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どこか抜けてる美少女

読んでくれたらとても嬉しいです。

 宝くじが当たったから家政婦を雇ったのはいいが、普通におばさんが来ると思っていたらまさかの同級生。しかもそれがクラスでも……いやおそらく学校でも群を抜いて可愛い美少女が来てしまった。

 とはいえ雇ってしまった以上はここで一緒に暮らしていかなくてはならない。なので俺は彩音が使う部屋に案内する。


「ここが彩音の部屋だから、自由に使って」


「わかったわ」


 喋ってくれるとはいえ、やはり普通の人とは口数が少ない。普通がどれくらいなのかは全く知らないのだがな。

 

「いや待てよ……色々足りないな」


「……何が?」


 彩音の部屋は父さんと母さんが使ってた部屋なのだが、しばらく手を付けていなかった為、埃だらけになっていた。そこに何もせずに住ませる訳にはいかないので掃除を頑張った。超頑張った。

 そしてなんとか住めるようになった訳だが、クローゼットは出張に持って行っていない服がある為使えない。


「家にワイドチェストとか無いの?」


「あ……忘れたわ」


 彩音はワイドチェストに入れていた服を持ってきたのだろう。彩音の家にあるワイドチェストは彩音の服が入っていない為、空のやつが一つはあるはずだ。

 とはいえあのパンパンのカバンを持っていてはワイドチェストなんか持ってられないので仕方がない。


「俺の部屋に1個余ってたな。持ってくるわ」


 俺は部屋から空のワイドチェストを持ってきた。クローゼットは無理でも部屋にスペースはあるので置くところは彩音の自由だ。


「全部入りそうか?」


「何とかね、ありがとう」


 何だろう……喋る姿も声もがいちいち可愛いんだが。普段は無口なのに、はっきりとした声で耳にしっかりと届く。

 ……いやいやこんな事気にしてたら一緒に生活なんて出来ない。どうせ家政婦と雇い主の関係なんだ、冷静になれ……冷静に。


 荷物を置いた後は、家の案内をする。一応生活するにあたってリビングや廊下は通れるようになっているが、ソファーにはタオルや服、その前にあるテーブルには読みかけの雑誌やライトノベル、食事をとるテーブルにも醤油や塩などの調味料が置きっぱなしになっている。

 正直恥ずかしくて見せたくなかったが、家政婦として雇ってしまった以上は見せなければならない。


「どうしてこんなに汚いのかしら」


 そこまでストレートに言わないで! 流石にへこむわ! まあ生活力がない自分のせいなんですけどね。


「……ごめん」


「家政婦を雇ったのはそういう事ね……」


「はい」


「泥舟に乗ったつもりでいればいい」


「いや駄目じゃん」


 せめて木の船にしようよ、泥舟だと沈んじゃうじゃん。少し不安になってきたけど大丈夫なのだろうか。


「冗談よ」


 普段物静かなのに意外と冗談も言ったりするんだな。今日だけで色んな一面が見えた。多分彩音は天然も入っている。


「……取り敢えず掃除をしましょう。拓海も来て」


「お、おう」


 どうやら俺も掃除に参加しなければならないようだ。掃除をする前に、「一緒にやって覚えないとずっと出来ないまま」と言われて凄くストレートに言われた。確かに大人になってもそんなのは嫌なので渋々だが掃除に参加することにした。

 俺と彩音はリビングに降りて、最初にソファー付近の掃除に取り掛かる。

 服やタオルは全て洗濯する為に洗濯かごに入れる。雑誌やライトノベルは俺の部屋の本棚に持っていく。その時に部屋を見られて、「……ここも駄目」とこれまたストレート。


「疲れるな、掃除って」


「拓海が普段からやらないのが悪い」


「……言い返す言葉もございません」


 こうやって掃除をしていると、母さんの苦労が分かる。いくら仕事をしていなくても、家事がどれほど大変なのか想像がつかない。なんせ掃除に加えて洗濯に料理、買い物にも行かなければならない。考えるだけでゾッとする。


「本当に家事得意なんだな」


「むぅ……信じてなかったの?」


「いや、そういう訳じゃないが。俺じゃなんにもできなかったから、凄いなって思っただけだ」


「……そう」


 すると彩音は胸を張ってえっへんと言っているようなポーズをとる。大きくは無いが決して無い訳ではない慎ましい胸が強調される。

 ……別に目線が吸い寄せられている訳ではないよ、ホントだよ。


「……小さくない」


「え?」


「……胸を見てたわ」


「ごめんなさい」


 どうやら俺の目線は勝手に胸に吸い寄せられていたようだ。まさか気が付かないとは……万乳引力、恐るべし。


「……まだ大きくなる」


「あ、はい」


「毎朝牛乳飲んでるから」


「なるほど」


 実際牛乳で本当に胸って大きくなるのか?よく分からんが、確かに効きそうな感じはする。これは今後の成長に期待するとしよう。


「掃除しましょうか……」


 自分で言ってて虚しくなったのか声が小さい。

 

