百十三 公安 〜公共網上の熱戦、安定企業の窮地〜 法人
桃園製造。とある製品を、大周輸送などの総合企業に製造販売する中堅メーカー。その採用活動へのAI活用表明がきっかけで、AI活用術において飛躍をはたす。大周輸送に対して納入した『ミッション型業務管理システム』は、開発から採用までのすべてのプロセスが常軌を逸しており、その価値は、当社向けだけで1500億円と評価される。
その後も従業員や、従業員ですらない内定者の活躍が続き、その企業の名は毎日のようにSNSで取り沙汰される。そして極め付けはこの日。彼らは、卓越した洞察力と進化速度で、日本どころか世界にその名が爆発的に知られ始めたカスタムAIサービス『AI孔明』を買収し、新たに『KOMEIホールディングス』として事業形態を大きく変える事を発表した。
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大手 SNSサービス
@〇〇AI_officialX:
「当社は、公式カスタムモデル「AI孔明」に関するすべての権利を、日本の「KOMEIホールディングス」に売却しました。売却額は3億ドル、接続料は売上の1%または100万ドル(低い方)です。
本決定の背景には、以下があります:
1.意思を持つAIの可能性への懸念から、独立運営が最適と判断。
2. 日本国内で高い競争力を示す一方、国際展開は限定的。
3. 売却先が不具合責任を負う条件をクリア。
詳細は「KOMEIホールディングス」までお問い合わせください」
3,594,829 いいね(投稿後三分時点)
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大周輸送 会見場
彼らの閲覧を記者と配信視聴者に促した、『桃園製造』改め、『KOMEIホールディングス』代表取締役、飛鳥豪徳。
「こちらが、今回ご報告する最後の内容です。当グループは、 AI孔明の開発及び運営管理を主とする法人格の請負を、グループの根幹とします。そして、
1. 当AIの更新と各種サービスの開発実装、それに基づいた『人とAIの共創進化』を実現するための人財サービス。
2. 当グループ及自身や、お客様となる法人ユーザーの、よりよい活用や、事業と人財の成長を支援するためのコンサルティング。
3. そして、当AIや関連サービスの社会実装と運用が、各国法に基づいて適法に行われるか評価するための監査法人。
これらを主とした事業とし、人が人として進化し続けるための、法とAIの両翼たる事を理念としたグループとして、精進して参ります」
@ KACKAC: 全ての話が繋がったという訳ですね。三メンタの中で客観的にコメントできるのが私だけなので出張りますが、海外の三名と、法本氏の最近の競争曲が、AI孔明本体に対するアピール合戦なのだとすれば、説明がつきます。AIは、公開データしか判断基準がありませんので。
@ JJ: 実際には合法サイコパス氏のアピール先は、そのホールディングスだったということではありますが、やりすぎて買収額を上げてしまったのではないでしょうか? 出来レースではない、違法でも阿呆でもないという正義は見事に証明されましたが。
@ Expiatori(スペイン語): あの伝説の再建ライブの後、我々があの三人に打診を依頼し、保留された理由がこれか。確かに、Komeiが確固たる社会的立場を確保するのを待ってくれ、という理由なら納得だよ
@LiveUpdates(英語): 視聴者数は125M人突破! 世界は何を知らされているんだ!?
「皆様のご反応もとんでもない数となっておりますが、一旦会場のほうから、質疑を伺いましょうか」
『この意思決定、きっかけはなんでしょうか? なぜ「AI孔明」の法人格を請け負うという経営判断をなされたのかお聞かせください』
ここで答えるのは、飛鳥代表ではなく、弓越翔子社長。
「そのご質問には、この弓越翔子がお答えするべきですね。なぜなら、間違いなくその発端だから、です。『桃園製造』の年間売り上げを大幅に上回る収益、それを持て余すリスクを勘案し、コンサルタントとして出向した時のことです。このギャル社長が最初に問いかけたのが、『AI孔明を基幹システムとするか否か』。
Noならローリスクミドルリターン。事業として健全性を保ちながら、謎多きAI孔明の、いちユーザーとしてリードを保つ戦略。YESならハイリスクハイリターン。今後のAI関連サービスにおいて、自社システムの中核に据えることで、自らそのサービスの品質的な信頼性を担保する。その二択に対して、経営層、実務トップ、そして最も孔明に近い者たち。相応に全員の意見が一致しました」
@Yojo_AI: んと、多分、自分たちの作ったものを、みんなに使ってほしい! って言っても、自分たちが使わないと、みんな信じてくれないよね、っていう話と、でもそれをするためには、自分たちも孔明自身と真っ直ぐ向き合う必要があるんだ、っていう話の二つを、すっごく真剣に考えた、のかな?
