表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/18

抹茶ラテは偉大なり

読んでいただければ嬉しいです。

 カーテンの間から陽の光が差し込んでくる。そして俺は目を覚ます。ベッドのすぐ近くに置いてあるスマホで時間を確認すると9時丁度。

 また遅刻してしまったと思って制服を着ようとするが、今日が土曜日だと後から気づいた。俺は慌てていたのが馬鹿らしくなった。

 そもそも彩音も平日は6時半に起きてくれてちゃんと俺の事も起こしてくれる。起こしてない時点で休日だと気づかない俺の無能さに嫌気が差した。


「何やってんだよ俺……」


 流石に目が覚めてしまったので、俺は部屋を出てリビングに向かった。


「あら、おはよう」


「ああ、おはよう」


 既に彩音は起きていて、朝の挨拶をする。キッチンで何かを焼いている音がするので、朝食を作っているのだろう。


「もうすぐ出来るから顔洗ってきて」


「了解、ありがとう」


「気にしないで、当然だもの」


 彩音がお金に困っていて10万円を渡した日から、彩音は本当に朝早く起きてくれていた。お金を渡した次の日、5時半にアラームをセットしてしまう天然っぷりも発揮していたが、朝食は食べられたのでまだそっちの方がマシだ。

 

 俺はその日から朝食を楽しみにしている為、少し急いで顔を洗って歯を磨く。歯を磨き終わってリビングに戻ると、既に朝食が準備されていた。


「いただきます」


 今日の朝食は、出汁巻き卵、味噌汁、納豆、漬物のメニューになっている。俺は朝食に関しては同じメニューを食べたい派なので、毎朝このメニューとなっている。そして3日に1回だけ鮭の切身も食べる。

 俺は最初に味噌汁を啜る。この出汁と味噌の旨味が1日の始まりを感じさせる。そして出汁巻き卵を食べる。これが本当に美味い。彩音が最初に出汁巻き卵を作ってそれを食べた時は衝撃が走った。今までで食べた出汁巻き卵の中で一番美味かった。

 その事を伝えた時は、「……そう」とだけ言って反応はあまり無かったが、表情はしっかりと緩んでいた。

 今では毎朝出汁巻き卵を食べるのが楽しみになっている。

 

 その後も箸が進んだ俺はあっという間に朝食を食べ終えてしまった。


「ごちそうさまでした」


「……どうだった?」


「ああ、今日も美味かったぞ」


「……そう」


 今回も反応は薄いが、口元が緩んでいるので残念ながら嬉しそうにしているのが隠しきれていない。

 さっきからしてる事が夫婦みたいだなと思ってしまい、少し顔が熱くなる。

 

 朝食を食べた後、俺は熱くなった顔を冷蔵庫に冷やしている200mlのパックに入っている抹茶ラテを、ソファーでテレビを見ながら飲む。抹茶オレは前から飲んでいたのだが、毎日飲みたかった俺は宝くじが当たってからは箱買いをしている。


「……それ」


 彩音が声をかけてくる。彩音の視線は俺が持っている抹茶オレに向いていた。


「ん? 抹茶ラテか?」


「うん……毎日飲んでる」


「ああ、これは俺のお気に入りだ」


 もはや抹茶ラテを飲む事は俺のルーティーンになっている。これを飲まなければ俺は禁断症状が出てしまう程、中毒的なまでに俺は抹茶ラテを気に入っている。


「それ、美味しいの?」


「飲んだ事無いのか?」


「ええ、苦そうだから」


 ……なる程な、確かに抹茶と言うだけで苦いと勘違いしてしまいそうだが、殆どの抹茶系の市販品は全く苦くない。それでも人によって好みは分かれるだろうが、好きな人は多いだろう。アイスも美味しいが、抹茶ラテはかなり飲みやすい部類だと思う。


「そんなこと無いぞ、飲んでみるか?」


 俺は残りの抹茶ラテを彩音に渡そうとした。


「飲みかけだけど……」


「あ……」

 

 やばいよ、このままだと飲みかけを渡して間接キスをさせる変態になってしまう。


「あー悪い。冷蔵庫にストックがあるから自由に飲んでいいぞ」


「間接キスをさせたがる変態かと思ったわ」


「んなわけ無いだろ」  


「冗談よ」


 彩音も飲んでみたくなったのか、すぐに冷蔵庫を開けて抹茶ラテのパックを取り出した。

 そして彩音はパックにストローを刺して抹茶オレを飲んだ。


「───!?」


 その瞬間、彩音はパアッと顔を明るくさせて、更に抹茶オレを飲む。


「んっ……んく……ふぅ」


「……どう?」


「……これは奇跡ね、こんな美味しい飲み物があったとは思わなかったわ」


「……」


「……」


 俺と彩音は握手をする。ここに抹茶ラテ同盟が出来た。

 そう、抹茶ラテが好きな奴に悪い人はいない。抹茶ラテは世界を救ってくれると俺は勝手に思っている。現に抹茶ラテを避けていた彩音が今はこうして抹茶ラテを飲んでいるではないか。


「あ……」


「どうした?」


 何か凄く悲しい顔してるんですけど……何があったんだ?


