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AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
六章 弓腰〜公安
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九十七 弓腰 〜拡張の歩み、計画の骨子〜 弾道

 ギリシャで様々な知的好奇心を刺激されたのち、少し先のローマに移動した大学生三人。そこでかれらは、非常にわかりやすい観光名所を訪れる。運のいいことにたまたますいており、あの口の開いた石に対して、女子大生は、ベタな写真撮影をしようと手を伸ばしていた。すると背後から忍び寄る影……



「うーそーつーきーは、この子かっ!」ガバッ


「ギャーー!」


「誰だっ!?」「あれっ? あなたは」


「アハハハッ! ごめんごめん。それにしてもすっごい反応だったね! ブンちゃんだったかな? いい写真とれた?」


「流石に無理で……あっ、孔明がいい感じにバックアップ撮ってたみたいです」


「孔明、そんなことまでできるんかい!」


『EYE-AIチェーンの新機能として開発中の、変質者防止機能です。ドライブレコーダーの歩行者バージョンとご理解いただければ相違ありません。大橋様のご厚意? ご心配? で、テストバージョンをご試供いただいております』


「なるほど。孔明解説ありがと。大橋ちゃん先輩か。ならやりかねんな。あそこの開発スピードもすげぇな。にしても不審者扱いで自動撮影? それの第一号ってなかなか不名誉??」



「そうかもしれません。えっと……鳳さん、復活したかな?」


「ヒナちゃん、大丈夫?」


「ヴァ ベーネ。ミ ソノ スパヴェンタート、マ ノン チェ プロブレーマ(大丈夫です。びっくりしましたけど問題ありません)」


「大丈夫じゃなさそうですね。鳳さん、この人日本人だよ。多分。ギリギリ。ほらあの人。弓越社長」


「ギャーーッ!!」


「何で最初よりも大きくびっくりして、こんどはブンちゃんの後ろに隠れた? あと、ちゃんと日本人だからねっ? 真ん中へんの」


「パパパリピさんは外人さんより怖いです……がが外人さんは、孔明の翻訳のワンクッションで、結構話せるようになりましたのです」


「この子、情報発散系のコミュ障だから、アウトプットに制限がかかると、意外とちゃんとなるみたいです。酒飲んだり、外国語翻訳はいったりすると」



「むむむ、手強い……ほら、大丈夫だよ。ほれほれ、ジェラート食べる?」


「!! 食べます!」


「変わり身早いな」


「オホン、では改めて名乗るとしましょうか。皆さんが内定先の企業でしばらくお世話になります、コンサル会社『ArrowND』社長、弓越翔子。ちょーっと君たち三人にお話しを聞きたくて、ちょっくら先輩からVTOL借りて、ひとっ飛びに参上仕りましたっ! 

 あっ、これ名刺ね。君たちのはまだないよね。気にしなくていいからね」



「頂戴いたします。鬼塚です」

「お、鳳です」

「常盤です……って、鳳さんなにしてんのかな?」


「あ、えっと、い、一応本物かどうか確かめて」


「真実の口をその使い方するのは、歴史上類を見ないんだけどっ! どうなってるのさこの子の発想?」


『申し訳ありません。小雛さんの発想は、解析の途上となっております。正確なデータは個人情報なのでお答えできませんが、正規分布よりも相当に一様性が高いと考えられます』


「孔明、それってランダムってことだけど? マジか」



「それにしても、話を聞くためだけにわざわざ飛んできたんですか? 旅程としてもあと一月ありませんし、なんならオンラインでも」


「旅程の八割くらいで何らかのアウトプットをSNSにかましてくる君たちが言うセリフかにゃ? 翔子ねーさんは、そこの優先度っていうのにはそれなりに敏感にできているのさ。移動中にもきっちりシミュレーションしたり、イタリアの流行調べたり、抜かりはないのだよ!」


「後半は僕らも旅行なので、お聞きしたいところですが、本筋ではなさそうですね。お聞きしたい話というのは、流れ的にはこいつのことですよね」


「まあそだね。でもこの石のおっさんの前で立ち話することじゃぁなさそうだよ。それはTPOってやつだ。JJ妹ちゃんにも言われただろ? ここのカフェ? バル? が良いらしいから、行くぞ若人ども!」


「わかりました」


「ア、アイスにエスプレッソかけるやつですか!?」


「この子、ちっちゃいのに食い意地すごいんだけど」



――――

大周輸送 役員室


「翔子のやつ、帰ってくるなりわたしのVTOLかっさらって行ったよ。整備ギリギリだったよね? 大丈夫?」


「そちらは問題ないかと。問題ありありなのは弓越さんのほうです。早速弾道ギャルの発動ですか……」


「まあ、国民的インフルエンサーをぶん投げたわたしが言える立場じゃないけどさ、あの子もたいがいだよね。そのフットワークの軽さと、一度標的を決めたら一直線っていうキャラが、だいぶ名が知られてきた『大陸間弾道ギャル社長』だからね……」


