速報
家に帰ってきた男はソファーの上にごろり。
体を包むようなその充足感にニヤつき、自然と瞼が下がる。そしてそのまま一眠り。数十分が経ち、目を覚ますと大きな欠伸をした。
そして何の気なしにテレビを点ける。すると驚いた。
ニュース番組のようだが、画面上に映し出されたその光景に見覚えがあったのだ。
『えー、犯人はこちらの店を出たあと――』
――あれは俺が行った店じゃないか。
間違いなかった。番組のテロップには速報とあった。何かが起きたらしい。余程の。だが、何が……と男は食い入るように画面を見つめる。
『それからさらに近くのあのコンビニに立ち寄り――』
――これも俺が行った店じゃないか。
『その後、この公園を通り――』
――そこも同じだ。
『そして、あそこに見えますドラッグストアに行き』
――おいおい、ここも行ったぞ
『そして、あちらに見えます牛丼屋に入ったということです。ちょっと、こちらの店員の方にお話を伺ってみましょう』
……完全に一致している。何か事件が起きた。しかし、なぜだ。なんなんだ? 俺が行く前ということは有り得ないから、行ったあとなのだろう。しかしこんな偶然があるのか。足取りが完全に一致しているとは。
これでは俺が犯人と疑われてしまう……わけないか。防犯カメラの映像とかあるだろう。しかし、いい気分はしない。怪しくはあるし……そうだ、共犯を疑われる可能性はあるじゃないか。だが、そもそも何が起きたんだ。強盗か?
恐らくニュースの冒頭で言ったのだろう、もう一度言ってくれれば助かるのだが……本当に俺ではないのか?
知らず知らずの内に……そう、二重人格。いや、そんなこと……それかショックで記憶を失って?
故意ではなく事故で、そうだ、つい昂って殺し……いやそんなことはなかったはず。笑顔であの店を出たはずだ。最高だった。さすが人気ナンバーワンの子。また行こう、じゃなくて一体、何が起きたんだ……。
『その後、犯人はこの道を通り――』
――ん?
『そしてこちらのアパートの部屋に立て籠もったそうです! あ、犯人でしょうか! 窓に、窓に今、人の姿が!』
……俺の家? 窓? あ――
「おき、起きたか。お前が、俺の、俺の彼女をねと、寝取って、殺す殺す殺す次はお前だ死ね、死ね、しねぇ……」