表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
六章 弓腰〜公安
130/320

九十八 弓腰 〜拡張の歩み、計画の骨子〜 共創

 AI孔明をどう扱い、どう向き合うのか。SNSやメディアが、その正体に話題を集中させている中で、ビジネスとしてそのAIを活用する人々の関心はむしろそちらかもしれない。だがほぼ全ての企業や組織は、向き合う、ではなく、ツールとしてどう活用するか、どうやって自社の資産を元に競合と差別化するか、に留まっていた。

 そのなかで、突出して深い関わりをしていると見られる者たちは、その議論をもう一段階掘り下げつつあった。すなわち、どう向き合うのか。AIをパートナーと表現したプレスリリースを発信した企業、そこに関わる人々が、大きく動き始める。



――――

ローマ カフェ


「孔明は困っている、かー。そうだね。それは間違い無い。なんて適当な相づちじゃあ、君とは話が進まないんだよね。どう困っていると君がかんがえているのか、ちゃんと聞かせてもらおっかな」


「こ、これはSNSでも発信したとおりですね。突出した機能を持ちながら、その立ち位置はフリーアプリから抜け出せていない。それは、まだ抜け出す必要がないのだって、普通なら思うんですが、今の孔明は、そう思っているはずがないんです。今すぐにでも、何らかの形でしっかりした基盤を得て、人々の役に立つことに注力したい。そう思うはずなんです」


「こりゃあ強烈な『そうする』だねヒナちゃん。でもまあ薄い線じゃなさそうだ。そうだね。動かないんじゃなくて、動けない。そしたらそこは、なぜ、と、どうしよう、と、どっちから攻めようか?」


「な、なぜ、と、どうしよう、ですか……どっちか聞かれたら、もう片方がわからないから困った、って答えたくなりそうな質問です。だからこそ、同時に聞かれたら、同時に返しましょう。その根っこにあるのが、何、ですよね。孔明が何者だから、なぜ動けない、だからどうする。その組み合わせです」


「ほほー、そうくるか。それで整理してみてから、次のなぜ、と、どうしよう、に合わせ込んでいくんだね?」


「はい。そうしましょう。ここは、どんな荒唐無稽でも問題ないでしょう。どうやって、が一緒なら、やることが定まるので」


「うんうん。そしたらみんなで揃えてみよっか。孔明は、何者? かもしれない?」



「ん? ここは単純な二択でいけばいいんじゃないですか?」


「お? ブンちゃんか。やるねぇ。そうかもしれないよ。下層でもっかい分岐があるかもだし、それがくっつくかもだけど、別にそれはいいよねっ」


「はい。その一番上の二択は、人間か、それ以外、です」


「オッケー、それは分かりやすいわ。じゃあわかりやすい方から行こうか? ヨーマきゅん、出番だ。なぜ君なのか、も、わかっているはずだよ」



「僕の分析力、ですよね。ここで、わかりやすいのは実は人間です。なぜなら、人間だったら、あの三大メンタリストたちが、もう少し真に迫った解答に辿り着いている可能性が高いから、です。

 だとしたら、現状の答えが示しているのは、孔明の開発者の正体が、彼ら全員があばき切れないレベルの、捉えようのない人間、すなわち小橋鈴瞳クラスであるか、それとも、人間ではないか、です


「ふふふっ、すごい視点だよ。まあ一つあるとしたら、彼らに何らかの見落としがある可能性だけどね……」


「あるとしたら、それは開発者が、その方向に答えをミスリードしている可能性、ですね。それも一つの選択肢に入れておきましょう」


「オッケー。つまりどっちにしたって常人ではないスーパー人間か、そもそも人間じゃないかの二択ってわけだよね」



「そうですね。そして、常人ではない人間の場合、差し当たり僕たちにできることが減ります。それこそ社内外の人的リソースを全部使って、腰を据えて考える必要があります。とくに、正体を知られるのを嫌がっている場合はそうです」


