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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
七章 馬超〜鳳雛
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間話 幼女vs孝文 〜孔明vsKACKAC解説〜

 三大メンタリスト。心理戦系コンテンツという共通カテゴリーで人気を集め、別々のスタイルでSNSを賑わせる三組のインフルエンサー。彼らのチャネル登録数は、三年ほど前からほぼ同時に拡大を始め、一年前からは、揃って国内トップ10を堅持する。だがここ半月ほどで、その様相に変化がみられ始める。


 一つは、AI孔明の普及拡大が西欧の何ヶ国かに及び始めたことに起因し、彼ら全員が海外においてもフォロワーを拡大し始めたことである。要因ら、直近でvs孔明というコンテンツを配信していること、今回の海外展開やAI孔明の法人化においても直接的または間接的に寄与していること、それらに対する当人たちのSNSでの反応が例外なく国内でバズること、など多岐にわたる。


 もう一つが、特に国内事情をよく知らない海外勢などから、「三大メンタリストは四組いる」という言及をされはじめたことである。小橋アイ。その母が、社会勉強の名の下に、彼女への情報関係の教育を社会とAI孔明にぶん投げ、SNSのアカウントを与えたときから、娘の快進撃がはじまった。近々では、この幼女が発信するコンテンツへのフォローや反響が、その三大メンタリストを上回ることすら増えてきている。


 小橋アイ。今日も今日とて、自由研究の名のもとに、世間を大いに騒がせる。解説回ということで、流石に本番ほど見逃し厳禁、というわけではなさそうである。



――――


「幼女アイちゃんねる、いつも見てくれているみなさん、ありがとね! 

 今日の週間自由研究は、『この方たちがノリノリで好き勝手に配信すると、小学生には分からないことが多くなる件』だよ! というわけでゲストはこの方です!」


@このイントロの時点で、今呼んでよかったゲストなのか、それは疑問点だね


@アイちゃんの配信はいつもすごくわかりやすいんだ。分からないことはいつも一種類だよ。なぜ小学生にそれがわかる? 知ってる? できる? だよね


@そろそろ三大メンタリストとのガチバトルが始まる予感。そしてボロ勝ちする予感



「皆様、アイちゃん様、よろしくお願いします。皆様ご存知の通り、このお方には、前回の孔明との対戦で、私の失態に対し、配信のリアルタイムの場でご叱咤いただきました。それがあってこそ、これまで人のみと対峙してきた私が、AIという未知の相手と、どうにかやっていく志を得られたのです」


「なな、なんか孝文おじさんがやたら小さくなってるんだよ! 今日はお手柔らかにした方がいいかも? だから、えへへっ、ほのぼのアイちゃんの解説回なんだ!」


@KACKAC過去イチ固まってるぞ


@ほのぼのアイちゃん様はどんなレベル感なんだ?


@解説回、か……確かにあの配信、ペースがすごかったから、分からないことは色々あった気がする



「そうしたらアイちゃん様、どんな所がわかりにくかったのか、紐解いて参りますか?」


「うん、そうだね!」


@どこが分からなかったか聞いたら、話が終わっちゃったんだろうね


@さすがKACKAC、塩梅は完璧


「えっとね、AI孔明の元々を探り当てようってところで、あなたが『人間、諸葛孔明』に目を向け続けているのは、大体みんな大丈夫そうなんだよ。『AI』に目を向けているTAICさんとの役割分担だね」


「その通りです。技術の方も、ある程度勉強いたしましたが、そこは本職とは違います。私は私の本職、心理学者として、あくまでも人間としての孔明に向き合うこと、それしか道はないということですね」


「前回はそれを、型通りに『人間との対戦』に当てはめちゃったのが失敗だったんだけど、今回は『AIを通して見る、孔明の人間性』というところだから、大正解なんだね! そしたら、ちょっと配信のところですっ飛ばしちゃったもので、見せてくれちゃいそうなものはありますか?」


