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第十二話 僕らの帰り道

人生で今まで本気で困った事なんて腐るほどあった。

小学校でクラスメートの人間と喧嘩をしてボコボコにされ、家に帰って親に青痣だらけの体をどう説明するか考えた時。

中学校を卒業する時に進路をどうするか迷った時。

初めて母さんの自傷行為未遂を目の当たりにした時。

瑠歌と初めて出会いストーキングされてしかも男だと知った時。

そのどれもが些細なことだと思えるくらいに今僕は困っている。その原因は元御主人様であるカロンがあまりにも考え無しに行動を起こしてきたことである。

「まさかこんなに早く実力行使をしてくるとは思ってなかったよ。いくらカロンでもこんな後処理がめんどくさいことをするとは考えてなかったし…」

なんかもう溜息しかでないなぁ。

「実力行使なんかしない。俺は説得しにきたんだ。戻ってきてほしいんだ、というか戻ってこないと話しにならない。お前と主が再会してから主はずっとうわの空なんだ。習い事はさぼるわ組織の会議はドタキャンするわ料理が不味いと言って専属の料理長を勝手に解雇するわいきなり泣き出すわで大変なんだぞ?主のそんな姿を見て組織を抜ける者まで出てくる始末だ。」

「………なんというか、御愁傷様?」

つーかなんでいきなりそんなことになってんだよ。

その話しを聞いてなんだか相手が哀れになってきた。自分が仕える人間がいきなりそんなになってしまったらそりゃ馬鹿らしくなって抜けたくなる気持ちも解る。

「そういう気持ちがあるのなら戻って来てくれ。頼む、このとおりだ!」

そう言ってコンクリートの地面で自分の額を摩り下ろすんじゃないかという風に土下座をし始めた目の前のいい年したおっさんを前にしてあまりの惨めさに肯定の返事をしようとしてぎりぎりのところで踏みとどまる。

「返事ならあいつ自身にもうしたしもう一度考えてくれと言われても答えはノーだよ。」

「そうか…ここまでして駄目なら仕方ないな。プランBだ。実はお前と近しい仲の人間を調べてそいつらの所にも人材を派遣してあるんだが?」

「ちなみに誰の所に送った?」

「お前の両親の所に一人、赤井邸に一人、教会に一人、そしてお前と同じように帰り道での待ち伏せに二人送ってある。安心しろ危害を加えるようには言ってない。拉致を頼んだだけだからな殺してしまったりしては人質の意味を失ってしまう。もちろん一応俺も死なない程度に力づくでお前を拉致るが。」

「う~ん。どうだろうな、勝てるかなぁ。」

「自分の心配だけしたらどうなんだ?俺たちの組織じゃ序列で実力が分かれるわけではないんだぞ?一応言っておくが俺は凄く強い。」

なんというか、自分で強いっていう人初めて見たな。恥ずかしくないんだろうか?