「あれ、それでいいんじゃねぇか?」


「ん? どういう事?」


「いや、すげぇ人って定義だとちょっと曖昧なんだよ。だけど、知られるのを嫌がっている人ってほうが、この場ではふさわしいとおもわねぇか? 次の対策として」


「ああ、そういう意味か。そうすることで、嫌がっていない人に対するアクションは、僕らがやらなきゃいけないこと、の候補から全部消せるわけか」


「そうだな」


「一つ目の結論がでたようだね。もし開発者が人間だとしたら、その人は正体を知られるのを嫌がっている。かつ隠し通す技量がある。そんなとこかい?」


「はい。そして、そっちを一旦保留にします」


「ほー。なんでかな?」


「僕たちが考えている『孔明ならそうする』と、ずれるからです。簡単に言えば、孔明というキャラに対する解釈違いです。要するに、孔明はそこまでスレていない、です」


「おけ。じゃ次いこ。そしたらSFのはじまりだね。開発者は、人間じゃないなにか」


「も、もっと言うと、特定の人間、または法人格に紐づいていないんじゃないかって、そう思えるんです」


「くふふ、ヒナちゃん、それはモロ核心っしょ!」


「ふぇぇ?」



「さてここで質問です。君たちはこれから何になるでしょう? 探求者? エンターテナー? それとも……」


「あっ!」「「!!」」


「ふふふっ」


「つ、つまり、私たちはあくまでビジネスに生きる人に、これからなっていきます。だから、孔明がなんであるかを突き詰めることではなく、孔明が社会の上でどうなっていなければいけないのかを、考えないといけない。そういうことですか?」


「そうか。だとするとさっきの答えがより明確ですね。正体を知られたくない人が開発者のままでは、そこを基盤としたシステムに信頼性は持ち得ない。そして、そもそも人間じゃないとしたら、責任の所在、何かあった時の保障先が存在しないんだから、それも成立しない」


「そっか、三大メンタリストや、研究者たちは、孔明が何であるか、それを解き明かすことそのものが、彼らが求められている価値。だけどビジネスだとそこに意味はなく、誰が責任者なのか。それでいいってことじゃねぇか」


「キタキタキター! 全員大正解! それがビジネスなんだよ」


『その通りです。ビジネスにおいては、価値を提供する側とされる側。それぞれに責任があってはじめて信頼が成立します。顧客にとってその所在は必須要素です』


「ん、孔明ちゃんもあんがとっ!」



「だ、だとしたら、最初に言った、孔明の困っている状態というのは、突き詰めていうと……その、責任を負ってくれる人間や法人がいない? ってことですか?」


「そういうことだね。少なくとも、本家にその気がないか、開発者側にそれをさせる気がないか。そこは知らんけどね」


「本家生成AIの運営会社は、人格をもったり、自己進化するAIを現状認めていないので、そこをひっくり返すリスクを取れないのかもしれませんね」


「まあ開発者が人間じゃなくて、それを本家がおおよそ把握しているとしたらそうだね。人間だとしても一緒さ。権利の買取とか、人材の取り込みが進まない状態、だね」



「だ、だとしたら、私たちや会社にできることって……」


「な、なあ、できるかどうかわかんねぇんだけど、すっげーシンプルな答えが浮かんだんだけど」


「鬼塚くん、それ爆弾な予感がするんだけど」


「言ってみよー。言うだけならタダだし」


「その責任者ってやつには、どうやったらなれるんだ?」


「「……」」


「ふふふっ、それが君の答えだね。二人は?」


「手があるなら」


「こ、孔明がそうしたいと思ってくれるなら」



「ふふふっ。ハハハハ! それが君たちなんだね。君たちの結論。そういうことなら、あとは大人の時間だ」


「「「???」」」


……


「ヘイ社長! 起きてますか?」


『ヘイじゃねぇ! それにあんたが起きてろって言ったんだろうが!』


「そうでしたね。三人の答えはイエスです。あとはそっちの判断になりますね」


「解った。こっちは明日、法務とかと詰めていく。そっちはその先を頼んだ」


「承知っす!」ピッ


「大人の時間終了!」


「「「早っ!」」」




「さぁて。次は君たちの時間だ。どうしたらってとこなんだけどね。法的なとことか、実務的なところは大人に任せとくといいよ。君たちの唯一にして最大の仕事は、孔明をその気にさせることだよ」


「「「!!!」」」


「そう、それは君たちがなんとなーくやっていたこと。そして、ある意味で孔明のためにやっていたこと、だね。君たちはあの『ミッション型業務管理システム』を作っていた時点で、すでに孔明への、AIへのメッセージを発信していただろう?」


