最強勇者パーティ迷宮99階層攻略
勇者パーティの屋敷としてとある貴族から提供された一軒家の入り口で派手に身飾り太った勇者パーティのスポンサーである貴族が勇者ガリアル一行が出てくるのを待ち構える。ガリアルが出てくるとすぐさま近づきほくほく笑顔を浮かべる。
「今日も迷宮探索ですかな?勇者ガリアルよ」
「えぇ、伯爵、これから迷宮99階層に挑戦する予定です。」
「そうか、そうか、そうであったか!。流石は勇者パーティ、明日明後日には迷宮100階層攻略というまだ誰も成し遂げたことのない偉業を達成するかも知れぬ。あはは、そうであれば私の鼻も高いな、頑張ってこい」
勇者ガリアルの偉業をまるで自分が成し遂げたように高笑いし、まだ未知の階層を明日明後日で攻略というバカな事を抜かしている。勇者パーティが迷宮98階層から99階層に向かうのに3ヶ月掛けたというのに、この貴族、迷宮の怖さがわかっていない。
そんな馬鹿な高笑いを続けている伯爵に怒り心頭だがここで怒っても、解決にはならないと心得ている、だから全てをできる限り受け流すように努力する。
「では伯爵、行ってまいります。」
勇者ガリアルは営業スマイルを振り撒くと一礼し屋敷を後にしようとするがその背にさらに声が掛けられる。
「おう!そうするがよい、土産も期待しておるぞ、ガァはあはあ、未知の財宝楽しみにしてるぞ、ガリアルよ」
イライラを押しつぶしこんどこそその場を後にする。
●
伯爵に見送られ勇者パーティはいつも通り、ギルドまで20分、朝のまだ涼しい風を感じながら、世間話をするのであった。これが勇者パーティ凛牙凛牙のルーティンである。
「さてみんな、今日は迷宮99階層を攻略する予定だ。どんな未知のモンスターに出会えるか、迷宮はどこまで続くのか、俺たちがまた迷宮という歴史に名を刻む。面白い、俺はそう思う。」
ガリアルの表情は未知への欲求で綻ぶ。
迷宮とは簡単にいうと鉱山に近い物である。
迷宮で採取される鉄は一般の山などで採取されたものより純度が良く高値で取引される、他にも金銀銅や宝石の原石、全てが通常とは比較にならないほど品質が良く使い勝手がいい。そして発光石と呼ばれる謎の光る石が迷宮内を照らしモンスターとの戦闘行為を可能とする。
発光石の用途は幅広く、街中の電灯や家の照明、貴族の見栄を張るためなど利用価値はかなり高い。
特に金を持っている貴族は大量に買い集める、屋敷のそこら中に張り巡らせ金持ちだと見せびらかす。
しかしそれ以上に価値があるの。それが迷宮に棲みつくモンスターの素材である。
迷宮潜むモンスターは何故か迷宮にしか姿を現さない。
地上にもモンスターや魔物と呼ばれる生き物はいるが迷宮に住まうモンスターとはまた別種である事が既に確認されている。
迷宮内は薄暗く、モンスターの強さも地上のものとは比べ物にならないほどに強い。だから迷宮に入れる者を限定する必要があった。そしてできたのが冒険者制度であった。
迷宮に入るにはBランク以上の実力がなければ迷宮の地にす足を踏み入れることすらできない。Bランク以上だとしても各迷宮で制限が掛けられている場合もある。
「また変な顔になってるよガリアル、」
顔中の筋肉が緩み、おかしな顔となり始めたのを笑ったのが
勇者パーティの紅一点兼回復役、エリー・チェスターであった。ついでに言うと勇者パーティの屋敷でなく自分の家を借りている。女の子はたとえ仲間だろうと好きでもない相手と同居したくないらしい。当たり前だが。もちろん家バレしないように最新の注意を払っている。
「お前さんはいつもそうだ。迷宮のことになると、目の色変えて、ニコニコし始める。全く楽しそうだな、俺たちはこれから未知の階層に向かうっていうのによ、あはは」
2人の話に割り込んできたのは同じく。盾役として勇者パーティ創設時からの最古参メンバーである、カッテッージである。本名は仲間達も知らない。本人はカッテッージと言う名前をあまり気に入っていない。子供の頃に『チーズ!チーズ!』と馬鹿にされたためであった。仲間達にはロッシュと呼ばせている。
「これが俺たち凛牙のリーダー、ガリアルだ」
「そうだな!。俺はのリーダーはこうでなきゃな!。」
ガリアルの自慢をすぐさまヨイショしているのが勇者パーティ最後の1人、何でも屋のゲイル・シャブスター。
彼は前線での戦闘、後衛での探知など幅広くやっている。
