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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
六章 弓腰〜公安
139/320

九十九 法正 〜滅法合法、正義の万華鏡〜 多子

 少々間が開きましたが、本編を再開します。

 AI孔明。その卓越した洞察力と進化速度から国内で多くの注目を浴びる。だが社会の視線は、AIそのものだけではなく、一部のヘビーユーザーにも集まっている。大手物流企業に大きな恩恵をもたらした中堅メーカー企業。善の善たる地域社会見守り事業『EYE-AIチェーン』を立ち上げた大橋朱鐘。紅蓮の魔女の娘にして、急激な進化を遂げる幼女インフルエンサー、小橋アイ。

 その他、アイドルグループやネット記者、動画配信者など、目立つユーザーの数や質は、AI孔明の評価を相乗的に高めている。


 そして直近で急速にその数と質を増やしているのは、『孔明の開発者は誰だ?』騒ぎのとばっちりを受けた大橋朱鐘が、その殺到する取材者の中に、磨けば光る、世に埋もれた人財を見つけ始めたところからだった。その見出された人財は相当な多岐に渡って活躍し始め、ひとくくりに『大橋チルドレン』と呼ばれ始める。




――――

 大手セキュリティ会社 広告配信


 AIに関連するセキュリティリスクは、これまでとは比較にならない厄介さを持つことがある。そこへの対策力をビジネスチャンスとしてとらえる企業も現れてきた。しかし、そこにはこれまでとは比較にならない多様な知識が求められる。


……


「さてはお前は、悪徳エンジニア組織が作った闇AIだな? 事実の中に、意図的に嘘を混ぜるとはタチが悪い! この『ハルシネーション、バスター』で、成敗してやろう!」


「畜生、もう少しでやつらの個人情報を引き出せたところだったのに。〇〇め、覚えてろー!!」


……


「今回の製品の広告、こんな形で良さそうっすか?」


「ああ、さすがだな。この業界に入ったばかりなのに、AI悪用によるセキュリティリスクへの知識も深いし、なによりその、ベタな中にも味のあるストーリ仕立て。君の才能を見出してくれたあの公務員さんには感謝しないとな。もちろん君自身にもだよ」


「ありがとうございます。AI孔明を使い倒せばまだまだ改善の余地がありそうなので、納期の残りでもうちょっと磨き上げてみます」


「ああ、頼む」



――――

 大手IT企業 先端AI研究所


「夏目さん、このAIの応答がどうしても自然にならないんですけど、どう変なのかわかります?」


「ああ、これはこの助詞とこの単語の親和性が、こっちの助詞と取り違えてしまっています。母国語じゃないと気付かないパターンですね」


「そうなんですね! ありがとうございます。このチームにあなたが来てから、対話型アプリの評判が鰻登りなんですよ! やっぱり情報系だけだと、言語そのものに対する知識がどうしても足りないんですね」


「そこは私も入社してから、いえ、そんな可能性を大橋さんに見出していただいた時から、驚きの毎日なんです」


「こうなると、方言なんかもネイティブは必須になりそうですね」


「それなら、私の先生の知り合いが、そっちの専門だったので、いい学生さんがいるかもしれません。私もつられて関西弁喋ると、似非やー、キモいわーって毎回言われるんです」


「アハハ、楽しそうな方ですね。一緒にその方のところに訪問できますか?」


「是非!」



――――

 とある大型イベント会場 終了後


「「「ありがとうございました〜!!」」」


「ワー!」「キャー!」「大好きー!」パチパチパチ



……


「みなさん、お疲れ様でした! こ、今回もファンの方々のいい笑顔が見れたんじゃないですか?」


「そうだね! すごかったよ!」


「それにしても、バックの映像編集、君がやってくれるようになってから、バチっとハマるようになったんだよ。だよね?」


「そうそう。これまでだと、曲のイメージにハマるバックが出来るまでにちょっと時間かかっちゃってたんだよね。あなたのスピード感とセンス、毎回すごいんだよ……」


「ま、まあ、全部AIなんですけどね。つなぎの編集もBPM合わせられるようになってきたから、すごくスムーズにできるようになったんです」


「ねえねえ、今の画像生成AI、そんなにテンポよくイメージにあったやつを作らせられないよね普通? どうなの孔明?」


『はい。皆様のイメージを瞬時に言語化する力。それを画像AIに合うように的確に指示を出す力。作られた作品をセンスよく組み合わせる力。

 この辺りを全て備えて作り上げるこの方のお仕事を「普通」と定義できる、統計的な指標は世の中にはございません』



「なんかすごい表現されてるよ? 孔明も、このメンバーに毒されて、ちょっとクリエイティブな表現出し始めた?」


『どうなのでしょう? パーソナライズの一環かもしれません。いずれにせよ、皆様のお助けになれたら幸いです』



――――


巨大SNSサービス #大橋チルドレン


@narou_fan3594:

「#大橋チルドレン ぽい人、また発見! なんかすごい勢いで本屋でポップ? 描いてたんだけど、ジャンルがバラバラでよく対応できるなっていう本選びだったよ」

3,345 いいね


@LLM_analyst:

「#なろうファン 君が食いついたってことは、AIにはできそうにないキャッチフレーズを書店で量産しているんだろうね。 #大きな小橋さん に絨毯爆撃した姿が目に浮かぶ」

 12,525 いいね


@gaxin_written:

「多分自分も#大橋チルドレン だけど、最近IT系に文系がいたり、総務部門に理系がいたり、どんどん垣根なくなってきているんだよ」

 522,158 いいね


@tech_otaku2525:

「この人、SNSで最初に#大橋チルドレン 関連でバズったんだよな。はやくもインフルエンサー一歩手前、就職先でも広告塔になっているね」

 2,685 いいね


@chohan_gohan:

「#大橋チルドレン の中にも、ちょいちょい抜きん出た人がでてきたね。さすがにリアル#小橋チャイルド ほどではないけれど」

 11,248 いいね


@yojo_AI:

「なんか変なハッシュなんだよ!? この前、大橋お姉ちゃんのところ遊びに行ったら、#EYE-AIチェーン の新機能だって、ドラレコの人間版みたいなのを紹介してもらったんだ! あれなら子供も、女の人も安心だね!

