第七話 僕らの行動 そして義勇軍
僕の住む街は小さい自営業の医院はたくさんあるのだが、大きな怪我の治療ができるような病院はたった一つしかないというとても不便なところで、今僕は平日だというのにそこに来ている。
「失礼します。」
そういって中に入る、個室の病室の中にたった一つしかないベッドに横になりよわよわしい笑顔を向けてくる女性の姿。
「おいおい、どうしたんだい?今日は平日だろう?学校をさぼってこんなところにくるなんて、わんこくんは悪い人だね?」
「うるせぇ、怪我の具合は?」
「ああ・・・左腕を切断されてね?お医者さんによるとどうやら切れ味が良すぎたのが幸いしたらしくてね?リハビリは必要だけどくっついたよ。まぁ、部活はもうできそうにないかな?」
「・・・そっか。」
「おいおい。なんて顔をしているんだい?通り魔に襲われて生きて帰ってきた第一号なんだよ?テレビにも出れたし。なんにも気にすることなんかないさ?しばらくしたらまた学校で会えるよ?」
「そうだな。」
それからお互いに無言になる・・・
「なぁ」
「犯人なら知らないよ?顔なんか見る暇もなかったんだから。」
「まだなんにも言ってないだろ?」
「まったくきみは本当に犬のように仲間思いだねぇ?そんなことなんかしなくていいよ?ただきみはいつものように学校でしばらくいなくなるぼくの居場所を残しておいてくれるだけでいいんだからね?」
「・・・なにを言ってんだよ?お前の居場所は僕たちが絶対に残しておくよ。僕は犬だからね、自分の匂いが付いたものは絶対になくさないよ。」
その言葉を発した瞬間に狙い澄ましたかのようなタイミングで看護師が入ってきて、面会時間の終わりを告げた・・・
「おい、わんこ今日の夜は暇か?」
学校に遅刻してきてすでに昼休みになっている教室で御主人様が言ってきた。
「どうしたんですか?いきなり。今日の夜なら別に空いてますけど。」
「そうか、ちょうどいい。瑠歌と翔も誘っておけ。」
「どうしたんですか?明日も学校があるのにお泊まり会なんて、まったくこれだから最近の若者は。」
「ブっ飛ばされたいのか?お前は。いいから来い。説明はうちに来たらする。」
「はぁ。御主人様に夜に呼び出されていいことがあったためしがないんですけど。」
「うるせぇ。なんだ?御主人様の命令に逆らうのか?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。しっかり夜に彼らを連れて伺いますとも。」
「それでいいんだよ、わんこ。」
そういってこの間からやっている携帯ゲーム機を取り出しやり始める。はぁ・・・いつも御主人様はいきなり物事を決めてそれにいつも僕が巻き込まれる。まぁいいだろう、今回の事はおそらく僕にとっても悪いことじゃないだろうから・・・とりあえず言われたメンバーを確保しなければ。
「おーい!瑠歌!」
女子と席をくっつけて楽しそうに弁当を食べている瑠歌を呼ぶ。
「うわわ!なんということでしょう!わんこさんから声をかけてくれるなんて!!今日という日は私の中で記念日になりました!」
「はいはい、わかったから落ち着け。用件を伝えよう。今夜空いてるか?」
その瞬間、瑠歌の顔が一気に赤く染まる。こいつ、なんか勘違いしてるな。
「えっ!?あの私の気持ちに応えてくれるのは嬉しいんですが・・・こういうのはもうちょっと段階を踏んでですね・・・」
「なにを勘違いしてるか知らんが、御主人様の家に夜にいくぞ。お前と翔を連れてくるように命令された。」
「はぁ…なんだそういう事ですか。わかりました。夜にわんこさんの家に迎えにいきます。」
「随分あっさり承諾したな?何をするかもわからないのに。」
「私がわんこさんの頼みを断るわけがないじゃないですか!わんこさんの頼みなら揺りかごから墓場までです!!」
「普通火の中水の中だろうが!さりげなく自分の願望を入れんな!!」
とりあえず、一人目はなんとかなった。まぁこいつは初めから大丈夫だと思っていたが。さて問題は翔だ。
「おーい、翔くん。今夜は空いてるかな?」
そういうと一人で弁当を食べていた翔がびくびくしている。こいつ・・・一緒に弁当を食べる友達もいないのか。僕も人の事言えないけど・・・
「ぼっ僕?ぼっ僕は別になんにも予定はないけど・・・いっ行かなきゃダメかな!?」
こいつ話し盗み聞きしてたな?
