殺意
「ティナ、凄いね! これなら絶対に勝てるよ……!」
「ええ、上手く場外に落とせば、ティナちゃんの勝ちね」
「場外……?」
この神捧聖戦の儀で負けと判定されるパターンは四つ。
降参すること、倒れて10カウント取られること、相手を殺してしまうこと、そして場外に落ちてしまうこと。
シオンの言い草だと場外に落とさなきゃ勝てないみたいに聞こえる。
殺されるなんてことは論外だけど、10カウント取られたり、降参したりする可能性もあるじゃん。
「場外しか勝ちパターンはないのよ。このまま戦うんだったら。ティナちゃんの攻撃には殺気がないんだもの」
「そんなの当たり前じゃん。殺したら失格なんだから」
「そうねぇ。でも、殺気のない攻撃は怖くない。怖くないなら降参はまずしないわ……」
ティナの防御不可能な目にも止まらない速度での魔法発動。
私はティナが勝つと確信したが、シオンは場外負けに早くしないと危ないみたいなニュアンスで話している。
いやいや、あんな芸当見せられたら、普通は戦意喪失するから――。
そう思ってたんだけど――。
「ぐはっ……! ギャハハ、いや~~、参ったよ~~。なかなかどうして、リヴァリタ王国はこ~~んなに、凄い人材を逃しちゃったんだろうね~~。ぶはっ……!」
ジルノーガは倒れなくなってきた。
攻撃を受けて後退りするんだけど、ダウンしなくなったのだ。
「だけど~~。君の優しさは弱点だよ~~? 僕を殺さないように急所を外して、威力も抑えている。それじゃ勝てないよ~~。当たる覚悟さえしてれば、耐えきれちゃうからね~~」
「それがどうしましたの!? 殺さずとも、場外に落とすことは出来ますわ!」
シオンが言ったとおりのティナの弱点をジルノーガは述べる。
でも、ティナはそんなことは承知の上で場外に落とす気みたいだ。
そうだよね。どのみち、ティナの攻撃は効いてるんだから、このまま押し切ればいい。
「外道刃術――!」
「――っ!?」
反射的に身体を反らしたティナだったが、彼女は戦慄した表情を浮べる。
一直線に割れた特殊な材質で丈夫に作られているらしい、闘技場のリング。
こ、これは当たったら死んでしまう。って、ちょっと待ってよ。殺したら負けなんでしょう?
「へぇ、ジルノーガちゃんって、分解エネルギーを刃状にして飛ばすことも出来たのねぇ。近距離専門かと思ってたわぁ」
シオンは呑気に感心しながら解説する。
そうだよ。あいつ、こんな切り札、一切見せていなかったじゃん。
「この間合いはわたくしかと思ってましたのに……!」
「よく躱したね~~。ぐはっ……! 外道刃術――!」
「くっ……!」
「ギャハハ! 戦いにおいて~~! 相手に殺気も見せないなんて~~! 三流以下がやることだよ~~! 僕はどんな状況だって殺すよ~~!」
ジルノーガは笑いながら、全てを分解する刃をティナに向かって幾重も飛ばす。
躊躇いなく、ティナを殺すために……。
あ、あれじゃ、本当にティナが死んじゃう……。
「更に絶望を与えてあげるよ~~! 外道無数弾……!」
拳を振り上げながらジルノーガはエビルインフィニティと声に出すと――あいつの身体から何十個、いや何百個もの拳大の黒い球体が飛び出してティナを取り囲む。
「この球体はさっきと同様に全てを分解するよ~~! ギャハハ! 君が死んで失格になっても僕は力を見せつけるだけで十分にギルドの宣伝になるのさ~~。だけど~~。泣いて命乞いして降参すれば~~。許してあげるよ~~」
ダメだ……! あのジルノーガってやつ、どうかしてる……!
ティナ、もういいよ。あんな頭のおかしい奴とマトモに戦うなんて馬鹿らしい。
早く降参するんだ――。
「……や、ですわ!」
「はぁ~~?」
「……嫌ですわ! あなたみたいに! 人の命を何とも思わないような外道にわたくしは屈しませんの!」
それでも、ティナはこんな状況でも絶望していない。
目に光が宿っている。
この状況を覆せる何かがあるのか――そう私が思ったとき……、全てが黒く塗りつぶされた――。
次回でジルノーガ戦、決着!
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