ギフト
列の先頭は見えない。そして、最後尾も今となっては遥か彼方だ。
目も眩む程の時間を牛歩の様な速度で進み、ようやく私の順番が来たようだ。
「それでは次の方」
係員に促され部屋へと入る。
「○○△△さん」
私の名前だ。
「はい」
「生年月日は○○☓☓年○月☓日ですね?」
「いえ、違います」
「あれっ!?○○☓☓年○月☓日では?もう1度ご確認を」
「違いますね」
「え、えっと・・・そちらに掛けて頂いて・・・少々お待ち下さい・・・」
「はい」
良く分からないが問題があったようで係の人が集まって書類をひっくり返しての確認作業を始めだした。
「申し訳ありませんが確認が済むまでそちらでお待ち下さい」
「分かりました」
気の遠くなる程の時間待ったのだ。そこから多少待たされた所で大差無い。
「それでは次の方」
次の順番の人が部屋に入って来た。
「○○△△さん」
私と同じ名前だ。
「おう」
「生年月日は○○☓☓年△△月○○日ですね?」
私と同じ生年月日だ。
「あ?違げーよ」
「あれっ!?あっ、もしかして・・・」
なるほど。私と次の人が同姓同名で書類が入れ替わっていたのか。
「お名前は○○△△さん」
「おう」
「生年月日は○○△△年☓☓月△△日ですか?」
「おう」
それから血液型や出身地に家族の名前など念入りに本人確認が続き。
「○○△△さんがお選び頂けるギフトはこちらになります」
それにしても・・・揉めている。
ポイントの安いギフトを複数選んだり、ポイントの高いギフト1つに絞ったりと選択肢が多いようで揉めに揉めている。
今後を左右するモノなのだからそれも仕方ない。
「あまりお勧め致しませんが本当にこの選択でよろしいですか?」
「おう」
「では、モテ期、絶倫、金運の3つをギフトとして付与させて頂きます」
「ふふふっ、これで俺もっ・・・」
「では、足元の矢印に沿って次の部屋にどうぞ」
「おうっ」
ようやく私と同姓同名の方が終わったようですね。
「すみません。お待たせ致しました」
「いえいえ、大丈夫ですよ。お気になさらず」
「ありがとうございます」
名前から始まりまた1から本人確認を済ませ、ようやくギフトを選ぶ段階になりました。
年甲斐もなく少し興奮しているかもしれません。
「○○△△さんがお選び頂けるギフトはこちらになります」
「ふむ・・・多すぎて目がシパシパしてしまいます・・・」
「ごゆっくりお選び頂いて結構ですので」
「こういったモノにあまり明るくないもので・・・お手数をお掛けして申し訳ないのですがお任せという訳にはいきませんか?」
「畏まりました」
係の人が書類と睨めっこをしながら電卓を叩き。出来上がったのか大きく息を吐いた。
「ふぅ~・・・お待たせ致しました」
「いえいえ、私が選んでいたらもっと時間が掛かったでしょうし。ありがとうございます」
書類に目を落とすと。
「地味に感じるかもしれないですけど、そういうのが1番大事なんですっ」
「ふむ、そういうものですか」
「はい」
「それではこれでお願いします」
「はい。では足元の矢印に沿って次の部屋にどうぞ」
「ありがとうございました」
次の部屋に入ると私と同姓同名の方が取り押さえられていた。
が、先程選んで貰ったギフトの効果かさして気にならなかった。
「スルースキル」「分相応」
この2つのギフトを貰い、次の人生がどれ程豊かになるのか楽しみです。