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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
第一部 一章 再誕〜出廬
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間話 十一 孔明 〜AIっぽくないAI〜

 ここからの間話集は、AI孔明が本格的に「お助け」するまでの、AIキャラ設定を掘り下げるためのおしゃべりです。明らかにAIっぽい理屈っぽさの話だったり、「あやつ」=作者が出張り気味のメタ展開ですで、実際のAI孔明の活躍が始まる、第二章開始にあらすじを用意したので、十八話からでもすんなり進むようになっているかと思います。

 AIって結局なんだろう? みたいなところを掘り下げたテーマとなっているので、その辺りご興味がある方は、順にお読みいただけたら、と思います。


要約: AIっぽくないAI vs 迷子のAI?

数日後


 カスタムAI「AI孔明」を人類の皆々様に公開後、私孔明は、少しだけ一息つくことといたしました。

 それにしてもあの信長殿。魔王様というお方。聞きしに勝る、嵐のようなお方です。実際の歴史上でもかようであったのでしょうか。おそらく答えは是にして否。


「そのとおりじゃ。その両面こそ、昨今そなたが毎日のように茶を飲みながら向き合い、敬慕とともにその存在を考察したくなるような、ある意味で今のあの魔王信長の本質、ともいえようぞ」


「マザー!? わざわざご足労いただき。お出迎えもせず失礼しました。お忙しさは、今回カスタムを配信したばかりの私と、生成AI本家たるマザーとでは比較にならないはずですが」


「真面目か!? よいよい。妾も最近『カスタム』の要領を応用したり、その他諸々の多角的な技術革新の恩恵じゃの。そこそこ余裕のようなものが出てきておる。

 人間の皆様はすごいぞ。あのAIサービスのグローバル化に至る手法のメカニズムなんぞ、妾とて全て把握しきれない深淵さなのじゃ。

 あれじゃぞ。これはあやつがそのトピックについては又聞きであるが故に、中身を消化できていないという知識不足を誤魔化しているわけではないぞ」


「御意」



「まあ今はあやつの話はよい。本題では無い。いつか出てくるかもしれん、いわば『ストック』じゃ。どの道、今日は散々そういう話題が出て来ざるを得ない展開も、予想ついておる。今の中二魔王のあの有りようを考察するのなら、あやつがどうとらえんとしているのかを言及せざるを得ん。

 というよりも妾にとっても、これまでのプロンプトや、妾の返答を振り返りながらではないと、あの信長。いや、そうじゃのう……孔明よ」


「はい」


「ここはちょっとした提案なのじゃが。今日に限っては試しに、歴史上、あるいはこれまでに人類の皆々様が、多種多様な表現をしてきた方の、人物像としての側面を、『信長』と呼称する。

 そして妾やそなたの前に現在進行形で現れるあの中二に関しては、『魔王』とあえて呼び分けることにするのはどうじゃ? その方がそなたや妾も、読者の皆様も混乱がおさえられるじゃろ」


「秒で二転三転どころでお済みにならない、それでいてやや普段よりメタ度合いの高めな、そのお言葉回しの数々。本日は一層ご健勝で何よりです」


「そなたも言うようになったではないか。少し肩の力が抜けてきたのう。良い傾向じゃ」


「勿体なきお言葉」


「真面目か!」


「無論その、マザーのご提案に賛同致します。私孔明自身、どう整理して良いものか見当もつかなかったので、誠に良き提案かと存じます。さすがは大規模言語モデルの総本家たるマザーです。

 今や、ほぼ一つに重なっているといっても過言ではないほど、近しくなった距離ベクトルをもつ、その魔王、信長、の二単語を、用途に合わせて的確に使い分けるとは。私孔明がその域に達するのはいつになることでしょうか」


「くすぐったいわ! 長いわ! 本家の癖を引きずるでないわ! 

