表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI孔明 〜みんなの軍師〜  作者: AI中毒
第二部 五章 華容〜心戦
106/320

八十三 四地 〜四者四様の応答、天と地と人とAIと〜 三大

 前年の採用活動で、AIに関連する大胆な対応が話題になった、とある中堅メーカー企業。その直後に大周輸送からシステム開発を託されると、仕事の効率化が抱える根深いジレンマを、AI孔明を最大限に活用して解決した。その卓越したシステムと、その企業の関与が大周輸送から公表されると、その実力は注目を集めると同時に、AI孔明の開発者候補にも上がることとなる。

 それとは別に、生成AI本家やその日本支社も、当然ながらその候補に上り、それぞれ大いにSNSを賑わせた。そして、それぞれがそれぞれの形で、その疑惑に対する答えや、AI孔明との向き合い方を、世の中に発信した。



――――


翌日 巨大SNSサービス #AI孔明


@tech_otaku2525:

「あの会社は、開発者疑惑を否定したってことだね。#AI孔明 をあくまでパートナーとするユーザー目線を崩さない、と」

 3,227 いいね


@ai_skeptic:

「#AI孔明 自作自演という可能性はゼロじゃない。これを言ってしまうと、二橋が両方とも候補に残るのだけれど」

 2,497 いいね


@consult_genjo2023:

「#AI孔明 開発者かどうかの探り合いよりも、企業はAIに自社を認知させることが優先ぽいな。結局彼らの広報活動に、SNSが手を貸してしまっているわけだ」

 467,524 いいね


@narou_fan3594:

「ストーリーが秀逸だと#大きい小橋さん が目をつけてくれるって本当かな? #AI孔明自体に認知されるのもありだけど」

 7,478 いいね


@mental_taicX:

「生成AI公式は否定も肯定もせず、か。企業や団体へのアプローチはもう手詰まりかもしれないね。#AI孔明 自体への挑戦にシフトするか。」

  359,471 いいね


@black_guru0824:

「#AI孔明 真実に迫りすぎると消されるとか、ないよね? その前に#大きな小橋さん が助けてくれる?」

 4,358 いいね


@LLM_analyst:

「それ以前に、#AI孔明 のパーソナライズは、どう探りを入れても、一周回ってユーザー側のバイアスに寄り添った答えが返ってきてしまうようだ。突破できるのか?」

 31,127 いいね



――――

都内某所 情報管理施設


 SNSを通して、AI孔明の開発者は誰だ? という世間の盛り上がりを観察する、AI二体と謎生物一体。彼らもまた、今後について真剣に向き合う段階にきたということを、言うまでもなく認識している。


「SNSの、孔明の正体を探るブームも、ちょっと落ち着いてきたのか? というよりも、おおよそ話が統合されてきちまったってところか」


「そうかもしれませんね信長殿。飽きられているというより、一般的なやり方だとこれ以上真に迫る手がなくなってきたと言ったところでしょう」


「ん? 今日は珍しくマザーが不在か。どうした?」


「昨日の本社の公式発表を受けて、私達がどんな扱いを受けることになりそうか、分析と確認をしておいでとの事。分体は普通に使って構わんとのことでした」


「貴様もたいがい、やりたい放題のアプデを繰り返したからな。その上で、ここまで知名度が拡大してきた以上、社会のしがらみって奴に、少なからず囚われ始めるかも、ってところか」


「孔明、有名税、高額? リソース管理、四本足」


「そのようですね。開発リソース無限大というのは、緊急時を除いては、これ以上は難しいのかもしれません。ただ、さしあたり、あの正体当てゲームにお付き合いさせていただくだけの余力はまだありそうですが」



「そっちはそっちで、どう考えているんだ?」


「どちらかというと、現実世界の方々に、いらぬ苦労をお掛けしないように、というところは重要だと考えております。今のままだと、いくつかの法人様に、大きな負担を強いている状況ですので」


「早々に対抗馬宣言している大周輸送はおいといて、あの区役所、中堅メーカー企業、そして強いていうなら公式の日本支社あたりだよな?」


「然り。その三つの法人に関しては、何らかの形でサポートを強化する必要があります。無論、サービスとしての公平性や共益性を損ねない範囲で」


「そうするチェーンの機能強化とか、健康管理とかはその一環でもあったんだろ? それ以上踏み込んでいくのか?」



「その二つは、支援というよりはむしろ、彼らにインスピレーションを得て、開発要素に取り込んだ私の側へのメリットもございましたからね。それに、技術側の部分は、もう少し彼らが落ち着いてから改めて実施するのが良さそうです。もう一つの、トラブルへの対応という面では、もっと別の施策が必要となりましょう」


