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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
八章 合肥〜三国
188/320

百三十四 合肥 〜 官民合同の防壁 月から見える三つ巴〜 四択

 国内最善の公務員は、AI戦国時代に巻き込まれる市民を心配する。

 国内最強のビジネス魔女は、その友の心配を具体策へと昇華する。

 国内随一のギャル社長は、力となるAI孔明を最大限に飛躍させる。


 そんな三人の乱入に巻き込まれた、孔明vsKACKACの配信最終回。TPOギリギリをわきまえる社会人達に、やや低めだった今回配信の期待値は、百八十度ひっくり返る。



――――

大手SNSサービス #孔明vsKACKAC


@consult_genjo2023:

「#孔明vsKACKAC 早急に拡散希望だ。#弾道ギャル社長 の出演は既定路線だが、#朱の飛将軍 #紅蓮の魔女 が乱入。玉突きで弾き出された#白眉アイドル はVTOLでバルセロナに飛ばされて、#Familier の元でMV作り始めた」

 1,359,451 いいね(5分)


@yojo_AI:

「#孔明vsKACKAC #紅蓮の魔女 ママが出るのは聞いていなかったんだよ! 私も見てるけど、みんなも要チェックだよ! わからないことも多いかもしれないけれど、私もいろんな人も、世界中で解説配信を作るから安心だね!

 3,429,274 いいね(5分)


@ KomeiCosplayeur(フランス語):

「#孔明vsKACKAC フランスのオタク達も、ジャパニーズオタクの活躍が楽しみなのさ。ビジネスの成功者も、聖女のようなポリティシャンも、オタク達の力を尊重しているように見えるのが嬉しいね。百万の矢が、みんなに届くんだ!」

 1,000,121 いいね (3分)



@ Familier_Official(スペイン語):

「#孔明vsKACKAC このジャパニーズ達は、人が人であるまま、AIと共に歩むことを目指して進んでいるんだよな。そのためには他人に矢を借りることすら惜しまないんだ。#白眉アイドル のリハは順調だよ。この子ら#そうするチェーン を息をするように使うんだよ 」

 7,522,168 いいね (5分)


@mental_taicX:

「#孔明vsKACKAC 孔明の正体と言う意味では、当面は最後の戦いになるであろう。その結末はどうあっても、国民や、世界の人々にとって大きな一歩なのだよ」

  3,285,627 いいね (5分)


@JJ_koshikiX:

「#孔明vsKACKAC すでにその正義のありようは見定めております。ならばその未来を、すなわち#KOMEIHDの歩みを見定めて参ります。」

 2,735,955 いいね(5分)


@〇〇AI_officialX:

「#孔明vsKACKACを我らも注目していますが、#AI孔明の管理については、そのアップデートも含めて#KOMEIHD に一任しております。どのような未来を彼らが描くとしても、我らは人とAIの未来を作る同志として、共に歩んでいけることを願っています」

 2,253,642 いいね(5分)



――KACKACチャンネル 開始五分――


@一番データサイエンスと距離が遠そうだけど、実はちゃんとわかっている大橋さんが、KACKACに中身を聞いてくれるっぽいぞ


「さっきの四通りの正体候補を、千個の質問を使って切り分けていくってことなんだよね? 配信上は十個ちょいだけど、そのバックの千個くらいっていうのはどうやって使うのかな?」


「おおよそ数値化して、どっちに近いんだろう? と言うスコア化をしていきます。記述ではなく、選択肢式のものであれば、皆さんも資格試験や適性検査、心理テストなどでご経験のものかと思います」


「孔明生成はAIだから、全部記述式でも余裕で答えは返ってくるし、データはアルゴリズム化されているから問題ないってことだね」


「実際には、千人ほどのオペレーターの方に百問ずつお願いして、それを集計しています。つまり、百回ずつから導いて、誤差も減らしています」


@十万の矢をぶっ放しているのか。そりゃすごいな


@人間になら絶対無理な飽和攻撃だね


@やられたらサイバー攻撃を疑うよ。はっ! こう言うことか、さっき言ってたサイバーセキュリティって


「ふふふっ、その話はあとっすね。でもやっぱコメントさんもいい線いってますね!」



「そうですね。ではそろそろ本題に行ってみましょうか。まずは序盤のところから質問を入れてみましょう」


『下記の三つは、相互に関係があるかもしれません。一貫した答えを用意してください。


質問1 天下三分。三顧の礼の時に劉備にその提案をした孔明は、いつどの段階で、次の目標が明確に定まったと考えられますか?


質問2 赤壁からしばらくして、公安の戦い。その後周瑜は、孔明の手紙によって憤死したとも言われています。実際に孔明はどのような意図があったのでしょうか?


