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第八話 僕と初めての遊園地

どこか暗い部屋。二人の男が密談をしている。

「で?私は結局なにをすればいいんですか?」

「なぁに。簡単なことだあいつらの邪魔をしてくればいい。」

「報酬は?」

「一日の所有権だ。もちろん必要な金は俺が出す。」

「ふむ。」

「お前にとって悪くない話だと思うが?」

「わかりました。やりましょうレッドさん!」

会議は続く・・・





日曜日、いつもなら特にやることもなく家で日向ぼっこにいそしむ僕だが、今日は珍しく僕らの住んでいる街の駅に来ていた。特にやることもなくボーっとしていると不意に声をかけられる。

「すいません。着てくる服を選んでいたら遅れてしまいました。待ちましたか?」

そんなふうに声をかけてきたのはジーンズに白いTシャツ、赤い帽子を被った美人さん。そう、彼女が今回の待ち合わせ相手である赤井舞火ちゃんである。

「いや、別に待ってないよ。今来たとこだから。」

本当は三十分くらい待ってたけどいきなり空気を悪くする必要はないだろう。

「それはよかったです!それじゃあ行きましょうか。」

そう言って電車に乗り込み僕もそれを追って電車に乗った。




そもそもの始まりは御主人様に妹である舞火ちゃんと出かけて来いとの御命令されたからなのだが、なんで舞火ちゃんは僕を誘ったんだろうか?と、考えた結果この前御主人様が迷惑をかけたからそのお詫びのつもりなんだろう。という結果に落ち着いた。

「どうしたんですか?わんこさん。悩んでいるような顔をして。もしかして…私と遊園地に行くの、嫌でしたか?」

「そんなことないよ。女の子に遊びに誘われて断る男なんていないよ。」

一部の変態を抜かしてね。

「そうじゃなくてさ。僕は今まで遊園地って行ったことないからどんなところなんだろうと思ってね。」

「そういうことでしたか。たしか最近オープしたばかりの遊園地で名前がたしか天国へヴンズへのドアーというらしいですよ?」

なにその不吉な名前。スタンド使いでもいるんだろうか。

「行ったことのある友達にどんなところか伺いましたら、死んだおばあちゃんにあった、と言って涙を流していましたよ?きっととても素晴らしいところなんでしょう!」

そういって目を輝かせてうっとりとしている。なんだろう、その話しを聞いてすごくいきたくなくなったんだけど・・・

「ふ、ふーん。どんな乗り物があるかわかる?」

「そこまでは聞きませんでした。面白みが無くなってしまうじゃないですか。」

「まぁ、たしかにそうだね。」

くそっ!なんの対策も打てないのか・・・

そんな軽い絶望感に捕らわれているといつの間にか降りる駅まで来ていた。

「ここから徒歩十五分くらいです。行きましょう。」

そう言って僕の手を取り歩き始める舞火ちゃん。実は初めて女の子と手を繋いだんだけどそのことは黙っておいた方がいいんだろう。




天国に一番近い遊園地。ヘブンズドアーへようこそ!!そんなこれから入る人達を不安にさせるような謳い文句が入口にかかっている。そんな文字を見なかったことにして舞火ちゃんとを見る。

「何に乗ろうか?何か乗りたいものでもある?」

「待ってください、入り口に地図があったのでそれを見て決めましょう。」

なるほど、確かに何があるか分からないもんな。そうして地図の前に来たのだが・・・

「アトラクションの七割が絶叫マシンてどんな遊園地だよ・・・」

「あれ?わんこさん絶叫マシン苦手なんですか?」

「いや、乗ったことがないから自分でも分からないんだよ。とりあえず初めは絶叫マシン以外がいいかな。」

「じゃあメリーゴーランドがあるのでそれにしましょう!」

・・・高校二年生にもなってメリーゴーランドに乗るのはなんというか恥ずかしいがいきなり絶叫マシンには乗りたくないからな。

「うん、そうしようか舞火ちゃん。」




「ねぇ、舞火ちゃん。」

「なんですか?わんこさん。」

「僕は今まで一度も遊園地に来たことがないんだよ。」

「それはさっき聞きました。」

「それでもどんな乗り物があるかはテレビで見たり人から聞いてるんだ。」

「まぁ普通に生きていたらそれぐらいは知ってますね。」

「そのうえで言わせてもらうよ?これはメリーゴーランドじゃない。」

「え?ちゃんと馬が付いていて回っていたじゃないですか。」

確かに、ちゃんと馬が付いていてクルクル回っていたのだが・・・

「僕の知っているメリーゴーランドには、セーフティバーなんて付いてなかった。」

*セーフティバー=なんか体をガチャンてするやつ。安全装置。

「きっと間違った知識を身に着けていたんですよ。大丈夫です!私は笑ったりなんかしませんから。」

そうなのか?僕が間違っていたのか?

