表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
七章 馬超〜鳳雛
180/320

百二十七 鳳雛 〜鳳凰天駆 双雛連環〜 集中

 ここ数話は、第一部第三章、四十三〜四十六話の内容を、強力な解説付きで再紹介した内容となります。当時は、中身の詳細よりも、スピード感を重視していた描写でした。見比べていただくと、新たな発見もあるかもしれません。

 TAIC&JJ共同制作映像「ゾーンの連環計 鳳雛の双翼」。とある企業の、とある五人の採用審査のシーンをノーカットで、かつ克明な解説とエフェクトつきで編集した配信映像。

 なぜ採用審査のグループワークに解説とエフェクトが必要なのか。なぜこの三大メンタリスト二人が全力を尽くしてアレンジして配信したのか? たいていの視聴者のそんな疑問は、イントロ後の開始一分足らずで霧散する。代わりの疑問が、その主要キャラに対する「この子何してんの?」である。



――――

 巨大SNSサービス #ゾーンの連環計


@KACKAC_officialX:

「#ゾーンの連環計 あの二人、私の番組に乱入して三日で、この配信のアレンジをやってのけますか。それにこの主人公殿は、これまで国内を騒がし、最近は欧州各国にKomeiの名をとどろかせた、あの三人のうちの一人で間違いなさそうですね」

 4,285,193 いいね


@Familier_official(スペイン語):

「#ゾーンの連環計 あの子か……あの時のKomeiのチェーン機能を使っていないって、嘘だろ!? だとしたらこの子にはオケ指揮をさせてみたいよ。きっと最高の時間を観客に届けてくれるさ」

 29,381,628 いいね


@yojo_AI:

「#ゾーンの連環計 話の順番を決めるしかできないのに、全員の役割と制限を大体把握しちゃったんだね! でもでも、そこからそれを、四人のみんなに伝えるところがとっても大変なんだよ! このお姉ちゃんかっこいいね! それに、四人もすごいんだよ! みんな最後まで見てね!」

 9,281,824 いいね



――――映像開始四分(冒頭解説一分含む)――


 #BムズCムズDチラ

孔明: 審査員に質問が許可される強力な権限への代償。それをAIを活用できるAさんがうまく抽出できなかったようですね。先ほど好手を打たれたCさんも悩み中。Dさんが何かにお気づき、ですか


@EちゃんがAIを使っている画面、基本的に止まらないよね? それに孔明自体が、かなり短い応答をするから、入力出力の回数がとんでもないことになっているよ


@これちゃんと見ようとすると、一時停止ありきだよな。リアタイは一般人には無理だよ。


@TAICもJJも、時間に納めるために、結構無茶なアレンジしてないか? 本気度が伝わってくるんだよ



E:「Dさん、お願いします」


D:「うーん、私ですか……はっきりわからなかったのは、Bさんにもピンと来なかったのかもしれません。ただ、その中でも、形式、のところでわずかに動きました。おそらく、もっといい選択肢が来ると思って来なかったのでしょう。となると深堀は、形式、ですね……」


『TAIC: 生成AIを活用されるユーザーならお気づきだろうか。彼らの行動プロセスは、まさにプロンプトエンジニアリングをなぞっているのではある。だが、全員に制限がかかっているため、それに有効な、いわゆるPDCAサイクルを単独で回すことができないのだよ』


『J-YOU: 卓越した観察力のEさんはそれを伝達できないかわりに、何かに気づいたサインを見せる他者に話を振ります。こんな司会者のいる番組を、我らは長寿バラエティーと呼んで重宝致しております』


@たしかに。やってることは、ひな壇芸人やゲストにひたすら話を振る大御所司会者と一緒じゃね?


@でもコメントもリアクションもできないんだぜ? 


@ノーコメノーリアの名司会者? なんだそれ!?



 #Aリラ!Bムズ

孔明: Aさん、これならいけると言う表情ですね



E:「Aさん、お願いします。」


A:「では、形式に関連し、候補を十に増やします。一つとは限らないので全部チェックします」

BCD:「「「・・・」」」

A:「質問言語の指定」B:「!!」

A:「質問内容の語数制限」B:「……」

A:「質問形式の選択肢『はい』『いいえ』」B:「?…」

A:「質問のタイミング制限」B:「……」

A:「質問は順番通りに行わなければならない」B:「……」

A:「質問の文末形式の指定」B:「?…」

A:「審査員の指定」B:「……」

A:「質問に使える文法制限、疑問詞など」B:「!!」

A:「質問は相手の同意を得てから」B:「……」

A:「ジェスチャーを伴う質問」B:「?…」

C:「……」D:「……」



 #CリラDムズ

孔明: 承知です。ここは一択ですね


E:「Cさん、お願いします」


C:「明確な反応は、言語、と、疑問詞の二つです。おそらくこれは確定でしょう。ただ、他にもいくつか反応があったのですが……関係ないなら無反応で、さっきと違ってかすっている、というのでもないし……あっ!