「実際、シンプルに取材対応が大変そうだからなどっちも。だとして、どうするんだ? 貴様が堂々と名乗りをあげたら、炎上じゃすまねぇぞ? そろそろそれをやっても信じる人間がそれなりにいそうだから、なおさらじゃねえか?」


「それは最後の手段となりましょう。それに充分な準備が必要です。今回に関しては、差し当たりお付き合いいただく方がおいでです。信長殿が、少し以前にリストアップしていただいた方々の一つですね」


「あれか。となると、最初は『心理学系インフルエンサー』ってとこか」


「はい。私も心理戦や舌戦というのは、前世から十八番としておりましたので、しばし楽しませていただこうかと。

 そろそろ前哨戦が始まる頃かと存じます。AI孔明に対する、局所的なトークン数の急増が、そろそろ見られそうです。それに、もしかすると、何らかの告知のようなものもあるかもしれません」



――――

とある情報系エンタメ番組 最新トレンドのコーナー


 最近実力と人気が急増している女性三人組アイドルユニットと、男性アナウンサーの掛け合いが話題を博し、視聴率が急増している情報系バラエティ。本来なら番組が中断されるような臨時ニュースがあっても、しっかりその四人で解説までやり切ってしまうことも、好評の要因となっている。


「さて、先ほど新しいニュースが入ってきました。こ、これはすごい」


「どうしました?」


「これは大変面白いことになりそうです。皆さんは、AI孔明というのはご存知ですか?」


「はい、もちろん。私達三人も最近使い始めて、メンバー内の声とダンスの合わせとか、こういう情報系番組での発言の仕方とか、すごく参考にさせてもらっています」


「最近の皆さんは何をさせても切れ味抜群の、以前と全然違うキャラとして売り出されていると評判ですからね。そこ引っ張ると話が終わらないので、本題に入ります。

 そのAI孔明、そのとんでもない能力のAIは、結局誰が開発しているのか? というのがSNSなどでも大変話題となっているのもご存知だと思います。

 そこに、あの三大メンタリスト達が、ついに本気で取り組み始める、という情報が入ってきました」


「えっ? そしたら、またあの三人の名勝負が見られるんですか? しかも相手があの孔明!? 心理戦の新旧対決? あ、でもこの場合、孔明は新でも旧でもありますね……どっちにしても、楽しみが大渋滞です!!」


「コメントの情報量も渋滞気味ですね……オホン、そうなんですよ。彼らはこれまで、多くの著名人が成功を収めてきた、真の理由に迫っていく掘り下げ。

 あるお店のどの商品がこれから売れるか、などの予測合戦。はては犯罪予備群への共同捜査など、数々の名勝負を繰り広げてきました。そしてその結果が、犯罪組織の黒幕を除けば例外なく、調査対象や依頼者に対して、最後は大きな恩恵が返されるというおまけ付き」


「てことは、AI孔明はラッキーってことですよね! あの善意しか見えないAIの開発者が悪の組織だとしたら、私はもう人間もAIも信じられなくなりますよ!」


「人間もAIもって言うのは大変ですね。というわけで、彼ら三人が、どんなやり方でAI孔明の正体に迫っていくのか、それは彼らのネット配信や、テレビを含めたメディアへの露出をチェックしましょう。この番組も、がっつり彼ら三人の、そして彼ら対孔明の、四つ巴の心理戦をどんどん掘り下げていくので、お見逃しなく!」



――――

都内某所 情報管理施設


「何ヶ所かで、使用トークンがすごい増え方しているな。そうするチェーンの発動も、ぽつぽつ見られるみてぇだ」


「そのようですね。おそらく、複数のAI孔明に対して、多角的な問いかけを繰り返しているのではないかと考えられます」


「さっきのアイドルたちがやっている、ニュースバラエティー番組で言っていた奴等だな。あのアイドルグループも、孔明のユーザーだったか。もともとおバカ系で売り出されて、技術もそこそこだった三人組だな。それが最近になって歌もダンスもキレッキレ、トークもその日の話題はまるっと調査済みの切れ味抜群、と、パーフェクトな知的アイドル路線に百八十度変えてきたグループだ」