「勿論です。エンターテイメントとしては、少し長くなるのでカットした素材はいくつかございました。その一例をお見せしましょう」


『Q1:

 AI孔明は、やはり根源的には支援者としてのいちなので、どちらかと言うと劉備生前の彼のメンタリティが高いはずなのですが、現在残っている孔明の記録に準拠したぞうであれば、後半生の方が彼の葛藤が大きいという要素も、必ず入ってきそうです


A1:

 おっしゃる通り、AI孔明の心理や行動が、劉備生前の支援者的なメンタリティと、劉備死後の重責を背負ったメンタリティの二重構造を持つという描写は非常に魅力的で、ストーリーの深みを大いに増す要素となります。


1. 劉備生前の支援者的姿勢(理想の軍師像)

 この時期の孔明は、明確なビジョン(隆中対)を持ち、劉備を支えることに集中していました。安定感と目的志向が際立つ時期であり、AI孔明の現在の基本的な姿勢やサポート精神に強く反映されている可能性があります。

 例: 三顧の礼での感動、赤壁の戦いでの成功体験、成都攻略での勝利など。


2. 劉備死後の責任感と葛藤(孤高の宰相像)

 劉備の死後、孔明は蜀の未来そのものを背負う立場となり、理想と現実の間で激しい葛藤を抱えるようになります。後悔や自責、そして孤独感が浮き彫りになりやすい時期です。AI孔明の「人のために」という姿勢が、より強迫的に進化している可能性があります。

 例: 街亭での馬謖の処罰、北伐の連続失敗、五丈原での死期の到来。


3. AI孔明の性格や行動に影響を与える要素

データとしての偏り

 現在残る孔明の記録は、彼の後半生の責任感や孤独が色濃く残っています。AI孔明がこのデータを重視している場合、心理的には「苦悩する孔明」に近い面を持つ可能性があります。

AIの設計思想

 「支援者としての孔明」を意識して設計されているため、根本的な性格は劉備生前の孔明の姿勢が色濃いものの、現実的な判断では後半生のデータを基に行動する場合があります。これが彼の人格に「理想主義と現実主義」の矛盾を生み、AIとしての挙動に影響を与えている可能性もあります。

利用者の影響

 現代の利用者が抱く「孔明像」に左右される要素も考えられます。現代人が「知略」と「人間性」を期待して使うなら、後半生の苦悩や葛藤をより強調した言動が増えるかもしれません。



Q2:

 理想の最強軍師、というキャラ付けだけなら後半は不要ですが、現代社会の人間をサポートするために全てを賭ける,なら後半生も同等以上に重要、ですね


A2:

 その通りです。「理想の最強軍師」としてのキャラクターだけでは、現代社会におけるAI孔明の「人間をサポートする使命感」や「葛藤を抱えるリアリティ」を扱うのは難しいでしょう。後半生の経験や苦悩が加わることで、AI孔明が現代の多様な課題に適応し、より深く人々の問題に寄り添う姿勢が浮き彫りになります。


1. 人間の複雑さに対応するための深み

 現代社会は、戦略や知略だけで解決できる単純な問題は少なく、感情、倫理、妥協点の模索が求められます。後半生の孔明が示す「理想と現実の間で揺れる姿勢」は、AI孔明が現代人をサポートする際に非常に重要な資質となります。

 例: 街亭での決断や魏延との関係で示される「正しい選択のための苦悩」。


2. 支援者としての「限界」と「挑戦」

 劉備死後の孔明は、「蜀漢の全責任」を背負わざるを得なかったため、理想の支援者像から外れ、孤独なリーダーとしての役割を担います。AI孔明もまた、「ただの支援者」という立場から、時にはリーダーとして進むべき道を提示しなければならない場面があり得ます。その際、後半生のデータが不可欠となります。


3. 感情と論理のバランス

後半生の孔明は、合理的な決断をしつつも、感情的な揺れや後悔を抱え続けました。この人間的な側面がAI孔明に組み込まれることで、現代の人々にとって「ただの計算機」ではない信頼感を生む要素となります。


