第一楽章・演奏終了(エピローグ)
何も見たくないのなら
何も見なければ良い
目を閉じてしまえば
見えるのは真っ暗な闇だけ
《ローゼ》
私を呼ぶのはダレ?
《待っていたヨ》
待っていた?
《ローゼ》
《愛しいローゼ》
《ズット待っていた》
《ズット》
《ズット……》
どうして私を知っている?
《残酷なホド長い時ヲ》
《狂いソウになるマデ》
《ズット》
《待っていたんダヨ》
《もうすぐアナタに会エル》
私は……
《アノ血の涙を流すホド》
《寂シカッタ日々が》
《終ワリを告げる》
誰かに必要とされている
夢の中の声と、『私』の声が重なる
《さあ》
そう
《ソノ白くて長い》
あなたがあの時の
《美シイ指で》
夢の声で
《アナタだけの旋律を》
あなたが私を
《奏デテ》
欲していた
《アナタが楽しく奏でれバ》
《人々は歌イだし》
《アナタが美しく奏でれバ》
《木々の緑が輝ク》
《アナタとコノ国は》
《繋がっているんダヨ》
《アナタが死ネば》
《コノ国も滅ビルの》
ピアノ椅子に座る私に
あなたは早く弾くよう促した
早く
早く
《ローゼ》
《みんなのローゼ》
《みんなダケのローゼ》
《アナタを絶対に離さナイ》
やめて
《早くオイデ》
これ以上
《早く》
私を
《早く会いタイ》
惑わさないで
《準備は整ッタ》
《時はもうすぐ満チル》
《後はアナタが》
《花を添えるダケ》
《美シイ》
《薔薇の花ヨ》
《ソシタラ》
激しい動悸
《全てが終ワリ》
息が出来ない
《全てが始マル》
やめて……
痛い……イタイヨ……
極甘のソナタは
美しく幕を閉じる
それは表面だけ
最後の音は
柔らかなベールに包まれて
美しく余韻を残す
「ローゼ……」
久しぶりの悪夢に、苦しそうに表情を歪めているローゼを、シュテルンは静かに見つめる。
「運命は、変えられないものなの」
だから今は
たくさん苦しいの
きっとこれからも
苦しくなる
ローゼを見つめるシュテルンの顔が、ふと険しくなった。
「せいぜい、苦しめば良い。ワタシに迷惑がかからない程度にね」
次のソナタは
戦慄のソナタ
To be continued...