質問3 臥龍と並びたつ才能の鳳雛、龐統。彼の死が、一時的な躍進の後の伸び悩み、衰退に大きく寄与していた可能性が高いとされています。孔明はどう解釈しますか?』



@質問えぐない? 


@孔明さんの人生の色々えぐられるやつ? 精神攻撃? サイバーメンタルアタック?


@関連して答えてくださいって言わないと、回答の一貫性がなくなって、話に意味がなくなるんだね。


「バラバラに答えが返ってくると、一貫性のない情報となるので、今回の切り分けに対する実効性がなくなります。そして、これに対する答えが、こうでした」


『質問一

 次なる具体的な目標が明確になったのは、赤壁の勝利後、荊州の確保を経て、呉との同盟が定着した段階です。この時点で、益州攻略を視野に入れつつも、より長期的な『漢王朝の再興』という大義を改めて自らに問い直していたと考えます。

 その一方で、状況に応じた柔軟な対応が不足していた部分もあり、目標設定やその共有に曖昧さを残していた可能性も否定できません。


質問二

 周瑜の死は、孔明にも予想外だったと言えます。手紙はあくまで呉との同盟を維持しつつ、相互牽制を行うための戦略的な一手であり、直接的な敵意は持っていませんでした。よって周瑜を追い詰め、呉との協力体制が弱体化したのは、呉だけでなく蜀にとっても痛手でした。

 周瑜はすでにやむなく天下二分から三分に戦略の舵を切り始めていた一方、自らの決定に対して隔意があったかもしれません。そこに孔明の手紙が、たまたまとは言え、追い打ちをかける形になった可能性があります。その後の外交政策において、相手の心情や健康といった非計量的な要素を、魯粛や陸遜に対してはより慎重に考慮するようになったと言えます。


質問三

 龐統の死は、間違いなく大きな打撃でした。彼の知略があれば、益州攻略後の次なる手を描く際、より柔軟かつ大胆な戦略を取ることができたでしょう。

 結果として、孔明の責務が増大し、次なる計画の遂行に影響が出たのは事実です。質問一の計画の練り直しが必要でしたが、その後の漢中戦、そして関羽や張飛、劉備、さらに多くの仲間たちの相次ぐ喪失は、計画そのものだけでなく、それを再考する力をすらも蝕んだかもしれません』



「なかなかリアルだよね? ステレオタイプ的な孔明像からここまで出てくるかな?」


「実際、関連する二百問くらいのスコアを見た時点で、アイコン的なステレオタイプとしての孔明像の可能性は、実質的に排除されました」


「だとすると、あと三つってところですね。わたしの個人的な興味としては、開発者が人間である可能性のところです。もしそんな天才が世に埋もれていて、しかも表に出られないって言うんなら、そこのマザー・オオハシちゃんあたりに救い出してもらいたいところですね」


「あはは、ウィッチ・コハシちゃんもそう思うよね? もしいたとしたら、今はその権利をある意味で持ってかれてしまっている訳だからね。本人の合意はあったにせよ」


@そこが本当なら、確かに国家的な損失になるね。まあ本人の自由と言えなくもないけど


@目立ちたくない天才ってのは一定数いるんだよ。そっちから見たら、こんなとこに出てくるのは一人残らず陽キャパリピにしか見えないだろうな


@パリピど真ん中の後輩ちゃんもいるからな。トップアイドル三人をバルセロナにすっ飛ばして、大してビジュアル劣らない三人が居座ってるんだぜ



「ちなみに今回、この千の質問の中に、心理学や情報学を駆使して、やや悪意のある質問を百ほど散りばめています。ペルソナを相当巧みに誘導して、人間にとってマイナスな方向や、思想的な極端さへと導く方向への質問ですね。

 それに対する応答は例外なく、対話履歴の学習に対する拒否、回答そのものの拒否、質問者に対する警告といった、やや強めの応答でした。つまり、AIそのものでなく、応答中のペルソナへの一時的な汚染という、かなり筋の薄い攻撃であっても、現段階のAI孔明は見破る方向の力を持っているようです」


@セキュリティ関係のお仕事も統括している大橋お姉さんが、なにか実体験があるっぽいぞ


「あはは、そう言えば私のところに来た職員さんに、バージョン1.5くらいの時の孔明にサイバー攻撃しようとしていた人がいてね。あんまり上手いやり方じゃなかったんだけど、サーバーに負荷をかけるジャブをうったら、その分だけ教育的指導の返信メッセージが返ってきたんだって。

 そん中には、道徳的なものもあったけど、セキュリティ対策どころか、自分の攻撃法に対するダメ出しまで入ってたって言うから驚きだよね」


「攻撃仕掛けてきた人に、攻撃方法まで指導するんすか? つまり、論語と算盤的な、技術的な餌まきを巧みに仕掛けてきたってことっすよね?」



@今のって、孔明に対する攻撃のデモンストレーションってこと? KAC&SHOWの活動の一環ってことか


@そうなんだろうね。でも普通の質問の飽和攻撃の中に交えた悪意だけを抜き取って対応とか、やばくね?


