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準備は大事だと学んだ

どうか見てください

 晩御飯を食べた後、掃除により程よく汗をかいていた俺達は風呂に入る事にした。ちなみに彩音が先に入っている。

 勿論一緒になど入る訳が無い。まだ2日、それも1日目など1分程しか話していないやつに自分の裸は見せたくないだろう。

 ……一緒に入ってもいいと言われたら行ってしまうかもしれないが。


「しかし……まさか同級生が来るとは」


 やはり少し信じられないという気持ちが出てくる。まさか家政婦を雇って同級生が来るとは誰も思わないだろう。しかもそれが学校でもトップクラスの美少女ときた。


「……これバレたらどうすんだ?」


 殺されるのかな? 今から遺書でも書いていたほうがいいのだろうか。取り敢えずバレるわけには行かない。入念に対策を練る必要がある。


「とは言っても特に対策とか思いつかねぇ……登校時間ずらすぐらいだろ」


 俺はしばらく熟考するが、他に案も思いつかない。結局登校時間をずらす事にしたので、風呂から上がってきたら話す事にしよう。

 

 スマホを見て時間を潰していると、ようやく彩音が脱衣場から出てくる音がする。そしてリビングの扉が開いた。


「ああ、彩音……?」


 ああ……これは夢なんだな。夢じゃないと今見えているこの光景に説明がつかない。一旦目を擦ってみよう。……あれ? やっぱり夢じゃない……何故下着姿でリビングに来ているんだ? 

 確かに自分の部屋に戻るにしても、俺の家は脱衣場から1度リビングを経由して行かないと上には行けない。それでリビングに来るのは分かる。なのに何故ピンクの可愛らしい下着だけでリビングにいるんだ? しかも髪の毛もだし体も湯で火照ってるからかめちゃくちゃエロく見えてしまう。もしかして裸族ならぬ下着族なのか?

 ついついその抜群のスタイルと小ぶりな胸を凝視してしまったが、我に返って俺は目を逸らす。


「何で下着だけなんだよ! 服は?」


「……忘れたのよ」


 そこはしっかり準備しててほしい! 何でそこで忘れるかなぁ! しかも俺に見られて恥ずかしくないの? 

 女の子なんだからもっと恥じらいを持ったほうがいいと思うんだが。


「……でも」


「何だ?」


「……家ではこれが普通なのよ」


 なるほど……つまり家では風呂上がりはいつも下着姿……いやいやそれでも今は自分の家にいるわけじゃないじゃん! もっと貞操観念持って!


「……あっ」


「ん? どうした?」


 彩音は思い出したように何か閃いたような顔をして、


「……嫌ー、エッチ」


「……」


 声に全然恥じらいの様子がない。今の行動を見て落ち着いた俺は、彩音に服を着てもらうように行ったら。すると彩音は素直に、「わかった」とだけ言って2階に上がっていった。


「だはぁ……心臓に悪い」


 まさか俺が人生で女の子の下着姿を生で見てしまうことになるとは思わなかった。

 ……一言で言えば、綺麗としか言えない。お腹はしっかりとくびれもあり、程よく肉のついた太もも、長い足に肌は見ただけで分かるサラサラ感、胸は彩音自身も物足りないと思っているのだろうが、それを差し引いても素晴らしい体をしている。


「……これでいいかしら?」


 彩音という煩悩に悩まされていると、彩音が服を着て降りてきた。


「ああ」


 彩音が着ているパジャマは、モコモコ系のピンクがベースで白色の水玉模様がついた可愛いやつだった。


「テレビでも見てていいぞ、俺は風呂に入ってくる」


「わかったわ」


 俺は脱衣場で服を脱いで、風呂場に入る。そして頭、顔、体の順で洗っていく。

 湯に浸かろうと思っていたが、彩音が入っていたと思うと、様々な思考が脳内で埋め尽くされる。このままではアニメのキャラのように鼻血を出しかねないので、湯に浸からずそのまま風呂場を出た。