「嫌なら無理やり連れていくことになるが?」
「うぅ〜、わっ分かったよぅ、そっそのかわり怖いから迎えにきてね?ぜっ絶対だよ!?」
「ああ、分かってるから、じゃあ頼むよ?」
ふぅ、とりあえずなんとかなったな。さてさてどうなることやら・・・
「さて、今日君たちにこんな夜遅くに集まってもらったのは今回の通り魔事件のことについてだ。」
そういってテーブルの上に立ち両手を広げる御主人様。
「ひぃっ!?だっだから僕きたくなかったんだよ〜!」
そういって布団を被っているチキンハート。
「我らが友!稲光が襲われた!なぁぜだ!?」
「そんなこと通り魔さんに聞かなきゃわかりませんよぅ!」
途中で寄ったコンビニで買ったジュースを飲みながら答える変態。
「立てよ!わが仲間たちよ!!」
「とりあえず何のために僕らを集めたか説明してください。御主人様。」
あぁ、眠い。今日は朝早かったからなぁ。
「さて、前置きはここまでだ。お前らも知っているだろうが稲光が通り魔に襲われた。今は病院で治療中で学校には来れないし、部活ももうできない。」
その言葉で部屋が重い沈黙に包まれる。
「お前たちに一つ聞く。もしも、もしも仮に目の前に通り魔がいたとする。お前たちはどうしたい?」
「骨まで燃やす!」
「不幸にします!」
「にっ二度と動けなくする!」
「今言った事に嘘はないな?」
そういって僕らを見渡す御主人様。反論がでないことに満足したように笑い話し始める。
「街中の猫たちに話しを聞いて通り魔の場所もすでに分かっている。しかし、俺にできるのは猫と話すことだけだ。」
そういって悔しそうにうつむく御主人様。
「無理にとは言わない!いや!言えない!嫌なら帰ってくれてもいい!でもっもし俺と同じ気持ちが少しでもあるなら!力を貸してほしい!」
・・・誰も声をあげない。当たり前だ、下手したら死ぬんだから。そういうのは警察にでも任せておけばいい。でも・・・
「はやく場所を言ってくださいよ御主人様。僕たちはそんなことになるんだろうと最初からうすうす感づいていたんですから。嫌なら誰も来ませんよ。」
「別に私はどうでもいいんですけど、わんこさんが行くならそこが私の目的地です!」
「うぅ、やっやっぱりこうなるんだ、でっでもみんなが行くんなら大丈夫だよね?そっそれに早くなんとかしないと、こっ怖くて夜寝れないよ。」
変態でも臆病者でも犬でも・・・仲間をやられて黙っていられるほど、僕たちは大人なんかじゃなかった。
「・・・ありがとな。」
「それにしても御主人様が積極的に面倒事に突っ込むなんて、明日の天気はラグナロクですかね?」
「馬鹿野郎。そんな簡単に世界は終わらねぇよ。それに猫っていうのは意外と義理がたいんだよ、なによりも・・・俺の縄張りで好き勝手されていい加減限界だ。」
あぁ、分かる・・・分かるぞ、間違いなく俺は強くなっている。最初はペーパーナイフくらいだった。それが今じゃ大剣だ。もっと、もっともっと斬ればきっと俺を邪魔するやつなんかいなくなる。さぁ、行こうか。次の相手を探しに。
「おいあんた、今ここらじゃ通り魔が出てとっても危ないらしいから早く帰った方がいいぞ?それとも・・・あんたが噂の通り魔さんかな?」
っ!?
「おっと動くなよ?あんたの周りにゃ俺の部下があんたを狙ってるんだぜ?」
そう言われて周りを見る。自分を中心に光る眼。目を凝らしてみてみるとそこには世界中から集めてきたのではないかと疑いたくなるような数の・・・
猫。ネコ。ねこ。ねこねこねこねこねこねこねこねこねこ!
「俺の王国から連れてきた兵士たち、総勢312匹!さぁ?どうする?通り魔さん?」
「く、はは、はははははは!!こんなネコ共で俺を追い詰めたつもりか?はっ、所詮は低級の守護だな!こんなんで俺を止めるつもりか?俺の守護は聖ゲオルギアス。ドラゴン退治のスペシャリスト!そして!!」
何もないところから大剣を取り出す。
「これが俺の能力!ドラゴンキラーのアスカロン!!たかだかネコ風情が勝てると思ってんのか?馬鹿が!!」
「はぁ。馬鹿はお前の方だよ。闘う前から自分の能力をばらす阿呆がどこにいる?」
「あんまり虐めちゃだめですよぅ。」
「御主人様変なところでドSなんですから。」
「ひっひぃ!?とっ通り魔がすぐ目の前に!?ねっねぇ!はっ早くなんとかしようよぅ!?」
「くっ!?貴様、仲間がいたのか!?」
「そんなことより、聞かせろよ。なんでこんなことをした?」
「はっ!こんなことだと?お前らも知っているだろう。守護は守護になったものと同じことをすればするだけ強くなる!みろ、この剣を。斬れば斬るほど強くなるんだ!このままいけばこの世界で俺を邪魔する人間なんて」
「あぁ、もういい。興味が失せた。とりあえず死ねよ。お前。」
「くっ!?このクソガキがぁ!!!」
なにも考えずに一直線にこちらに向かってきた。さすが御主人様、卑怯な手は得意だなぁ。
「私たちに最強の幸運を!あの人に最恐の不幸を!」
その瞬間、通り魔がいきなり転ぶ。
「ぐぁ!いっいきなり足が攣った!?」
そして、転んだ瞬間に持っていた大剣が自らの肩を貫く。
「がぁ!!?」
なんというか・・・本当に瑠歌と一緒にいたらいつか殺されるんじゃないだろうか?
「おい、今だ翔。動きを止めろ。」
「はっはいぃ!!」
「くっ!?か、体が動かん!」
うわぁ〜ひどいことするなぁ。ま、微塵も同情なんかしないけど。
「わんこ、燃やせ!」
「わかりました、御主人様。焼き加減は?」
「ミディアムだ。」
「かしこまりました。」
夜の街に響く叫び声、その後警察に連絡をしておいた。当然名前を伏せて。
次の日、テレビで通り魔が捕まった事が報道されていたが、その功労者である僕たちはテストがあることを忘れていたため、みんなで仲良く赤点を取ったのだった。
次回からはまたコメディをお送りいたします