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きゅう


「ハァ……ハァ……死ぬかと思った……」

「うっぷ……さっき食べた唐揚げが出てきそう……」


 俺とリノはブルーコングがいる湖からそれなりに離れた草原に倒れ伏していた。

 ……もう、なんかいろいろと疲れた。ブルー“コング”なのになんでゴキブリなんだよ。無駄にデカかったしさあ……。

 パッと見た感じでも三メートルはあった。


 あっヤバい。思い出すと寒気が……。


「……三体もいるなんて聞いてないっての」

「まったくだ。ギルドに言って賠償金の一つでももらわないと気が済まん」

「その前に俺に何か言う事があるんじゃないか?」


 リノはそっと目を逸らす。


 ……………………。


「痛い痛い痛い!ご、ごめんって、悪気はなかったんだってば!」


 俺は両方の拳でリノの頭を左右からグリグリする。

 こいつにはこれぐらいしないと釣り合わん。


「任せろって言うから任せたのに、何もせずに──いや、わざわざ三体引き連れてから俺の方に逃げてきやがって!あとちょっとでも逃げるのが遅かったら、今頃ゴキブリの腹の中だったんだぞ!」

「ごめんなさいぃ!謝るからグリグリ止めてぇ!!」


 気が済むまでグリグリしてから手を離す。

 ちょっとはイライラが落ち着いた。


「うぅ……わたしの体がどんどんトモヤにぐちゃぐちゃにされる……」

「オイその言い回しはやめろ。俺が捕まる」


 こいつちっとも反省してないだろ。もう一回グリグリしてやろうか。

 そんな俺の気持ちに気づいたのか、リノは慌てて俺から距離をとった。


「はぁ、これからどうすっかな……」


 リノが一度倒した事があるから、このクエストを受けた訳だけど、肝心の本人がコレだからなぁ。諦めてもうちょい簡単なヤツに変えるか……。


「トモヤ、次こそは任せて!次は絶対大丈夫だから!」

「却下だ」

「なんで!?」

「なんで驚けるんだよ」


 こいつさっきの記憶がもう消えたのか?

 それともあのゴキブリに追われる恐怖をまた味わいたいだけのマゾなのか?

 それなら俺を巻き込まないでほしい。俺はマゾじゃないんだ。

 俺がリノマゾ疑惑を疑っていると、リノがとんでもない事実を言い放った。


「あの三体はもうわた──朕の一撃で倒せるくらい弱ってるから問題ないだろう!?」

「だから却下──今なんて?」

「アイツらは朕の一撃で倒せるくらいまでレベルが落ちてるから絶対倒せると言ったんだ」

「は?」


 こいつマジで何言ってんだ?

 ……いや、なんでそんな事が言えるんだ?適当な嘘をついてるようにも見えないし。


 ……まさかあの時か?


「……もしかしなくても最初にゴキブリの前に無駄に姿を晒した時に、手を翳してなんかやってたヤツか?」

「さすがトモヤだ。まさしくその通りだとも!」


 リノの話を要約するとこうだ。

 先ほどヘセイから奪った〈呪詛返し〉というスキルを使って、()()()()()()()()呪いをゴキブリに返した。

 そしてリノにかけられた呪いというのが、レベルが10から上がらないという呪いらしく、今のゴキブリもといブルーコングはレベル10の雑魚だというのだ。


 ちなみにリノにそんな呪いがかけられた理由だが、鬼族史上最強の戦士であるリノを恐れた誰かの仕業らしい。


「……まったく理解が追いつかないが、そういう妄想をしてたって事で合ってるか?」

「合ってない!すこっしもこれっぽっちも微塵も合ってない!」

「そうか、お前がそう言うならそうなんだな」

「その同情するような笑顔は止めろ!朕は本当の事を言ってるのだ!」

「うんうん、信じるよ。信じるとも。仲間だからな」

「だからその笑顔を止めろと……はぁ、もういい」


 リノもお年頃だからね。そういう妄想をしちゃうのも仕方ないよ。うん、ちょっと俺も辛くなってきた……。これが共感性羞恥ってヤツか……。


「とにかく、今のブルーコングは雑魚も同然。朕が一撃で仕留めて見せようぞ!」

「止めとけって。今度こそ死ぬぞ」

「フッ、ならトモヤはここで待っているがいい!」

「え?あ、ちょっ……」


 リノはものすごい速さで湖の方へ走り去っていった。

 まあ、あんなに言ったんだ。たぶん大丈夫だろ。


 俺は楽観的にそう考えていた。


 ──それが間違いだった。



「わああああああああああああ!!トモヤぁぁぁぁぁぁ!!」

「嘘だろあいつ……っ!」


 リノは無事戻って来た。


 ──五体のブルーコング(ゴキブリ)を連れて。


「バッカ野郎!こっちに連れてくんな!」

「助けてぇぇぇ!」


 ブルーコングがリノを追いかけ、リノが俺を追いかける。

 最悪だ。人生で一番絶望的な状況だ。リノ、後でシメル。


「くっそ!こうなったらぶっつけ本番だ!」


 俺は立ち止まり後ろに振り返る。そして右手をブルーコングに翳して叫ぶ。


「《ウィンド・ストライク》!」


 俺の右手から風の衝撃波が生まれ、ブルーコング──ではなくリノに直撃した。


「ぶわああああああああああ!!」

「ヤベ、ミスった」


 リノは勢いよくブルーコングの方に吹き飛ばされてぶつかり、その巨体を吹き飛ばした。


「……やった?」


 それを見た残りの四体はそそくさと湖の方へ逃げ出す。


 こうして俺達は見事ブルーコング討伐に成功したのだった。



一応リノも湖の近くで一体倒してます。

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