「いやいや、僕は自分の心配しかしてないんだけど?正直勝てる気がまったくしないし…」

「犬っていうのは義理がたい生き物だと思っていたんだがな、自分の事しか考えていないとは主も何故こんな男を連れ戻したがるんだか。」

「下手な人間よりずっと強いんだよ、僕の周りの人たちはさ。あっ!でもローラさんの事まだよく知らないからどうなるんだろう?」

やばい、滅茶苦茶心配になってきた。

「それなりには信頼しているということか。いいだろう、失敗した者は解雇することにしよう。それではそろそろ行かせてもらうぞ?」

「勘弁してほしいんだけどね。」



                   住宅街道路

                  僕VS超渓 京



「今日はわんこくん帰ってくるのが随分遅いねぇ。また赤井くんの所で遊んでるのかな?そろそろ夜遊びはやめるように注意とかした方がいいのかなぁ。海さんはどう思う?」

「確かにいけないことだけど私たちが言っても説得力ないと思わない?」

「う~ん、そうなんだけどねぇ。」

折角今日の夕ご飯わんこくんの好きなものを作ったのに冷めちゃうなぁ。

そんなことを考えていたら不意に呼び鈴を鳴らす音が聞こえてきた。

「やばっ!きっと編集長が原稿を取りに押しかけてきたんだわ!誠治くん出てくれない?」

「はい、わかりました。奥様。」

こんな夜に人が訪ねてくるなんて随分珍しいこともあったもんだなぁ。

新聞とかの勧誘とかだったら嫌だなぁとか思いながら玄関の扉を開ける。

「はい、どちらさまでしょう?」

「初めまして、私床鍋とこなべ 優実ゆみと申します。わんこくんのお宅はこちらで合ってますでしょうか?」

「確かに合っていますが何か御用でしょうか?生憎塾や家庭教師なら間に合ってるんですけど。」

「いえ、そういうわけではないんです。少しお時間よろしいでしょうか?二、三日程身柄をお預かりしたいのですけれど。」

「は?」

また面倒事を引っ張り込んできたな、わんこくんはいつもそうなんだよ。

「海さ~ん。僕わんこくんの所に行ってくるからお客さんの相手しててくれる~?」

「………編集長じゃない?」

「ん~、なんかわんこくんがまたなんか厄介なことしてるみたいだから止めてくるね。」

「わかりました。わんちゃんの方は任せたわよ?」

「アイアイサ~」

適当に返事を返して家を出る。

まぁ、海さんの事だし万が一にも怪我をすることはないだろう・・・

「あーあ、一人逃がしちゃいました。でも一人捕まえておけば大丈夫ですよね。それじゃあ身柄を拘束させてもらいます。」

「あ?何ほざいてんだ?嫌だね。私はまだ原稿が終わってないんだ。早く終わらせないといけないから帰ってくれない?」

「キャラ変わってませんか?それとあんまり舐めた態度取ってると実力行使で動けなくなってもらいますよ?」

「私が優しく接してやるのは家族とその周りの人間だけだ。見も知らないあんたに優しくしてやる義理はないね。それに私に怪我をさせる?面白いじゃないか!もしできたなら今日という日は歴史に残るぞ!」



                犬飼家玄関前

              犬飼 海VS床鍋 優実



はぁ、わんこさんがまさかラブレターを貰っていただなんて想像もしていませんでした。

どうしましょう。ライバルは早めに潰しておいた方が後々楽ですよね。

そこまで考えてふと前を見るとすぐ目の前に知らない男性が立っていた。

「恋結 瑠歌さんだよね?俺、菰斑こもぶち 公則きみのりっていうんだけど、この後暇かな?できれば付き合ってほしいんだけど。」

「すいません。私には心に決めた人がいますので他を当たってください。」

「ちっ。めんどくっせぇなぁ。いいから来いって言ってんだよ!ぶっ殺すぞ?」

いきなり対応が豹変したことに一瞬面食らったけどどうせまたいつものナンパだろうと思いなおした。

またいつものやり方で適当にあしらって帰ろう!



                商店街喫茶店「アバチャ」前

                 恋結 瑠歌VS菰斑 公則



「はぁ、なんだか赤井君の家に遊びに行くと碌な目にあわないなぁ。」

たった一人で暗い夜道を歩くのはすごく怖かったけどさすがに高校二年生にもなって一人で帰るのが怖いから送ってくださいなんて言えないからなぁ。

空を見上げるとたくさんの星と満月が綺麗に光っていた。

「うわぁ!綺麗だな…そうだ!愛を誘って一緒に月見でもしよう。さすがに十五夜ほど綺麗じゃないけど愛だったら愚痴も嫌な顔しないで聞いてくれるし安心するもんね!」

「愛っていうのは恋人の名前かな?いいねぇ!青春してるねぇ!私の高校時代じゃ体験してないようなドキドキするストロベリーな感じがぷんぷんするじゃないか!あ~妬ましいなぁ。」

びくっとした後声の聞こえてきた方を見てみると電柱の上に女性が立っていた。

「だっ誰ですか?僕に何か用があるんですか?かっかつあげなら有り金全部出しますんで勘弁してください!…後何でそんなところにいるんでしょうか?」

「ん?私か?ふっふ~ん、いいだろう特別に教えてやろう!私の名前は観遣みつかい 嬰螺えいらだ。そして、何故電柱の上にいたのかなんてとても簡単な事だよ?その方が格好いいからに決まっているじゃないか!」

そう言いながら電柱を這って降りてくる姿はとても格好いいとは言えないものだが…

「時に君は大空翔で合っているよね?もし違ったのならまた私はこれの上に登らなくてはいけないから凄く疲れるからできれば合っていて欲しいんだが…」

「え~と、はい。僕が大空翔ですけど…」

「おお!そうかそうか。君をずっと待っていたんだよ!三日ほど私と行動を共にして欲しいんだ。少し仕事の関係で君が必要なんだよ。大丈夫大丈夫!何も怖いことなんかないさ。」

その言葉を聞き終わる前にダッシュで逃走を開始する。

さすがにあれはヤバい。

「うん?逃げるのかい?まあいいや、力づくでなんとかできるだろう。弱そうだし…」

酷い発言をしながら追いかける嬰螺。

「ひぃ!なんで追いかけてくるんだよ!?もう嫌だ!わんこくん達と一緒にいるといつもこんな感じだもん!」



                住宅街大空家近辺

               大空 翔VS観遣 嬰螺



赤井家から戻った後みんなで夕飯を食べて教会の掃除をしようと思いホールの方に行くとまだ男性が一人物珍しそうに教会内を見まわしていた。

「あら、こんな時間に教会にいるだなんて。なにか教会に御用かな?懺悔なら神父様をお呼びしますしもしも改宗するのだったら喜んで洗礼しますが?」

「いやそういうわけではないんだが、実はここに住んでいる人に用事があってな。ここにローラというシスターが居ると聞いてきたんだ。会わせてもらえないだろうか?」

「ローラというのは私だが?私に用事とはまた珍しい人もいたもんだね。それよりも名前を聞かせてもらおうか。」

「すまない。礼儀に欠けたな、俺の名前はみなもと あきらという。少し時間を頂けるかな?俺と一緒にしばらく行方不明になってもらいたいんだが…」

言いにくそうに頬を掻く。

「断る。知らない人について言ったらダメと神父様に小さいころから教えられているからな。それに私はこれから教会の掃除をしなければならないんだ。用事が済んだのなら帰ってもらえるとありがたいんだが?」

