四大精霊《エレメンタル》
「わ、私がルーシーに召喚魔術を使えるようにさせるの? 冗談でしょう? 私なんて自分の術すら基本中の基本しか出来ないのに、人に何かを覚えさせるなんて無理だよ」
伝説の召喚魔術とかよく分からないモノの修得を、何にも知らない世間知らずの私が助けられるはずがない。
そんな当たり前のこと言わせないでほしい。
もちろん、ルーシーの力になりたい気持ちはあるんだけど。
「いや、違うな。読めたぞ、神眼使い……お前の考えていることが。マナプラウスを使うのだな? あれは魔力の強化が出来る反則級の魔術。ルーシーの単純に力が足りんだけなら、強化すればいい」
「正解だ。まー、捻った問題を出した訳じゃ無いんだけどな。リアナの能力を知ってりゃ、誰でも分かる命題だ」
はい。分かりませんでした。
カインでも分かるような簡単な答えが当事者の私にはさっぱりでした。
なるほど、ルーシーの魔力を強化してあげればいいんだね。
「だが、そんなに簡単にいくのか? 確かに初級魔術が中級並みまで強化されたのは俺も見たが、伝説級の召喚魔術を成功させるというのはそんな次元じゃないぞ」
「少なくとも四大精霊の完全具象化レベルで成功ラインだからなぁ。オレは上手くいくと思ってるが。リアナの魔力の特性上、な」
「え、四大精霊の完全具象化……!? む、無理です。才能のないボクにはとても……」
うん。単語が分からなくて話に付いていけない。
四大精霊? 完全具象化?
知らない言葉を聞くとなんかこう。頭が熱くなるなぁ。
「とりあえず、ルーシー。リアナが話に付いていけないって顔してるから、お前の未完成の召喚魔術を見せてやれよ。それで大体、何なのか分かるはずだ」
「え、ええーっと、はい。で、では風の精霊を呼び出してみます……。んんっ――」
普段から特訓してもらってるから、エルヴィンは私が分からない顔をしてるって察したのだろう。
彼の言葉を受けてルーシーは眉間に力を入れて、両手で天を仰いだ。
大気が震えて、ビリビリとした感覚が頬を刺激する。
あれれ? もうすでに只事じゃない感じだけど――。
「ぬっ……!? 魔力が足りんと聞いたが……、この威圧感。百戦錬磨の俺には分かる。この充実したパワーはAランク魔法士にも匹敵する!」
カインもルーシーが力を持っているとハッキリ口にした。
そして、その時――。彼女は両手をパンと叩き、叫ぶ――。
「シルフ召喚……!」
「「…………」」
静寂……。びっくりするくらい静かな時間が数秒経過した。
シルフっていうのは風の精霊だっけ? 私も精霊から魔力を貰ってるってことは知ってるけど精霊には詳しくない。
「お、おい。まさか、この小さいのが……」
「えっ? あー! 可愛い!」
「ミュー、ミュー」
ルーシーの鼻先にミツバチくらいの大きさの小人がいた。よく見たら、新芽のような色合いの羽根でパタパタと羽ばたいている。
そして頑張って羽根を動かして、そよ風がフワッと私たちの顔にかかった。
「見たか? これが風の精霊の具象化。つまり召喚魔術だ。ルーシーは四大精霊、つまり風の精霊、炎の精霊、水の精霊、土の精霊を召喚して、使役することが出来る。とはいえ、使役するには体力も著しく消費するから――」
「ううっ、はぁ、はぁ……、す、少しだけ休憩させて下さい……。ごめんなさい。あれが限界なんです……」
「「消えた……」」
あー、シルフ消えちゃった。そよ風くらいの風じゃ戦えないし、それも短時間しか使えないのなら実用性も無いということか。
彼女が自信が無いという表情なのも分かる。でも、私は――
「凄いよ、ルーシー! あんな凄い術、初めて見た! 精霊を出現させるなんて、誰にも出来ないし、羨ましい才能だよ!」
「……えっ? り、リアナさん……?」
ルーシーの手を握って感想を伝えると彼女はほんのり頬を赤く染める。