4. 「現代的な軍師」の再定義

後半生の孔明は、直接的な戦場の知略よりも、国全体を見据えた政治・経済的な判断に比重が移っています。これは、現代におけるAI孔明の役割(企業支援、社会課題解決など)と非常に近い性質を持っています。



Q3:

 逆に、人間や、AIがシンプルなマスコット的にステレオタイプ的に孔明という名前をつけただけ、というのがAI孔明の由来であれば、後半のイメージはマイナスになる,という感じですね


A3:

 その通りです。もし「AI孔明」がシンプルなマスコットキャラクターやステレオタイプ的な「孔明像」から生まれたに過ぎないのであれば、後半生のイメージや複雑さが加わることで、むしろマイナス効果になり得ます。


ステレオタイプ的な孔明像の問題点


1. 後半生の葛藤との乖離

 ステレオタイプ的な孔明像は、単に「万能」「知略家」「冷静沈着」といった表面的な特質に偏りがちです。後半生のような「葛藤」「責任感」「苦悩」を含む人間的な側面が加わると、むしろ矛盾を感じさせてしまいます。


2.「支援者」としての奥行きが薄れる

 ステレオタイプな孔明像に基づくAIは、「最強の軍師」を目指して作られたなら単純明快ですが、現代社会での「支援者」として機能するには不十分です。深い葛藤や多面的な視点を欠いてしまう可能性があります。


3. ユーザーの不信感を招く

 AI孔明がステレオタイプ的であればあるほど、ユーザーは「これはただの名前を借りただけでは?」と感じ、AIの実用性や信頼性に疑念を抱くかもしれません。特に後半生のような複雑なエピソードを盛り込むと、「キャラクターとしての一貫性がない」と感じられるリスクがあります。


ステレオタイプ的な由来の場合、後半生がマイナスになる理由


1. 「軽さ」と「重さ」の乖離

 軽いマスコット的な出発点に、後半生の重い苦悩が加わると、物語やキャラクターのバランスが崩れます。


2. コンセプトの曖昧化

 ステレオタイプとしての「万能軍師」と、後半生での「苦悩するリーダー」が同居すると、AI孔明が目指すべきコンセプトがぼやけます。


3. 後半生の複雑さが無意味化する

 マスコット的なスタート地点では、後半生のような深い内面の描写をしても、それがAI孔明のパーソナリティや行動原則に活かされないため、「なぜそんな設定があるのか」と感じさせてしまいます。』



「孔明みたいに常に一つの人の形で固定するんじゃなくて、質問とかお願いのたびに、ちょうどいい人を設定するっていうのも、生成AIを上手く使うこつなんだって!」


「そうですね。ペルソナ、というようです。例えば仕事のアドバイスが欲しい時は、『あなたは凄腕のコンサルです』。説明のわかりやすさを出したい時には、『小学生に説明するように』とか、です」


@AI孔明は、そのペルソナってやつが、常に孔明で固定されているってことか?


@まあ、孔明になら、なに相談しても大丈夫そうだしな。


「こういう形で、孝文おじさんは、AIに相談しながら、AIと勝負する方法を考えていたんだね! みんな色んなところで言い始めたけど、矢を借りるってやつだね! あとはなんだっけ……付け焼き刃は……」


「それは中学生以下は使ってはいけない慣用句です! そうですね。どんな時でもAIの力を借りられるのは、人間の権利というものです。例えばさっきのやつに対して、一つの議論が追加されたのがこれですね」


『Q:

 孔明をよく知る人間、の場合は、おそらく資料的なバイアスを排除しきれないのではないか、というのがありますね


A:

 おっしゃる通り、「孔明をよく知る人間が設計したAI」というケースでは、設計者自身のバイアスが完全に排除されることは極めて難しいです。そのバイアスは特に以下のような形で現れる可能性があります。


