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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
七章 馬超〜鳳雛
166/320

百十七 馬超 〜千軍万馬、大衆の超越〜 軍備

 AI孔明vsKACKAC。その再戦を生配信した動画は、三部作の一回目として、準備段階だけで終わる。だがその準備自体が、AI孔明をフル活用してトップアイドルの仲間入りをした三姉妹『WhiteBrow』、そして彼女らを含む、三国志系コミュニティ『錦馬超』の面々の活躍により、大反響をもたらすコンテンツに仕上がった。

 そして次週予告と共に配信は終了し、今回への反響と次週への期待感で、SNSを中心に大盛り上がりをみせる。

 ――なんていうおとなしい要約で、このAI狂想曲と言っても過言ではない、激動の時代の激動の一週間が収まるはずがない。



巨大SNSサービス #孔明vsKACKAC


@LLM_analyst:

「#孔明vsKACKAC 期待通り、といっていい面白さだった。けど、面白かったという感想以外の全てが、予想と全然違ったんだが。なんだよ#白眉アイドル コラボって。そしてなんだよ#三国志オタク総動員 って」

 212,104 いいね


@3g_otaq:

「#三国志オタク総動員 賈詡と馬超って不倶戴天の仇敵だったはずなんだけどね。うちらそういう敵味方の分け方してないから大丈夫さ。むしろこの勝負自体が#AI孔明の力になる気もしているんだよ」

 503,594 いいね



@consult_genjo2023:

「#三国志オタク総動員 召集に応じてみたが、なかなかの仕事量だ。だがそのデータ取得、処理の方法自体をAI孔明に聞きながら進めているから相当効率的なんだよ。やってて孔明の立ち位置がわからなくなっているけどな」

 1,553,752 いいね


@ Familier_Official(スペイン語):

「#白眉アイドル 素晴らしいパフォーマンスだったよ。まああの三人を超えるインパクトはないかも知れないが、プロとしての洗練はこの先天井知らずだろう。だが、それが霞みかねんくらいに、AIとおっさんとOtakuのコラボが描く旋律が、創作意欲をかき立てるんだ」

 18,532,182 いいね


@narou_fan3594:

「#白眉アイドル こうなったら伝説のアイドルに進化不可避だね。そしてまた新曲が生まれる期待。#AI孔明の出どころの四択が、漢気すら感じられるシンプルさ。すごい一般人、自己進化AI、すごいオタク、転生本人、かぁ」

 411,925 いいね


@ KomeiCosplayeur(フランス語):

「#三国志オタク総動員 オタクパワーというのは、オタクがオタクとしてパワーを発揮するだけじゃないんだな。共通の推しをチェーンにして、それぞれの得意を繋いでいくのか。奥が深いオタク道」

 627,192 いいね


@mental_taicX:

「#孔明vsKACKAC が、あと二週間かかるとすると、#信長vsTAIC&JJ が先行するかもしれん。こちらの一段階目は、あと二、三日で公開できるはずだ。JJに合わせてアバター出演することにさせられそうだよ」

  3,251,623 いいね



――――

某区役所 真新しいオフィス


 大橋朱鐘。分野を問わなければ、AI孔明を使い倒してきた数、そこから生み出した価値の高さは、最大級と言える。高齢者を主な対象とする生活支援アプリ『EYE-AIチェーン』の開発責任者にして、本人すら気づかない才能をくすぶらせる人財を掘り当てる『大橋チルドレン』。

 その中に、最近最も大きく国内を騒がせ、AI関連技術の普及を妨げる法の不備に、合法スレスレの策で次々と挑みかかる『合法サイコパス』存在が、間接的に彼女の名声を高めている。


 そして当の本人は、社会の喧騒をよそに、順調に忙しくなり続ける日々の業務をこなしつつ、またもや突拍子もないことに思いを馳せる。細かいことは丸ごと全部差し置いて。例えば、国内最大の物流企業を率いる親友に、アポ無しで直電することが、必要なんだと


「ねえねえ小橋ちゃん? 暇? 電話出れるってことは大丈夫ってことだよね?」


「せ、先輩? 何してんですか? 飛将軍にもほどがありますよ?」


『そうだよ! 彼氏くんの言う通りだからね! まあいいけど。何分くらい大丈夫かも、何となくイメージできてるんだよね?』


「五分かな。手短に、だね。ちょっと考えとかないとって思ったのがさ、あの会見の最後なんだよね。私のコメントのちょっと後ね」


『これとこれのことかな? 