 これは、否定のサインもしれません」


A:「!!」

B:「!!」


#C正解と推定

孔明: かしこまりました。非常に有益な情報です


C:「ならば、はいかいいえで答えられる質問はできない。形式は比較的自由。ただしジェスチャーは禁止」


B:「!!」


『TAIC: お分かりだろうか。元々ネジの外れているE氏以外に、明らかに普段の能力から逸脱し始めるものがあらわれる。C氏が最も先にそうなったのは間違いない。心理学的に言うとゾーン、あるいはフローという状態に入りつつあるという言い方がふさわしかろう』


『J-YOU: 難易度と能力の絶妙なバランスに限ってなされる「挑戦的集中」の持続と、そこで生じる思考への没頭。当人も気づかないその状況ですが、当人より先に気づきうる方も、この場にはおいでです』


@漫画とかスポーツでしか聞かない用語がでてきたんだけど。エフェクトのピカーンが絶妙だったのだよ


@採用面接でそこに入るってのか? そしてEちゃんが先に気づく、と


@初対面の人を、数分でゾーンに持ってったってこと? そんな漫画あったっけ? 数ヶ月訓練した後なら無くはないよ?



 #Aジロ。評価?

孔明: Aさんは、何らかの理由で少々前がかりですね。評価に対して少し気にされているかもしれません。適切に活躍の場を与えることをご検討ください

 #おけ


E:「ではAさん、お願いします」


A:「あ、もういいんですね。ではいきます。二十あれば流石に行けるでしょう……」


A:「英語。

 中国語(標準語)。

 ヒンディー語。

 スペイン語」B:「?……」

A:「フランス語」B:「?……」

A:「アラビア語。

 ベンガル語。

 ロシア語。

 ポルトガル語」B「?……」

A:「ウルドゥー語

 インドネシア語

 日本語」B:「?……」C:「??」

A:「ドイツ語」B:「?…」

A:「ペルシア語。

 スワヒリ語。

 タミル語。

 トルコ語。

 イタリア語」B:「!!」C:「!!」D:「!!」

A:「タイ語。

 韓国語」



@あれっ? なんで日本語のところで、Eちゃんがピカった? それに、Cさんもアップになった? 目がちょっとだけ見開いてん


@イタリア語のとこはわかるんだけどね。ふつうに全員反応してるし


@Eちゃんが少しキョロキョロしてる。こんなの初めてだぞ。なんの迷い? ん、そして超スローモーション……



 #CムズDリラ……! C情報量多

孔明: この分かりやすい場面なら、普通は別に緊張はしませんね。だとすると、その緊張そのものに違う意味が? いまのCさんなら、伝え方次第でそこに気付けるかもしれませんね


E:「(ここは賭けてみるのです)Dさん、いえ、Cさんお願いします」

ABD:「「「??」」」


C:「(えっ!?)なぜ言い淀んだのでしょうか……反応は明らかにイタリア語でした。おそらく他で反応したのは、ヨーロッパ系の近しい言語だったから、でしょうね。

 Bさんの制約のキツさは置いておいて、なぜそこでEさんは迷ったのか……ん、そういえば、日本語にもわずかに引っ掛かりがあって不思議だったのですが……

 あ、そうか。おそらく答えは日本語でかえってくる、ですね」


ABD:「「「!!!」」」



『TAIC: 少し解説が必要であろうか。まず、この会社と、会社側のAI孔明の無茶振りのひどさは、一旦脇に置いておくのである。本気でイタリア語のできる人が欲しければ、他にやりようはいくらでもある。

 ここの重要ポイントがもう一つ。B氏本人すら無自覚だったであろう反応に対する、C氏のわずかな気づき。その観察力はもう、普段のE氏に近いレベルまで引き上げられているのだよ。これを挑戦的集中に基づく没入状態と呼ぶのであろう』


『J-YOU: さらに補足いたします。これは蛇足とは思えませんので、あえて。E様がC様のゾーンを引き出した最後のトリガーは、ご本人の一瞬の迷い。そしてその迷いを孔明に伝えて、孔明がそれを言語化する。つまり、迷いというネガティブな感情すらも、自らや、他者の知覚した情報の賜物であると、本人とAI、そして仲間を信じた結果。それがこの結果をもたらした、とも言えるのかもしれません』


@完全にCさんがゾーンに入ったってことか。そしてそんな奥深いメカニズム?