「あ、はい」


 俺が雇い主とはいえ、家事全般ができると言っている彩音の方が今の立場は上。素直に従うことにしよう。



 ―――――――――――――――



「お……終わったぁ」


「ん……お疲れ様」


 正直半分以上は彩音に任せてしまったので、ねぎらいの言葉は俺が言わなければならない。しかし先に言われてしまったのでこれは素直に受け取っておこう。


「いやぁ、流石だな。俺だけだったら朝ぐらいまでかかってたわ」


 現在の時刻は午後7時、掃除は2時間半程で終わった。俺の部屋も掃除したのだが、その時に洗濯したパンツが床に落ちていたのを見られて恥ずかしかったのは内緒にしておく。


「慣れたら簡単よ?」


 ……慣れるまでが長いんだけど。あ、俺がいつまで経っても行動しないからですね。


「……晩御飯はどうする?」


 彩音は俺に首を傾げながら聞いてきた。可愛いなちくしょう……さて、晩御飯か……たまに作ったりはしてたけど殆どがコンビニ弁当や惣菜だったのでいざとなったら何が食べたいか分からない。


「ん〜〜、オムライス」


 すると彩音は目をピクッと吊り上がらせた。


「……わ、わかったわ」


 ……なんか様子が変だったが、多分大丈夫だろう。見た目からして完璧美少女なんだし。……まあところどころ抜けてる気はするけど。と言うか家政婦ってこんな感じなのか? これが初めてだからなんとも言えない。


「……出来たけど」


 米は予め炊いていたので、そんなに時間はかからずにオムライスが完成した。いざ期待して見てみると、


「おおっ……おぉ……」


 想像した綺麗な形とは違う、一言で言えば形がグチャッとしたオムライスのような物が出てきた。


「……オムライスは苦手なの」


 まあ何でも完璧にできる人間はそういない。むしろ失敗しているところを見て少し安心する。


「……ごめんなさい」


「いや、作ってくれただけで充分だ」


 せっかく作ってくれた物をけなす人間にはなりたくない。それに重要なのは味で、形など関係ない。人を思いやれる人間になると言うのが俺のモットーなのだ。


「いただきます」


 俺はオムライスのような物を一口だけ食べ、しっかりと咀嚼する。彩音はそれを不安そうに見つめている。


「……どう? 美味しくない?」


「……美味いぞ」


 確かに見た目は世間一般では悪いと言えるだろうが、味は美味しい。普通によく店で食べるようなオムライスだ。


「……本当?」


「ああ、ちゃんと味はオムライスだぞ」


「……良かった」


 彩音は安堵の表情を浮かべる。やはり形が形だけにかなり不安だったのだろう。

 しばらく食べ進めるが、一部分だけ味がおかしいと言う事も無い。


「他の料理は作れるのか?」

 

「オムライスだけ駄目。上手く包めないわ」


 なんかかなり特殊だな……確かに包むのはかなり難しいことは分かる。俺も作ってみようとしたけど成功した事が無い。


「他の料理できるからいいじゃん。俺も炒飯ぐらいなら出来るけど」


 炒飯は自身がある。今まで一番作って一番失敗したからな。それだけに今は納得できる炒飯の味が俺の中で完成している。これだけはプロ以外に振る舞うのなら美味いと言わせる自信がある。


「……食べてみたい」


「え? けど……あれ? 彩音のオムライスは?」


 今まで気づかなかったが、テーブルには俺の分しかオムライスのような物がない。彩音の前にあるのはコップに入れられたお茶だけ。


「……オムライス作るのが不安で自分の分を忘れたの」


 うん、やっぱり彩音はかなり抜けている部分があるようだ。そんなところも可愛いのだが。 


「わかった、歓迎の意味も兼ねて作るわ」


 俺はキッチンに向かい、具材を用意する。焼豚は無いのでハムで代用する。

 慣れた手つきでネギとハムを切っていく。フライパンを温めておき、その間にご飯を用意して、卵を2つ割ってよくかき混ぜる。かき混ぜた卵を3分の1程ご飯に入れて軽くかき混ぜてなじませる。こうすると簡単にパラパラの炒飯ができるのだ。

 よく温まったフライパンに油を入れて、そこに卵を投入。すぐさまご飯を入れて、最初は卵を切るように炒めていく。次にご飯をバラすようにして炒め、具材を投入。塩コショウを入れて、少しだけあおるようにして炒め、フライパンの縁に沿って醤油を入れる。最後に香り付けのごま油を入れてさっと炒めれば完成。パラパラの炒飯の出来上がり。


「どうぞ」


「……いただきます」


 イキって自信あるとか思ってたけど実際どうなんだろ。美味しく出来てるかな?

 俺の脳は不安の気持ちでいっぱいになっている。


「……美味しい」


「それは良かった」


「掃除はできないのに炒飯は美味しいのね」


 一言余計ですよ? でも褒められてみるとやはり嬉しい。散々作った甲斐がある。

 

「……誰にでも特技はあるとはこの事だわ」


「炒飯以外に特技がないって言い方しないで?」


「……あるのかしら?」


「……さあ?」


 特技が他にあるのか俺には分からない。そもそも自分でこれは特技と思っていても実際世間では当たり前みたいな事も無くは無い。あまり自慢する事は自分の首を絞める事になる事がある。


「……ふふっ」


 ────見惚れて言葉を失った。

 俺は偶然彩音が笑った顔を見た。その顔を見れた俺は幸せものなのだろう。

 だって……こんなにも綺麗だと思える笑顔を見たのは初めてだったから。アニメでも表現できないその美少女の微笑みには、何者にも勝る破壊力があった。

 

 しかしそれと同時に俺は思う。

 ────ああ……俺には届かない存在だ。

 

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