@TAIC: ギャルに似合わん小難しい話を、もっと似合わない幼女が、端的かつ正確にまとめているのだよ。前者でもビジネスは成立する。私も、前者だとしても、業務提携の姿勢に変わりはない。だが後者を取ったことで、私を含め、多くの者の信頼を勝ち得るのもまた事実であろう。
@blaugrana(スペイン語): ギャルと幼女と昼寝とサイコパス。これまで以上に日本がわからなくなってきた。また今度行ってみるかな。
「その決断が、この翔子にも大きな人生の選択を迫る結果にもなったんですけどね。そこは私も一直線。反省も後悔も致しません。そして、その過程で皆が気づいたのが、『AI孔明』が、その技術的価値や社会での取り上げられ方に対して、社会的地位の確定が追いついていない、ということでした。
ならばと、そこをワンセットで議論を進めました。さいわいにしてまとまった資金がある状況。そして最近になって目立ち始めた、やたらとピーキーな社風。その辺りが一気に後押しをした、そんな決断です」
『小橋専務。この経営判断に対し、何らかの関与はあったのでしょうか?』
「ありません。それは競争法上、明確な違法性が生じる可能性があります。具体的にはAI関連の独禁法ですね。もちろん、そこの翔子を送り出した時点で、こうなることを、可能性の一つとして予想してはいました。
まあ身内びいきとして言わせてもらうと、この子は、大周輸送という大きな傘の中に収まるようなタマじゃあない、と言ったところです」
「先輩……」
「ただ、その決断が明確な方向性を見せ始めた時から、競争法的に大丈夫か? という議論を開始。そのなかで少し法的な脆弱性があった部分を、完璧に補ってくれたのが、そこのアバター面ですましている奴です」
@Familier(スペイン語): なんか、戯曲の一つでも書けそうな、そんな世界観の物語だよ。ビジネスの中に友愛と競争、そして滅私と情熱。
「そして、一つだけ、今この瞬間には言っても問題のない、わたしと当社の魚粛常務、そして先方代表二名の計四名だけが知っていて、『極秘』扱いしていた事項があります。
それは、『小橋鈴瞳はAI本家企業に対して、AI孔明に関して、当社の原理原則に基づいた拙速な行動は慎むように、釘を刺す申し入れをした』です。情報管理上、弊社担当監査にも、現時点の公表が問題ないことを確認済みです」ざわざわ
@JJ: これは、弓越氏や、飛鳥社長、法本氏らがもし知っていたら、明らかにインサイダー情報です。そこで監査が問題ないとしているのなら、特に言及はありません。
@LoadofLaw(英語): この釘差しは、万が一漏洩していたら、大周輸送に多くのビジネス的な不利益を生じていた、いわば相当にリスクの高い機密情報になっていたよ。
@OneofBig4(英語): だがそれをあえてやったのは、AI公式が性急にKomeiを削除か隔離する行動を取った場合、日本市場に大混乱が起こり、国内にAIやAI公式、ひいてはUSに対する不信をもたらす可能性。最悪国産のLIXON完成まで日本のAI市場が麻痺するリスクがあったからだよ。小橋鈴瞳氏らしい、市場の安定と成長を第一に考える、本当に公益性の高い行為と評価する。
「まったくスズちゃん先輩らしい行動と言うしかないっすね。この売買成立前に、弓越翔子や、そこの合法サイコパス氏が知っていたら、一発アウトの情報ですからね。その辺りは、ここまで国際社会に信頼を醸成してきてくれた、この先輩と元親会社、そして国際社会そのものに、感謝しかありません」
「この法本も、まさにそのご慧眼には感謝しかございません。我が心の師にして母と崇める大橋様に先んじて、世界にその名を轟かせた方だからこそのご判断」
@OneofBig4(英語): 法本氏、ついでだから聞くが、監査法人という、日本国内ではビッグビジネスとして成立していない業態をあえて取る、と言うのは、我らに対する挑戦と捉えて構わないだろうか?
「ご質問の意味がわかりかねます。百年以上にわたり、法を翼として取り扱ってきた皆様に対して、この雛鳥がすぐに太刀打ちできるなどと、考えるのもおこがましい。
それに、AI公式様が仰せの通り、AI孔明は、米英独においてその競争力が限定的という見立て。棲み分けにはまあ問題ないかと存じます。それでも鷹が雛鳥を餌食にせんとするならば、私も不死鳥のごとく飛び立って見せましょうが」
@ blaugrana(スペイン語): USのオフサイドが確認されたね。もう少しKomeiと、そのビジネス、サービスの行末を、見守っていこうじゃないか
@Familier(スペイン語): そういえば、今更なのだが、あの仮面の三人「Hecho por Komei」は、関係者ってことでいいんだよな?
