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いち


 今、俺の前には美少年が座っている。

 人外の美貌を持ち、見る者全てを魅了してしまいそうな彼は、


「初めまして、山本智哉さん。僕はクレッツ。地球において死者の案内を努める者です」


 そう言って微笑んだ。その破壊力抜群の笑みに、不覚にもドキッとしてしまった。


「俺は……死んだんですね……」

「ええ、残念ながら貴方は亡くなってしまいました」

「……死因はなんだったんでしょうか?」


 俺は間違いなくベッドで寝ていたはずだ。過労死するほど疲れてもいなかったし、心筋梗塞にでもなったのだろうか。


「貴方が寝返りをうってベッドから落ちた時に、床に置いてあった彫刻が頭に当たり、どうやら打ち所が悪かったようで即死してしまったのです」

「………………」


 ………ナニソレ、すんごく恥ずかしい!


「山本智哉さん。死んでしまった事実を変える事はできません。ですが貴方には2つの選択肢があります」

「……へぇ?」


 あまりの恥ずかしさに内心悶えていた俺は、クレッツさんの言葉にマヌケな声を出してしまう。


「一つは、記憶を失って、また新たな生を生きるか。そしてもう一つは、記憶を持ったまま別の世界に行くか」

「っ!それってつまり……!」

「いわゆる“異世界転生”というヤツですね」

「おぉ………!」


 “異世界転生”って事は、魔法を使ったり、英雄になったり出来るって事だよな。まさか実際にあるとは思わなかったけど、俺だって厨二病を患った男だ。こんなのワクワクしないわけがない!


「……ですが、もし、異世界転生をされるのなら貴方にはとある使命を与えたいのです」

「え、使命?」

「はい。ズバリ魔王討伐です」

「おぉ……」


 真剣な表情でクレッツさんは告げる。

 そっか……やっぱいるのか、魔王。ラノベとかではめちゃめちゃ王道だけど、いざ自分がってなるとちょっと不安になるな……。


「それは俺が勇者になるって事なんですよね?」

「はい、その通りです」

「……もしかして、俺が今から行く世界は魔王軍の脅威が人類を脅かしてたり?」

「さすがですね。まったくもってその通りです」


 魔王か……。運動はそれなりに出来る方だと自負してるけど、戦闘に自信は無いんだよなぁ……。そりゃあチートがあれば何とかなるかもだけど、実際異世界ってラノベみたいに上手くいく事のがおかしいし……。


 俺は表情には一切出さずにひたすらチキる。

 いや異世界に興味が無いわけじゃないけど、小心者の俺に魔王討伐なんて出来ると思えないんだよな。

 それにちょっと気になる事もあるし。


「山本智哉さん、引き受けてくれますか?」


 クレッツさんは訴えかけるような上目遣いで俺に頼む。俺が好きなのは女の子のはずだが、この人の前ではどうにも揺らいでしまう。


「……その前に一つ、いいですか?」

「? 何でしょう」

「俺の名前──というか苗字なんですけど」

「はあ、山本ですよね?」

「いえ山田です」

「……………………」

「……………………」

「……………………」

「……………………」


 俺とクレッツさんは目を合わせたまま、黙ってしまう。

 うん、ものすごく気まずい。


「………え、マジで?」

「マジで」


 沈黙を破ったのはクレッツさんの素の困惑声だった。


「……と見せかけて?」

「本当です」

「……という冗談」

「ではないです」

「……からの~?」

「マジです」

「………………おーまいごっと」

「本気で思ってます?」


 「やっちまった」と言わんばかりの表情でクレッツさんは固まってしまった。


「……いやぁ、マジかー。うわ待って、これ怒られるヤツじゃん……」

「説明お願いしても?」

「……え~っと、もしかしなくても君は山田智哉くんなんだよね?」

「はい」


 クレッツさんは説明を始めた。


「いや実はね?もともと正義感の塊みたいな山本智哉くんをね、人口が過疎ってきてる異世界に送ってサクッと魔王を討伐してもらう予定だったのね?」

「ほう」

「だから神様パワーでサクッと殺してからここに呼ぼうと──」

「ちょっと待てコラ」

「いやいやいや!落ち着いてくれ、山本──じゃない山田くん!」

「喧嘩売ってんのか」


 クレッツさん、いやクレッツの野郎はとんでもない事をのたまった。

 曰く、山本智哉くんを神様パワーで殺して異世界に送る予定が、野郎は間違えて俺を──山田智哉を殺してここに連れてきたらしい。


 つまりだ。


「なにしてくれてんだこの殺人神!」

「なっ!ぼ、僕は神だぞ!それもえらーーーーーいさいじょ」

「やっかましいわボケェ!」

「ぼ、ボケェ!?」

「偉いならさっさと俺を帰せよ!神様ならそのぐらい出来んだろ!」

「……………」

「オイ目を逸らすな」


 スッと無言で目を逸らす殺人神に思わず殺意が沸いてしまうが、オトナの精神力で何とかもちこたえる。

 ここは深呼吸して、一度冷静になろう。じゃないと話が進まない。


「スゥーーーフゥーーー」

「あ、落ち着いた?」


 ………………………………。


「………コロス」

「うおっ!?静かに殺意を研ぎ澄ませないでよ!っていうか僕は神だから死なないし!」

「チッ……死なないのかよ……」

「えぇ………君ってホントに平和な日本で育ったの?」


 これに関しては、先に手を出してきたのはコイツなので問題ないと思う。ここは日本じゃないから犯罪にはならないし。


「とりあえず、謝罪もするし事情も説明したいから落ち着いて貰ってもいいかな」

「……わかった」


 当然謝罪は土下座なんだろうな!



誤字や内容に矛盾などがありましたら優しく教えていただけると嬉しいです!あと、感想などもお待ちしております!

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