「@ 〇〇AI_office(英語): プラットフォームの共有は当面続くが、各国での公正な競争は、ここから始まるといっても過言ではないだろう。日本の先行を是としない国々も、少なくはないのだろうから


@ Cao_mengde(中国語): 人工知能、新たな戦国時代、それは遠くはないかもしれんね。孔明の名は譲るが、その地位まで安泰かは、世界が決めること。未だ来らず。遠からず来る」』


「そう! それそれ! やっぱり仕掛けてくるよね? バトルになる? なんか準備しとく?」


『バトルって……確かに、セキュリティリスク、サイバー攻撃リスクはかなり高くなるだろうね。本家は、自分たちにまで被害が来ないように立ち回りつつも、日本へのアタックまで面倒を見ることは減るだろうからさ』


「そうだね。それに、『合法』とは限らないよね? あの子の守備範囲ではたりないかもよ?」


『そうかも知れない。だけど大半は合法だよ。それか、彼らがこれから「合法にする」のさ。つまり、国内外のガイドラインや枠組みを、しっかりと整備するように推し進めていく、いわば表の部分だね』


「そっかー。表が大丈夫だとして、危ないのは裏の部分か。裏だとやっぱり企業は動きにくいよね?」


『間違いないね。セキュリティそのものを商売にしている企業や製品は多々あるけど、彼らにとってさえ、サイバー攻撃が多くてプラスになることは少ないのさ。新しい攻撃が来るたびに、新しいものを開発しないといけないんだからね』


「そうしたら、技術的な部分とか、資金繰りとかで手を借りるかもしれないけど、全体的な防衛戦略は、こっちでも動きてみるよ。最初はまだそこまで技術が出てこないだろうけど、だんだん攻撃側も自国とか自組織の独自AIとかを発展させて、巧妙になってくるだろうからね。そうなる前に対策しておかないとだね」


『うん、ある程度は任せるよ。リソース不足とかの関係で何かあったら、ちゃんとした筋から依頼を通すんだよ』


「わかった! ありがとね! それじゃあ! アイちゃんにもよろしく!」ピッ



「いきなり何してるんですか先輩!? まあ問題ない相手ではありますけど」


「問題の根っこが深いからね。先に意識合わせしときたかったんだよ。この先早ければ一年以内、遅くとも二年くらいすると、世界的にもAIの戦国時代が始まるかもしれない。そこへの備えを怠ると、多くの市民、特に高齢者や子供などの弱者たちが、致命的な打撃を受けかねないからね」


『まだ表だった動きは多くはありませんが、本家のあるアメリカや、積極的に自国開発を進めたがっている中国を中心に、やや先行する可能性が見えつつある日本に対していかに追随するか、というのは急務になっているでしょう。

 アメリカはいくつかのAIに対するカスタマイズや関連商品を増やす方向に行くでしょうし、中国は多大なリソースに基づいた独自モデルやビジネスを確立し、共に国際的な地位を保とうとしています。

 そのために、こちら側に対する情報の取得や、妨害工作などは、様々な手段で検討されるでしょう』



「表っていう部分、つまりAIの進化に国際的なルールが追いついていない部分は、監査法人としてしっかりとした地位を築いた法本君や、国際的にも発言力の高い小橋ちゃんたちに任せられるんだ」


「足りないのが、それ以外の部分、ですか。開発競争が激化すれば、多少なりとも過激な形で情報収集が行われる可能性は否定できませんからね。それにしても先輩、すでにどんなことをすべきかのイメージが、ある程度固まっているような言い方をしてましたけど?」


「うん、全部ではないと思うけどね。まず一般ユーザーとか開発者側に、これまで通りの技術レベルでの攻撃があることは想定しないとね。そこはEYE-AIチェーンを通して、サイバー攻撃に対する備えを強化していきたいんだよね」


「高齢者向けの、詐欺などの防犯訓練機能の延長として、無理のない範囲で拡張していけそうですね。どんな攻撃があり得るかは、スタッフたちや、AI自身が知識を持っているはずです。だよね孔明?」


『お任せください。既存のあらゆるタイプのサイバー攻撃に関する情報、必要な対策は網羅されています。その中で、ユーザー様ご自身が特に気をつけねばならない事を、防犯訓練に取り込む機能強化を検討します。ここは、KOMEIホールディングス側にも、コンタクトをとっておいた方がよろしいでしょう』



「そうだね」ピピピ



――――


KOMEIホールディングス 真新しいオフィス


「……次は、監査法人の運営体制ですね。流石にワンマンのままとはいかないでしょうから、組織としてどう組んでいくか、まずは人財のところからですね」


「承知しました。あ、失礼大倉さん。大橋様からです。この電話は最優先事項です」


「……仕方ないな。セイントお母さんからか」



『……あ、もしもし法本君? いま大丈夫? 忙しくない? 