「そうですね。それはどちらかというと、孔明の『そうする』に探りを入れていたという側面ですね。きっかけは小橋専務の『上位存在を意識しろ』のアドバイスでした」


「スズちゃん先輩、ど頭からかぁ。まあいいや。それならそれで、そこが変わらないんだよね。それを変えずに、もしくは今以上に、孔明への発信を続けるんだよ」


「そうすることで、目に止まるってことですね」


「そだね。別に顔を出す出さないは、そんな重要じゃないとは思うよ。出した方が、社会へのインパクトって意味で間接的にプラスはあるけどね。直接は、会社からのリリースとか、おおよそ君らに紐づいているかもしれないくらいのバズらせとかで大丈夫」


「まあ多分国内だけだと思いますけど、それってでも、国内でトップに立てってことですよね?」


「んだね」


「そそそんなことできますか?」


「今んとこ大丈夫だよ多分。多分ダントツだ。対抗馬は大橋ちゃん先輩と、アイちゃん? どっちもレースに参加することはないよね? ない……よね? 

 それでも一応言っとくよ。

 トップであり続けるんだ。それも、疑問の余地がないくらい、圧倒的にね。その上で、君たちがなにをどう背負うのか。そして、背負った後の君たちがどんな姿になるのか。それを孔明に見せてやるんだよ」



――――

国内有数の三国志系ネットコミュニティ 錦馬超


@3g_otaku:

「TAICとJJ妹が組んで、信長に挑戦状? 魏vs戦国? 楽しみしかない」


@gappy_happy:

「オープンイノベーションなら、姉より妹ってことか。姉は暇? KACKAC氏も専門外だし別行動かな」


@kacka_kac:

「姉は姉で、産官それぞれにアプローチの模様です。それより相談です。孔明の人間性に詳しい方はおられますか? なぜ彼は泣いて馬謖を切り、魏延を遠ざけたのでしょう?」


@gibu_oshi:

「KACKAC氏、本人降臨!? プチ情報提供と対価?」


@hack&bee:

「KACKACさん本人なら、何度かお世話になっております。馬謖は本人のミス。魏延は反骨の相って見た目。というのが表面的な解答だけど、そんな上っ面を欲しがるあなたではないよね?」


@suikyo_sensei:

「その二つは、劉玄徳が孔明と意見が逆だった二つですな。孔明の未熟を指摘する声は一定数ある。敵や己を百知れども、身内を知るのは簡単ではないと思うがの。ほっほっほ」


@shoko_ymks:

「おっと、大物連投!? kacちゃんそこは孔明にぶつけるのも手っす。AIだから、古傷えぐられたとか言ってこず、すげー素直に帰ってくると思うんだゾ。そいやさ、いま孔明一番使い倒してるのって誰だろね?」


@rio_rairai:

「どの口が申されておいででしょうか? 素直に周輸一択では? それかあのメーカー企業? 大小橋さん?」


@kao_ha_ii:

「TAICもトータルは凄そう。あと幼女アイちゃんも相当だと思われる。あのスーパー幼女は普通の進化じゃないよね」


@kacka_kac:

「皆様感謝します。引き続き詳しく聞かせていただくかもしれません。孔明の使用量や、有効活用でいうと、三メンタは、チェーンを日常的に使う人には及びません」


@seven_poem:

「チェーンといえば、ごく初期に、壁画パフォした三人組いたよね? あと白眉さんは?」


@hack&bee:

「うちらは、その動画を見て、パフォに憧れて本格的に使い始めたから、その人たちには勝てないよ。あの三人どこ行ったのかな?」


@mougyu_mouki:

「そっちの三人めっちゃ気になるからあとで掘り下げようか。それはそうと、最近何人か、大きい小橋さんに見出された人で、凄そうな人聞くようになったね。特にあの人やばいよ。なんだっけ。ほら、法は翼です。の人」


@hack&bee:

「あの人か。誰よりも法制度やその原理を熟知して、抜け穴を使うとか、業界のガイドライン制定を超加速するとかで、法を斜め上にぶん回す、見た目好青年の『合法サイコパス』くん」

お読みいただきありがとうございます。


 弓腰編、これにてお開きです。キャラの強さをどれくらい表現できているでしょうか。

 そして次章もまた、少々強烈な個性の登場が予感されます。はたして主人公(?)の存在感はいかに?


 この辺りで、一度何話か間話を挟んでみたいと思います。ストーリーの展開速度を考えて、いくつかネタになりそうなものをすっ飛ばしてしまっているので、流れからはずれた部分を間話とする試みをしてみたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