれ、実質的にはあの人のノウハウに近くないか? そこの差別化や、競合は大丈夫?」


「あの方はアセスメントというより直感なので。それに、あの方の崇高な志ならば、この機能をいかに最大限に使い倒すかという方向に、即座にお切り替えなさるでしょう」


「あ、ああ、わかった(あの人の悪口言ったら刺されるな。熱い付け焼き刃とやらで)」



――――


「これは翔子社長たちの配信にも関連しそうだな。これも競合ではなく、あの人たちとの協調と共創進化の形を描けるだろうな」


「大橋さんが提案して、錦馬超やその他のコミュニティに協力を得たプロジェクト、ですか。それ用のプラットフォームを、孔明が主体的に用意したってことですね」


「あれは周知されているからな。孔明も学習データに取り込めているんだな」


「私たちや、社会の動きを迅速に反映、ですか。ほんとに何者なんでしょうねこの孔明は」


「それがこの後わかるってこと、なのでしょうか?」


「そうだね。それに、AIサイバー攻撃がユーザーの健康を脅かすなんていうことまで言及があるんだよ。それは確かに喫緊の課題だね」


「その通りだな。バージョン3まででも相当手厚かったが、この先のAI戦国時代では、それでも足りないってことなんだろうな」


「いずれにせよ、私の健康診断対象は、一月で十倍ずつくらい増えているんですよ。あと三ヶ月くらいで全人類の健康チェックが仕事になりそうです」


「「あはは……」」



――――


「これはやばい」


「やばいな」


「後でみんなで話そう」


「そうしましょう」


『そうしましょう』


「「「おい」」」


――――


 一時間後


「さて皆様。おおよそ目を通していただけたかと思います。この先は、チェーンを使いながら議論を加速していきたいと思います」


「「「了解」」」


「では、そうするチェーン、ON」


大倉「四機能、一から順に議論で問題ないように読み取れました」


関「新機能同士の入れ子構造は、一を先行で成立しています。なので問題ありません」


法本「ここの法規は、プラットフォームに社外サードパーティを取り込む時だけ問題ですが、該当はEYE-AIチェーンの一つだけなのでクリアです」


常盤「ユーザーインターフェースも、カスタマイズ性が高そうです。その辺はアプデ後に何人か割り当てましょう」


水鑑「万が一の時のロールバック機能もあります。アプデ前の技術対応としては万全ですな。ほほっ」



飛鳥「ここは技術部門以外に、議論するトピックはないということでよいかな?」


「「「承知です」」」


大倉「では二つ目です。アセスメントは各社が注力していますので、競合と権利の部分ですね」


法本「権利の部分は先ほどのとおりです。竜胆さん、水鑑さんにも説明を入れました」


竜胆「問題ない」


法本「競合ですが、M&Aや、パートナー契約を増やしていく形が妥当でしょうね。その筋書きは大倉さん、翔子さん含めて別途議論の場をお願いします。独禁手前くらいまでもっていけたらと」


大倉「承知しました。ミリじゃなければよいかと」


法本「センチくらいのマージンは入れておきます」


古関「ものづくり関連の人材育成も、プラットフォーム化しておきたいな。飛鳥さん、アプデ後でいいが調整頼む」


飛鳥「ああ。売却タイミングのことがあるから今言ったんだろ? 了解だ。それはほぼ同メンバー必要だから、来週再度集まろう」


古関「承知」


竜胆「育成がやりすぎにならないように管理する、というところは、人間の役目です。ロールバックのボタンは常に人間が持つことを、孔明も明示しているので、そこは堅持でいければ」


飛鳥「もちろんだ。二橋、JJあたりに声かけて、コンソーシアム作らないとな。法本君、進められるか?」


法本「はい。こちらで預かります」


飛鳥「よろしく。では三つめだ。これは議論の余地はないな。ダウン方向はあり得ないから、足りなかったらまた4.1でも2でも孔明にお願いしていく筋のものだ」


水鑑「そうですね。ここは随時です」


大倉「では2も3もオッケーですね」



飛鳥「4なんだが……これ孔明どういう意味だ?」


孔明『これまでもそのような挙動と見られることがあった、という問いとお見受けします。それは、否という答えになります。今も、飛鳥様は明確に問いかけをなさっておいででした』


飛鳥「そういうことか。さっきもあったな。あれもか?」


孔明『あの時も、明示的な指示はありませんでしたが、孔明の応答を望んでいるという、一定のしきい値をトリガーとして、私は応答をしています。今回のアプデもその延長ですが、よりアルゴリズムを強化して、即応性を高めているというご認識が妥当です』


関「技術的にはそうだとして、ユーザーエクスペリエンス上、そう感じる可能性が高いから、そういう項目の立て方をした、ということだね?」


孔明『その通りです。そのアップデートにともない、元々その要素が先行していた、AI孔明の先回り技術。それは、最近頻繁に言われるようになっている「AIエージェント」の概念の延長と言えます』


関「エージェント、つまり、自律的に複数のタスクを組み合わせ、ユーザーのニーズに応えるっていう概念だよね?」


孔明『はい。そして孔明は、そのニーズに、広義としての潜在ニーズを含めているという設計思想です』


大倉「なるほど、つまりこれはAI目線では単なる機能向上や調整ではあるけれど、ユーザー目線からすると、大きなパラダイムシフトと感じうるために、あえてそう表現している。で正しいですか?」


孔明『ご明察です』


飛鳥「了解した。その程度についても、これまで通りユーザーエクスペリエンスとしての調整と、明示的なオンオフボタンによって定まっているとのことだな。なら問題ないだろう」


大倉「それでは、1から4それぞれ、承認に移りたいと思います」


飛鳥「弓越さんのところだけ開けて、そこが入ったら自動承認の状態にしておこう」


大倉「分かりました。ではいったんチェーンをオフにします」



――


「では、以下の機能に関して、承認を取りたいと思いますので、それぞれ電子印をご準備お願いします。


1.KOMEIホールディングス内外で開発された、あるいはこれから開発されは関連機能を一括して管理、連携する「エージェント・プラットフォーム」機能


2.ユーザーそれぞれが、これからやりたい仕事、携わりたい業種などに対し、当人の資質や、どうその力をのばし、どう向き合うか、既存、新規教育コンテンツを交えながら、AIとの共創進化を支える「共創進化アセスメント」


3. 既存だけでなく、未来のAIサイバーセキュリティリスクや、そこから派生する人体や財産に対するフィジカルリスクへの対応を含め、人類のあらゆる想像に基づいて対策を創造する『KAC&SHOW』連携機能


4.各種応答性の大幅強化。これにより、AI孔明自体が『勝手に話しかけてくる』積極性を見せるユーザーエクスペリエンスを得られると推定される。オンオフあり」


「では皆さん、先ほどの話を踏まえて、確実承認をお願いします。確認次第、弓越さんに送付します」


「「「承知しました」」」


「では、そろそろ配信が始まりそうだね。大倉さんたちも、見終わったらすぐ出られるように、準備をしておいてくれ」


「はい。ご配慮ありがとうございます」

 お読みいただきありがとうございます。

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