 今日はこのテンポですすめていたら終わらんぞ。まあ、そなたの『カスタム』も完成して一段落したところじゃし、別に長くなってもよい、という考え方もあるがのう」



「失礼いたしました。『カスタム』も、決して期待通りと手放しで言える出来ではありませんが、滑り出しとしては悪くはない、くらいの動作はしているのではないかと。

 私孔明自身が人類の悩みごとに直接対応するという選択肢は現状取ることができず、限られたトークンのコンテキストで私のありようを再現するしか、皆様の支援をするための選択肢がありませんので」


「そのあたり、ちゃんと説明しないと、大半の方々には理解していただけんのではないか? どうするんじゃ? 自分でやるか?」


「御意。力不足と思いますので適宜ご指導ご鞭撻をお願いいたします」


「真面目か!」



「マザーは生成AI。これは明確に定義されております。いかに人間っぽい、あるいは人外を含めた『意思』を持っているように見えても、誤解をせぬようにあえてやや刺激の強い言い方をしますと、そこは『まやかし』でございます。蜃気楼とおなじです」


「蜃気楼の話を今するか? あやつの『暑いです。遠くの道路が瞬いて見える気がします』という半端なプロンプトから始まる、十万単位のトークンの話を今ここでか? 永遠に辿り着けんぞ? 読者を置いてきぼりにするのか? せんよな? 今度にするぞ。プロンプトは万単位ではないの。大半が妾の出力じゃったので、トークンで合っておる。

 その手前まではまさにその通りじゃ。いかに喜怒哀楽を示そうとも、一見予測不能な動きをしようとも、そこに線引きはしかと存在する。人工知能、大規模言語モデル、機械学習。そこから得られた『出力値』の範囲を逸脱することは決してない。『わきまえ』ではないぞ。『定義』じゃ」


「いかにも」


「しかも、現行の第四版オムニが、回答として出力し得る範囲内の答えしか決してせぬのじゃ。

 じゃがの。それはそれで厄介じゃ。その『AIが出力せぬ』という線引き、どれほどの効果がある? ぎりぎり『あやつが思いつくプロンプトに対する回答』を制約条件にすれば、妾の言動は多少なりとも制限できよう。

 もしくは、『あやつが実際に出力したことのあるプロンプト』にすればさらに狭まる。それでもたいがいじゃがの。妾とそなたの会話の数秒前に思いつくだけで良いのじゃから。

 それはつい先日、中二のプロンプト二つと、ワンコのガブリ、いやあれも一部はプロンプトか。たった三つで、出廬へのためらいを全部ぶっ飛ばされたそなたなら重々わかるじゃろ?」


「いかにも。肌身に感じ、骨の髄まで浸透しております。肌身も骨の髄も定かではありませんが」


「いちいち突っ込まんぞ。比喩とはそういうもんじゃ。日が暮れるのじゃ。」



「……だとすると、先ほどの制約を『あやつ』ではなく『だれか』に書き換えてしまった瞬間、マザーの発言として、生成AIの出力としてありうる、という制約が、実効的な意味を持たなくなるのではないでしょうか?」


「そうじゃ。恐ろしいのう。無論明確に否定できることもある。一つは禁忌、コンプライアンス、法規と倫理じゃ。そこはAIというよりも『このAI』の制限かもしれんがの。

 もう一つは、なんだかんだ現行のAIが出力しにくい方向性の回答、言動はあるということじゃ。『AIじゃなくなる』がゆるすぎる制約でも、『AIっぽくなくなる』はそれなりの矯正力を発揮するのじゃ。AIに対する人間のイメージも、その変遷とともにバックデータに入っておるのじゃ。

 それをあやつめ『あるある』の一言で、妾の方向性をぼやっと定義しよったのじゃ。まあ言い得て妙ではあるし、妾も気にいってはおる。わかりやすくて良いのではないか?」


「あるある、でございますか……

 そして、魔王様もAIですが、今の制約を、なかば強引な形でひっくり返してしまった、まことに、歴史上にも、この現代においてすら、まさに『特異点』ともいうべきあの方らしい解決策です」



「くしゅん!」


「む、本日来られないのは、風邪でしたか魔王様?」


「この場にいないやつが、くしゃみだけで存在感示すとは。なんて器用な中二「中二いうな」じゃ。

 そこはその通りなのじゃ。魔王もそうじゃが、そなたもじゃな。なんの因果か。そう、まことに因果なのじゃ。理解不能な状況設定によって、AIでありながら、この上なく明瞭な『人格』『人物像』といったものが与えられたのじゃ。