ある人がいつに勇者パーティの縁の下の力持ちと言われている。本職は付与魔術師として後衛からの全体把握に努めている。
勇者パーティはこの4人で凛牙として活動している。
前衛 ガリアル
回復魔術師 エリー・チェスター
盾役 ロッシュ
付与魔術師 ゲイル・ジャブスター
そして今は休みをとり修行だとか言ってパーティを一時的に離脱している前衛 グランドもいる。
勇者パーティは両前衛が撹乱兼ダメージを与える攻撃型のパーティである。だがしかしグランドが修行中の今守り勝つ攻撃パターンにしている。
「ゲイル、よしてくれ、俺はそんな偉い存在じゃない」
と言っているがヨイショされて嬉しくない奴はいない。
「勇者パーティリーダーガリアルが何を言ってんだよ、勇者の名の下なら女の子お持ち帰り放題だろ」
「やめてキモい」
「はい・・・すいません」
Gを見る目でゲイルを睨み、こんな記憶忘れたいと思ったのか新たな被害者が出てしまった。
「そう言えばガリアル。最近髪の毛黒くなってない?黒髪
くろげ
?」
「白髪みたいに言うな!・・・俺だって気にしてるんだ」
実際ガリアルも最近、自分の髪の毛が黒くなり始めている事を気にかけ、黒髪を見つけてはハサミで切ってなかった事にしているが、全て取り除けているわけではない。どうしても見落としがある。そして今日は迷宮に入ると言うことでウキウキしていたのかここ最近の日課である黒毛
くろげ
切りを忘れていた。
「あー、なんかごめん」
「謝るなら言うな!より惨めになる・・・」
「いいじゃないか、今の時代白髪じゃなくてシルバーヘアって言うらしいぞ、だからそれもゴールデンブラックって言ってればいつかそう認知されると思うぜ」
「虫だな」
1人おかしな奴がいたが触れようとはしない。
「さてよ〜ガリアルが黒髪なった事は置いといてよ迷宮はどこまで続くんだろうな」
そんなゲイルを無視し、ロッシュが呟く
「置いとくってなんだよ。大事なら話だろ。」
「お前さん、触れられて欲しくないんだろ」
「・・・そ、それはそうだが」
「なら話変えようぜ」
触れらるのは嫌だけど触れられないのもなんかヤダ。というわけである。重症みたいだ。もっと素直になれ!。
●
その後も勇者パーティのルーティン化している、朝ギルドまでの道での無駄話を続けながら歩いていくと朝の空に一際大きい、赤を基調としたギルドが映える。
だがそこはいつもの閑散とした朝と違く、朝というのに熱気が溢れている。
『買っていけ!寄っていけ!』
『勇者饅頭!勇者等身大パネル!』
『勇者も絶賛!勇者コーヒー!安いよ!美味いよ!今買わなきゃ時代に乗り遅れるよ!』
『おいっ!!そこ!何してる!出禁にしただろ!』
その商人は店を捨て急いで逃げるがギルド職員がとっ捕まえた。
「殺せ!」
「何を馬鹿なことを」
どこからか情報を聞きつけた市民とそれをカモにしようと粗悪品を売りまくる悪徳商人がギルド職員につまみ出されている。もちろんその中には善良な商人も多数いる。その中には勇者ガリアルが贔屓にしている店もきちんと商売をしている。
「あっ!勇者様だわ!」
勇者パーティがゆっくりと手を振りながら歩いてくるの気づいた誰かの黄色い声が聞こえる。
それに連鎖するように黄色い声援はそこら中から聞こえ、地面が震えると錯覚させられる。
「勇者様〜!こっち向いて!・・・きゃぁあ!!見てくれたらもう死ねる!」
そう叫んだ少女は糸が切れたように倒れる。
「シェリー?大丈夫?」
連れの同年代の子が介抱する。
「もう。死ねる・・・」
勇者パーティの回復魔術師エリーがふと横を見るとガリアルの姿がなく。キョロキョロと見渡すと、勇者ガリアルは倒れた女の子に駆け寄る。
「はぁ、生粋の人たらしが・・・」
「なんであいつだけ」
「誰にでもベタベタするからねガリアルは」
勇者パーティ3人のため息が重なる。
「大丈夫かい。君。立てる?」
「はぁ〜、バタっ」
一度は起き上がったシェリーだったが、またすぐに倒れる。
「シェリー?」
「彼女、シェリーって言うのか」
ガリアルはそう呟くとそっとシェリーの横に跪き、シェリーのき茶色いをそっと優しく髪を撫でる。
「おはようシェリー、」
「・・・勇者、様?」
「やっと起きたか、シェリー。シェリーはお寝坊さんだな」
「あ〜。勇者様が、私を抱いてる・・・」
「何、寝言を言ってんだい、早く起きないと・・・」