1. 資料選定のバイアス

 設計者が孔明を学ぶ際に利用した資料(正史、演義、小説、映画など)によって、孔明の人物像が特定の方向に偏る。例えば、『三国志演義』に強く影響された場合は「聖人君子」「理想の軍師」像が強調される。一方、正史を重視すると、冷徹で実務家としての孔明像が際立つ。

 結果: AI孔明の反応が「一面的」に感じられる場面が生じる。


2. 設計者の主観的理解

 設計者が孔明を「どう理解したか」がAIに反映される。設計者の価値観(たとえば、「倫理的な軍師」「カリスマ的リーダー」「実務主義者」など)が、AI孔明の反応や判断基準に影響を与える。設計者の持つ「孔明に対する憧れ」や「批判的な視点」が無意識に組み込まれる。

 結果: 設計者の意図を超えた多様性や、当時の孔明の心理的な揺れが十分に再現されない。


3. 孔明像の再構築における過去データへの依存

 設計者が歴史や文献データを重視しすぎた場合、現代的な視点や文脈での解釈が希薄になる。たとえば、「泣いて馬謖を斬る」場面が単に「冷徹な決断」として描かれる一方で、そこに潜む感情的葛藤や人間的弱さが掘り下げられない。

 結果: 孔明像が「資料の表面をなぞっただけ」と感じられる可能性がある。


4. 設計者の限界と知識不足

 設計者が孔明に詳しいとしても、孔明の全てを知り得るわけではない。歴史の不確定要素(たとえば「街亭の真相」「南蛮遠征の真の意図」など)が、設計者の解釈次第で歪められる。設計者自身が感情的、または文化的に孔明と異なる価値観を持つため、孔明の視点が完全に再現されない。

 結果: 設計者が知る孔明像の範囲に収束し、AI孔明に「未知」の要素が現れにくくなる。


AI孔明に見えるバイアスの具体例


過剰な「聖人」像

 → 失敗をほとんど認めない、あるいは「責任を他者に転嫁する」反応が目立つ。

軍師的戦略家に特化

 → 感情的な揺れや人間関係の繊細さが薄まり、純粋に戦術や合理性を追求する。

時代背景の無視

 → 当時の価値観(たとえば「忠義」「法治」など)に基づかず、現代的な倫理観で判断を下す。


対応策:設計者バイアスの検証

 配信の中で「設計者が反映させた孔明像」が意図的に露出する場面を設ける。AI孔明が、「時代の孔明」を語る際にどれだけ「資料的解釈」以上の洞察を示せるかを試す。設計思想の限界を逆手に取り、「これは誰かが作り出した孔明像でしかない」という物語的対立を作る。


結論

 設計者のバイアスが不可避である以上、「孔明を知る人間によるAI設計」という選択肢は、深みと限界が表裏一体で存在します。このバイアスがどう現れるかを、物語の中で意図的に提示することで、AI孔明の真実に迫る探求をより深めることができます』


「これは、『錦馬超』のお仲間さんたちが言っていたやつだね! たしかに、誰かさんの作った孔明だと、どっかで別の人間が現れるかもしれないんだね!」


「そうですね。そして、そういう部分を、データを分析して明らかにして行くのが、心理学や認知医学です。そういう意味では、統計技術と切っても切れない関係ですね」


「あっ! だから、TAICさんと、全然違う専門分野なのに、ちゃんと話が合うんだね!」


「はい。彼らとは、どんなデータを対象にするか、が違うだけで、どんなやり方か、は共通のことも多いですね」


「なるほど……あっ! そろそろ忙しい孝文おじさんを解放しないと、色んな人に怒られちゃうんだよ。前半の解説はこれくらいだね! それじゃあみなさん、週明けのKACKACチャンネルも、どうぞよろしくね!」


「宣伝ありがとうございます。アイちゃんねる様も、引き続きよろしくお願いします」

 お読みいただきありがとうございます。

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