“剣聖”シオンVS“国斬り”ヘルマイヤー
エルトナ王国で最強は誰かと問われれば国民は全員、一人の人間を思い浮かべる。
“剣聖”シオン――エルトナ王宮ギルドの創立以来、不動の年間報奨金一位であり、国家レベルの危機を幾度もたった一人で救ったことがある英雄の中の英雄だ。
エルヴィンやレイスを子供扱いして、ハーフエルフで剣も魔法も人間の限界を遥かに凌駕しているアリシアでさえも、シオンだけは化物だと評している。
「シオンっていうのは王立ギルドの象徴なんだ。圧倒的な強さってのはそれだけでカリスマ性がある」
エルヴィンは今大会の優勝候補だと言われている魔族、ヘルマイヤーと対峙しているシオンを見ながらそう呟く。
それって、つまり……シオンだけは絶対に負けちゃいけないってこと? 王立ギルドの権威がかかっているから。
「プレッシャーで押し潰されたりしないかな? そんな勝って当たり前みたいなこと言われたら」
「プレッシャー? バカね。リアナはやっぱり、バカなんだから。プレッシャーであいつが弱くなるはずないでしょ?」
私がシオンを心配すると、アリシアが背後から声をかけてきた。
いやだって、絶対に勝つって思われてるんでしょう? 普通は怖いって思うじゃん。
それに、今回の相手は並じゃない。ヘルマイヤーって男は数百年も剣の修行を積んだって聞くし……。
「真偽は不明だが、ヘルマイヤーは島国を一太刀で真っ二つにしたという噂がある。リヴァリタの切り札であることは間違いない」
「ということは、この試合は王宮ギルドと宮廷ギルドの未来を占う戦いってわけだね」
「そういうことだ……」
ピリッとした空気が闘技場から観客席まで伝わる。
シオンの身長は高い方だと思うけど、ヘルマイヤーは二メートルを大幅に超えた長身に加えて、自分よりも巨大な剣を片手で構えており如何にもパワーがありそうだった。
対するシオンはエルヴィンと同様にオリハルコンで出来ているというロングソードを同じく片手で持っており、自然体で様子を覗っている。
「悪いが我は誰が相手だろうと容赦はせん。一撃で終わらせる。奮ッ――!!」
「「「――っ!?」」」
ヘルマイヤーが剣を振り下ろした――それだけなのに、私たちはそのあまりの光景に目を疑った。
闘技場が砕けて、崩れてしまったのである。
確か、この闘技場って私たちが暴れても良いように特殊な材質に魔法をかけてさらに丈夫にしたんじゃなかったっけ?
ジルノーガの分解する技以外じゃビクともしなかったような……。
「二回戦は予備の闘技場に移動だな……」
「悠長なこと言ってないで、シオンを心配しなよ!」
「シオンを心配? はは、あれを見て、心配する必要があるか?」
「あ、あれ? どうしてシオンの周りだけ……」
私は目を疑った。
シオンの周りだけきれいに円を描くように闘技場が無傷だったのだ。
だって、ヘルマイヤーはシオンに向かって剣を振り下ろしたんだよ。
彼女が動かずして無事なワケが無いんだけど。
「ほう、我が一撃を躱したか。なるほど、愚図ではないらしい。だがっ! 一撃で終わると思うなよ!」
一撃で倒せなかったからプライドが傷付いたのか、ヘルマイヤーは縦横無尽に剣を振る。
いや、これ観客席まで被害が出るやつ。
超強力な結界とやらが張られていると聞いたけど、さっきからミシッって嫌な音が何度も、何度も、響いていて、すっごく怖い。
大体、闘技場壊れちゃったら場外ってどうなるの……!?
「あらあら、ヘルマイヤーちゃんったら元気なんだからぁ。でも、もっとアタシに集中して欲しいわ」
「――っ!?」
えっ? 何かミシッって音がしなくなったよ。
ヘルマイヤーもブンブン剣を振っているのに手応えが急に無くなったのか焦った顔をしている……。
「シオンの万物切断はどんなモノでも切り裂く。たとえ、それが衝撃波だろうが斬撃や魔法だろうがなんだろうが……!」
「そんなに、何でもアリなの?」
「だから、あたしがあいつに勝てないんじゃない。悔しいけど、あいつの万物切断は無敵に近いのよ」
そんなことをアリシアが言った瞬間――ヘルマイヤーの大剣がポッキリと折れてしまった。
ああ、何でも斬れるってことは武器も斬れるってことだよね――。
デビュー作の方の書籍化準備がかなり修羅場になってきたので、次回からしばらく週一更新にします。
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