 風呂上がりは暑い。俺も普段は彩音のようにパンツだけでそのままリビングに向かうが、彩音がいるのでそんな事は出来ない為、普通に半ズボンとTシャツを着てリビングに向かう。


「……寝てる?」


 リビングに入ると、彩音は寝息をたててスヤスヤと眠りについていた。

 初めての場所なうえに掃除もやらせてしまったので疲れてしまったのだろう。しかしソファーで寝ると体が痛くなったり首を寝違えてしまうかもしれない。ソースは俺。

 前にソファーで寝た時に首を寝違えてしまい、授業を斜めに向きながら受ける事になってしまった思い出がある。

 その時は山崎先生が治してくれた。多分あの人は整体師としても生きていけるだろう。

 そんなくだらない事を言っている間にも彩音の首が寝違えているかもしれないので、気持ち良さそうに寝ているところ悪いが、起こす事にする。


「彩音、起きて部屋行ったほうがいいぞ?」


 声をかけても彩音は起きる気配が無い。


「彩音、彩音起きて」


 これどうすればいいんだよ……分かんないんだけど。

 なんか本とかに載ってないのか、美少女の起こし方とか。そんな馬鹿みたいな事はどうでもいいな、取り敢えずどうやって起こせばいいんだ?


「困ったな……」


 もしかして一度寝たら起きないパターンの人か。それなら起こそうとしても無駄なので、他の方法を探すしかない。と言っても抱き上げて部屋まで運ぶぐらいしか思いつかない。

 しかし俺は女に殆ど触れた事がない。確か小学生の時の全体行事で、皆で手を繋いで円を作るとか変な事をした覚えがある。あるとすればその時だけ。


「……仕方ない」


 座って寝ている彩音の膝の裏と背中に手を入れて持ち上げる。これが俺の人生初のお姫様抱っこだ。


「軽っ!?」


 アニメでは全然重く無いとか幻想を嘆いている主人公が多いが、もしかすると本当にそうなのかもしれない。多少は重さを感じるが、それでも想像以上に軽いのだから。おそらく胸があんまり大きく無いからだろう。


