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さん


 光がおさまり目を開けると、



 化け物がいた。



「うおっ!?」

「キャウンッ!?」


 目の前にいた化け物──全長5メートルくらいのデカイ狼は俺の声に驚いたのか、体をビクッとさせ、やたら可愛らしい声をあげて後ずさった。


「…………………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」


 ……………………………………ヤバい。

 めちゃ気まずい。


 お互い、なまじ驚いてしまったせいでこの場から去るに去れなくなっちゃってる。

 あれだ。この状況をわかりやすく言うならば、共通の友達がいなくなって友達の友達と2人きりになってしまった時の空気感。あの絶妙に気まずい空気が俺と狼の間にはあった。


「……………………」

「……………………」


 狼の知性は多分結構高いのだろう。だがそのせいで気まずさを理解してしまっているため、この場から離脱しずらくなっているみたいだ。あっ、目が合った。


「……………………あの」


 俺は意を決して、この地獄のような沈黙を破った。


「………!」

「………お、俺はこの辺で失礼しますね」


 そう言ってから軽く頭を下げる。そして狼に背を向けてそそくさと歩く。


「ワフッ!」

「………え?」


 狼の「失礼します!」みたいな声に思わず振り向いてしまうと、ヒュゴッという音が()()()俺の耳に届いた。


「嘘だろ………!」


 狼は一瞬で消えていた。音よりも速くこの場から去ったのだ。なに言ってるかよくわからないけど、俺もよくわかってない。

 でも、これが今俺が見た事実なのだから受け入れるしかない。

 これが異世界の狼。次元がちげえ……。


 俺は暫く呆然と狼がいた場所を眺める事しかできなかった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 だいぶ落ち着いてきたところで、俺が今いる場所を確認してみる。


 前は森。横も森。後ろを向いてもやっぱり森。


 ……………うん。


「騙された」


 おかしいだろクレッツ。お前は街に送るって言ったよな。ここのどこが街なんだよ。マジふざけんな。覚えてろよアイツ………。

 とりあえずこれからクレッツのことを詐欺神(さぎしん)と呼ぶ事に決めておいた。


「これからどうするか……」


 迷ってても仕方ない。まずは持ち物とステータス確認からだ。


「〈インベントリ〉に入ってるのは……ナイフ(おもちゃ)にメイド服、そしてアン○ンマン銀行のお金……」



 は?



「いやいやいやいや。これは見間違いだ。そうに違いない!」


 改めて確認。

 武器:ナイフ(おもちゃ)

 装備:メイド服

 残高:アン○ンマン銀行のお金が小銭合わせて二千円


「あ、これ詰んだわ」


 なんか詐欺神の高笑いが聞こえた気がする。


 次会ったらアイツ絶対コロス!覚えとけよクソ詐欺神が!


 ──暫くして。


「よし、アイツの事は忘れてステータス確認だ」


 ステータス確認というよりはスキルとか称号確認だけど。


「嗚呼良かった……ちゃんとある………っ!」


 俺のスキル欄にはユニークスキル〈無限(インフィニティ)〉とちゃんと表記されていた。とりあえず一安心だ。


「ん? 何だコレ?」


 〈無限(インフィニティ)〉の下に3つほど知らないスキルがある。

 それぞれ上から、

 ユニークスキル〈仮面演舞(ペルソナ)

        〈風魔法〉

        〈気配察知〉


「なんでユニークスキルが……?」


 詐欺神の話ではスキルの最上位がユニークスキルであり、獲得している者は俺のような転生者か一握りの上位者だけらしい。

 つまり例外はあるが、それだけ獲得が難しいスキルのはずだ。なのになんで……。


「………まあいいか。貰えるなら貰っとこう。それよりもどんなスキルかを知らないとだ」


 ユニークスキル〈仮面演舞(ペルソナ)〉は魔力を消費して、自分の望む姿になる事が出来るらしい。しかもだ。その姿の元となった者の力を模倣して、使う事も可能だというのだ。


「勝ったな」


 これぞまさにチートスキル。どうやらヘボい持ち物なんかどうでもよくなるくらいには、すごいスキルを手に入れてしまったようだ。

 理由はわからないけど。


「あとは、名前のままのスキルだな」


 なぜ手に入ったのかはわからないが、せっかくなので喜んでいただこう。


「次は称号だな……」


 称号は条件を達成する事で獲得出来るもので、ステータス増強とかレベルアップとか様々な恩恵を受ける事が出来るらしい。

 ちなみに俺は〈転生者〉という称号をこっちに来た時に獲得している。


「あれ?こっちもなんか増えて……」


 称号:〈転生者〉

    〈神クレッツの加護〉

    〈神狼が認めし者〉


 言葉を、失った。


 なんでこの称号を持っているか、わからなくはない。でも、それで良いのか?あんな気まずい状況になった程度で認めて良いのか?

 言いたい事は色々ある。けど、なんとなくツッコんだら負けな気がした。


「……うん、前向きにいこう。初期装備がしょぼい替わりって事で納得しとこう」


 自分にしっかりと言い聞かせた。

 人生なんて計画よく進む方がおかしいんだ。このくらい許容範囲だろ。

 ……あっレベルも上がってる。やったー。


「……よしっ、確認も終わったし街に行くか!」


 俺は頬を叩いて気合いを入れて──思い出した。


 …………どうやって街に行こう。



誤字や内容に矛盾などがありましたら優しく教えていただけると嬉しいです!

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