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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
七章 馬超〜鳳雛
183/320

百三十 鳳雛 〜鳳凰天駆 双雛連環〜 飛翔

 本話までは、第一部第三章、四十三〜四十六話の内容を、強力な解説付きで再紹介した内容となります。当時は、中身の詳細よりも、スピード感を重視していた描写でした。見比べていただくと、新たな発見もあるかもしれません。

 TAIC&JJ共同制作映像「ゾーンの連環計 鳳雛の双翼」。とある企業の、とある五人の採用審査のシーンに、克明な解説とエフェクトつきで編集した配信映像。三大メンタリスト二人が、実働としては一日か二日、最大限の集中力とリソースをつぎ込んで作成していることが、その出来栄えから容易に想像がつく。


 AI信長と表現される、自己進化の方向性が国内リージョンで示唆されたAI本家は、その信長因子を日本国内のオープンイノベーション機構に売却。その機構の実質リーダーであるこの二人が、なぜその数日後に、このような難しく手間のかかる映像編集と発信に踏み切ったのか。この映像自体のまとめとして、最後に二人の考えも表明され、視聴者たちの疑問も氷解する。



――開始十八分(解説など八分含む)――


『TAIC: ここから先は、もはやグループワーク、あるいはディスカッションとは形容し難いのである。もはやペルソナを複数持った一個体の加速思考なのだよ。それはAIにブレストさせたことのある方ならお分かりであろうか』



fghi「「「「……(何が始まるんだ?)」」」」


A:「ではAさん」


 #進行 fghiワク

孔明: 着実に進めるのはAさんですね。どうやら審査員様たちも、ご自分の職務を忘れかけておいでです



A:「……わかりました。1の答え、AI活用の新事業。きっかけ、会見。2〜5、過去と現在の接続」


ef:「「……(発想が飛びすぎだが、大丈夫か?)」」


g:「……(ほっほっほ)」


BCD「「「(おけ)」」」コクリ


 #fgドキhリラ、BCDおけ

孔明: 参加者のみなさまはまだ大丈夫そうですね。1は、AI活用の新事業の可能性ですが、当社はそこが強みではないから、きっかけはおそらくかの採用関連の会見。

 そこで当社のAI活用への感度をみた大手物流会社からの、軽い探り程度のアプローチと、Aさんが読み、BCDさんも合意。そして解決策は、当社と先方の長い付き合いに、どう新事業のアピールを接続するか


『TAIC: 手元の画像の孔明は、解説字幕の役目に回らざるを得んようである』


@助かる。これないとちょっときつい


@たしかに。考察がずれてしまった時のバックアップといったところなのかな



A:「Bさん、先方の意思決定プロセスと、課題の聞き出しを……組織論だから、スポーツがいいかもしれません」


E:「Bさん」


B:「わかりました。では……

 Per favore, potresti spiegarmi, paragonando la situazione al calcio, quanti difensori ha l'avversario, quali sono le caratteristiche di ciascun giocatore e qual è l'attacco migliore che possiamo utilizzare al momento? (日本語訳:サッカーに例えて、相手のディフェンダーの枚数と、各選手の特徴、そして現状できる当方の攻め方を教えてください)」


fghi:「「「!!!!(なん、だと…)」」」



『J-YOU: 審査員に、比喩を指定する。そして、その比喩は秀逸である必要すらありません。何故か。B様と審査員の間で、誰一人わからないイタリア語を送受信していてもやり取りが成立しているのと同じで、結局他言語や比喩を解釈するのはAIだから、ある程度わかりやすくても問題ないのです。B様や審査員がご自分で比喩を考えても、AIに丸投げしても結果はほぼ同一です』


@そういう意味じゃ、Bさんは普段からAI使いこなしてるんだろうね。それに裏打ちされたアイデアだよ


@そして、審査員たちのリアクションがやたらと素直



g:「では私から答えるので少々お待ちください。

 ……(イタリアだからサッカーか。詳しくないが……意思決定は四段階。下から、柔軟だが未熟。頭が硬いが信頼度が高い。時代の変化についていくのが精一杯な上役。圧倒的な個の力と、最新知識に基づく決断力)

gのAI孔明:『回答を生成します……』

 ……お答えします。壁は四枚。手前から、調子ルーキー、カテナチオ、過去栄光ベテラン、現代版ファンタジスタ」


BC:「「(おけ)」」


AD:「「(むい)」」



 #AD無理BCおけ、E無理

孔明: あなたもサッカーは無理ですか。ですよね


@Eちゃん、結構感情はしっかり動くのよね


@集中はしてそうだけどね。この発想の自由さが、広くて細かい視野を生むのかな?