「でも僕のイメージだと子供の乗り物っていうイメージがあったんだけど?」

「ちゃんと子供も乗っていたじゃないですか。」

「メリーゴーランドから降りてきて笑顔ならまだしもあんなに恐怖に歪んだ顔はテレビでしてなかったよ?」

「わんこさん、テレビの事を全て真に受けてはいけませんよ?」

・・・・・・本当にそうなのか?

「あっ!動きますよ。」

そこで会話を中断しこれから来るであろう出来事に僕は覚悟を決めていた・・・

結果からいうと僕はどうやら気絶してしまったらしく起きるとベンチで舞火ちゃんに膝枕されていた。もう・・・死んでもいいかもしれない。

「あっ、起きたんですね。もぅ、びっくりしましたよ。アトラクションが終わったらわんこさん口から泡吹いてたんですから。」

「・・・そうなんだ?」

まったく記憶にない。たしか回り始めて、景色が歪んで、上も下も分からなくなって、視界がブラックアウトして、

「くっ!?駄目だ、思い出せない。」

「わんこさんがそこまで乗り物に弱いと思いませんでした。」

「ごめんね?舞火ちゃん。時間とっちゃったね。」

「気にしないでください。寝ているわんこさんを初めて見れましたし。」

うわぁ、なんか寝顔を人に見られるのって恥ずかしいな。

「それよりもうそろそろお昼です。御飯でも食べましょう?」

「そうしようか。」

さて、どこかに食べる場所でも・・・なんだ、目の前にレストランがあるじゃないか。

「じゃあそこで食べようか。」

そういって中に入り席に着く。

「何にするか決めた?」

「私はこのドリアにします。」

そういって店員さんを呼ぶ。

「いらっしゃいませ!何にしますか?わんこさん!」

・・・・・・なんで変態ルカがいるんだよ!!

「おい。貴様こんなところで何をしてるんだ?」

「え?あの、私あなたのことなんか知りません!新手のナンパですか?やめてください!仕事中なんで!」

「そんなに自分のセリフにたくさんビックリマーク付ける奴が他に沢山いて堪るか!第一さっき僕のあだ名いっただろう!!それになんでお前女物の制服着てんだよ!なぜ誰も止めなかった!?」