それに対して、シッシッと手を振りながら言い返す。

「まぁ、それが当然の反応だろうな。仕方ない、実力行使しかないか。痛い思いをしても恨むなよ。」

そう言って構える章。

「やれやれ、すぐに暴力か。まぁいいか。異教徒のようだし一般人でも無さそうだ。少しくらい喧嘩をしても神父様も主も許してくれるだろう。それに…今日は綺麗な満月だ。体が疼いて仕方ないからな、運動がわりに調度いいだろう。」

…………本当に彼女は聖職者なのだろうか?



                  教会内ホール

         ローラ=カルンスタインVS源 章



わんこ達が帰りいつもの日課で屋敷にいるネコ達に夕飯をやろうと台車に大量の猫缶を乗せて庭に移動する御主人様こと智和。

「つーか普通人の家遊びに来たら帰る時後片付けくらいして帰るだろ。あいつらはいつもいつも俺一人にやらせやがって、読んだ本は出しっぱなしにするわテレビはつけっぱで帰るわやりたい放題なんだよなぁ。」

一人寂しく愚痴をこぼしながら庭の中心で群がってくるネコ達に猫缶の中身を与えていく。

なんというか、夜の暗闇の中で一人で大量のネコに餌をやる姿はとても気味の悪いものだ。

「それにしても元御主人様か…どんなやつなんだ?女って言ってたからなぁ…きっと美人だな。羨ましいことこの上ない。わんこのくせに。……あいつになりたいとは思わんが……」

わんこが聞いたら例え御主人様でもぶん殴られそうなことを言いながらネコの肉球をぷにぷにと弄っている。

「一度会ってみてぇな。きっと美人に違いない。」

「会わせてあげましょうか?」

そんな声が聞こえ、声のした方を見ると近くに知らない女性が立っている。

身長は大体百五十センチ弱の小柄なのに出るところは出ているなぜかゴスロり衣装を着ている女性。

「お嬢さん、人の家に勝手に入っちゃいけないってママに教わらなかったのかな?それに女の子が夜に外を出歩いちゃ危ないじゃないか。住所と電話番号を教えてごらん?ママに連絡して迎えに来てもらおうね。」

「ガキ扱いしないでください!私はこう見えても二十代のレディです。」

「ほう!ロリ属性は本当に実在していたのか。しかもロリ巨乳。いろんな女性と出会ってきたがお前のようなのは初めてだ。言い方を変えよう、何勝手に人の家の敷地内に入ってんだ?名前と年齢と職業を言え。」

「名前は恋結こいむすび 美玖みくで歳は二十一、現在は無職をしています。」

そういって胸を張る。

「なるほど。待ってろ今警察に電話するから。」

そう言いながら携帯電話を取り出して番号を押す。

「ちょ!?待ってください!話しぐらい聞いてくださいよ!?」

「黙れ!ニートが!いい年こいて何してんだお前は!就職活動くらいしろや!どんな教育受けてきたんだ?俺は女の子が好きだがさすがにニートを好きになれるほど酔狂じゃない。」

「ニートじゃありません!無職です。」

「だからニートだろが!言い方変えても同じなんだよ!まったくこいつは。それで話しって何だ?できるだけ早めに頼むぞ。いいかげん風呂入って寝たい。」

「わかりました。手短に言うとわんこさんの元御主人様にあなたを拉致って来いと言われたので拉致りに来ました。一緒に来てもらえませんか?」

「あのクソ犬。なにが実力行使はしてこないだ。いきなり来たじゃねーか。」

「答えを聞かせてください。」

「嫌だね。確かに一度会ってみたいと思ったが人の都合も考えずにいきなり拉致を命令してくるような奴に会いたいとは思わないね。ほら、さっさと帰ってくれ。」

「交渉は失敗ですか。プラン変更ですね、暴力を行使します!」

言いながらガラスの破片を周りにばら撒くロリ巨乳。

「やれやれ、結局そうなるのか。まぁいい、最近珍しいからな。我が赤井家に牙をむく馬鹿野郎を見るのは。さくさく来いよ、赤井家の力見せてやっから。」

懐からナイフを取り出す赤井 智和。



                 ネコ屋敷敷地内

               赤井 智和VS恋結 美玖

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