「無くなったわ……」


 え……それだけで悲しそうな顔する? 抹茶オレ無くなっただけでそんな悲しい顔しなくてもいいじゃん。

 ……いや、俺も全世界から抹茶ラテが無くなればどうかしてしまうかもしれん。

 これはもう、俺も彩音も抹茶オレの虜になってしまっているようだ。


「いつでも飲んでいいから、まだ沢山あるし」


「いいのかしら?」


「抹茶オレ好きに悪いやつはいない」


「それに関しては同意、拓海は良い人ね」


 ……この良い人ってのは抹茶オレをくれるからかな。

 彩音は抹茶オレを取りに冷蔵庫に向かう。これはどうやら抹茶オレを買う時に箱を2つにしておく必要があるだろう。

 

 こうして俺達は朝の10時頃にソファーに座って抹茶オレを飲んでいる。そこで俺はふと気になる事があった。

 今日は土曜日なのだが、彩音は外に行かない。普通学生なら休日になれば友達と遊びに行ったりもするだろう。もしかして友達がいないのだろうか……俺も友達少ないので人のことは言えないが、彩音は先週の土日も遊びに行ったりはしない。

 そこで俺は彩音に聞いてみることにした。


「なあ、彩音って友達いないのか?」


 ……ストレートに言い過ぎた! いきなりこんな事聞くとか失礼極まりない。


「失礼ね、私にも友達はいるわ」


 ですよねー。ちょっと不機嫌そうな顔してるよ。やっぱり怒っちゃってるよ。

 だが彩音に友達がいるのは驚いた。教室でも誰とも話している様子はなかった。そう言えばたまにスマホを見ては画面をポチポチとしている時があるが、おそらくその友達とメールでもしているのだろう。

 ……俺はメールする友達もいないがな。たまに康介とするぐらいだ。

 取り敢えず失礼な事を言ったので、これは謝らないといけない。


「いや、すまん。ストレートに言い過ぎた。今日土曜日だろ? 彩音は友達と遊びに行ったりしないのかなって」


「行ってもいいのかしら?」


「ん?」


 何故そこで不思議そうに首を傾げているんだ?


「行っていいかわからなかったから」


「あーなる程ね」


 家政婦だから遊びに行くのもやめとこうって思ってたのだろうか? 

 俺も家政婦は始めて雇ったからよく分からないが、家事はちゃんもこなしてくれているし、今ではリビングも部屋も何とか綺麗なままである。俺は家事をしてくれるなら行動は特に制限しなくていいと思うが。


「言ってくれたら良かったのに。誘われたりしてるのか?」


「一応明日に誘われてるわ」


「なら行ってきていいぞ」


「……じゃあ行かせてもらおうかしら」


 彩音も心の中では遊びに行きたかったのだろう。少し嬉しそうにしている。

 俺は外で遊ぶよりも家でアニメとかライトノベル読んでいる方がいい。何か外に行くとやたら金使ってしまいそうだから。今ではスマホでもゲームは出来るし、家で過ごしてもあんまり飽きたりはしない。


「拓海は遊びに行ったりしないの?」


「行く奴がいない」


「それはごめんなさい」


 そこで謝らないでほしい。俺も自分の事が惨めに感じてくるから。

 しかし俺から誘って遊びに行く事はこれからもおそらく無い。行くとすれば誘われて渋々行くぐらいだ。


「てか彩音も遊びに行ったりするんだな。あんまりイメージ湧かないけど」


 どちらかと言うと家で静かに勉強してそうに見える。実際家にいる時も勉強してる事が多い。


「普段は行かないわ。誘ってくれたから」


 なんだ、俺と一緒か。やはり俺達はどこか似ているのかもしれない。


「……拓海はニートね」


「ガハッ!?」


 ナチュラルに罵倒するのやめて! 俺のライフはもう1しか残ってない!


「冗談よ」


「勘弁してください」


 しかし彩音は遊びに行きたかったのか……それを聞くと少し申し訳ない気持ちになる。もしかすると平日でも誘われていたのかもしれない。それなのに家政婦と言う理由で行けない事が多ければそれは予め言わなかった俺の責任でもある。


「なあ、平日は誘われたりしてなかったのか?」


「バイトをしてると言ってるから」


「平日も時間余ってるだろ、別に平日でも遊びに行っていいぞ」


「……拓海がぼっちになるわね」


 ……1あったライフがゼロになった。やっぱりこの子怖いです。ナチュラル罵倒の神と呼ばせてもらおう。

 いや、俺はぼっちに誇りを持ってるから罵倒ではないな。うん、そういう事にしとく。


「そこは心配するな。俺はぼっちに誇りを持ってる」


「……ふふっ、なにそれ」


 彩音は普段は殆ど笑わない。学校では特に笑ったところなどほとんど見られない。だが、時折こうして笑ってくれる時がある。この美少女が笑っているところが見られたのなら自虐ネタもありなのかもしれない。




 ―――――――――――――――




 次の日、10時頃になって彩音は外出用の服を着て出ていった。

 服装は白のTシャツにグレーのロングチュールスカート。一言で言えば可愛い。それ以外の言葉は見つからない。

 出ていく前に、「お昼はどうする?」と心配されたが、俺には炒飯があるので問題ないと言った。彩音は、「そうだった……じゃあね」と言って出ていった。

 帰りが遅くなるかもしれないとの事で、一応連絡先を交換した。母さんと山崎先生は別として、初の女の子の連絡先である。

 だが俺はそんじょそこらの男子高校生ではない。女の子の連絡先が手に入ったぐらいで興奮する程自惚れていない。どうせこんな美少女とのラブコメなど起こり得る筈も無いのだから。


「……寝るか」


 休日はやはりアニメかライトノベルか寝るに限る。今日はまだ寝たい気分なのでベッドでスマホでも見ながら寝ることにしよう。

☆☆☆☆☆が下の方にあるので評価してくれたら嬉しいです。ブックマーク登録、感想などあれば是非お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