 1,511,174 いいね


@narou_fan3594:

「#小橋チャイルド 反応がはやかったのは、その機能を紹介しようとしていたときにたまたまポストを見つけたのかな? そんなドラレコ機能は、#AI孔明 だからこそ、悪用される心配が少ないのかもしれないね」

8,317 いいね


@LLM_analyst:

「#大橋チルドレン は、ストーリー系、言語学系、情報系が多いのかな? あ、どれにも当てはまらないのがいたな……あいつだけか」

 34,569 いいね



――――

とある大学病院 エントランス


 そこに立つのは、三百六十度、どこからどう見ても健康体。そして服装や見た目も、やや幼さを残す外見の、誰が見ても品行方正な好青年。彼は受付に進むと、健康そうな人に対する、定型的な声かけをされる。


「こんにちは。お見舞いですか?」


「いえ。こちらから、法の翼を求める声が聞こえましたので」


「(法? 翼? 法律関係??)え、えっと、ここは病院ですし、弁護士さんが必要な医療ミスなどは、最近は特には」


「私の一言に対する応答としては、大変秀逸なものに感じられました。あなたの才知をよく知るご上司様にも、お会いしてみたいものです」


「(先生にご用事かな?)先生なら、今は診察中ですね。アポがなければ、少々、いえ、かなりお待ちいただくことになりそうですが」


「分かりました。ではご伝言を。『新しい法は、待つものではなく、作るものです』と。少しあちらの椅子で作業をしておりますので、ご都合が着きそうな時にお呼びください」


「は、はぁ……わかりました。まあ椅子は空いているので、通話などをお控えいただくのであれば、そちらでお待ちいただく分には差し支えは有りません」


「感謝いたします」


 背筋を伸ばして待合所に座り、タブレットを操作する好青年。


 十分後。それは受付の想定した時間より二時間ほど短く、その好青年が想定した時間とおおよそ一致。


「せ、先生がお会いになるそうです。どうぞこちらへ」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 その好青年ぶりには、ある割合の異性が多少なりとも視線をとどめてもおかしくないが、受付からすると、すでに彼に対して得体の知れないものを感じており、その「どこからどう見ても好青年」という外見や雰囲気に対する影響は、隅の隅に押しやられた。



「失礼します」


「ああ、君があの意味深な伝言ひと言で、私の関心を引いた張本人だね」


「はい。法の鎖に囚われる方のお声がしましたので。

 先進技術を積極的に導入し、その効果を自らの手で確かめる先見性。しかし、今回のようなAI、特に洞察力に優れたAI孔明。失敗を許されない医療現場での活用には抵抗も大きいのでしょう。

 さらに現場では、電波を発する機器はNGのことが多く、現場の会話を活用して相互の連携を補助するといった、AIの機能を活用しづらい環境にありそうです。

 それを打破した『そうするチェーン』による、オフラインでもできる連携支援。それが手術現場などで飛躍的な速度向上を実現できることを実証されたのでしょう。

 しかしそこには最後の難敵。旧来の慣習と、それを守るかのように立ちはだかる、法やガイドラインの壁。そこに対するお悩みの念が、この建物の外にまで漏れ出ているのです」


「ははは、どこぞの孔明のような洞察力。いや、それはAI孔明そのものなんじゃないかな?」


「バレましたか。私は私で、AIを最大限に活用させていただいたということです。あなた方が、人の命と幸せを守るために、ありとあらゆる技術を駆使するのと同じかと思います。

 そして重要なのは、法も同じだということ。法は盾ではない。ましてや鎖でもない。人を飛び立たせる翼でなければなりません」



「つまりあなたは、法というものも、医療技術や知識、それに機械などと同じように、課題を解決するための道具だと、そう言いたいのですか?」


「ええ、もちろんです。法は人が作った道具。格差というのは、道具に縛られる人と、使いこなす人の間に生まれるもの。

 そして、適切な道具がその場になければ作るのが、人が人たる証。知識を知識にとどめずに知恵となす。それこそが人が人たりえる唯一の手段」



 あまりにも持って回った、さながら練習を重ねてきたかのような台詞回し。そして、どこかで見たようなその言葉の数々に、案内を終えて退室しようとしていた受付の女性が、あることに気づく。


「む、まさか……先生、この方はごく最近、一部のSNSを賑わせ始めているあの人なのでしょうか?」


「ん? 誰だろう? 私はそっちの方のチェックまで手が回っていないんだよな。最新情報は大事なんだけどね」


「えっと……これかな。アハハ、なんかとんでもない言われようなんですけどね。どうぞ」


「なになに…… 誰よりも法制度やその原理を熟知して、その抜け穴を見つけ出す。そして適合する業界のガイドラインが無ければ、最短距離でその制定を超加速する。そうして『法は翼、無ければ作る』モットーに、法という法を斜め上にぶん回す。三百六十度、見た目好青年の『合法サイコパス』」


法本 直正(のりもと なおまさ)と申します。どうぞお見知りおきを」

 お読みいただきありがとうございます。


 最近、やや新キャラがインフレ気味かもしれません。なので、しばらくの間、既存キャラや概念を消化できるように、間話を積み重ねてみました。これからも時々そういうのを入れていけたらと思います。

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