精霊魔術士と召喚士《サマナー》
「精霊強化術ッ! うらぁ! うららららららら! うらぁ!」
砂の中にいる小さな虫を好んで食べるために、大量の砂を飲み込んで吐き出すという危険指定生物、サンドパンサー。
人を襲うことは殆ど無いらしいんだけど、問題は吐き出した砂である。
排泄物に近いと言われるそれは強い毒素を含み、しかもサンドパンサーはその巨体から沢山の砂を飲み込むので繁殖すると毒による害がとんでもないのだとか。
いやー、参ったよ。サンドパンサーの腹をぶん殴ったら、あいつめちゃめちゃ毒を含んだ砂を私に向かって噴射するんだもん。
幸い、マナブーストによって毒とかそういうのはガード可能みたいだったけど、テンションは下がる。
「相変わらず、猪突して力押しだけか。それが成立していることがどうかしてるのだが……」
カインはめっちゃ慎重にバスタードソードをサンドパンサーの急所に突き刺すことで、毒が噴出されないように討伐している。
流石はベテランの技。見た目よりも繊細な剣捌きだ。
そして、シルフを召喚してここまで送ってくれたルーシーはというと、暫く休んでからの――
「土の精霊召喚――!!」
四大精霊の一角である、土の精霊を召喚する。
ちなみにマナプラウス無しだと、褐色肌のダンゴムシくらいの大きさの精霊が出てくるらしいけど――
「はーはっはっはっは! 筋肉こそパワー! パワーこそが正義だ! よくぞ我を召喚した! 少女よ! 我の鋼の肉体はマスター、あなたの為にある! ノーム推参!!」
カレーを作るのが上手そうな褐色肌で筋骨隆々な半裸の青年が頭にターバンを巻いて出現した。
なんか、精霊って思ってたイメージと違うなぁ。
シルフもノームも普段から私に魔力を分けてくれているんだよね。この人たちから貰ってるのかぁってなる……。
「ノーム! あっちのサンドパンサーを倒して!」
「任せるが良い! 大岩散弾ッ!」
ノームはその辺の砂を大量に浮かび上がらせたかと思うと、どうやったのか知らないけどそれを巨大な岩石へと変化させて……物凄い勢いでサンドパンサーに飛来してそれを押し潰す。
筋肉を語ってたのに、まさかの遠距離攻撃なんだね……。
「ルーシー、凄いよ。召喚魔術を完全に使いこなしてるね……!」
「はぁ、はぁ……、全部、リアナさんのおかげですから。ボク一人じゃ何も出来ませんでした。そ、それに、ちょっと精霊を召喚するだけでヘトヘトになってしまいますし。はぁ、はぁ……」
ノームを使ったルーシーはかなり息が上がっているみたいだ。あんなに凄い力を持つ精霊を完全に具象化したんだから当然魔力以外に体力も、かなり消耗するのだろう。
でも、そんなに卑下することはない。ルーシーは誰にも出来ないことが出来るんだから。
「良いじゃん。ルーシーは一人じゃないんだから。一人で何も出来ないとか考える必要なんて無いんだよ」
「一人じゃない……?」
「うん! 私もいるし、怖い顔だけどカインだってルーシーの味方だよ。自分に足りない分は私たちに頼ったらいいじゃん」
私はルーシーの手を握って、いつでも頼るように声をかけた。
頼れる人がいるって心の支えになる。実家では死にたいくらい酷い扱いだったかもだけど、妹のティナが助けてくれた。
エルトナに来たときはエルヴィンが助けてくれた。
私は助けてもらった分、他の誰かを助けたいと思ってる。
「誰が怖い顔だって……?」
「か、カイン、意外と地獄耳なんだね……。ごめん」
頭をガシッと掴んでカインは本当に怖い顔をする。
だって、この人はいつも怒った顔してるんだもん。怖がるよ、普通は……。
「ちっ、別に怖くしてるつもりはないんだけどな。おい、ルーシー!」
「は、はい……」
「シルフに続いてノームまで……、いいもん見せて貰った。今はDランクでも、お前ならきっと上がって来れる。分からんことがあったら何でも聞け。一応、キャリアだけはあるからな」
指をグッとサムズアップして、めちゃめちゃダサいポーズを決めるカイン。
でも、まぁ……、この人は本当に面倒見が良いし何よりもパーティーの安全を一番に考える人だから厳しいことを言ってただけだし……。クラフトが前に言ってたとおり昔ながらのベタなツンデレさんなんだろうなー。
「リアナさん、カインさん、ボク……頑張ります! いつか、誰の力も借りずに完全な召喚魔術が使えるように……!」
この世のものとは思えないくらい綺麗な赤い瞳を輝かせて、ルーシーはそんな約束をした。
私は何となく、いつかそれが叶う日がくると確信する。
だって、こんなにも華麗で格好いい術を使える人を見たことないんだもん。絶対にルーシーは凄い才能を持っているから、それが開花する日も遠くないはずだ。
こうして、私は二回目の依頼も完璧に達成することが出来た――。
◆ ◆ ◆
戻りはシルフに頼らずに馬車を使って戻ったので、まぁまぁの時間がかかったが何とか日帰りで王都まで戻ってこれた。
さて、屋敷に帰ったらエルヴィンに依頼達成したお土産話を聞いてもらおうかな。
なんてことを思って、エルヴィンの屋敷に辿り着いて中に入ると、私はいきなり抱きしめられる――
「お姉様! ああ、リアナお姉様〜! お久しぶりです! 元気そうでティナは安心しましたわ〜〜!」
えっ? えっ? えっ? 何で妹のティナがエルヴィンの屋敷にいるの?
私は突然の妹との再会にびっくりしすぎて声が一瞬出なくなった――。
ついに姉妹の再会です。次回は姉妹の絡みに注目してください!
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