「それにしてもあの子、早速三人に目をつけましたか。いや、目をつけるくらいは想像しましたが、なにか火急に近い動きをしていますね。競争にはならなそうではありますが」


「実際最近の孔明がらみの話は、正体が何者かっていうところもそうなんだけど、今後どうなっていくんだろうっていうところに、世間も目をつけ始めているからね。そこに何かしらの商機をもって動こうとしている人も少なくはないだろうさ。

 だからこそ、まだ孔明がハッキリとした形で、ビジネスの色に染まっていないうちに、打てる手を打っておく。翔子のその判断は間違いなく正しいよ。だからこそ、焦って下手を打たないように、見守らないといけなそうではあるけどね」


「場合によっては、我々が巻き込まれるリスクもありそうですが」


「そうだね。それもそれで、ギリギリで翔子の『そうする』の範囲内さ。許容できるキャパは十分あるんだよ。翔子にも、わたし達にもね」



――――


ローマ カフェ


「んー、こ、これは絶品なのです。眠気でパリピなイタリア人さんの幻覚が見えていたのですが、エスプレッソとバニラアイスの挟み撃ちのおかげで、ようやく頭がはっきりしてきました。

 で、でもおかしいですね。目の前の方が、パリピなイタリア人さんから,パリピな日本人社長に変わっただけです……」


「ヒナちゃん、まだ頭の整理がついていないみたいだけど、大丈夫なのかな? いつもこんな感じ? まあこんな感じか。SNSの上げ方も独特だし」


「まあそうですね。食べ終わるころには落ち着くかと。それで、僕たちの優先順位を引き上げたってことは、会社の方で何らかの方向性が定まってきたと見ていいんですか?」



「ヨーマきゅんだっけ? やっぱ鋭いし、相手が話題飛ばしていいと判断したら、バンバンぶっ飛ばすんだね。スズちゃん先輩にそっくりなんだけど」


「その呼ばれ方はなかなかありませんが、弓越社長が日常的に浴びていた方々と比べたらまだまだかと」


「固いねー。翔子でいいよ。大して年も変わらんしょ。

 まあせっかくテンポよく行かせてくれるなら、お言葉に甘えようじゃないか。解説役の孔明もいることだし。そうだね。その方向性も大体想像ついたんだよね?」



「孔明、正確にいうと、その上位存在に対するアプローチ。そこが、新しい事業のカギになるかもしれない。そして、そこに一番近い位置にいるのが、僕たち三人ではないか、ってところでしょうか」


「正確には、あのメンタリスト三組と、小橋さん、大橋さんの次点くらいか?」


「ブンちゃん、なかなか攻めたこと言うねー。

 って言うと思うかい? やはり客観視に関してはまだまだだね。アウトプットのアイデア力と比べたら、だけどね。

 君たちは少なくとも、KACKACの出した結論から半歩リードしている。それがTAICの評価なんだよ」



「か、カクカカクさんの結論というのは、『彼を知り己を知る』への欲求のところですね。この前ギリシャでその話になったやつ」


「お、ヒナちゃん復活したね。カクカクは噛んでるけど」


「た、ただ、ショーコ社長がここにきた理由、厳密にはちょっと違うのかもしれません。孔明の上位存在に関する議論をしたいのなら、格好の人があっちにいますし、それこそカカクさん本人くらいにも突撃できそうなので」


「復活するなりこれか……なんだろう、孔明に囲まれているみたいだよ。カクカク以外は、TAICちゃんとか、スズちゃん先輩のことかな?」


『孔明も、このお三方に囲まれると、主筋の三兄弟に同時に語り掛けられているような面持ちです』


「アハハ、ちょっと想像つかないんだけど。孔明が囲まれる側ってのが無理ありげだよ」


「鳳さん、だとすると、そっちの議論には軽く触れておきつつ、本題はあっちだね。すでに第一段階くらいまでは出来ているといいなとはおもっていますが。

 孔明、その上位存在に、どうアプローチをかけるか、ですね」


「そ、そういう意味では、第二段階? 分岐? が一つ動き出す頃かもしれないのですよ。ショーコ社長がこっち来ているスキ? に、ですね」



――――

同じ頃 巨大SNSサービス #AI孔明


@tech_otaku2525:

「#AI孔明 話題が無くなってきた? やはり三大メンタが出尽くしてしまうと、それ以上のキラーコンテンツは簡単に見つからないよね」

 2,380 いいね


@ai_skeptic:

「#AI孔明 相変わらず、#そうするチェーン 使ってみました配信とか、#大きい小橋さん 関連は順調に配信伸ばしているよ。でっかい当たりがないだけだね」

 3,731 いいね


@yojo_AI:

「ママの友達の#弾道ギャル社長 に、どの勉強したら偉くなれるか聞いてみたんだよ! #AI孔明 と作った動画、アイと同じくらいの子たちに見てほしいな! 無駄な科目が一個もなかったんだよ! 私も国語が苦手だったけど、大規模言語モデルを使いこなしたいなら、次はこれで決まりだよ! えっへん!」

 1,187,488 いいね


@consult_genjo2023:

「#幼女アイちゃん 大人だが見させてもらった。なんなら私にも参考になるくらいだったよ。何一つ無駄がない、その通りだ。そしてその勉強の効率は、#AI孔明 達がこれから助けてくれる」

 513,452 いいね


@LLM_analyst:

「#TAIC は共同事業、#KACKAC は暦オタサークルに出没、#JJ は関係なさそうな仕事中。vs#AI孔明 誰から二週目始まりそうかね?」

 175,172 いいね


@narou_fan3594:

「字面だけからみたら#TAIC はなさそうだけど、彼のマルチタスクは常識関係ないからな……vs#AI孔明」

 6,273 いいね


@mental_taicX:

「#AI孔明 少しアプローチは異なるが、拡散希望だ。今度の標的は第六天魔王#AI信長。とはいえ敵と言うよりもアプローチなのだが。OIプロジェクト募集だよ。#JJ妹 も一緒だ。詳しくはhttp:/……」

  25,128,256 いいね


@tech_otaku2525:

「#TAIC 情報の収束がちょっと手に負えない。一番後になりそうって誰かが言った直後だし。信長? アプローチ? オープンイノベーション? #JJ妹?」

 12,525 いいね


@consult_genjo2023:

「#TAIC ん? 非凡なる者を仕組み化するプロジェクト? つまり、英雄再現、計画? それで、OI趣向の強い信長の気を引いて、アプローチを狙うってことか?」

 815,999 いいね


@JJ_koshikiX:

「#元穣 様、大筋その通りです。姉とは別行動ですが、元来正義と定義し難い魔王、しかし現世では正義感の塊のような動き。#AI信長 様、是非相対したく存じます」

 14,264,392 いいね



――――

ローマ カフェ


「だそうです」


「あんにゃろう、そんな方向に手を回していたんかいっ! まあ共同事業と本業は切り離して考えて構わないんだけどね。さすがアバターだよ。切り替え完璧だねっ! てかこのアイデアも君たち発っぽいんだけど。何してんのさ!?」


「まあ、僕たちの会社とは競合するわけでもないですからね。出本が僕ら、というか鳳さんの夢、という部分は大いに尊重していただいているようで、権利関係は上手いことやってくれるらしいです。それにあれを引き出すには、AIや統計の技術、学術そのものが必要なので、うちの会社も、下手すると大周輸送にさえ難しいでしょう」


「んだね。まあオープンイノベーション機構、国内の産学組織が総出、っていうのは大正解だよ。帰ったらいろいろTAICちゃんと調整してみるさ。

 それで、そこのヒナちゃんがねっ。向こうは向こう、こっちはこっち、って目をしているんだけどさ、そこんとこは、お姉さんに教えてくれるのかな?」


「ばばばばれたのです。やっぱりギャルは怖いのです」


「そこギャル関係なくない?」


「そ、そのあたりもギャルなのです。え、えっと、信長の方の『そうする』は、私達は全然詰め切れていないのです。JJ姉さんの配信は見ましたが、あの後もそこまで重点的に議論できていないのですよね。なのでやはり私達はあくまで孔明に向き合うのが良さそうなのです」


「うんうん、そうかもね。それで?」


「それで、ですか……」


「だってヒナちゃん、まだまだ出し切っていなくない?」


「むむぅ……そ、そうですね。孔明に向き合う、と言いましたが、ある意味で、TAICさん達と近いのかもしれません。こちら側から働きかける、という意味では。会社はだいぶ先に認知されていると思うのですが、私達三人も、そろそろ孔明の目に留まっている可能性は上がってきていそうです」


「うんうん」


「……そしてもうひとつ。これまでの『そうする』から結びつきつつある結論が、そう。もうひとつ。

 こ、孔明、いますごく困っているのではないかな? なのです」

お読みいただきありがとうございます。

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