私は本気で凄いと思った。あのとんでもない力を分けてくれている精霊自体を出現させて操るなんて、卑屈になる方がおかしい才能だ。
「ねぇ、エルヴィン。私がルーシーに魔力を渡せば完全な術になるんでしょ?」
「ああ、理論上は間違いなく成功する。リアナの魔力は精霊由来だからな。四大精霊の召喚と相性が良いはずなんだ」
「魔力増幅術……!」
「――っ!?」
私はエルヴィンの言葉を聞いて、間髪を入れずに握った手からルーシーに魔力を渡す。
力がない歯痒さは知っている。それで卑屈になる辛さも。
私は一刻も早くルーシーのモヤモヤを取り払いたかった。
「あ、熱いです。か、身体中が燃えるみたいに――。これが魔力の譲渡……。こ、これなら……」
「ルーシー、もう一回見せてよ! 召喚魔術を!」
「り、リアナさん……? は、はい!」
力強く返事をするルーシーは両手で天を仰ぎ……そして、手を鳴らしながら叫ぶ――
「シルフ召喚……!」
「「――っ!?」」
なぜ、今日の集合場所がいつかの闘技場なのか分かった。
立っていられなくなるくらいの暴風が私たちの全身を刺激する。
そこら中で小さな竜巻がいくつも発生して猛威を奮っていた。
そして、目の前には――
「おやりになりますわね。人間風情がこの私の姿を完全に顕にするなんて。褒めて差し上げますわ」
緑色の羽根と髪色が特徴的でティアラを身に着けた女王様みたいなのが出てきた。
いきなりの上から目線である。この女性がシルフ?
なんか想像したのと違うなぁ……。
「う、美しい……! お、俺は猛烈に感動している! まさか、生で精霊を拝めるとは!」
なんかカインの反応もいつもと違う。
「し、信じられません。落ちこぼれのぼ、ボクが一族の誇りであり、伝統だった四大精霊の完全具象化に成功するなんて……!」
そして、涙しながら喜んでいるのはルーシーだ。
やっぱり辛かったんだね。良かった、彼女の役に立てて。何だか私も嬉しいや。
「シルフってのは、風の力で人を浮遊させて、任意のところまで運んでくれるから、召喚士はよく移動手段としても用いてたらしいぞ。今日のお前らの依頼って結構遠い場所だろ?」
「んっ? そうだな。この国の南部にある砂漠だから、そこそこの距離はあるな。討伐難易度★★★の危険指定生物のサンドパンサーを二十体くらい狩るというシンプルな依頼だが――」
「あ、あのう! ボクに運ばせて下さい! 早く皆さんの役に立ちたいんです!」
目に力が籠もったからなのか、ルーシーのルビーのような瞳はさらに輝きを増した様に見えた。
空を飛んで行けるなんて、凄く楽しそう。是非ともお言葉に甘えたい。
「じゃあ、ルーシーにお願いしようかな」
「そうだな。先程は足手まといと言ったことを詫びよう」
「あ、ありがとうございます! シルフよ! ボクたちを運んで下さい! 南の砂漠まで!」
「仕方ないですわね。このシルフの力を持ってすれば、そんなのお茶の子さいさいですわよ! おーほっほっほ!」
シルフの言葉と共にフワリと空中に浮かぶ私たち。わー、本当に空を飛んでるみたいだ。
風に乗って、ドンドンスピードが増してるぞ。
んっ? スピードが増して、増して――
「ぶはっ、る、ルーシー、へぶっ、しゅ、スピード、は、速すぎにゃい?」
「ご、ごめんなさい。シルフの使役時間を計算すると、かなり急がなくてはなりませんので」
「ま、まだ、速く……、な、なるのか、口も、開けられ――」
「「わあああああああっ!」」
痛いくらいの風を浴びて、50キロメートル程の距離を僅か15分で移動する私たち。
う、うん。もう二度とシルフでの移動は懲り懲りかな――?
ルーシーはリアナと共に成長するキャラクターです。これからの活躍にご期待ください。
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