国崩し
「慌てて幹部クラスを送ってきたところを見ると敵将はかなり焦っているのだろうな」
「ということで、さっさとあたしたちの魔力を回復なさい」
「あ、うん。わかった。魔力増幅術!」
全員に魔力増幅術を使って、魔力の回復をする。
この次はいよいよ、親玉との戦いだもんな。普通に考えたらさっきまでの獣化騎士よりも強いに決まっている。
神様になる研究をしていたというし、カリスマ性だけじゃなくて力もあるんだろう。
「さすがのアリシアも慎重になるんだね」
「別に。あたしは無駄な時間が嫌いなだけよ。早く終わらせるために使えるものは全部使うの」
「珍しく意見が合うな。僕も君と同じパーティーだというストレスから早く解放されたい」
「あら、あたしも弱っちい連中の尻拭いから解放されたいわ。特に大賢者なんて持て囃されているのに、まだオムツも取れてない男からはね」
ええーっ!? さっきまで良い感じでコンビネーションプレイをしていたのに、もう喧嘩!?
結構、パーティーの雰囲気も良くなったと思っていたけど、気のせいだったみたい。
ここに来て険悪なムードになるのは勘弁してほしいよ。
「お二人とも、言い争いこそ時間の無駄ですの。時間をあまり取られますとエルヴィン様に笑われますわよ。“随分と遅かったな”、としたり顔で言われても我慢できますか?」
「はぁ? エルヴィン如きがあたしを見下すっていうの? あり得ないわ!」
「あの男にバカにされるほどの屈辱はない」
そんな中、ティナの一言で二人の目の色が変わる。
おおーっ! さすがはティナだ。上手いこと二人の気を逸らすのに成功したぞ。
そういえば、二人ともエルヴィンを嫌っていたな。何でか知らないけど、どうも馬が合わないらしい。
とりあえずまとまったのだから動き出そう。また喧嘩すると厄介だ。
「ねぇ、レイス。それでアムルスターのクローンがどこにいるのかは分かっているの? 気配を感知したとか、そういうのはないのかな?」
「あったらとっくに伝えている。この城を虱潰しに探そうなんてしないさ」
「だよねー」
アムルスターのクローンとやらはどこにいるのか、私たちはずーっと古城の中を彷徨っている。
獣化騎士たちは全く出てくる気配がないから、恐らくは全滅したんだと思うけど肝心の親玉が、ね。
最後の戦いのムードなのは事実だけど私たちはアテのない探索にうんざりもしていた。
「あー、もう! ここで、最上階じゃない! あんたたち! ちゃんと探しているの!?」
「それは自信ないかな。えへへ」
「あのねぇ。笑っている場合じゃないでしょう。このままじゃ、エルヴィンに本当にバカにされるじゃない」
「逃げ出した可能性もありますわね」
「動きがあれば僕が気付く。この城から何かが脱出したような気配はない。つまり敵将は何処かに停止しているはずだ」
レイスはターゲットがこの城の中からは出ていないと確信しているみたい。
でも、どこにもいないし、古城にある部屋は全部見て回った。
こんなに探して、なおかつ逃げ出してないってことは……。
「隠し部屋が城の中にあったりして」
「君にしては頭が回るじゃないか。それしか考えられんとも言えるが」
「それでは、今度はそういった部屋がないかどうか探してみますか? 一部屋ずつ、ゆっくりと」
あー、やっぱり隠し部屋か。
これは面倒なことになったぞ。また1からこの城を探すとなるとタイムロスは大きい。
やはり午前中に全部済ませるなんて無理じゃないかなー。
「はぁ!? そんなまどろっこしいことやっていられないわ!」
「アリシア、仕方ないじゃん。それしか方法がないんだし」
「方法ならあるわよ。この城がちょっと可哀相だったから遠慮していたけど、こうなったらもう遠慮しないわ!」
「「――っ!?」」
隠し部屋を探すという案を拒んだアリシアは大剣を上段に構える。
その瞬間、剣がバチバチと音を発しながら青白い光を纏った。
彼女の周りは突風が吹き、その赤い髪は炎のように揺らめく。
あまりの迫力に腰が抜けそうだ。何をしようとしているんだろう……。
「アリシア! お前、こんなところで奥義を使うつもりか!?」
「奥義?」
珍しく動揺したレイスが大声で叫ぶ。どうやら彼女が何をするのか察しているらしい。
奥義ってどういうこと? 一体、何がどうなっているんだ?
「魔剣奥義・魔刃国崩ッ!」
「――えっ!?」
で、デカい!?
一瞬、アリシアがこの城の何倍も大きくなったように感じた。
いや、確かにそれほどの大きさだった。
だって、今この城は真っ二つに斬り割かれて崩れ落ちているんだもん……!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
崩れ落ちる床とともに落下する私たち。マナバーストで防御しているから、怪我はしないだろうけど結構怖い。
ティナとレイスはテレポートを駆使して安全地帯へエスケープしていた。どう考えてもテレポートは便利すぎる。
「さぁ、隠し部屋が探しやすくなったわよ」
「無慈悲すぎるよ!」
瓦礫の山と化した敵のアジトを目の前にして私は渾身のツッコミを入れる。
なんか、もう。アムルスターのクローンも一緒に倒してしまったんじゃないだろうか……。
午前中に仕事が終わったらこの人と試合するとか考えるだけで私は逃げ出したくなっていた。
アリシアが昔書いていた小説の主人公をもとに作ったキャラだから、活躍させがちになっている今日この頃。
そろそろ、リアナも活躍させますので!
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