「変な言いがかりをつけないでくださいよ!女の子なんだから当たり前じゃないですか!これ以上変な事言ったら出て行ってもらいますよ?」

「わんこさん・・・さっきのメリーゴーランドのショックでおかしくなってしまったんですか?」

「くっ!?同情されてる!?僕は間違っていないはずなのに!!」

「すいません、ウェートレスさん。彼さっき乗ったメリーゴーランドのせいで少し混乱してまして。」

「いえいえいいんですよ!それよりも御注文お伺いいたします。」

「くそぅ、僕が合っているはずなのに・・・とりあえず、このシーフードドリアとハンバーグお願いします。」

「かしこまりました!ハンバーグの方、焼き加減ですが本日残念な事にハンバーグ担当がいないので超ウェルダンしか作れませんが!」

「ハンバーグ担当って何!?それに超ウェルダンってもはや炭だろ!」

「炭なんかじゃありません!ただ普通のハンバーグより食べる部分がかなり少ないだけです!!」

「それはもう炭だよ!!じゃあラーメンでいいよ!」

「かしこまりました!しばらくお待ちください!」

そういって歩いていく瑠歌。

「どうしたんですか?わんこさん目が覚めてから少し変ですよ?」

「いや、ごめんね?少し知り合いに似てたからさ。」

待つこと十分・・・

「お待たせいたしました!シーフードドリアとティエンチーでございます!」

「あきらかにミスってる!あり得ないだろ間違え的に!つーかこれ焼いたカエルじゃねーか!!」

「お客様。ティエンチーでございます!」

「いや名前なんかどうでもいいよ!これ食えってこと!?」

「がんばれがんばれできるできる絶対できるって気持ちの問題だ!」

「たしかに気持ちの問題だけど!仕事しっかりしろよ!?」

「もぅ!わんこさんは注文が多いですね!そんなに私を困らせて楽しいですか!」

「お前もう隠す気ないだろ!」

結局、僕は何も食べずにレストランを後にした。




「ずいぶんドジっ子なウェートレスさんでしたね?」

「あれをドジっ子で済ませられるわけがないだろう。あきらかな悪意があったぞ。」

「まぁそれはそれとしてこの後どうします?絶叫系の乗り物はわんこさん駄目そうですし・・・お化け屋敷にしますか?」

「お化け屋敷なら多分大丈夫だと思うからそこにしようか。」

そして、お化け屋敷に来た。どうやら自分たちで中を探索して出口を探す物のようだ。

「ふふふ、ここでお前たちも亡霊となって彷徨うがいい。」

スタッフの人が熱演している。演技がうまいなぁ、そうじゃなければこんなところで働けないだろうけど。そう思ってしばらく聞いていると不意にブザーが鳴り響きアナウンスが流れてきた。

「バイオハザード発生。バイオハザード発生。職員はすぐに避難してください。」

バイオハザード!?お化け屋敷じゃないじゃん!いや、ある意味お化け(モンスター)だけど!ここはスペ○サー館!?

「えっ!?ちょっ!?こんなの台本に無かったぞ!!」

スタッフの人も知らなかったんだ!?

「わくわくしますね!わんこさん。」

なんでこんな状態でも楽しめるの?舞火ちゃんは。

「くっ!こんな仕事やってられるか!俺はもうこの職場を辞めるぞ!」

スタッフさんそれ死亡フラグです。そしてスタッフさんが扉を開けた瞬間、ゾンビが現れスタッフさんに噛みついた。

「ぐぁ!?クソっ!そういうことかー!!」

なんなの!?スタッフの人は何を知っていたの?関係者だったの?

「ここはもう危険です。移動しましょう!わんこさん。」

冷静すぎるだろ舞火ちゃん。でもなんか頼りになるな。

その後いろんなモンスターに襲われながらもなんとか謎を解き、出口まで来た。

「まさかあれをああするとああなるなんて思いませんでしたね。」

「うん。僕もあのボタンを押すと部屋をああなるとは思いもしなかったよ。」

そんな話しをしていたら最初のスタッフさんがいた。

「おめでとう!ここがゴールだよ。君たちが初めてだよ?このアトラクションを最後までゴールできたのは。みんな途中で捕まって再起不能リタイアだからね。」

どんなアトラクションだよ。

「商品をあげよう。ハイ、おにいさんの大事な金の玉だよ。わかってるね?おにいさんの金の玉だからね?」

別にゴールデンボールブリッジとかクリアしてないから・・・





「ふぅ、疲れたなぁ。」

「わたしもさすがに疲れました。でも、とっても楽しかったです!」

「僕も楽しかったよ。」

「また私と一緒に遊んでくれますか?」

「特に予定がない日だったらいつでもいいよ?」

そう言うと舞火ちゃんはとても嬉しそうに笑っていた。それよりも・・・

「おい、瑠歌いるんだろう?」

「あっちゃ〜。ばれてましたか!いつからですか?」

「なんとなく最初から誰かがついてくるような気がしてたんだよ。御主人様の事だからお前に頼む事も分かってたし・・・」

「えっ!お兄様が?」

「うん!赤井君に頼まれてね!君たちの邪魔・・・ゴフン監視を頼まれてね」

「お兄様・・・」

うわぁ、舞火ちゃんがボスモードになってる・・・

「それよりももう帰るんでしょう?一緒に帰りましょう!」

「舞火ちゃんはそれでいい?」

「ぶつぶつ・・・」

聞いてないなこれは。

「まぁ、いいんじゃない?」

そういって終始舞火ちゃんは俯いて、瑠歌は僕に抱きつきながら、僕は御主人様が死なないように祈りながら家路に着いた・・・




後日談、御主人様は殺意の波動に目覚めた舞火ちゃんにぼこられ二カ月の病院生活を余儀なくされた。

一応解説しておきますと金の玉とは世界中で大ヒットしたポケモ○のパロディでハナダの橋を最後まで行くと最後に高値で売れる金の玉というアイテムをくれるおじさんのセリフです。

・・・下ネタじゃないんだよ?

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