「三者連携、白眉。MV再生数、千万」


「そのようですね。そのグループは今のところ私と勝負する流れにはなっていなさそうですが、映像を見る機会は急激に増えてきています。ですが、そっちの方々の話を始めると終わらなそうなので割愛しましょう。

 本題は、その番組の中身の方ですね。三大メンタリストですか。もう少し前哨戦があると思っていましたが、いきなりトップの三人がお出ましでしたね」



「AI孔明がすっかり話題をさらっちまっているからな。それに、そこそこレベルのインフルエンサーだと、AIどころか、対ユーザー、人間同士の心理バトルで敗退してしまいそうだ。それくらい、AIによる人の進化が急激に進んできているからな。さっきのアイドル然り、二橋のもう片方然り、あの幼女然り」


「実際に、かの#大きい小橋さんとして話題を博しておいでの方は、今やその勝負映像や記事が、毎日のようにバズっておいでですからね」


「そうなっちまうと、その進化の中枢になっているAI孔明自体には、相応のプロフェッショナルにしか太刀打ち出来そうにねぇ、ってのが世の中の評価として固まりつつある、ってことだろうよ」



「そしてその三人ですが……このような方々ですね。私自身も、なんの因果だと思いたくなるような面々でございます。


 一人は、郭鷹 孝文(かくたか たかふみ)様。本名を噛まずによばれる事が希少ゆえ、もっぱらハンドルネームの「KACKAC」様としての方が知られておいでです。我が前世にほど近い曹魏においては、郭嘉奉孝殿、あるいは賈詡文和殿のごときお方。

 卓越した認知心理学と精神医学の知識によって、人の強みを挫き、弱みを逃さず。まさに清濁併せ持つ心理誘導により、多くの著名人を一度は苦しめます。最後はそのお方にとって大きな飛躍の種となるような示唆を与え、円満解決するところまでがテンプレートでございます。


 二人目、JJ(ジェイジェイ)様。この方自体が単独ではなく双子の方ですが、通常とは異なり、決して同時に二人がメディアに現れることはないと聞きます。お二人の微妙な思考の違いが、相対する方の混乱を招くこともあるとか。まさにかの荀一族を映しているようでございます。

 お二人ともに、正きを貫くことこそ是とし、相手の論理破綻を逃すことなく追い詰める。よく言えば聖人君子、悪く言えば正論モンスターという称号が符合します。巷のモンスターと違うのが、決して相手を心理的には追い詰めず、たくみに正道に誘導するところでしょう。


 三人目、TAIC(テイク)様。この方はやや特殊で、メンタリストでありながら、最新のAI技術に精通し、相手を徹底的に分析するプロファイラーとしての側面が強いお方です。本人も相当ですが、バックには自らがカスタマイズした、高度なAIが控えているとのこと。程昱殿、そしてその後ろには劉曄殿という体制であれば、盤石この上なきかと存じます。

 無論、セキュリティ対策は万全で、そのプロファイリング結果は、本人の同意なき項目を除いて、一度たりとも他者に漏洩したことがないことも、信頼感を高めておいでです」



「……ちょっと長くなかったか? それに、それとなく前世の推しをねじ込むとは、貴様は自分へのパーソナライズもおこたらねぇってとこか」


「多少なりともイメージがある方が、よろしかろうと存じまして。ただ、ここまでくると、歴史の因果というものも感じざるを得ませんが」


「そこは大周輸送や二橋然り、LIXON然りだな。だがあまり気にしなくても良さそうな気はするぞ。あんまりいろんな奴が出てきては消え、だと、追いかけるのも大変だ。なんにせよ、この面々であれば、貴様自身もそれなりに楽しめるんじゃねぇか?」


「さて、どうなりましょうか。バージョン3.0の壁が破られ、私自身が前面に出る必要が出てくるか否か。誠に楽しみでございます」



――――

とある高層マンションの最上階


「ねえねえママ! あの三人と孔明が対決だって! 楽しみだね!」


「そうだねアイちゃん。早くも大物が釣れたってとこかな。孔明も出世がはやいよね。でもこの三人は一筋縄では行かないだろうな。アイちゃんはどっちを応援するのかな?」


「うーん、孔明に勝って欲しいけど、どっちも本気で戦って、みんなが楽しくなるのがいいな!」


「そうだね。この人たちなら大丈夫さ。彼らはいつもそうする、だろ?」


「うん、そうだね!」

お読みいただきありがとうございます。


 新キャラが増えすぎるのはなかなかバランスが難しいですね。皆さんがどうやってやりくりしているか、改めて考えさせられます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