「んっ……」


 胸が大きく無いと思った途端に彩音の体がピクッと震えた。これは本能で反応しているのだろう。俺の身の回りには勘が鋭い女性が多いな。


 階段は慎重に歩いていく。ここで滑って落ちるのは洒落にならないからだ。

 そして部屋の扉を開けて、彩音をベッドに寝かせる。これでミッションは成功だ。


「はあぁぁ……緊張したぁ……」


 彩音を抱き上げた時点で俺の心臓はバックバク、何なら小学生の時のマラソン大会よりも心臓は活発に活動していた。


「……俺も疲れたし部屋に戻ろう」


 もはやルーティーンとも言えるアニメとライトノベルはちゃんと見るが、慣れない掃除もしたからかいつもより眠気が来るのが早い。

 彩音があの調子で本当に起きれるのか少し不安だが、いつも一番に来ているらしいと康介が言っていたのでその言葉を信じる事にする。


「……アラームはいいか」


 山崎先生に言われてからは嫌いなアラームもセットして、何とか起きれていたが、彩音もいるのでアラームは必要ないだろう。

 まだいつもより1時間程早いが、さっさと寝ることにしよう。




 ―――――――――――――――




「……はっ!?」


 何故か嫌な予感がしたのか、俺は体を急に起き上がらせて目が覚めた。夢を見ていた訳では無い。本当にただ嫌な予感がしただけなのだ。

 カーテンからは陽の光が差し込んでいる。それは前に遅刻した時よりも強い光。これにて俺は確信する。


「……やっちった」


 おぉい! なぜ俺は早く目が覚めていない! 現実を見ようとスマホを見たけどやっぱり遅刻。それも前に遅刻した時より30分は遅い。もはや間に合うとかの次元じゃ無い。


「彩音はどうした?」


 おそらく俺が起きなかったのだろう。最悪彩音が遅刻していなければそれで良い。しかし不安を拭いきれない俺は彩音が寝ている部屋に向かう。


「……あは」


 扉を開けると、期待とは裏腹にベッドですやすやと寝息をたてている彩音の姿がそこにあった。


「彩音! 起きろ、遅刻だ!」


「んっ……まだ眠い」


 昨日の夜とは違って返事はするが、彩音は再び布団に潜り込む。


「駄目だって、遅刻だって」


「……あ」


 渋々といった感じで目を開けてスマホを確認した彩音は、素っ頓狂な声を上げる。


「彩音、遅刻したことないんじゃないのか?」


「……お母さんが朝早かったから……いつも起こしてくれてたのよ」


 先に言え! と言ってもただ期待だけして勝手に彩音が朝は強いと思い込んでいた俺が悪いのだが。

 それよりもこの時間はまずい。もうすぐで1時間目の授業が始まる時間まで来ている。


「拓海」


「ん? どうした?」


「焦っても無駄よ、ゆっくり行きましょう?」


 マイペースな彩音は焦る様子もなく、とても落ち着いていた。


「……そうだな」


 ここまで来たら確かに焦っても仕方が無いので、俺は部屋に戻ってゆっくり制服に着替える。

 歯を磨き終われば、買っておいた菓子パンを2つに分けて、


「これ、彩音の分」


「……ありがとう」


 少しはしたないが、学校に向かいながら菓子パンを食べる。ここまで遅いと高校の生徒にバレることもないので、今日は一緒に登校する。

 ゆっくりと進んでいると高校が見えた。下駄箱についた頃に1時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。


「……先に行くわ」


「ええ」


 教室の前についた俺は意を決して扉を開けた。

 そしてすぐ目の前にある程よく膨らんだ胸。下を向くとそこには見慣れている教師の靴。俺はゆっくりと上を向いていく。そこにはスラッとした足にくっきりとしたくびれ。このスタイルで完璧に着こなされたスーツ。もう一度胸を見たあとに見えるのは、笑っているはずなのに目が全く笑っていない山崎先生の顔があった。


「安田」


「……はい」


「私の授業すら受けないとはいい度胸だな」


 やばい! 冷や汗が止まらない。何なら運動した時よりも汗が出ている。言い訳も思いつかない。いわゆる詰みという状態。

 俺はすっかり1時間目の授業が現代社会の授業と言うことを忘れていた。そして山崎先生は現代社会の担当。これを忘れていた故に、俺は危機感も感じずに遅刻してしまった。過去の俺を呪ってやりたい。


「いや……これはですね……」


「あん?」


 俺は今怖いという感情以外考えられない。いくら美人だとしても起こるとここまで怖いのか。


「……寝坊しました。すみません」


「昼休み、職員室に来い」


「ひゃい」


 俺は多分職員室で教師達の目の前でボコボコにされるのだろう。

 負の感情で埋め尽くされていると、次に彩音が教室に入ってきた。


「雪野、何故来なかったんだ?」


「寝坊しました」


「そうか、次は気をつけろよ」


「はい」


 あれ? 何で俺と彩音でこんなに態度が違うの? 山崎先生めちゃくちゃ優しい目をしてるんだが。


「貴様は常習犯だろ!」


 やっぱりこの人エスパーだわ。俺が考えてた事に的確な返事してるし。


「……まあいい、安田は昼休みにちゃんと職員室に来い」


 行きたくねー! 行ったら絶対何かされるよ。少なくとも半殺しぐらいはされるんじゃないか?


「いいな?」


 返事しなかったからか、山崎先生は鬼の形相で俺を睨みつける。


「……はい」


 返事をすると、満足したのか山崎先生は教室を出ていった。


「……いい事あるわ」


 彩音は俺を励ましてくれているようだが、あの感じで職員室に行ったところでいい事がある訳が無い。

 ……いや待てよ、そもそも宝くじが当たったうえに、同じクラスの美少女が家政婦として一緒に住んでるんだ。これはいい事の前借りと言う事だろう。


 職員室に行くと俺はどうなってしまうのだろうか。全く予想がつかない。

 

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