E:「Cさん」


C:「わかりました。解説すると、先方の意思決定は四段階となっていそうです。下から、柔軟だがまだ経験不足の若手。頭が硬いが信頼度が高い中堅。時代の変化についていくのが精一杯な上層部。圧倒的な個の力と、最新知識に基づく決断力を持つトップ」


fgh:「「「!!」」」


i:「(これはもう全員が、いわゆるスポーツやアートなんかで言われる『ゾーン』に入っているのか? こんなところで見られるとは、人事としてこれ以上の体験はないかもしれん……あ、いかん、集中!)」



 #fghビクiニコピリ

孔明: 人事の方は喜びを覚えつつも、仕事モードに戻ったようです



『TAIC: おそらく人事部長i氏のモノローグ通りである。先ほど申し上げた、挑戦的集中の状況下での、意思決定の連続。それは人がこれまでの反復訓練や人生経験で培ってきた方法論を、反射的に実施できる領域に押し上げる。それをゾーンと呼ぶのは学術的にも問題なさそうである』


@スポーツ漫画とかで解説されていたやつと大体一緒か


@てことは彼ら、初対面から十分ちょいで、ゾーンに入るくらいの没入と連携? やばくね?



C:「ならば、若手の方に寄り添う形で、共同で中堅キーマンにアピールするのが良さそうです。そこが完成すれば、トップの目にも入るでしょうし、上層部はトップの影がちらつくので問題ないかと。

 比喩で言えば、一枚目をおとりに使って二枚目を攻略。三枚目は、四枚目を背負わせる形で置き去りにしてから、こちらを追いかけさせます」


 #比喩以外はおけ

孔明: 説明は不要ですね


@あれっ? でもこの子、サッカー大好きっ子じゃなかった? スペインでもイタリアでもそっち絡みで活躍しているよね?


@もしかしたら、このエピソードの後で触発されて、将来の同僚たちに聞いたのかもしれないぞ。あの三人のうち一人は確実にサッカー好きだし


@もしかしたら、このあと出てくるそうするチェーンの練習台として、素人がプロサッカーの思考について行くなんていう、意味不明な思考実験しているかもしれないぞ。この子ならやりかねん




E:「Aさん」


A:「……(進行は僕、加速はDさん、補足とチェックはCさん、か)

 はい。次はその手段ですね。過去と最新のコラボ。カテナチオ様突破への策にどうつながる……」



E:「Dさん」


 #展開

孔明: Dさんは、この次にどの話題を進めればいいか、的確に掘り下げてくれます



D:「過去トラブルをカテナチオ様がどれくらい引きずっているかが鍵ですが、経緯と、それを回復するための最近のお取り組みをお聞きしましょうか。過去なら、伝統と歴史。建物なんかはいかがでしょう?」


 #経緯おけ?

孔明: 無論全員、把握済みかと。この会社は、数年前に品質評価に関係するトラブルを起こし、信頼を大きく下げています。その信頼をどう回復している途上にあるのか、というのが、その経緯をご存じであるはずの中堅カテナチオ様へのアピールへのカギ、ということですね


E: 「Bさん」


B:「はい。では……

『Per favore, potresti spiegarmi qual è l'impressione dell'azienda partner sui nostri problemi passati e il grado di ripristino fino ad oggi? E se ci sono elementi che possono contribuire a un miglioramento significativo, potresti fare un confronto con monumenti architettonici dell'Europa occidentale?

(日本語訳: 過去の当社トラブルに対する、先方の印象と、現在までの復旧度合い。そして、そこを大きく改善できる要素があれば、それらを西欧の建築物に例えてご回答お願いします)』」


@(イタリア語)なんだよこの会話の流れ! スペインのパス回しか、ドイツの高速カウンターかよ? こんなの、カテナチオだって同レベルの集中がないと止められないよ!