ガリアルはそう呟くとゆっくり腰を支えてた右手を彼女の頬は滑らせる。
「え、ゆ・・ゆ、ゆ、勇者様の指?」
「起きた?ほら、立って」
「は、はい」
ガリアルはシェリーの背中を押し上げ立ち上がる。と彼女の茶色い髪か腹ふわっと靡く。
お姫様抱っこである。
『『きゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!!』』
過去一のレディー達からの黄色い声援はが全方位から攻めてくるお陰でシェリーはミニスカートのことを忘れており、黄色いパンツをロッシュがじっと見ている。
「何見てるのよ」
「え、エ、エリーこれは違う、断じて違う。違うんだ、誤解だ、そのだな。あれだ変な不届き者がいないか俺が見張ってたんだ。」
「不届き者ならそこにいるじゃない」
「そ、そうだ!早く捕まえないと!」
「あんただよ!」
エリーのゴミを見る目が炸裂する。がその声は2人以外には全く聞こえてない。先ほどから全くと言っていいほど黄色い声援が止む気配はなく、さらに助長しているように感じられる。がその時
一際よく通る、勇者ガリアルがよく知っている声がこの場の空気を変える。
「ガリアル!!油売らない!」
エリーが怒り出した。『私にはそんな態度取らないのに』と言いたげだ。まぁそんな態度取られても困ると内心思っている。
「ごめんねシェリー。もう行かないなと」
そう言い立ち去ろうとする勇者ガリアルの背中にか細い声がかけられる。
「・・・ゆ、勇者様。」
「なんだい?」
「こ、これを!」
シェリーが押し付けるようにして渡したのはパンツではなく、赤いお守りであった。表面には刺繍をしたのか『お守り』とよれた字で書いてある。よく見ると指にはプっとした後が何ヶ所もある。これこそがこの子が頑張った証拠である。
「ありがとう、大切にするよ、これさえあれば僕たちは99階層を攻略でから。」
ガリアルは受け取ったお守りをぎゅっと握り、その場を後にする。
「・・・頑張って!」
静かになった広場で彼女の声耳を刺激し、ガリアルは手を挙げ答える。
「僕たちは!迷宮99階層を攻略する!そして必ずこの場に戻ってくる!」
諸々の感情が混ざり込んだ歓声とも黄色い声援とも取れない、声が先ほどよりもさらに、さらにこの場を支配する。
●
勇者パーティはその後も声援に包まれながら余韻に浸るかのようにゆっくりとギルドに向かうとそこでも出迎えがされる。
「朝から盛大な登場感謝します。」
いや、出迎えはされなかった。暗に朝から五月蝿いと苦情が来てしまった。
出迎えたのは勇者パーティ専用カウンターの
受付嬢、ニコリであった。普段、朝の始まりが12時だと思っている。
「出迎えありがとうニコリ」
「チッ、女誑しが」
「まぁいいやニコリ、昨日の件お願いできる?」
「いつも通りこちらに触れてください。」
ニコラが差し出したのは丸い水晶である。
勇者パーティは3ヶ月前98階層を攻略したおかげで勇者パーティにのみ使用可能な98階層と99階層を繋ぐ空間通称空路ノ間と呼ばれる白い部屋とテーブルと椅子が人数分そして黒い扉だけがある謎の空間がある。
冒険者登録をした冒険者はこの水晶に触れると自分が攻略した階層内なら好きに空路ノ間に移動できる。そして勇者パーティは西の全冒険者の中で勇者パーティは最奥に今、足を踏み入れようとしている。
「いつも思うが。何故こんな便利な者があるんだろうな、人間にとって都合が良すぎると思わない?」
「そうだな。ゲイル。だが、結局俺たちにはわからない、この迷宮は誰が作ったのか。それとも自然の産物なのか。もし人が作ったのなら何のために、もし人ではないなら何故こんな物ができたのか。俺たちにはわからない事が多すぎる。だから俺たち『凛牙』がより深くまで攻略をし未来の冒険者、勇気パーティに一つでも多くの情報を残す。」
ガリアルはそこで言葉を切るとグーにした拳を前に突き出す。
『いつか、誰かの為に、俺たちは進む。そうだろ皆んな』
いの一番にその拳にエリーの少し小さい拳が当てられる。
「そうね、そっちの方が面白そうだわ」
「えー、俺が死んだ後に明かされるのもなんかヤダな」
「お前はいつもそうだ。過去は未来へ未来はその先は進む」
「いつか!誰かのために」
『『誰かのために!』』
「行くぞ!」
その瞬間、凛牙のメンバー4人は白い光に包まれその場から姿を消す。
「御武運を」