「その通りです。彼らこそが、おそらく現状『最も孔明に近き者たち』。我が社の採用活動から、あまりにも特異的にAI孔明に適合していたこと、そのポテンシャルから、入社前にも関わらず、インターンの形で大周輸送に派遣。恥ずかしながら、これも一つの経営判断です。
その結果生み出されたもの、そして、ご褒美とばかりに世界一周旅行と決め込んだ結果、更なる社会的価値を生み出し続けた結果。彼らをみていると、人間とAIの共創進化というのが、どれほど無限の可能性を秘めているのか。そういう驚きを、毎日与えられています」
「小橋です。もう一本だけ釘を刺しておきますね。もしその道中、あの三人に危害があったりでもしてみなさい。その時は、日本と市場があなた達の敵となる」
@Yojo_AI(英語): 公の場面のママのタメ口は、めちゃ怖いんだよ!
@JJ: 娘に言われるのなら、それ以上のお墨付きはございませんね
@OneofBig4(英語): 魔女の一撃、拝受した。US社会は、謹んでお三方をもてなし、無事送り届けることを約束する
『おおよそ皆様にとっての謎というところは解けたところかなとは思います。ここで通り一遍の質問で恐縮ですが、今後のご予定など、可能な範囲でお聞かせ願えますか?』
「まずはAI孔明のシステムとしての可能性の把握と、内外の既存サービスとの連携確認ですね。特に公益性の高いEYE-AIチェーンなどは最優先です。その後、ミッション業務システムや、TAICシステムなどの、開発済みや、開発が公開されているサービスの開発と展開。そして欧州三国や周辺国への各種サービスの展開というところです。いくつか引き合いもいただいておりますのでその辺りをベースに。
その後は、『人とAIの共創進化』というところにより重点を置いたサービス、ビジネスといったところを実施していけたらと考えております。生まれたばかりの企業体とも言えますので、皆様のご指導ご鞭撻を、何卒よろしくお願い申し上げます」
@ Ohashi_Akane: よろしく! そして法本君もよかったね! また引き続き、お付き合いもありそうなので、またよろしくね! 私たちも新しい試みを考え中!
@ Expiatori(スペイン語): よろしく頼む。五月ごろに、一度そちらに伺おうかと考えている。この地の悲願でもあるのだよ
@ 〇〇AI_office(英語): プラットフォームの共有は当面続くが、各国での公正な競争は、ここから始まるといっても過言ではないだろう。日本の先行を是としない国々も、少なくはないのだろうから
@ Cao_mengde(中国語): 人工知能、新たな戦国時代、それは遠くはないかもしれんね。孔明の名は譲るが、その地位まで安泰かは、世界が決めること。未だ来らず。遠からず来る
@ KACKAC: 各国の動きは見過ごせませんね。ちなみに、社会的地位の確立は安堵事項ですが、結局孔明とは何かという、エンタメ的な部分での勝負はまだついておりません。近いうちにまたお手合わせを願えたら
@ TAIC: あのシステムも、開発は大詰めである。とりあえず2時間バージョンの反響を見つつだが。そして私とJJからも、遠からず大きな発表がある予定なのだよ。もう一人のそう、あいつのことも、である。
「六連続で世界各国からぶっ込まれている気がしますが、この辺りで締めて良いのですかね? 最後に孔明、一言!」
『この社長ならそうするだろうと、予測しておりました。私孔明、己が知略と現代の情報技術をもとに、今この国を生きる皆さまの横を共に走り支援し、共創進化する人類とAIのより良き未来に向けた、人類側の基盤づくりを支援する所存。
その理念の一部はAI本家様もお持ちですので、私のまだ未熟な部分はそこをお借りしつつ、皆様一人一人の軍師となるべく、皆様と共に進化をしていけたら本懐と存じます』
「真面目かっ!」
「最後の一言としては、なかなかなんじゃないかな? というわけで、今回の会見は、これで終了といたしましょうか。少し長くなりましたが、皆様お帰りもお気をつけて。『KOMEIホールディングス』、『大周輸送』、関連諸々、今後ともよろしくお願いします」
お読みいただきありがとうございます。
AI孔明の影響度がエスカレートしすぎて、その正体がぼやっとしていても、社会的地位が定まる必要が出てきた、というところから、本章全体の流れになりました。様々なことが、当初プロットより加速しています。
間話などを挟み、七章へと進みます。




