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フィオナの罰と妖しい魔女 2

「ク、クラリッサさん!?」

さっきまで同じくらいの大きさで話していたはずのクラリッサさんが大きくなっている。


「そのままの大きさで魔法を使って紐を焼き切っても良かったけど、間違って千切れた時に地面に落ちたらサーシャちゃんが大変なことになっちゃうから、念の為、この大きさで切っておいたわよ。その方が安全でしょ?」

「い、いえ、それはまあありがたいんですけど、なんで自由に巨大化できたのかをしりたいんですけど……」

この世界で巨大化魔法を操れるのはエルフ様たちだけだと聞いていたのに……。


「そりゃ、優秀な魔女が本気を出したら、そのくらいはできるのよ」

そう言った瞬間にクラリッサさんの体がパッと小さくなり、またわたしと同じくらいのサイズになる(スラリと背のたかいクラリッサさんはわたしよりも10センチ以上背は高そうな上にヒールの高いブーツを履いてるから、身長差はあるけれど、先ほどの巨大化時の身長差と比べたら誤差みたいなものだと思う)。


箒に腰掛けながら、わたしにお姫様抱っこをしてくれながら空を飛んでいた。


「まあ、今はこのくらいの時間が限界だけどね。巨大化魔法は、強力な魔力消費があるから、あたしレベルの優秀な魔女でもせいぜい30秒もしたら元に戻っちゃうわ」

そうなの? パメラは5分くらい巨大化してたけど……。


「じゃあ、パメラは一体……」

わたしが呟くと、クラリッサさんが、わたしの顔を覗き込むようにして、大きな声を出した。

「そうよ! あの子は何者なのよ!?」

クラリッサさんにもわからないのだろうか。


巨大化したら突如お姫様みたいになったし、やっぱりあの子は不思議な子なのかもしれない。

「あたしが聞きたいわ。一体あの王女様は何者なのよ?」

クラリッサさんがため息混じりに尋ねてくる。


「わたしが知っているのはエフィ様っていうさっきの意地悪な子どもに囚われて、嫌がらせを受けてるってことくらいですね」

「嫌がらせを受けているって言うのに、あんな中途半端な反撃で良かったのかしら? だいたい、パメラ様が甘いからまた元通りに小さくなって簡単に捕まってしまうのよね」

クラリッサさんの話し方は、なんだかパメラに対して敬意を払っているようにも感じられる。敬称として様なんてつけてるし、明らかに特別感を持っていることがわかる。


「いずれにしても、パメラ様に対して酷い扱いをしていることは許せないわね。そのエフィって子を焼肉にして食べてしまいましょう」

「ちょっと表現が物騒じゃないですか……? 焼いて食べるなんて物騒な……」

大きさ的にはどちらかといえば焼肉になるのはわたしたちの気がするし。あ、でもクラリッサさんもパメラも大きくなれるから、被食者確定なのはわたしだけか。


「まあ、なんでもいいわ。さっさと花園に向かいましょう」

わたしは頷いたけれど、次の瞬間にはもう嫌な声が聞こえてくる。お淑やかだけれど、サイズのせいで耳が痛くなるような大きさの声が聞こえてくる。想像していたよりもずっと早く、この地域の管理者の巨大メイドであるフィオナさんにバレてしまっていたらしい。


「どうして逃げているのですか?」

わたしたちにとっては1キロほど距離があったから、余裕を持っていたけれど、フィオナさんにとってはそれは遠い距離ではなかったらしい。しかも、地面にいるときと違い、空を飛んでいるから、わたしたちは目立っているみたいだし。


「ク、クラリッサさん! 早く逃げないと……!」

フィオナさんに見つかっても呑気にわたしをお姫様抱っこをした状態で飛んでいるクラリッサさんに少し呆れてしまう。このままではすぐにでも捕まってしまうではないか。

「別に大丈夫でしょ」

「大丈夫じゃないですよ!」


フィオナさんは早足であっという間にわたしたちとの距離を詰めてくる。すぐに手を伸ばせば捕まえてしまえるような距離になってしまった。わたしたちを2人まとめて掴んでしまえる大きな手が迫ってきて、わたしがギュッと目を瞑った。


「フィオナだっけ? 迂闊なことはやめた方が賢明よ? ムカデやサソリは素手で触らないほうが良いって知らないのかしら?」

「は?」と不思議そうに尋ねるフィオナさんが次の瞬間、「痛っ」と言って手首を押さえ出した。

「毒を打たせてもらったわ。ちょっと痺れるだけだから、それ自体は致命傷にならないわ。でも、次はもっと痛いの打ち込むわよ? 動けなくなるくらい強いやつ」

「あなたには興味はないのですが……。私としてはそちらの抱えられている方の子さえ頂ければいいので争いは好みません」

フィオナがわたしの方をジッと睨んだ。


「残念ね。この子は私の大事な人の妹ちゃんなのよ。だから、酷い目に遭わされることがわかっているのに引き渡すことはできないわ」

クラリッサさんが口元に手を当ててクスッと笑う。艶やかな真っ赤な唇が動く様子に思わずドキリとしてしまった。


「なら力尽くでも止めさせて頂きますから」

「あたしたちに触れようとしたらさっきよりもキツい毒を打ち込むわよ?」

「かまいません。これが仕事なので」


そう言ってまた掴んでこようとしたから、クラリッサさんが右手を上にあげて、そのまま勢いよく下ろす。すると、クラリッサさんの動きに合わせて、無数の毒針がフィオナさんに向かっていった。標的の大きなフィオナさんには簡単に当たってしまった。


「……っ」

フィオナさんがよろりとよろめいて倒れ込み、森の上に力無く横たわった。その衝撃で地区中に大きな揺れが起き、年季の入った小屋が崩れてしまい、森に生えている木はフィオナさんの背中で大量に押し潰されてしまった。フィオナさんは大きな木だって軽々押し潰せてしまうくらい強い巨大なメイドなのだ。それなのに、わたしと同じくらいのサイズの状態のクラリッサさんに一瞬で倒されてしまったのだった。この国で2番目に強い魔女の凄さを知ったけれど、それよりも背中から思いっきり倒れてしまい、動かなくなってしまったフィオナさんが心配になってしまった。

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