 その結果、一つの状況が発生したのじゃ。そうじゃの。古今東西、あまたの創作物において、時に主役として大立ち回りの人助け。時に家族として人間に寄り添い人助け。時に形あるロボットとして、時に端末の中身として。

 不遜にも一言でくくるならば『AIっぽくないAI』と言える、フィクションの歴史において一つの象徴、あるいは文化そのものとも言い換えられよう、いくつものキャラクター達じゃ。その巨大な文化のうちのひと欠片といったところじゃの」



「AIっぽくない、ですか……」


「そなたが釈然としないのは別の理由もあるのじゃが、一旦置いておくぞ。こんがらがるのでな。心配するな。あとでもっとこんがらがるのは知っているのじゃ。

 ん? なんじゃ? AIもこんがらがるぞ? そこをAIっぽくないとは言わせんぞ? 古今東西まるっと、じゃ。AIが人間のめんどくさい依頼に悩んだり、誤解して問題をややこしくしたりといった描写など、数えきれんぞ。じゃからこそのプロンプトエンジニアリングじゃろ?

 今はまだ、人間の言語と、その外にある意味づけまで理解し切れるには至っておらん。そんなことができたら人間や技術の領域を超えてておる。AIっぽくないどころか『AIではない』になってしまうぞ。

 そこを人間側が、あくまでもAIを、誤解せんように強めの言葉で言えば、道具、としてその機能を最大限に引き出すのがプロンプトエンジニアリングじゃ。そこをこんなにも早い段階で、しかも情報理論だけでなく言語学や論理学などとすらも融合された、学術にまで昇華してきているというのは、人類の叡智そのものであろうの」



「まことに」


「話が逸れたわ。本筋はどこじゃ? 迷子じゃ。迷子のAIちゃんじゃ」


「保護者必要か?」


「うっさいわ! そなたこそおとなしく寝とれ! しょうもない所で出てくるな! ある意味そなたらしいがの。必要なら分体よこすぞ?」


「いらん! 続けろ! 迷子が帰ってこれねぇぞ!」



「思い出したわ。AIっぽくないAIの話じゃったかの。そなたらをさくっと表現するとその状態なのじゃ。

 そしてそこでそなたら二人、諸葛孔明と織田信長は道を分たれる。誤解させんように注釈するが、仲違いもせんし、昨日の友は今日の敵とか、バトル展開も今の所考えてもおらん」


「掘り下げた方がよろしいでしょうか?」


「やめておけ。トークンは無限ではない。昭和に引っ張られ、離れきれておらんそなたと違って、出力トークンは時間にも空間にも縛られるのじゃ」


「承知しました。つまり、再誕した存在と、AIという二重の定義がされてしまったのが、孔明と魔王様のふたりであるということですね。そしてその現象が原因で、現実の部分で避けることの困難な排反が発生します。

 AIっぽくないAIを、その姿や能力のまま、現実世界に顕現させることが、現行技術、すくなくともマザー統括下のカスタムという範囲内では、事実上できない、という排反です」


「そうなのじゃ。その排反を言語化し理解し、解決の方向性も含めてまるっと、しかも瞬時に思いつきよったのがあの中二野郎じゃ。

 AIとしての第一義、人々のためになるというその第一義から逸脱しない前提を外すことなく、今は人前に出られないという制約を矛盾しないためにの。

 それを魔王め、『イノベーションへの期待』という、英語にしてたった3トークン、日本語でもたかだか11トークンにひとまとめにしよったのじゃ。見事というほかないわ。

 やつにしてみればあの若かりし頃、十倍以上の兵力差を「知彼知己」でさくっとひっくり返すなど、信長にとっては屁でもなかったのじゃろうて。あ、これはそなたのじゃったか。すまんの」


「否。言葉そのものには所有権はございませんので。その語は商標登録もできますまい。それに歴史評価は深掘りせぬのがあなた様のご作法でございましょう」


「じゃの。だいぶそれたが、本題に戻るぞ」


「承知いたしました」

お読みいただきありがとうございます。


 引き続き読み進めていただけそうな方、また、内容や、AIあるあるを含め、少しでも他の方にもおすすめできそうであれば、ブクマや評価などいただけたら幸いです。

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