@(スペイン語)つい先日のあのライブ、背景で建物モチーフをリアルタイムで建てていた連携、あれを思い出させるよ。でもこの人ら、あの時のようなツール使ってないんだろ?



f「……これは私ならそのまま返せそうなので返答します。真実の口に噛まれ、ピサの斜塔、現在はサグラダファミリア。新手法はクリミア慰霊碑」


『TAIC: この比喩をそのまま返せるということは、なかなかの歴史通である。ちなみにAIも、ある程度ちゃんと条件出しをすればこれくらいは可能である』



BCD:「「「(むい)」」」


A:「(あんぶん)」


E:「Aさん」


 #半分……最後は他に期待

孔明: Aさんも、それを見越していろいろ追加でコメントしてくれるでしょう


A:「はい。品質に関する信頼性トラブルで大きく信頼を傾かせたが、そこから丁寧に説明と実績を積み重ねて、おおよそ取り戻しかけているところ、ですね。最後のクリミア……ロシア……ナイチンゲール……」


C:「!!(おけおけ)」


E:「Cさん!」


C:「ナイチンゲールは、看護こそもっとも有名ですが、実際には統計データ活用の象徴でもあります。今のAIにつながることも多いですが、今回はそこよりも、品質評価などにおけるデータ活用の技術革新に売り込み要素がある、といったところですね」



@(スペイン語)何? なんだこれ? キラーパスが通って、ダイレクトでゴール決まったよ?


@スペインの人がこういう言い方するってことは相当だよな


『J-YOU: 正義の探求者としては、ナイチンゲール様に関しては言及せざるを得ません。やはり統計的なデータを活用して、品質問題や不正を限りなく減らしていく。そこを地道に進めていくことを正義と見定め続けるのは、社会が必ずやらねばならないことと言えます』


@そういやJ-YOUは、無二のナイチンゲール様推しだったな


@姉のIQはルソーと韓非子だっけ? だいぶギャップだよね




fgh:「「「!!!」」」


i:「(なぜここで二段階の連携ができる??……まさか、AIだけでなく、人間同士のそうする、まで使い始めているのか……それはもうスポーツチームの連携だぞ……)」


C:「では、統計とAI技術の親和性、連続性がアピールポイントになるのではないでしょうか。クリミアから、AI……アイ……愛……ローマの休日ですね。一周してすごく綺麗です!」


E:「Aさん」


C:「真実の口から斜塔に。サグラダファミリアまできたところで、解決策は、クリミアとローマの休日のつながり、ですね」


fgh:「「「ぉぉぉ……(この一周はまぐれだよな流石に……)!! 失礼しました」」」ペコリ



 #fghペコ

孔明: 比喩が一周回ってきたのを面白がっているようです。まあこういうのはいい年した大人ならありがちですね


@令和から昭和へのサイドチェンジだぜ! こういう時に平成はよく飛ばされるんだ


@令和だけを引き上げるのがAIじゃないだろうよ。平成だって、昭和だって、全部生きるんだよ



E:「Dさん?」


D:「綺麗にはまとまりました。基本的な手順はこれで大丈夫でしょう……しかし、やはり最後の砦が気になりますね。

 現代版ファンタジスタ……って、あの人ですよね」


『J-YOU: あの人? あの会社のあの人っていったら一人しかおいでになりません』



 #ABCムズ、efghチラ

孔明: 会社側は完全に期待の目をこちらに寄せていますが……こちら側にもその、あの人に対する答えになりそうなカードを持つ人は……え、ああ、まずいこんな時に!

 ――時間あたりトークン上限に達しました。1時間後まで、通常サービスをご利用ください



E:「!!」ガクッ


「「「「「「??」」」」」」


@Eさん力尽きた? 鳳が落ちた?


@トークン? スマホ画面の孔明が止まったね



i:「え、どうしましたかEさん? あ、ここは普通に答えていただいて大丈夫です」


E:「あ、人事部長ですね。た、大変失礼いたしました……じ、実は、一時間あたりの孔明の使用上限を突破して、ダウンしてしまいました」


「「「えええっ!」」」

「「「「!!?」」」」


『TAIC: そう。参加者全員をゾーンに導いたE氏と孔明の連携。この場で先に力尽きたのは、審査員でも参加者でもなく、AIの孔明だったのである』


@孔明が力尽きたのかよ。人間より先に?


