精霊魔術士、戦う
「黒龍の覇者はクライン諸島の中で最も魔物が多いと言われるアルバ島で目撃されている。今回の依頼は討伐ではない。血液さえ確保出来れば、依頼達成だ。それを忘れずに深入りはするな」
エルトナ王国、南西の領海にある島々――クライン諸島。
その島の一つであるアルバ島に目標とするアブソリュートドラゴンがいるらしい。
実家がギルドだから、こうやって何処に行ってどうするって話し合っている光景は何度も見たけど自分がするとなると感慨深いなぁ。
最も魔物が多い島か。あはは、怖くて膝が笑っているよ……。
この国に来るときも色んな魔物から逃げたりしたっけ。近道として山道を歩いたから……。
エルヴィンから習った精霊魔術を信じたいけど、化物と戦うのはやっぱり抵抗がある。
カインがリーダーをしてくれて本当に良かった。
「基本的に戦闘は俺とリアナで行う。お前ら二人は後ろから、援護を頼む。前に出て余計な怪我を負わぬように注意しろ」
「分かりました」
「ふわぁ、わかった……」
「えっ? 私とカインが前衛なの!?」
私は声を大きくしてしまった。
そっか、パーティーでの戦闘はみんなで「一斉にかかれー!」って感じではなくて、役割分担というものがあるもんね。
で、私とカインは超危険指定生物を相手取り、前にドーンと出て戦わなくてはならないということか。
膝が震えているの誤魔化せなくなってきたぞ。
カインがそんな私を見て、凄い顔つきで睨んできて怖い。これは絶対に怒られるやつだ。
「おい、リアナ。俺がお前と並んで前衛ってことに不服そうだな。大方、Sランクの自分一人で十分だと言いたいんだろうが」
「い、いや、えっと、そうじゃなくて――」
「超危険指定生物に対してたった一人で前線に立とうとするなんて豪胆なんですか。だから、先程から武者震いしてるんですね」
「やる気満々……、私なら楽したいけど……」
逆だよ。逆なんだって。前に出ることが怖いって言いたいの。
あとクラフト、武者震いじゃなくて、普通にガチガチに震えてるだけだから。
こうして、私たちのパーティーはクライン諸島のアルバ島へと旅立った――。
◆ ◆ ◆
「じゃあ、リアナさんはエルヴィンさんの所に居候しているんですね」
「うん。ご飯も食べさせて貰ってるよ」
「豪邸、タダ飯、羨ましい……」
「お前ら! ちょっとは緊張感を持て! アルバ島にもう着いているんだぞ!」
アブソリュートドラゴンが潜んでいるというアルバ島には比較的に楽に着いた。
カインはベテランだと自負しているとおり旅慣れており、しかも口調とは裏腹に面倒見も良い人だったので、実にスムーズにここまで向かう為の船をチャーターしてくれたのである。
その間にクラフトやメリッサとも色々とお話して仲良くなった。
クラフトは実家が魔道具屋で魔法アイテムの知識が凄い。
メリッサはいつも眠たげで無口なんだけど、なんと彼女もエルヴィンがナンパじゃなかった、スカウトした人材で治癒魔術のエキスパートなんだとか。
そんなこんなでお喋りしていると、いつの間にか魔物の群生地であるアルバ島に上陸しており、辺りから血なまぐさい臭いがしたりとか、魔物の唸り声が聞こえるようになる。
今までは雑用でギルドの本部に引きこもっていたから、怖くて仕方がない。
異様な気配って本当に感じることが出来るんだね。
国境付近の山道とは全然違う。魔物の集団に見つかったら絶対に逃げられない。
「リアナ! さっそくおいでなすったぞ。ワーウルフとエビルタイガーだ。討伐難度は★★程度だが、数が十体と多い。お前はあっちの五体を頼む」
「えっ? えっ? い、いきなり、もう戦うの!?」
「リアナさんっ! 危ない!」
油断しきってると突然戦闘が始まった。カインは準備万端って感じでバスタードソードを抜いており、私はアワアワしてるだけの棒立ちの所にワーウルフが飛びかかった。
こういうときは、えっと、確かエルヴィンが――。
「グルルル! ガウ……? キャウンッ……!」
「リアナさんの腕に噛み付いたワーウルフの牙が砕け散った……」
「これが精霊魔術……?」
以前、私は普段垂れ流してる魔力の蓋をすることに成功した。それで、右手に魔力が集中して凄いことになったんだけど――今度はその行き場を失った魔力を身体全体に纏わせる特訓をさせられたのである。
そうすることで身体全身を魔力によって強化することで、防御力と攻撃力が飛躍的に上がるのだそうだ。
エルヴィン曰く、精霊魔術の基本中の基本にして歴史上の英雄たちが最も好んで使用した術。
その名は――
「精霊強化術……!」
身体全体に金色の光を纏わせて私は全身に超圧縮された魔力を身に纏う。
エルヴィン、信じてるからね。精霊魔術さえ使えれば負けないってこと。
精霊魔術士として、私は初めて戦う――。
「うわああああっ!」
殴る! 蹴る! 強化した身体はとにかく羽のように軽くて、鋼鉄よりも硬い。そして体力が一切衰えない。全力で動いても全く疲れないのである。
よく考えたら昔から私って体力が有り余ってた。二十時間働いても、ちょっと寝たらスッキリしてたし、二日間歩き続けてもお腹が空くだけで済んでいたのだ。
そのことをエルヴィンに言ったら精霊の魔力を吸収し続けることで身体が常に微妙に強化されている状態だったのでは、と推測していた。
「こいつで最後だああああっ!」
エビルタイガーとかいう三メートルぐらいある虎の化物の腹に拳をめり込ませて吹き飛ばし、私は戦闘を終える。
やった。嬉しい。
私は、ずっと冒険者に憧れていた。
特に才能が無いと烙印を押された魔法士に憧れていて、魔法で魔物を圧倒することを夢見たりしていた。
私は精霊魔術士として魔術を使って、あんなに大きな魔物を倒したんだ。感慨深い……。
……んっ? ちょっと待てよ。
私って、今……魔法で戦ってた?
殴ったり、蹴ったりしかしてないような……。
エルヴィン、これ違うよ。やっぱり、私が憧れていた魔法使いの戦いじゃない気がするよ――。
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