王立ギルドのSランカーたち
「ねぇねぇ、王立ギルドのSランクの人たちに挨拶って、どういうこと?」
「そりゃあ、これからの仕事仲間として、ライバルとして、見知っておくことは大事だろう。この前の依頼と違って、さらにハイレベルな依頼だとSランク同士が複数で組むことも珍しくないからなぁ」
エルヴィンによると超危険指定生物である黒龍の覇者の血を手に入れることが簡単だと感じるくらいの依頼があるらしい。
そういう時は二人以上のSランクが組むことも少なくないのだとか。
――何それ、怖い。
この前のアブソリュートドラゴンの相手が簡単ってどんなレベルだよ。
想像するだけで冷や汗かいたじゃないか。
「だから、軽い立食パーティーの席を作って他のSランカーともコミュニケーションを取ってほしいんだよ」
「むぅ~、わかった。でも、大丈夫かな。私って人見知りだし」
「人見知りは俺に声かけられて一分で一緒に飯食いに行かないって」
「うっ……、あれはそのう。二日間何も食べてなかったからだもん」
私が知らない人と喋るのが億劫だと口にすると、エルヴィンは速攻でそれを否定する。
酷いなぁ、私がそれじゃあ無神経みたいじゃないか。心外だよ。まったく……。
「まぁ、そんなに眉間に力を込めるなよ。リアナは良い性格だって褒めてるんだ。誰とでも仲良くなれるって立派な才能だぞ」
「えへへ、私みたいな子は愛嬌だけなくっちゃ生きていけないって思ってたからね」
「時々、リアナから闇を感じるが深くは聞かねーよ」
エルヴィンはビックリするほど私の過去について尋ねたりしなかった。
今も実家がギルドってことくらいしか知らないし、どうしてこっちの国に来たのかも聞かない。
多分、辛い思い出だってことは何となくお見通しなんだろうな。
ということで、エルヴィンが呼んだっていうSランクのギルド員と会うことになった。
◆ ◆ ◆
「すまないな。みんな忙しいのに集まってもらって」
「エルヴィン殿、残念じゃがシオン殿は来れんらしい。緊急で依頼が入ったらしくてのう」
「おー、ゼノン爺さん、久しぶり。そっか、何となくシオンはそうなるって思ってた。あいつ断トツで忙しいもんなー。流石は年間報奨金、第一位だ」
部屋の中には三人しか居なかった。ゼノンって名前の顎髭の長いお爺さんの話によると、どうやら年間報奨金が一番のシオンって人が急用で居ないらしい。
リワード一位って、そのギルドの花形役者だもんな。その人が一番忙しくなるのは当然だ。
しかし、王立ギルド第一位の年間報奨金って幾らくらいなんだろうか……。エルヴィンの羽振りの良さを見てると相当な金額っていうのは想像出来るけど……。
実家のギルドだと一番上で2000万ラルドくらいだったかな? でも、こっちは固定給で月に100万ラルド。つまり年間で最低1200万ラルドが保証されているから下手すると――うへぇ、とんでもない金額になりそうだ。それに加えて、確かエルヴィンが年間二回も特別報奨金が貰えるとか言ってたし。
「第四位の君は暇そうで良いね。僕も忙しいんだ。さっさと終わらせたいのだが」
「俺は宮廷鑑定士もやってるからな。ギルドの仕事だけとはいかないの。しかし、まぁ……景気が良さそうだな。大賢者・レイス」
「否定はしない。今年は僕も少なくとも二位には上がる予定だからね」
エルトナ王都に初めて来た日に偶然出会ったレイスっていう青髪で眼鏡のハイレベルな魔法士。
彼はどうやら賢者みたいだ。やっぱり魔法のスペシャリストだったか。
でも、この人が二位じゃないんだね。ってことは二位はゼノンっていうお爺さんか――
「あら、レイス。あんたって真面目そうな顔して冗談を言うのね。まさか、あたしのリワードを本気で抜けると思ってるの?」
赤色の髪をした少女が立ち上がり、レイスを挑発する。
あの子がSランクっていうより、年間報奨金、第二位ってこと?
どう見ても十歳くらいにしか見えないし、自分の背丈より大きい剣を背負ってて、強そうに見えないけど……。それにあの耳は――。
「思ってるよ。ハーフエルフの天才だと持て囃されているのも今の内だ。魔剣士・アリシア、君に負けるつもりはない」
「あ、そう。頑張って。去年、五億ラルドしか稼げなかったクセに自信だけはあるのね」
「五億ラルド!!」
ハーフエルフの魔剣士というアリシアはレイスが稼いだ年間報奨金を五億ラルドとか言い出したものだから、私は驚いて大声を出してしまった。
みんなの視線が私に集まる。凄く恥ずかしい……。
「レイスもアリシアも、そこまでだ。紹介するぞ。今期から新しくSランク入りした新人、精霊魔術士のリアナだ」
「本当にSランクスタートするとはね」
「噂は聞いとるぞい。アブソリュートドラゴンを拳で打ち破ったとか」
「ふーん。私以来のSランクスタートって聞いてたけど、随分と子供っぽいのね」
「えっと、リアナ・アル・エルロンです。よろしくお願いします」
年間報奨金第一位のシオンという人を除いて、私は一通りの挨拶を済ます。
ついでに参考までにってことで、エルヴィンを含むエルトナ王立ギルドの年間報奨金ランキングと報酬額を教えてもらった。
第五位はゼノン・アジーラってお爺さん。通称、“拳神”と呼ばれている武闘家らしい。
そこが見た目から信じられないけど、闘気というモノを体内で練ることで凄い力を出すんだって。エルヴィン曰く精霊強化術に似てるんだとか。
年間報奨金は二億ラルド。
第四位はエルヴィン・ノーティス。通称、“宮廷鑑定士”、または“神眼使い”。
あらゆる武器と武術の流派をマスターしているんだとか。全然知らんかった……。
年間報奨金は四億三千万ラルド。宮廷鑑定士の報酬は別にあるらしいけど、大して高額じゃないんだって。
第三位はレイス・ライゼンクライツ。通称、“大賢者”と呼ばれている程の魔法の使い手。
魔法士としては人類の最高到達点と呼ばれる程なんだってさ。
年間報奨金は五億二千万ラルド。
第二位はアリシア・マーセルシュタイン。通称、“魔剣士”と呼ばれているハーフエルフ。
剣と魔法の天才で、人間の限界を遥かに超えているという戦闘力が買われて、Sランクスタートでギルド入りしたとか。
年間報奨金は十億五百万ラルド。十億ラルドって、どんだけなのよ。目玉が飛び出るって。
うん。明日には名前以外忘れてそうだよ――。
こういうランキングって書きたくなるけど、そんなに深い意味合いはなかったりします。
名前もなんとなーくで、今は特に覚えなくても大丈夫です。
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