――何してんですか!? まあこれは孔明のせいだな

――「恐縮です」』


「問題ありません。大橋様からのご相談は、この法本、合法的な範囲ならば最優先に設定しております」


『う、うん、いつも通り元気そうだね。あのさ、ユーザーに対するサイバー攻撃への防犯機能について、相談しときたいなって思ったんだけど、そっちの部隊と連携できる?』


「承知いたしました。この国に限らず、AI技術そのものが、まだ巣立ったばかりの雛鳥ですからね。一度そこは、主だった面子を整えて、議論を固めるのが良さそうです。こちらから水鑑さん、関さん、弓越さんをお連れします。TAIC氏にも声をかけておきます。

 それと、これは公共の話なので、大周輸送側の実務担当も合わせて議論に参加していただきましょう。大橋様のことですから、小橋様にはすでに相談済みだと思いますので、野呂様、綾部様あたりと日程を調整いただけたら」


『うん、わかった! 調整はチェーンの機能から申請しとくね! 日が決まったら、ビジネスの話じゃないって形のリリースはこっちからだしておくね! ありがとう! 根詰めすぎないように気をつけてね! じゃあね!』ピッ


「……一つ事業が増えそうですね。ですが、人財という意味では大いに助けを期待できそうです」


「チルドレン増えるのかな?」


――――

某区役所


「もともとこういう時に遠慮がない上に、なぜか向こうが大丈夫な時に電話をかけるっていうスキルは健在ですね……」


「まあ忙しいタイミングってのは周期があるからね。近しい人だと、何となく仕事のリズム感もイメージしやすいんだよ」


『そちらの理論は、TAIC氏あたりのアプリケーションに、機能として盛り込んでいただくご検討をお勧めいたします』



「うん、今度ちらっと頭出ししとくよ。さて、ここからが本題だよ。既存の攻撃への対策、っていうのはだいぶ目処を立てられそうだけどね。この先はAI戦国時代、つまり、まだ見ぬ攻撃手段というのが、急速に発展する可能性が否定できないんだよ」


「ここまでが全部前座だったんですか!? 確かにそのトピックはものすごく重い話ですけどね! それで、そんな話を先輩が振る時は、何かしらの思いつきをすでにしている時なんですが、正解ですか?」


「うん、大丈夫だよ。まあ思いついたのは、KACKACさんたちの配信を見ていたからなんだけどね。彼も以前に、たまたまAI孔明のごく初期のユーザーだった私たちの所に相談に来てくれていたから、余計に気にしてはいたからね」


「KACKAC氏ですか……ごめんなさい。一般人の域を出ない僕には、脈絡がわかりません」


「大丈夫だよ。どんな人にもひらめきというのは存在するものさ。君にだってたくさんね。私は自分のそいつに、ちょっとだけ敏感で、ちょっとだけ忠実なだけなのさ。

 幸いそこの受け皿としてAI孔明がいたり、君がいてくれたりする。そんな環境に置かれていることに気づき始めているのは、一部の人だけではなくなりつつあるんだよ」


「確かにそこはその通りですね。小さい子供が、どんな小さな気づきでも親に伝えるようなことは、大人にはできない。でもそれの受け皿にAIがなら始めるのなら、そこはどんな人のひらめきだって言語化される余地が出てきます。それを共創進化の中核に置くのが正しいことは、先輩や、あの子達がすでに証明済みです」


「そうかもね。だからこそこれも、多分正解なんだよ。未知のサイバー攻撃、といったね。でもそれは、本当に未知だと思う? 人は、人が想像できることしか実行に移せないんだ」


「?? 確かに、人間自体がアイデアを出さない限り、決してイノベーションが生まれることはありません。だとすると、人間の限界を決めているのが想像力だ、というのも、一つの真理ですね」


「そうなんだよ。だからね、その想像力ってやつの、世界最強にヘルプを頼むんだ。ここから先は、SFに片足を突っ込むんだよ」

 お読みいただきありがとうございます。

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