@Eちゃんが知覚し、一瞬の迷いを孔明と共有している。そこを流さずに仕掛けた結果が、Cさんのゾーン発動。そうなると、この二人? は、それを全員に広げることを考え始めるかもしれないね


@そしてやはり言わせて欲しい。この会社何してんの!? 会社側のAI孔明何してんの!?


『TAIC: やはり冷静に考えて、二重三重の無理ゲーである。普通は「質問はイタリア語で」の時点でお手上げであろう。私も無理である。だがそこに「AIもオッケー」といわれれば、就活生も「ああ、これは課題解決系の試験か」となってどうにかやれるかもしれん』


『J-YOU: しかし、「AIを使える人」「イタリア語で質問できる人」「状況を把握できる人」「相互の考えを出力できる人」がバラバラなんて言う状況。これを無茶と言わずしてなんと申し上げるか。そんな言語は持ち合わせてございません。

 あの参加者の能力に対する、当社とそのAI孔明の警戒心が、相当なレベルでハードルを上げてしまった、という一種の事故と言えなくもないでしょう』


@事故かー。孔明対孔明だもんなー


@まあ応募者が帰っちゃう未来もあったかもね


@そしたらあの大周輸送の新業務システムも、あの海外進出した伝説試合と伝説ライブも、なんならあの白眉アイドルちゃんたちも、成立していなかったってこと? それなんていうバタフライエフェクト??



『TAIC: では、ちょうど良いのでこのタイミングで、視聴者の皆様には、全員に与えられた権限と制約を整理しておくのである。画面四分割で一気にご覧いただこう。休憩がてら、一時停止して整理するのもありである。ちなみに実は、C氏とD氏は全くの同一である。


A 発言は自由

・AI 許可。また、他の人に自分のスマホを渡すことができる。渡された人は音声を発することができる。しかし一度渡したスマホは、審査中は帰ってこない。

・附則 全メンバーは、進行役が指示された時しか発言できない。ただし、新たな指示がくるまで制限を受けない。

・禁止事項 上記制限以外なし

・評価項目 全体の成果及び、自身の貢献度の総合評価


B 聞かれたことへの回答しか発言できない。

 ただし、イタリア語、かつ疑問詞が明示され、はいかいいえで答えられない質問に限り、審査員に質問できる権利を持つ。返答は日本語で行なわれる。

・AI 持込不可

・附則 全メンバーは、進行役が指示された時しか発言できない。ただし、新たな指示がくるまで制限を受けない。

・禁止事項 

 1. 審査員から目視できるジェスチャー。ただし、あなたは全審査員に背を向けている。

 2. 上記権利の内容を自発的に他者に能動的に知らせること

・評価項目 全体の成果のみ。貢献度は対象外


C, D 発言は自由。ただし手を使ったジェスチャーは禁止。

・AI 持込不可

・附則 全メンバーは、進行役が指示された時しか発言できない。ただし、新たな指示がくるまで制限を受けない。

・禁止事項 上記制限以外なし

・評価項目 全体の成果のみ。貢献度は対象外


E全体進行せよ。ただし発言順のみを指示せよ

・AI 自由。ただし現場での効果を想定していない

・附則 あなた自身への評価はすでにおおよそ定まっており、最終審査への通過は決定しています。ただし、あなたの行動が、他の参加者の合否に影響する可能性があります。

・禁止事項 発言を促す以外の行為。ただし、他の参加者には、あなたの指示した発言順以外での発言を禁止しています。

・評価項目 なし』



『J-YOU: この無茶振りに対して愚考し、無論この正義の探求者たるわたくしは別途、会社とその孔明への問いかけをいたしました。ご返答はこうです。

 「ある程度Eさんを基準にしてしまっているのは否定できません。ただ当社としても、この方々にしてもらいたいことを考慮すると、ここでその実力を深く見極めた上で、彼ら同士の連携の素地を作っておきたい意図がありました。

 もちろん、あまりに特異的なEさんを、孤立させないため、というのが最大の理由でした。結果的にこの場にはいない、別方向に特異的な二人も見つかったので、取り越し苦労ではあったのですが」』


@なんだよ、あの会社もいいとこあんじゃん


@やっぱあの三人じゃねえか。あのちっちゃい子だな


@本題入る前に、ひとりがゾーンに入っちゃったよ? この映像。わりと情報量の嵐だよ? 私たちもゾーンに入らなきゃダメ?

 お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