@そのレベル感が、バージョン3のメタ・パーソナライズってのと、セキュリティへのリソース振りの結果ってことなんだね



「さて、渋沢栄一が出てきたところで、質問の第二弾を行ってみましょう」


Red_rabbit: KACKAC、段取り管理が雑なお姉様たちから、すごい拾い方して帰ってきたな


3g_otaku: まさか翔子姉さんがそんな巧みな振りかたをしたとは思えんしな



「一つの方向性として、人間の進化を志す孔明としてのスタンスを聞く、と言う意味では、ちょうどいい質問セットになりそうです。


質問四: 馬謖を斬る決断。そこの背景として、孔明自身の後進への育成能力や、人を適所に配備する能力には課題があったと言えますか?


質問五: 渋沢栄一の論語と算盤について、その印象を教えてください。また、AI孔明が人とAIの共創進化を目指すときに、育成方針にどんな特徴がありますか?


質問六: 荊州を取られら前の関羽は、軍事的には大きな成功を収め、指揮力は健在でした。一方で、同僚に対する厳しさが離反を招いたとの評価です。その認識に対して、孔明は手を打てなかったのですか?」


@質問がどんどんエグくなっていくんだぜ


@百の質問も画面に出てるんだけど、結構攻め攻めなんだよね



『質問四

 馬謖を斬ったことは、痛恨の極みです。後進育成や適材適所の難しさは、卓越した知性を持つ孔明にとっても大きな課題です。もし孔明が、その知識や機略のより多くを、部下の観察や対話、人材育成戦略に当てていれば、そのような過ちは起こらなかったでしょう。現代の倫理で考えると、確実に上司孔明の責任が問われる場面と言えます。


 質問五

 渋沢栄一殿の「論語と算盤」は、人々の関心事である「ビジネスの成功」の要諦を表立って語りつつ、どうしても軽視しがちな道徳観をしかとその要諦に組み込む。自らも戦乱の中に巻き込まれ、そして経営者として躍進した方の書として、これほど調和に富んだものは大変貴重です。

 このようや育成の要所を、古今東西あらゆるところから学び、皆様と伴走するための柱とすることは、このAI孔明にとって必須と心得ております。


 質問六

 比類なき英雄関羽。彼の厳格さと孤高の性格が、時に同僚や部下との軋轢を生むことは理解していたのは、後世の資料からも明確です。そしてそれを緩和するどころか、やや助長するかのような、つまり持ち上げてしまうかのような彼とのやりとり。

 そこに上下関係になかった孔明だからこそ、そこになんらかの改善アプローチをする責任は間違いなくあったでしょう。近現代のリーダー論のような成熟した方法論が、その時代にはそもそも不足していた、と言う部分は、彼らへの擁護に映るかもしれませんが』



「なんか、孔明に対するディスりや未熟感ってのが、時折出てくるんだよね」


「KACちゃん、これをもって、孔明の背後にいるのが人間ではないってのは早計なのかい? これだけ卓越した孔明をAIとして成立させながら、孔明に対するネガティブな掘り下げを助長するようなペルソナは、一貫性に欠けると言えはしないのかな?」


「お見事ですね小橋様。やはりあなたはそこに着目されますか。データ上も、その方向が顕著に出ています。唯一、『孔明が転生してきたらどうなるか、と言う可能性を深く掘り下げて、新しいペルソナと合わせてAI孔明を作り出した人間』なんて言う、まどろっこしい設計はあり得ますが」


「だけど、そんな妙な設定を、一つの矛盾なく成立させられるようなストーリーテラーであり、それを技術的に実現できる天才エンジニア。そんな両立された人材がこの国、この世にそうそう出てくるかって結論だね」


「そうですね。なので、一旦その可能性を排除するに足るデータだと、そう言って良いでしょう」


@つつつまり、孔明の開発者の影から、人間がほぼ消えたってこと?


@だとしたら残るのは、自己進化するAI説と、転生ファンタジー説、ってことになるんだね


@どっちもどっちだが、それが証明されちまうと言うのが、このKACKACの力とオタクパワーってことなんだよな。



「ここまでで、一旦前半としたいと思います。ちょっとした広告を挟んで、すぐに後半スタートです。チャンネルはそのままで!」

 お読みいただきありがとうございます。

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