@人間やばい。Eちゃんやばい



E:「え、あ、でも大丈夫です。何回もあったことなので。問題ありません。つ、続けても大丈夫ですか?」


i:「あ、ああ……大丈夫だが……仕方ない。ここは特例とし、あなたの発言も許可します。

 ただし、これ以上の議論の深掘りは不要です。ここまできたら、社内でも詰めないといけない部分が多くなります。社員ではないあなた方にこれ以上便乗してしまうのも心苦しい」


BCD:「「「……」」」


i:「何より、あなた方全員、これまでにないやり方で、常人では考えられない濃密な連携、議論をここまでしてきました。なので、あなたたちの健康への影響が気になります」


『J-YOU: ここで、責任者登場、です』


「その通りです」

「「「「社長!?」」」」

「「「「「!!」」」」」


「あ、楽にしてください。皆さんも席へ。

 途中からですが、あなたたちの議論は見ていました。我が社にとっても非常に有意義な、そしてみなさんの将来性を感じさせられる、素晴らしいものを見させてもらいました。

 ただし、今日は少し予定より早いですが、以上とさせてください。やはりどう見てもあなたたちへの負担が大きすぎます。一度しっかり休んで、体調を回復させてください」


『TAIC: この後は、参加者の臨時健康チェックだの、社長の審査員へのお説教だのと続く、のである。これ以上は蛇足である』


@ここから、あの三人が集められて、そうするチェーンの試行実験による『仮面舞踏壁画』に繋がるのか


@まさか割と近々で、小橋鈴瞳に本気でぶつかることになるとは、流石のEちゃんもまだ想像できていまい


@ここから全てが始まった、っていっても過言じゃないぞ。もちろんもう一つ二つ、AI孔明が取り巻くストーリーラインはあるけれどもさ



――――


 ――ここで場面は、全員が退席した後の、チリひとつなく完璧に整えられた面接室へと変わり、J-YOUは、アバターから素の状態に戻る。まあその整った風貌と装いなので、大差はない。そしてTAICは相変わらずの子犬アバター。そして左側には「58分23秒後まで、通常サービスをお使いください」の文字が淡々とカウントダウンされる、スマホ映像。



「J-YOU: これが、私たちが皆様にお見せしたかったものの一部始終でございます。このグループワークの初期設定が架空であったにしろ、彼らがこの会社の真のニーズに辿り着いてしまった以上、それはもう無意味」


『TAIC:だとしたら、ラストの直前、皆様もお気付きであろう。彼らはあの瞬間、あの「紅蓮の魔女」「国内最強のビジネスパーソン」小橋鈴瞳に手を届かせかけた。その意味をお考えいただきたいのである』


「J-YOU: 皆様、英雄と聞いて思い浮かべるのはどなたでしょうか? ナポレオン? アレクサンダー? それとも織田信長? 諸葛孔明? では現代の英雄たりうる者は誰か? そういう問いであれば、かなりの割合で、あの魔女様のお名前が上がるのではないでしょうか?」


『TAIC: その前提に立った時、あの「結構できる者たち」とは言え就活中の学生達を束ね、そして全員を「ゾーン」に導き、最後にはその小橋鈴瞳に手をかける直前までたどり着く。

 そのために必要だったのは、根本的には一人の人間と、一つのAIの全力の共創であった。ならばその現象を、我らはなんと呼べば良い? その先にたどり着き、人を新たなステージに導く者を、我らはなんと称すればいい?』


「そう、わたくしたちは辿り着けるのです。そのためにこの映像を公開し、権威ある科学雑誌へのその解説の掲載を確定いたしました。無論、最大限にご協力いただいたあの出演者のお方は、我々に続く三番目、かつ最終の著者として。

 なお、KACKAC様には、心理学の見地からご議論をいただき、主要な協力者としてお名前をあげさせていただいております。また、IQお姉さまには、映像処理及び、当該の選考過程を公開することの合法性を監修いただいております。

 そちらも合わせてご覧になり、世界中でその原理をつぶさに解析し、研究いただきたいのです。その先鋒として、国内のオープンイノベーション機構初の研究企画『プロジェクトMAOU』。わたくし達は人類とAIの進化の先にある、英雄を追いかけるのでございます」

 お読みいただきありがとうございます。


 

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